自動車を運転するのは「趣味」になる

孫正義氏(以下、孫):次に、自動運転の時代になると、現在人間が交通手段として運転している自動車がどうなっていくのかということをお話ししたいです。

私が思うのは、高速道路あるいは一般の都市で運転をするためには、おそらく今から50年も経たずして、特殊な運転免許を持った人しか運転できなくなると。人々は高速道路を走れない、都市部では運転が許されない時代がやってくると思います。

例えば、現在、高速道路に馬で乗り入れたら一瞬にしてパトカーが捕まえに来る。日本で言うと、東京の銀座の四つ角で人が馬に乗ってきたらすぐに警察に捕まる。かつて人々が交通手段としてメインで使っていた馬は、趣味の範囲としての乗馬で、乗馬クラブに行って乗るとか、山の中で乗るということは許されるが、都市部では許されない。

同じように、人々が自動車を運転するのは趣味の範囲でなら許される。でも一般の高速道路や都市部で車を運転するのは事故の原因になる。交通混雑の原因になるということで排除されるという時代がやってくると思います。

そのように時代は一気に変わっていくということです。タクシーは1日1人が運転したら8時間しか稼働できないので、交通事故が起きる、渋滞が起きる。

でもロボタクシーの時代になると、24時間交通事故はほぼ0で、渋滞も一気に減少できるということです。今日は、その最先端を走っている会社の1つ、GMクルーズのDanが直接みなさんに話をしてくれます。Dan。

自動運転のパフォーマンスを上げるのにAIは不可欠

Daniel Amman氏:孫さん、ご紹介どうもありがとうございます。みなさん、おはようございます。ここに来れて本当にうれしく思っています。GMクルーズのミッションは、安全な自動運転を非常に大規模で展開することです。それをやっていくためには、AIを使っていかなければなりません。

つまり、自動運転のパフォーマンスが安全で、かつ全体的なパフォーマンスという意味で十分なレベルに達するために、AIが必要であるということになるわけです。

成功していくためには、私たちのパートナーシップも非常に重要です。5月末に非常に大きな発表をいたしました。ソフトバンク社とGMのパートナーシップを組んで、GMクルーズが発表されました。どういった発表があったのかについて、5月末時点のニュースを振り返ってみましょう。

今朝、General Motorsは非常に大きな発表をいたしました。ソフトバンク・ビジョン・ファンドがGMのクルーズオートメーションに対して、22億5,000万円を投入したということです。ソフトバンクは非常に大きな可能性を感じているということで、世界に大きな影響を与えるものになるでしょう。また、ビジネス上のチャンスも生まれることになると思います。

すばらしいですね。ソフトバンクがGMとパートナーを組む。そして、無人カーがこれから走っていくということです。GMのテクノロジーが、きちんとこれで認められたということで、株価は10パーセントも上がっています。これが、テスラへどのような影響を与えるんでしょうか。投資家として非常によく知られているソフトバンクが、GMに投資をしたのです。今回孫さんと、そしてソフトバンクチームとパートナーシップを組むことができて、大変誇りに思っています。

交通渋滞が引き起こす厄災

GMは、将来的に「ゼロの交通事故」「ゼロエミッション」そして「ゼロ交通渋滞」という世界が来ると思っているんです。DidiのスピーカーのJeanが今、世界がこうなるんだという話をしてくださったわけですが、過去100年を見てみますと、自動車が出てきたことによって、世界は大きく変わりました。人々が自由にあちこちへ行けるようになった。そして、安い価格でこういった交通の手段を手に入れることができるようになったわけです。

しかしながら、ミッション、交通事故、そして交通渋滞に関しては、問題が残っています。毎年120万人が交通事故で死亡しています。今日この部屋に3,000人くらいいるわけですが、だいたいこの規模の人たちが、毎日交通事故で死んでいるということになるわけです。これを変えていかなければなりません。

また、二酸化炭素が何十億トンも排出されています。世界規模で、実は1兆ドルもの損失を、この交通渋滞によってもたらしていることになるわけです。大規模に自動運転を導入することによって、このような問題をすべて解決することができます。AIは、十分なレベルの自動運転を実現していくために、なくてはならないものになるわけです。

ムーアの法則は運輸業界にも当てはまる

未来のビジョンを考えていく上で、AIは自動運転を可能にさせる。そして人間が運転するよりもより良い、より安全で、より効率な運転をもたらすことができるんだということを、私たちは認めていかなければなりません。物理的にもいろんな感化があるでしょう。街の景観も変わるはずです。そして、業界そのものが変わっていく。それは交通だけでなく、不動産、エネルギー(も例外ではないでしょう)。

なぜならば、自動運転の標準化は、自動車が全部電気自動車になるということになりますから、エネルギーにも大きな変化があります。そして、保険業界も変わっていくでしょう。ということで、この自動運転技術を大規模に使っていくことは、私たちの今の生活の仕方、そして業界そのものが世界で変わっていくことを意味しているわけです。

このテクノロジーは、膨大なビジネスチャンスをもたらすことになります。車によって何兆マイルというマイル数を走っているわけですが、このテクノロジーを導入することによって、こういった走行距離にかかっているコストは最初の数年だけでも50パーセントから70パーセントは下がるはずです。

つまり自動運転にすれば、人間が運転するよりも、最初の数年で50パーセントから70パーセントもコストを下げることができます。ムーアの法則が、この運輸業界にも適用されることになるわけです。

これから先、ライドシェアのビジネスがどんどん増えるであろうことは、みなさんご存知のとおりですが、ここでも今あるライドシェアの何百倍ものビジネスチャンスが生まれることになります。世界において、何兆マイルという走行距離があるわけですから、これをライドシェアに置き換えていくことによって、非常に大きな変化が生まれます。

大規模展開で改善できる魅力

そして、世界で最大規模のIoTプラットフォームが生まれることになります。さらに、モバイルデータを取り込むネットワークとしても最大規模のものが生まれることになります。世界に関して、さまざまな情報がここから取られるでしょう。

とくに私たちがGMで取っているアプローチ。このクルーズの差別化できる点は、大きなエンジニアリング上の課題を、1つの場所で解決することができることです。サンフランシスコの、自動運転に関する最高の頭脳が集まったところで(課題解決のための研究を)やっていますし、ミシガンでも同じ研究をやっています。毎日この2ヶ所の拠点で、自動運転のシステム全体を開発しているわけです。

自動運転車を最も安全にやっていくことができるということは、私たちが1ヶ所でやっているという強みを発揮できます。そして、このシステムがどのように機能するのかという全体を理解していますので、何度もこれを繰り返し改善・開発していくことによって、非常に高い開発スピードや規模感を実現することができます。

そして、安全にこのテクノロジーを使っていくという意味では、私たちのこれまでの車の開発のノウハウと経験を使って、大規模に展開していくことができるわけです。ただ単にどんどん改善ができるだけでなく、大規模展開ができることも1つの点です。