「女子会」の流行らせたのは誰?

尾原和啓氏(以下、尾原):僕はリクルートも楽天も大好きなんです。なぜなら、日本の中に眠る中小企業の力を拾い出すことが素晴らしいからなんですよね。つまり何かっていうと、日本の中小企業って自分たちが生き残りたいから必死にいろんな努力をするわけですよ。

そうすると、その努力の兆しっていうものを営業マンが嗅ぎつけてきて、編集の人に「どうもこういうことをやったほうがいいですよ」っていう話をして、「それっていうのも、ユーザー観点からするとこういうことだよね」みたいな、編集と営業がバトルしまくって、その結果できてくるんですね。

例えば、わかりやすいもので言うと、「女子会」ってあるじゃないですか。

曽山哲人氏(以下、曽山):女子会。

尾原:はい。女子会っていうものを流行らせたのって、リクルートなんですよ。

曽山:え、そうなんですか。

尾原:はい。これなぜかって言うと……。まず営業目線で言うと、居酒屋に女性が来ないわけですよ。

曽山:なるほど。

尾原:うん。だからどうにか女性に居酒屋に来てほしい。それで、いくつかやっぱり地方の店舗に行くと、女性に流行っている居酒屋があるんですね。そういうのを営業が嗅ぎつけて、「何の工夫をしてるの?」みたいな話を聞くと、やっぱり「トイレを綺麗にしていますね」みたいな話だったりとか。

いろんなファインディングスがある中で、ここから編集が入っていって調査すると、食べログとリクルートの決定的な違いに気付くわけです。それは何かって言うと、食べログ(のユーザー)って基本的に、おいしいところに行きたいんですね。でも人って、おいしいものばっかり食べたいかっていうと、そうじゃないですよね。みんなと気軽にワイワイ喋りたい。

曽山:楽しく。

尾原:うん。しかも、お財布に痛めつけず気軽に喋りたい。そういう需要を1番持っているセグメントが、OLの女性だったわけです。

曽山:なるほど。

プチコンサルで中小企業の努力を拾いあげるリクルート

尾原:このOLの女性が会社から帰るときに、気軽にワイワイ個室感覚で喋れるっていうニーズを編集側が拾ってきて、じゃあ居酒屋側にそれをやらせようって言って、営業がチェックリストを作ってね。

「トイレをちゃんと掃除していますか?」「トイレにちょっとした化粧落としを入れるだけで女性の満足度上がりますよ」「個室はニトリで売っている、このすだれをかければ2,000円で個室感出せますよ」。

それで「このエビチリをちょっと大きめに上に乗っけると、女子映えしますよ~」とかって、こういうのをプチコンサルって言うんですね。そういうのを営業がやっていって、お店を変えていくんですよ。

曽山:なるほど。

尾原:そうするとお店からすれば、リクルートのおかげで今まで来なかった女性が来るようになる。今まで来ないお客さんが来てくれるってことは、たくさんお金を払ってもいいわけですよね。だから、高いマージンをリクルートによろこんで払ってくれるっていう構造を作れる。

1人の天才エンジニアによってプロダクトから世界を変える楽しさもあるんだけれども、こういう、中小企業のがんばりを拾い上げて、それをムーブメントに変えて世の中に新しい価値観を提供するっていうのも、どっちもおもしろいですよね。

曽山:確かに。

尾原:これだとなんか、プロダクト論になって、あんまりこういう話って参考にならない? 大丈夫ですよね。

曽山:いやいや。みんなめちゃくちゃ頷いて聞いてくださっています。

尾原:そうですか、はい。なんぼでも喋れます。

曽山:ありがとうございます。でも尾原さん、めちゃくちゃ喋ってもらったので、ちょっと1回休憩入れましょうか。

尾原:そうですね。

曽山:はい。ということで、ここから5分休憩入れます。「もうちょっと突っ込んで聞きたい」みたいな、ご質問をちょっと考えていただければと思います。グループワークにしていきましょう。ということで、じゃあ5分間、話してみましょう。

尾原:グループワークは何をするんですか?

曽山:今は、雑談です。

尾原:ああ、雑談なんですね。

曽山:さっきの質問をもっと深く掘ってもらうとか。

尾原:なるほど。

曽山:するとあとで手が挙がってきますので。

尾原:了解です。じゃあちょっとトイレに行ってきます。

「魂のごちそう」がわかっていれば人生は幸せ

曽山:はい、じゃあそろそろ時間になりましたので、質問タイムに戻っていきたいと思います。みなさん、何か質問ありますでしょうか。はい、挙がってきましたね。それでは、お願いします。

質問者2:アミューズメント事業を展開しております、株式会社MのTと申します。

尾原:Mさん。いつもお世話になっています。

質問者2:本当ですか? ありがとうございます(笑)。いろんな意味でありがとうございます。

尾原:おもに貢いでいるほうですけどね。

(会場笑)

質問者2:しっかり還元できるようにがんばります(笑)。単刀直入に聞きたいことがございまして、もし尾原さんの人生が、今この瞬間に終わるとしたら……。

尾原:終わるとしたら?

質問者2:終わるとしたらです。野暮なことは考えないでください。

尾原:はい。

質問者2:「今、そのときが来たら、自分の今の生き方に対して心から幸せと言えますか?」という質問なんですけど。

尾原:ああ、なるほど。基本的には幸せです。というのは、僕は今この瞬間に全力で、今ほかの人が気付いてない新しいものに気付くということに人生を注いでいるし、ありがたいことに妻も娘もそういうのを支えてくれるということを含めて、やらせてもらえている。ただいっぽうで心残りがあるとすると、やっぱり今年で48になるので、僕が今までためていたことを全部次の世代にタダで残していこうと思っていて、今ずっと自分の考え方とかを本にしたり講演したりっていうのをやっています。

それがまだ途中なので、そこに関しては心残りっていう感じですね。結局これで大事なのは、さっき言った自分が何を最高の価値にして生きているかっていう話です。自分が何をやっているときが、自分にとって1番幸せかって認識していることですね、世の中のほかの人が価値があると思っているものを追わなくてよくなるので、楽になるんですよ。

曽山:ウエイトが変わるんですね。

尾原:そうです。だからようは「お金が価値です」とか「昇進が価値です」って言うと、それを得るために延々とインフレレースをやっていかなきゃならないじゃないですか。でも僕は新しいものを知った瞬間が好きだからその瞬間その瞬間が全力だし、ありがたいことに新しいものを知るって、新しいものを知ったらもっと新しいものがあるから、永遠にその瞬間その瞬間が最大満足なんですよね。

それは僕には「着想」がそれ(快楽)だからであって、人によっては、例えば「回復」みたいに、その瞬間へこんでいるものを見つけてそれを元に戻すということが快楽の人もいる。「内省」って言って、その瞬間その瞬間でしっかりと「この組織の中で何が1番大事なんだろう?」みたいなことを顧みることが1番の「魂のごちそう」の方もいる。

やっぱりそれぞれの「魂のごちそう」が何なのか。それがお金とか地位とかじゃなくて、何なのかっていうことをわかるっていうことが大事なのかなあ、と返してみました。

質問者2:はい。ありがとうございます。

曽山:ありがとうございます、それでは次の質問に移らせていただきます。

「始まりの場所」を意識しよう

質問者3:D株式会社のHと申します。よろしくお願いします。0から1にするのが得意だとか、好きだっていうお話をされていたと思うんですけども、そこに対してふだんから意識されていて、どうアンテナを張って、「自分がおもしろいこと」とかを探しているのかなっていうのを伺いたいです。

曽山:それはめちゃくちゃ聞きたいです。アイデアをどのようにインプットして、どのように貯めていき、どのように使っているかとか。

尾原:そうですね。これは3つあってね。

曽山:3つあるのですね。

尾原:はい。本に書いてあるのは2つで、そこから順番に言うと、できるだけ「始まりの場所」にいましょうっていうことです。

曽山:「始まりの場所」にいる。

尾原:始まりの場所。要は物事って、1年・2年単位で見て変化を捉えると予測ってしにくいんですけど、10年単位で見ると「時代の変曲点」ってわかるものが多いんですよね。それはさっき言ったモバイルとかもそうだし、ソーシャル(メディア)とかもそうだし、今で言えばAIもそう。とくに、例えば「AIが世の中を変えますね」って言うと、普通の人は、AIによって変わるものっていうものを「ソフトウェア」とか「ロボット」とかって言うんです。

その「始まりの場所」ができたら、必ずAIの権威の人のところに話しに行きます。「AIによって、結果的に1番世の中が変わるのは何ですか」みたいな話とかを、ナンパして聞きに行くんですよ。そうすると、例えばAIで言うと、1番AIが変えるのは「遺伝子」と「素材」なんですね。なぜかって言うと、人間の遺伝子ってプログラムじゃないですか。たった4種類のコードの組み合わせでできているわけなので。

AIっていうのは、無限の組み合わせの中から1番いいものを残していくっていうことにものすごく効果を発揮するんですよ。そうして「やっぱり遺伝子っていうものがものすごく効果ありますね」みたいな話になると「じゃあこのAIを遺伝子に活用しているところは、どこなんだろう?」っていうことでいろんな人に聞いたり論文を探したりします。

曽山:なるほど、論文を探されるんですね。

尾原:はい。基本的にこのときに大事なことは、上流にたどっていくことですね。

曽山:上流。上の方にってことですね。

尾原流「食べログ」活用法とは

尾原:はい。(次に話す)これ、みなさん持ち帰れるいいノウハウ。

曽山:是非、お願いします。

尾原:やっぱり男性の場合は女性を、女性の場合は男性を、誰も知らない良い店に連れて行きたいじゃないですか。しかもそのあと流行ったら、最高ですよね。これを見つける簡単な方法があるんです。自分が食べログとかで(調べて)行って「おいしいな」と思ったお店があったら、必ずその食べログの「最初にレビューをつけた3人」っていう人のIDを残していってください。

そうして20軒ぐらい(の店の結果を)並べると、4、5軒が実はたった1人によって発見されるということがわかるわけですね。

曽山:え? すみません。ちょっと、頭がついていけてないです。ごめんなさい。(笑)

(会場笑)

尾原:もう1度ご説明しますね。自分が行っておいしいと思った店があります。そうすると、その食べログのなかで最初にレビューを書いた人が、1年前か2年前かに必ずいるわけですよ。レビューを書いた最初の人。

曽山:なるほど。いますね。

尾原:このレビューを最初に書いた人、2番目に書いた人、3番目に書いた人っていう、レビューを書いた人のID、名前をメモしておくんですよ。

曽山:メモしておくのですね。

尾原:そうして自分の好きなお店20軒ぐらいで同じことをやっていくと、都合3×20で60ぐらいのIDが並びますよね。

曽山:並びますね。

尾原:必ず、半分ぐらいはたった1人によって(レビューが)あげられています。

曽山:ああ~なるほど!

尾原:ということは何かっていうと、簡単ですね。僕は今、自分でプログラムを書いて、そのたった1人のIDが新しく「おいしい」っていう店を見つけたら、その人がポストしたら、必ず僕にメールがくるっていうシステムを……。

曽山:通知が。おお! それはすばらしい!

(会場拍手)

尾原:はい。その人が新しいレビューを書きましたっていうのが、ちゃんとみなさんのお知らせに、プログラムを書かなくても食べログ上の機能でできるようになったんですよ。

曽山:なるほどですね、それは知らなかったです。

尾原:はい。そうするとさっき言ったように、「始まりの場所」にいれるわけです。僕はビジネスだろうがプライベートだろうが何だろうが、上流にのぼっていく。すると必ず一部の人が上流を嗅ぎわけている。じゃあ、(今度は)その人に会いに行くっていうことをやっているんですね。