「好奇心がなければ"ヒト"ではない」
脳科学者・茂木健一郎氏が語る、科学がもたらす2つの恵み

TEDxTokyo - 茂木健一郎 - 05/15/10 #1/2

脳科学者・茂木健一郎氏が科学の魅力について語った2005年のTEDxTokyoにおけるスピーチです。

好奇心がなければ「ヒト」ではない

茂木健一郎(以下、茂):今日は科学の恵みについてお話ししたいと思います。科学とは何でしょう? 明らかですよね。どこにでもあります。もう今は我々は科学に囲まれて生きています。携帯、コンピューター、インターネット、ロボット、何でもありますよね。

でも、スピリチュアルの面はどうでしょう? 私達の心には何を与えてくるんでしょうか? 人間としての私達に。この世界に生まれてきて、いずれ死んでしまう私達。これは霊的に何を意味しているのでしょうか? それが私の今日、お話したいと思っているテーマです。

では、個人的な話から始めたいと思いますけれども、子供の時ですね、蝶を追いかけるのが非常に好きでした。 郊外で育ったんですけれども、東京の南側だったんですが、蝶について勉強を始めました。

:私が住んでいたところには52種類の蝶がいたんですね。もう、全部追いかけて、勉強しました。もうバタフライ狂だというふうにして知れ渡るほどでした。私はこの蝶を追いかけている間に、この驚きの念に満たされたんです。

本当に豊富な生命が溢れているんですね。私だけじゃなくてこの小さな虫も含めて、全部そうなんです。どうして彼らはここにいるんだろう? 何が彼らをここに存在させているのか。これは本当に私に興味を持たせたものなんです。特に、多様性の……オリジンですね。蝶をビジネスにしている方はご存知なんですけれども、こういった沢山の蝶がいます。

:とにかく、どうしてこんな多様性があるのか。色もそうですし、羽の形、パターン、そして習慣。本当に面白いと思いませんか? これは沢山の多様性を持っているんですね。この地球に生まれ、地球に存在する生命において、です。

私はサイエンティストとしても、人生を好奇心旺盛な子供から始めました。もちろん子供は、好奇心旺盛です。どうして? なんで? そういったことを常に聞いてきますよね。そして大人になると、もう今私も大人ですけれども、本当につまらなくなってしまいますよね。こういった子供の質問が嫌いになってしまいます。こういったことを質問されるのも嫌ですし、好奇心を持たれるのも嫌です。

しかし、好奇心を持たないということは価値を見いださないことなんですね。というのは、好奇心を持っているからこそ、私達はここにいるのです。全ての素晴らしいものは、好奇心から出てくるんです。好奇心がなければ私達は「ヒト」ではないんです。

ダーウィンとの出会い

歴史的にみても、沢山の好奇心旺盛な人達がいました。多くの人達はどうやって子供の時代を過ごしたのか、忘れてしまいます。私達は出会ったものを忘れてしまいます。

例えばチャールズ・ダーウィンですけれども、彼はガラパゴス諸島に行きましたよね。そして、本当に多様な生命をそこで見出しました。そして本当に彼は自然に好奇心を持って行ったんですよ。だからこそいま彼はここに存在する訳です。

科学の素晴らしさは何かというと、説明できないところなんですね。子供の時、質問があって、しますよね。で、大人が満足できるような答えを出したとします。どういう風に思ったか憶えていますか? 科学はこういったことを提供してくれます。

私は学校の図書館に行ったことがあるんですけども、たぶん9歳くらいでしたでしょうか、で、この素晴らしい本に出会ったんですね。

:私の母国語は日本語なので、日本語で読んだんですけれども、種の起原を書いた本でした。これはチャールズ・ダーウィンでした。これが初めてダーウィンを知った機会なんですけれども、こういった基本的な原理は、地球上の豊かな生命を説明してくれています。

科学は探索でもあります。与えられる情報では満足できませんよね。自分たちで探しに行かなきゃいけない。そしてこれが私が一番最初にやったプレゼンテーションのポスターなんですけれども、11歳の時でした。

:これは私が調べたことを、生態系ですとか、そういったものを発表したんですけれども。もちろんこれは専門家としての知識を持って発表した訳ですよ!

ま、これ、見せるのもちょっと恥ずかしいんですけどね。でも、やっぱり誇りに思っていることがあります。こうやって私は始めたんですよ、作業を。わからないことを開拓するところが、ここから始まりました。そして私はダーウィンに刺激を受けまして、そして蝶と出会うことからも、私は刺激を受けました。

科学は終わらない

:歳をとってくると、ヒーローに会いますよね。私のヒーローはアインシュタインです。アインシュタインは私に沢山のことを教えてくれました。そのうちの一つはどうやって自立するのか。慣習とか、そういったものからどうやって自由になるのかっていうことですね。自分の国からも離れようということです。アインシュタインが教えてくれたのはサイエンスにとって非常に重要な教訓でした。

サイエンスは沢山のことを教えてくれるけれども、その道の途中でまたわからないことが出てくるっていうことなんですね。これは止まることがないんです。私達の人生と同じです。私達は、もう科学を止めた、というふうに言わないんですよね。皆さんが科学を見ていて、そうするとどんどんもっと発見することがあるんですよ。これが科学の素晴らしい点なんです。

今日、まだ残っている謎があるんですけれども、時間の矢、どうして過去が今と違うのか。もしくは将来と違うのか。波動関数の縮小、収縮もそうですね。このコンセプトを説明しようとしています。でも、どんだけ賢い人がやろうとしても、答えが出てきません。

そして、私のライフワークとしてやっているものは「心脳問題」です。コレ、本当に面白い問題です。脳内の何十億ものニューロンがどうやって自覚できる経験を引き起こすのか。これは本当に今述べている部分なんですけれども、ここの説明はまだついていません。

でも、これは追求していく価値があると思います。そして「心脳問題」の中心は「クオリア」です。感覚質という風に言われていますけれども、赤み、透明性、輝き、こういったものですね。

:こういったものは、質は数字で説明することはできないですよね。物理学で説明できるような感じではできないです。私達の脳は、結局、物理的なものなんです。非常に複雑ですし面白いシステムですよ。でも、物体が集まったものなんですよね。

こういったもの、これはどうしてこういった「クオリア」のようなことをできるのか。感覚質を持てるのか。それが「クオリア」の始まりです。「クオリア」のオリジンですとか研究はされてくるでしょうけど、まだ何も文献には出ていません。

科学がもたらす2つの恵み

私にとっては科学の恵みは二つあります。一つ目は、沢山のものを説明してくれる。私達がミステリーだと思っているこの宇宙のことを説明してくれる。そして、子供の好奇心を満たしてくれてもっと世界を知らせてくれる。

そして二つ目は、終わりがないってことですね。自然をどんだけ学んだとしても、発見しきれないことがある訳です。そしてこれはアイザック・ニュートンの有名な言葉なんですけれども、これで終わらせてください。

:アイザック・ニュートンはこういう風に言いました。「私は海岸で遊んで小石や貝殻を集めるのが好きでした。でもその間も、まだ見ぬ偉大な真実の海が目の前に広がっていました。」

こういう小石や貝殻を全部集めて説明できる人、いますか? こう、集めるの、楽しいですよね。これ、継続できますよね。私達は謙虚になって、そして私達は全てを知らないんだということを知っておかなくてはいけません。ですから科学は、本当に素晴らしい。つまり、説明をくれるし、私達を説明の前にひれ伏させてくれる素晴らしいものなんです。

ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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