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自動運転技術のビジネスチャンスはダウンタウンにある ソフトバンクと手を組んだGMが目指す信号機のない世界

ソフトバンクグループ最大規模の法人向けイベント「SoftBank World 2018」にて、孫正義氏による基調講演が行われました。ソフトバンクが推し進める「情報革命」とはイコール「AI革命」であるとし、これからやってくるAI時代をどう切り拓いていくかについて語ります。本パートでは、General Motors CompanyのCEOである、Daniel Ammann氏によるスピーチの模様をお送りします。

自動車を運転するのは「趣味」になる

孫正義氏(以下、孫):次に、自動運転の時代になると、現在人間が交通手段として運転している自動車がどうなっていくのかということをお話ししたいです。

私が思うのは、高速道路あるいは一般の都市で運転をするためには、おそらく今から50年も経たずして、特殊な運転免許を持った人しか運転できなくなると。人々は高速道路を走れない、都市部では運転が許されない時代がやってくると思います。

例えば、現在、高速道路に馬で乗り入れたら一瞬にしてパトカーが捕まえに来る。日本で言うと、東京の銀座の四つ角で人が馬に乗ってきたらすぐに警察に捕まる。かつて人々が交通手段としてメインで使っていた馬は、趣味の範囲としての乗馬で、乗馬クラブに行って乗るとか、山の中で乗るということは許されるが、都市部では許されない。

同じように、人々が自動車を運転するのは趣味の範囲でなら許される。でも一般の高速道路や都市部で車を運転するのは事故の原因になる。交通混雑の原因になるということで排除されるという時代がやってくると思います。

そのように時代は一気に変わっていくということです。タクシーは1日1人が運転したら8時間しか稼働できないので、交通事故が起きる、渋滞が起きる。

でもロボタクシーの時代になると、24時間交通事故はほぼ0で、渋滞も一気に減少できるということです。今日は、その最先端を走っている会社の1つ、GMクルーズのDanが直接みなさんに話をしてくれます。Dan。

自動運転のパフォーマンスを上げるのにAIは不可欠

Daniel Amman氏:孫さん、ご紹介どうもありがとうございます。みなさん、おはようございます。ここに来れて本当にうれしく思っています。GMクルーズのミッションは、安全な自動運転を非常に大規模で展開することです。それをやっていくためには、AIを使っていかなければなりません。

つまり、自動運転のパフォーマンスが安全で、かつ全体的なパフォーマンスという意味で十分なレベルに達するために、AIが必要であるということになるわけです。

成功していくためには、私たちのパートナーシップも非常に重要です。5月末に非常に大きな発表をいたしました。ソフトバンク社とGMのパートナーシップを組んで、GMクルーズが発表されました。どういった発表があったのかについて、5月末時点のニュースを振り返ってみましょう。

今朝、General Motorsは非常に大きな発表をいたしました。ソフトバンク・ビジョン・ファンドがGMのクルーズオートメーションに対して、22億5,000万円を投入したということです。ソフトバンクは非常に大きな可能性を感じているということで、世界に大きな影響を与えるものになるでしょう。また、ビジネス上のチャンスも生まれることになると思います。

すばらしいですね。ソフトバンクがGMとパートナーを組む。そして、無人カーがこれから走っていくということです。GMのテクノロジーが、きちんとこれで認められたということで、株価は10パーセントも上がっています。これが、テスラへどのような影響を与えるんでしょうか。投資家として非常によく知られているソフトバンクが、GMに投資をしたのです。今回孫さんと、そしてソフトバンクチームとパートナーシップを組むことができて、大変誇りに思っています。

交通渋滞が引き起こす厄災

GMは、将来的に「ゼロの交通事故」「ゼロエミッション」そして「ゼロ交通渋滞」という世界が来ると思っているんです。DidiのスピーカーのJeanが今、世界がこうなるんだという話をしてくださったわけですが、過去100年を見てみますと、自動車が出てきたことによって、世界は大きく変わりました。人々が自由にあちこちへ行けるようになった。そして、安い価格でこういった交通の手段を手に入れることができるようになったわけです。

しかしながら、ミッション、交通事故、そして交通渋滞に関しては、問題が残っています。毎年120万人が交通事故で死亡しています。今日この部屋に3,000人くらいいるわけですが、だいたいこの規模の人たちが、毎日交通事故で死んでいるということになるわけです。これを変えていかなければなりません。

また、二酸化炭素が何十億トンも排出されています。世界規模で、実は1兆ドルもの損失を、この交通渋滞によってもたらしていることになるわけです。大規模に自動運転を導入することによって、このような問題をすべて解決することができます。AIは、十分なレベルの自動運転を実現していくために、なくてはならないものになるわけです。

ムーアの法則は運輸業界にも当てはまる

未来のビジョンを考えていく上で、AIは自動運転を可能にさせる。そして人間が運転するよりもより良い、より安全で、より効率な運転をもたらすことができるんだということを、私たちは認めていかなければなりません。物理的にもいろんな感化があるでしょう。街の景観も変わるはずです。そして、業界そのものが変わっていく。それは交通だけでなく、不動産、エネルギー(も例外ではないでしょう)。

なぜならば、自動運転の標準化は、自動車が全部電気自動車になるということになりますから、エネルギーにも大きな変化があります。そして、保険業界も変わっていくでしょう。ということで、この自動運転技術を大規模に使っていくことは、私たちの今の生活の仕方、そして業界そのものが世界で変わっていくことを意味しているわけです。

このテクノロジーは、膨大なビジネスチャンスをもたらすことになります。車によって何兆マイルというマイル数を走っているわけですが、このテクノロジーを導入することによって、こういった走行距離にかかっているコストは最初の数年だけでも50パーセントから70パーセントは下がるはずです。

つまり自動運転にすれば、人間が運転するよりも、最初の数年で50パーセントから70パーセントもコストを下げることができます。ムーアの法則が、この運輸業界にも適用されることになるわけです。

これから先、ライドシェアのビジネスがどんどん増えるであろうことは、みなさんご存知のとおりですが、ここでも今あるライドシェアの何百倍ものビジネスチャンスが生まれることになります。世界において、何兆マイルという走行距離があるわけですから、これをライドシェアに置き換えていくことによって、非常に大きな変化が生まれます。

大規模展開で改善できる魅力

そして、世界で最大規模のIoTプラットフォームが生まれることになります。さらに、モバイルデータを取り込むネットワークとしても最大規模のものが生まれることになります。世界に関して、さまざまな情報がここから取られるでしょう。

とくに私たちがGMで取っているアプローチ。このクルーズの差別化できる点は、大きなエンジニアリング上の課題を、1つの場所で解決することができることです。サンフランシスコの、自動運転に関する最高の頭脳が集まったところで(課題解決のための研究を)やっていますし、ミシガンでも同じ研究をやっています。毎日この2ヶ所の拠点で、自動運転のシステム全体を開発しているわけです。

自動運転車を最も安全にやっていくことができるということは、私たちが1ヶ所でやっているという強みを発揮できます。そして、このシステムがどのように機能するのかという全体を理解していますので、何度もこれを繰り返し改善・開発していくことによって、非常に高い開発スピードや規模感を実現することができます。

そして、安全にこのテクノロジーを使っていくという意味では、私たちのこれまでの車の開発のノウハウと経験を使って、大規模に展開していくことができるわけです。ただ単にどんどん改善ができるだけでなく、大規模展開ができることも1つの点です。

ダウンタウンで走行テストすることに、ビジネスチャンスがある

それから、私たちがアプローチを取っている中でもう1つユニークなのは、非常に複雑な都市の運転環境で開発しようとしていることなんです。郊外の道で走っている自動運転車なら、みなさんも見たことはあると思いますが、私たちは一番難しいところから取り掛かっていこうということで、予測不可能な非常に複雑な都市の中の、それも大都市圏の道路で開発しようとしているわけです。

私たちは、サンフランシスコのダウンタウンであえて走行テストを行って、複雑な道を走らせています。ここにビジネスチャンスがあると思っているからです。

ということで、3つの短いクリップをお見せしたいと思います。みなさん、車で何マイルくらい走行するのかと思っているかもしれませんが、最初のクリップは100メートルもないかもしれません。その短い走行距離で、チャイナタウンの非常に多忙なストリートで、どんな環境をこの車が経験するのかご覧いただきたいと思います。この動画では、100パーセントすべて自動運転という環境で行っています。

(動画が流れる)

10、20、30メートルくらいの非常に短い距離かもしれませんが、ここには対向車があったり、道端には車が止まっていたり、歩行者もたくさんいたり、信号もあったります。次の例は、大都市では毎日見られる工事現場です。これは予測できません。突然工事が行われたりします。

同じように車が完全に自動運転で、例えばその工事現場にいる人が持っている看板といったものもすべて認識できているというのがおわかりいただけると思います。これは予定できません。

信号故障の六叉路でも走行できる技術

毎日起こることですが、大都市ではよく出くわす風景です。最後の事例は私が好きな例です。サンフランシスコに六叉路があり、それ自体が複雑な環境ですが、数ヶ月前、信号が故障していたのです。点滅は信号が故障していることを示しています。

六叉路になっていますが、問題なく通過することができました。非常に複雑な都市環境をナビゲートすることで、自動運転車が初めて安全に必要な要件を満たし、毎日の環境で対応することができる。このテクノロジーを大規模に展開する準備ができるということになります。

復習になりますが、私たちの目標は、安全に自動運転車を大規模に展開することで、世界を変えるということです。でなければ、道路上で必要な望ましい効果をもたらすことはできません。一番大きな問題を解決したいからです。GMクルーズチーム、そして我々のパートナーであるソフトバンクの3社で実現したいと思います。

その効果は世界中で見ることができます。グローバルに展開するチャンスがあると思っています。このテクノロジーを現実に、できるだけ早く実現することをとても楽しみにしています。ありがとうございました。

(会場拍手)

信号機の要らない世界

:アメリカ最大のGMの社長であるDanが自ら来て、彼らの自動運転の技術開発の最先端のデモを、みなさんにビデオでお見せしました。ご覧のように、単に道を走るだけなら簡単なAIでできますが、実際の道路となると工事中の現場があったり、信号機が故障していたり、あるいは目の前に停まっている車に不測の事態が起きたりと、いろんなことが起きるわけです。

そういう状況の中で、コンピュータが、AIが自ら判断して意思決定をしなければならない。時には交通違反をしてでも進まないと渋滞が起きてしまうと。人間は小さな交通違反を繰り返し犯しながら、実際に運転しているわけです。目の前にトラックが停まっていたら、イエローラインを越えてでもいかないと後ろが混んでしまうわけです。というように、いろんな決められたルールを自ら人間の判断で、ルールを超えてでも実際に運転をしていっていると。

そのような状況において、これからAIが自らの判断でそういうことを行っていくようになっていくということであります。みなさん想像してください。もし今から30年後、50年後に、ある街あるいはほとんどの主要なところで、仮に100パーセント自動運転の車の街が生まれたとします。そうしたら、もはやそこには信号機はいらないということです。

自動運転の車がお互いに近寄ってきている車をすべて事前に判断して、信号機なしでもお互いの車をすり抜けて交差点を通っていくと。そういうことが起きるとすれば、車は一般の街中の道路も時速200キロで突っ走っていくことができると。今、車は事故を起こさずに時速200キロで走れるのに、実際は街中では20キロ、30キロで運転しているわけです。

想像してください。もし時速200キロで、信号機なしで、街中でも一切事故を起こさずに、車がシューッと通り、お互いにクロスしていける。そういう状況になれば、同じインフラストラクチャーの道路が一切混雑をせずに、一切事故を起こさずに、遥かに多くのトランスポーテーションを提供できるということになるわけです。

つまり、AIは事程左様に、あらゆるものについて、より効率よくし、より事故をなくし、より安価にし、進化させてくれるということであります。

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