ライフシフター・安藤哲也氏が語る「人生100年時代の生き方」

安藤哲也氏(以下、安藤):みなさん、こんにちは。ライフシフト・ジャパン代表の安藤といいます。今回、WASEDA NEOさんにこのようなセミナーの機会をいただきましたことに感謝しております。本当にありがとうございました。

新聞をめくると、毎日「人生100年時代」というフレーズを見つけます。それを見るたびに、僕もそうですが、なんかモヤモヤしちゃうというか。100年と言われても想像つかないよな、というような。

今は働いていて毎月お金が入ってきますが、そのお金のことや健康のことなど、いろいろと考えたりもしました。

でも、その一方でやっぱり、どうせ100年もあるのなら楽しみたいと思ったりもします。だから、みなさんも一人ひとりが、今モヤモヤしていたり、とはいえ、なにをすればいいのかわからない、といったところなのでしょう。

今日の僕がお伝えしたいのは正解ではなく、一つの心の持ちようといいますか、これからステップアップしていくための、なにかしらのヒントになれればと思っています。

パラダイムシフトだらけの世の中

今日は、人生100年時代がどういうものなのか、どういった時代なのかについて、まずはお伝えしていきたいと思います。レジュメにもありますが、今、世の中でいろいろな変化が起きています。

パラダイムシフトが起きているといわれていますが、これはどのようなことかというと、やはり人口減少と少子高齢化です。私は子育て支援もやっていますが、この世界にも稀に見る超少子高齢化社会の日本に、世界中が注目しているという状況になっています。

あと、介護の問題も入ってきます。そして一方で、社会システム的には、年金や医療制度が崩壊しかけています。その背景にあるのは、やっぱり健康寿命が延びているということです。また最近は地震も多いですが、気候の変動といったことも、おそらく人間の健康に関わってくる問題ではないかと思っています。

職場に目を転ずると、終身雇用や定年制の見直しモードに入ってきていますし、やはり生産年齢人口が減って労働力が不足してきたことから、必然的に、働き方改革ということが起きている。人材の再開発という部分でも、副業を解禁する企業が2割を超えている状況です。

AIでは補えない人間力を育てる教育改革

そしてご存知のとおり、AIですね。人工知能やロボット。ファクトリーの中ではもうほとんど(ロボット)が動いているという状況の中、ややもするとこれまで人間がやっていた仕事はAIやロボットに奪われていくのではないかと。しかし、これはある種、合理的な働き方改革になっていくはずなので、その点について僕自身はあまり懸念はありません。

つまり、今までやっていたことで、AIで済むものはAIにやってもらえればいいわけです。そして人間は、AIにできないことをやっていく。そうしたある種の感情的な労働といった部分でも、人間としての特徴は出てくるのではないかと思います。

僕は、AIという言葉がいつも「アイ」に見えちゃうんですね。AIには愛があるんだから、決して敵対する関係ではないのではないかと(笑)。そう単純に解釈をしております。

しかし、子どもたちの世代に目を向けると、今後2020年から教育改革がはじまっていきます。我々がまったく受けたことのない教育を、これからの子どもたちは受けていく。その国の方針として、こうした人材を育てていこう、ということから教育改革が進んでいくそうです。僕らはね、「1192 (いい国)つくろう鎌倉幕府」という、それだけを覚えていたような気がしますが(笑)。

これからはもう、そんなことは別に人間が覚える必要はなく、課題や困難に向き合ったときにどのように克服していくのか。そうした人間力のようなものをどうつくっていくかという教育に変わっていくと思います。

僕にも小学生の子どもがいるので、1人の保護者としても関心が高い分野ですね。それも子どもたちだけの課題ではなく、我々社会に出ている大人たちも学びなおしといいいますか、リカレント教育といったものが必要になってくる。それ(学び直し)をした人が、ライフシフトというか、100年時代を楽しく生きられるのではないかと思ったりもします。

最後に、世の中では多様性の尊重と言われています。ダイバーシティはすでに起きていますので、これからはインクルージョン。そちらのほうに、もっとどんどん進んでいかざるを得ない。とくに企業で働く人たちも、このD&I(diversity and inclusion)を避けて通れないと思っています。

こうした状況と世の中の変化のうえに、この「人生100年時代」というキーワードが出てきているのです。すでにこれをテーマにしたいろんな書物がたくさん発売されています。みなさんはなにか読まれていますでしょうか?

1番売れている本は、このリンダ・グラットンさんの『LIFE SHIFT』です。この本では、やはり誰しも高齢化社会において100年時代を意識しなくてはならなくなってきたということ(が書かれています)。

LIFE SHIFT

一人ひとりにマルチステージな人生の再設計とライフデザインの再構築を求められているのではないだろうか? ということを投げかけています。

100歳以上の高齢者20万人を肩車で支える2060年の若者たち

この真ん中のグラフは、国立社会保障人口問題研究所のコンピュータがはじき出している、日本の未来の姿です。今から42年後の2060年。どうですかみなさん、今のご自身の年齢にプラス42歳をオンしてみてください。いったい何歳になっているのか。

ほとんどの方が、いわゆるこのジェネレーションのグラフの75歳以上のレッドゾーンにいらっしゃるのではないかと思います。僕も今55歳なので、97歳ですね。でも、このグラフで1番注目すべきなのは、100歳以上も実は20万人も生きている設定になっているのですよね。

女性が7割、8割くらいかな。でもやっぱり、社会保障の問題がこれで深刻になるといわれています。(グラフの)1番下にいくと、子どもの数が3分の1にもなってしまう。今でもすでに、戦後生まれの団塊の世代から3分の1になっちゃっているのですが、またそこから3分の1に減っていくということですね。減れば減ったで、電車がすく、渋滞がなくなる、あと受験がなくなりますよね、たぶん。

そういうメリットが実はあるのですが、逆に我々が働かないで社会保障にあずかる部分としては、非常に困難な時代になっていく。つまり、今年日本で生まれた赤ちゃんが42歳(になる)という、1番働き盛りのときに、消費税率も今より高くなっているだろうとよくいわれています。また社会保険料も今より多く払わないと、こんなにたくさんいる我々をとても支えきれない。

今は我々が(高齢者を)支えているのですが、今は3人で1人の高齢者を支えている、騎馬戦型と言われていますよね。かつて人口が増えていた時代は胴上げ型と言いました。野球で優勝すると監督を25人が胴上げするもので、25人で1人を支えていたから、そんなに負担はなかった。

でも、今はもうすでに3人に1人の騎馬戦。そして40年後のこの時代は肩車型と言われていて、1人の若者が1人の高齢者を支える。僕らはその上に乗っかっているというわけです。そうした立場になってくるということですね。

楽天を辞めて父親支援団体を作った理由

僕は40代前半までは、楽天という会社で、あるEC事業の責任者をやっていました。六本木ヒルズ時代ですね。毎日売り上げのグラフを見ながら「お、今日は2,000万円売れたぜ!」「3,000万円売ったよ!」などと言って(笑)。マネーゲームをやっていたのですね。でも、このグラフやいろんな情報に接することで、「これはやばいな」と。「ここでマネーゲームをやっている場合じゃないな」と思いました。

当時の僕は子どもが生まれてパパになり、共働きの家族として夫婦2人でやってきたのですが、今日みたいに暑いと、子どもが夏風邪をひいたりします。そうしたときにママばっかり会社を休んでいる。こういう役割分担はよくないんじゃないかと。

自分も「育児をやりたい」と思っても、当時はやっぱり、職場ではまだそれが容認されていなかった。休まないで長時間働く男性だけが重宝される文化。でも、それはおかしいと思っていました。

また、今はけっこう付いていますが、こうした商業施設にも、男性のトイレにおむつ交換台がなかった。だから僕は、娘と2人でデパートに出かけると、当時は便器のふたの上に娘を置いておむつを替えていました。今から19年ぐらい前のことです。

それで1回、(娘を床に)落っことしてしまったことがあって(笑)。それがすごくショックで(笑)。どうして日本のこうした施設は父親の育児に不寛容なのだと。職場も同様です。「これはおかしいよ」と思い、いろいろなヨーロッパの子育ての本などを読むと、男性が当たり前に育児休業を取っている国がいっぱいある。社会もそれを容認している。絶対に日本もそうなるべきだと。

そうすることで、子どもが生まれ育てやすい社会になると、このグラフの裾野も広がっていくのではないかという期待を込めて、44歳で楽天を辞めて、ファザーリング・ジャパンという日本初の父親支援のNPO団体をつくりました。