作家にアドバイスするロボット編集者を開発

海老原嗣生氏(以下、海老原):ねえ、佐渡島さん。

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):はい。

海老原:これはどう思いますか? 私の話を聞いてくださったと思うんですけど、最初になくなるのは知的熟練業務、熟練(が必要)だけど単純な業務、難しいだけの単純な業務。あとは、みんなが憧れている業務や、今、給与が高い業務。これらがなくなっていくというのは、社会として嬉しくない? その感想はどうですか? 

佐渡島:いや、そうだと思います。だから弁護士、税理士、医者とかですかね。

海老原:じゃあ、長距離ドライバーもそこに入るわけでしょ? マーケッターも。

佐渡島:そうですね。そこで今、うちの会社で開発しているのは編集者の仕事をする機械でして……作品を読ませて感情曲線とかを出して、それで作家にどこを直せばいいかというアドバイスをやってもらおうと思っています。

海老原:そんなものが今、もうできているの?

佐渡島:英語だとほぼできています。日本語だとまだちょっと精度が悪いんですけど。それで今、作っています。

海老原:ひょっとして今日の喋りもそれ見て……。

(会場笑)

海老原:「こう喋ったらおもしろいだろ」とか。

佐渡島:それはもう、今日の……僕の喋りは基本的に全部、アドリブですけどね(笑)。でもまあそれで……。

海老原:それもね、今のも、ちゃんとシナリオだったんだよ。

佐渡島:(笑)。

(会場笑)

編集者がやるべきことは「作家がいつそれを言われるとスッと聞こうと思うか」を見抜くことだと思うんですよ。人って、基本的に(他)人の言うこと聞けないんで「どのタイミングで言われると聞くかな」っていうのを見たりとか。体調にも寄ったりするじゃないですか。情報の組み合わせは、その場にいる人間の方が得意かな、と思っています。

海老原:そうすると今は確かに編集者って必要ですけど、すき間労働の2050年ぐらいになると「今、喋んない方がいい。喋りかけない方がいいよ」ってこいつが言ってくるから……。

佐渡島:それもあり得ますよね。

海老原:そうなってくるでしょ?

役者はセリフを覚えるよりも演技に専念したい

佐渡島:そうなってきた時に、人間が何をしようと思うのかってことなんですが、白物家電がすごく発達してできた時間で何をしようと思うかって、結局、白物家電を作った人たちが予想したことは当たってないだろうなって思っていて。

僕、最近、カフェ マメヒコのオーナーの井川さんって人がすごく好きなんですけど、井川さんはカフェで劇をやっているんですね。それで、そこの劇は稽古でセリフを覚えるのをやめたんですよ。劇の下で全部カンペが出るんです。

なんでそうなったかというと、役者の人たちが練習の時にずーっとセリフ覚えているんです。それで(井川さんが)「俺らはセリフを覚えるマシンか」と。

海老原:天才だね。

佐渡島:「俺らは演技するためにやっているんだ」「セリフを覚えるために練習時間使うんだったら、お前らもうセリフなんか覚えんな」「俺が全部カンペを出す!」って。

海老原:まさに天才だね。

佐渡島:それで「まずはカンペがある中で、カンペを見てないように喋る練習をしろよ」と。

(会場笑)

佐渡島:それで「どういうふうにして感情表現をするのかって方に時間を使えよ」って言って今、劇をやっているんですよ。ある役者と会った時に「役者としてどういう点で成長したいんですか?」みたいなことを聞いたら、「セリフを自動的に記憶したい」と返ってきました。

結局、労力のほとんどをセリフを間違えないようにということに使っていて、どんな表情をするかについて考えている時間をつくるのが大変だと。

海老原:そういうことね。

佐渡島:だから、セリフなんかは役者の脳に自動的に入っているようになったら、役者の考えることが変わってきて、演技のあり方が変わる可能性だってあるわけですよ。

そんな形で編集者も、どうやったら作品がおもしろくなるか、みたいに物語の型を毎回思い出したりしていて、そういうところはそんなにフレームワーク化されてないから、それに対して一生懸命1日か2日かけて読み直したりして考えたりしているわけです。

基本的におもしろいかどうかなんて、ストーリーの流れは7パターンくらいしかないって言われていて、それに乗っかっているかどうかを考えるのは機械にやってもらっていますが、(機械が)それ以外のこと、ストーリーについて考えられるようになったら、何を考えるんだろうなと思いますね。

海老原:一般人はいつもね、こういう考えを聞いていて引っ張られるんですよ。それで、僕はここに胡散臭さを感じるんですよ。

佐渡島:(笑)。

(会場笑)

人間の理解度はウェアラブルセンサで測れる

海老原:いや、佐渡島さんとか勝間さん(注: 著述家・評論家の勝間和代氏)とか、もしくはホリエモンとかのパターンはみんな一緒なんですよ。優秀な人を相手に話しているんですよ。

佐渡島:はい。

海老原:例えば、いわゆる私用じゃなくて雑務があるから95パーセントぐらいの人間は仕事があるのであって、それがなくなったからといって「はい! もっと高度なことを考えて」って言われても、95パーセントの人間は(仕事が)成り立たないんじゃないですか?

佐渡島:だから僕は、高度なことを考えるようになるとは思ってないんですよ。今は僕の編集という作業でいうと、そうだと思うんです。人間って感情でやり取りする動物なので。

海老原:はい。

佐渡島:今ってみんな、作業して忙しくなっているじゃないですか。猿の毛づくろいのように「好きだよ」「好きだよ」みたいなことだけを言い合っているような(笑)。仕事で(そういう)時間が増えてくるんじゃないかなと思いますね。

いろんなことを機械がやってくれていて、ただただ感情の交換をしているっていうので、その感情の交換が上手い人がビジネスも上手くいく。より感情のところにいろんなビジネスの可能性があるんじゃないかな。

海老原:でもなんとなくね、俺はちょっとうがった見方をしていて、その感情のやり取りをいつもGoogle homeが見ていて、Google homeがもっと上手く感情表現するようになってくるんじゃないの?(笑)。

佐渡島:それもあり得ると思いますね。『データの見えざる手』の(著者の)矢野(和男)さんの作っている機械って、今はカードみたいなのを首にぶら下げないといけないんですけど、例えば今、みなさんにそれをぶら下げといてもらったとするじゃないですか。

そうしたらみなさんは貧乏ゆすりしているわけでもないから、今、誰も自分が「揺れている」と思ってないでしょうけども、実際は全員が今、意識でないくらい小さく揺れているんですよ。

その揺れで、「僕の話を理解したつもりになっているか」だけじゃなくて、「どれぐらいわかっているか」が、現状の矢野さんのところの技術を使えばもう、ほぼ判定できるらしいんですよ。

海老原:はい。

佐渡島:だから、それを学校とかに導入しちゃえばあんまりわかってない人間だけあとで違うテキストを渡したりとか、そういうこともできたりするんです。

本当に暇になったときに何がしたいか

海老原:例えばそれ、私が喋ったのも、みんなが「あ、この人俺の(しゃべり)面白いと思ってくれていたんだ」とかそういうのもわかるわけでしょ?

佐渡島:わかります。

海老原:そうすると、みんながすごい良いと思った俺の喋りに関しては、Google Homeが「エビちゃんあれ良かったよ!」(って言ってくれて)。俺がGoogle Homeに褒めてもらうみたいな。

佐渡島:そうです。

海老原:「もっと褒めてもらいたいな、OK,Google」こんな感じのモチベーションになるの?

佐渡島:とかも起こり得ると思いますよ。そこらへんがどうなるのかな、っていうのは全体像を僕はあんまりイメージしてないですけどね。

海老原:本当に単に寝ているだけの……ちょっと待ってくださいね、僕はすごく差別的なことを言いますよ。いやそんなんではね、毛づくろいもしないでパチンコをやっているだけの人が増えるんじゃないですか?

佐渡島:それもあり得ると思います。VRを見ているだけというか。

海老原:そういう人?

佐渡島:はい。それもあり得ると思います。

海老原:だって簡単に仕事やって、儲かって、仕事も楽で、給与は倍もらえて、それで、早く帰ってこられたらなんかすごいことやろうとか、気持ちいいことを相手にしてあげようということをするより、単にVR見ているだけになっちゃうの?

佐渡島:どうなんですかね? 人間ってけっこう、暇すぎると「キャンプ行ってみよう」とか、「ゴルフ行ってみよう」とか思う人もいるじゃないですか。その時に人が何を思うかはわからないですね。

パチンコをやっている人って暇なんですけど、使えるお金とか、いろんな選択肢の情報がないから繰り返しちゃっているだけで、上手くサジェストされると、行動が変わる可能性もあるなって思いますけどね。

海老原:でも例えば、東日本大震災で仮設住宅に住んでいる人って、1人あたり月に28万円ぐらいのすごいお手当をもらえたりしているじゃないですか。家族だったら、すごい金額じゃないですか。

そして暇で、定年後の人って無限のような時間があるわけじゃないですか。それでもやるのは毎日同じルーティンだけ、儲かるのはパチンコ屋だけ、みたいな話をよく聞くじゃないですか。

佐渡島:それってなんか、先ほどの海老原さんが言った「OK,Google」みたいなものが……。

海老原:ないからだと思います。

機械のコーチングで、人間の行動が変わっていく可能性

佐渡島:そうです。むちゃくちゃ人間のことがわかっていたら、気持ちいいレベルアップができるような声がけをする可能性ってあると思うんですよ。

海老原:コーチングの話ですね。

佐渡島:そうです。今って、ハードルがすごく高いタイミングでしか声がかかってこないコーチングだから……。

海老原:そうだよね。

佐渡島:そうなんです。だから、みんな自分の習慣を変えられないんですけど、(AIが)こっちの状況をむちゃくちゃ把握しているともっと、こっちが「やらされてる」感じがしない、滑らかなサゼッションみたいなことが起きるんじゃないかなと思っていて。そう、RIZAPの何がすごいって……。

海老原:やる気にさせるのね?

佐渡島:そうです。痩せるRIZAP。結局「どうすると痩せるか」の知識って、そんなに難しい知識なわけじゃないんですよ。食べ物と筋トレの組み合わせ。

海老原:カロリーとか、うん。

佐渡島:どのコーチでも言えるんですけど、それを他人がやる気になるように言うっていうのが難しい。それで、RIZAPのトップコーチはそれがむちゃくちゃ上手いわけですよ。堀江(貴文)さんと話した時に言っていたのが、「RIZAPのやつと話していると、俺が『わかった。食うよ』って言っちゃうんだよ」だって。

海老原:ホリエモンさえも。

佐渡島:そう。「そんな言い方をされたら俺も食うかっていう感じになって、食って写真あげちゃうんだよな」って言って。機械がもっとそういうコーチングを上手くやっていくと、人の行動が変わるんじゃないかなと思いますね。

海老原:「ひょっとしたら佐渡島さんって、ずっと同じこと言っているのかな」って、一瞬思ったわけ。ドラゴン桜の中の教師たちっていうのはその役割が上手い人で、体操やりながらとか、リズムとりながらとか、全部そういう話だったんだよね?

佐渡島:そうですね。

海老原:だからみんな東大は入れるぐらいに育てていっちゃうわけなんですよね? 親と子どもの関係も、それを本当に上手いタイミングでコーチングして、やる気にさせればいいと。

佐渡島:そうですね。

海老原:こういう話ですか?

佐渡島:それが難しいんですよ。結局、人の状態ってわからない。それに、教える側も楽をしたくて、コントロールするようなことを言ってしまう。こっち側の事情での声がけをたくさんしてしまう。生徒側の事情じゃないことがほとんど。そこを我慢するのが、やっぱりすごく難しいですよね。

海老原:でも俺、佐渡島性善説にちょっとまた引き込まれそうだけど……。

佐渡島:はい(笑)。

(会場笑)