2050年前後に徐々に雇用喪失が始まる

海老原嗣生氏(以下、海老原):(すき間労働化の)次に起きることは何か。コンピュータは、1個のことしかできないけれども、人間の頭のようにいろんなことができる「汎用AI」というかたちに進化します。

これが早くて20年後ぐらいから出てくると言われています。30年後、40年後になってくると、かなりこの(汎用AIの)時代になってくる。これが「全脳アーキテクチャ」。まず、第1段階が「全脳アーキテクチャ」です。

脳みそというのは、16個ぐらいのパーツからできています。全脳アーキテクチャというのは、そのパーツごとに機能を真似て、それをくっつけたものだと思ってください。というので、なんとなく人間の頭みたいなもの。

だから、そのパーツ、パーツには、今の人間にわかっている機能以外にも、見えていない機能がたくさんあるんです。そんな機能は放っておいて、ある程度できることだけをくっつける。こんなかたちの「疑似脳みそ」です。

しかも、脳みそって16個も部品をくっつけると反駁しちゃったりするんです。だから、なかなか人間の脳みそにならない。というので、「なんとなく人間の脳みそに似たようなもの」というのが全脳アーキテクチャだと思ってください。

でも、これはなんとなく似ているだけで、さっき言ったサービス業とか、流通業のレジ打ちなどの9つの業務なんてできちゃうんです。この時代になると、すき間労働化はするけど、サービス、流通、製造などが完全になくなって、雇用喪失していくわけです。これが2050年前後の話だと言われています。

よろしいですか。この全脳アーキテクチャの時代になっても、まだ、営業とかクリエイティビティ(が必要)な仕事はなくならないです。こいつは中途半端な脳みそで、人間の脳みそみたいに完璧なことを感じたり、考えたり、工夫したりする行為はできないんです。

完璧なことはできないので、ホスピタリティが必要な仕事はまだ残ります。だから、営業とか編集とかは残るんです。だけど今度は、営業とか編集がすき間労働化していくわけです。

アンドロイドが営業に行ったら、普通「ちょっと待って、こんなの買わないよ」と言われますので、営業の一番大切なところは、人間が行かなきゃならないところなんです。でも、人間が行くとどうなるか。

すき間労働の本当のすごさ

営業のすごい人は、「このおっさん(お客様)ね、商品の話なんか聞きたくないんだ。このおっさん、野球の話だけしたいんだよ」(と考える)。野球の話だけしていればいいと考えて、野球の話だけして帰ってくる。これは相手も喜ぶし、仕事もパフォーマンスが上がるわけです。ところが、できない営業はぜんぶ商品説明するわけです。

でも、携帯端末が、俺の話すことをぜんぶ聞いて、向こうの話すこともぜんぶ聞いて、「このおっさんは野球の話だけすればいいんだ。やめな、そんな話」ということが(表示されて)出てくる。それで、(営業は)その通りにするわけです。野球の、しかも大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)の話とか書いてあって、「今日、二塁打打ちましたね」とか言うようになるわけなんです。

さらに、「このおっさんは、もう早く帰って飲みに行きたいから、飲みに誘ってみな」と出てくるわけです。それで、飲みに行くだけでいいわけなんです。商品説明をしなくていいわけです。「このおっさんは毎週なんて来なくていいの。3ヶ月に1回だから、その代わり、完璧な企画書、完璧なデータをもっていかないとダメだよ」。こういうふうに(携帯端末から)指示が来るわけです。

指示が来て、すぐ帰る。今日は資料を持ってきて、すぐ帰ります。帰ると、こいつ(携帯端末)からホストコンピューターに(資料が)とんでいって、ホストコンピューターがぜんぶデータを集めて、営業資料を作ってくれている。さらに言うと、(営業の)シナリオがくっついてきて、次に行くときはこの声色で、この順番で言うと受注が取れるからって言って。シナリオを読み上げるだけで、どんどん受注がとれる。どうですか? これはすき間労働でしょ。

こういうことを見極めて最適な資料を作ったり、最適な提案をするのが営業なのに、そういう難しいことをぜんぶコンピュータがやってくれる。人間はそれをシナリオに従って読むだけ。すき間労働でしょ。こんな時代が来ちゃうわけなんですよ。そうしたらどうします? 難しい問題ですよね。「働くってなんだろう」という話ですよね。でも、その時考えてほしいんです。

大学を出たてで何にも知らない人間がそれに従えば、今のMVPA(multivariate pattern analysis)並みのパフォーマンスがあがるわけです。そうするとどうなるか。すごく売上が上がるんですよ。当然、給料も上がります。端から見たら営業というのは、泣きながら上手くなっていったのが、それが何の苦労もせずに(給料が)今の数倍もらえるから、苦労もせずに給料が上がる。これがすき間労働のすごさです。

人の脳を超えるAIが誕生するシンギュラリティ時代

「労働って何だろう?」「働くって何だろう?」、考えさせられるような事態になってくるんです。そして、その先に来るのが「シンギュラリティ(Singularity)」なんです。シンギュラリティはどうして起こるか。

「全脳エミュレーション」という時代になったら、社会がぜんぶ変わります。この脳みそ(全脳アーキテクチャ)は、なんとなく脳みそを真似たものです。こっち(全脳エミュレーション)はどうなるかというと、神経細胞の配線図、人のコネクトームといいます。

これが、ぜんぶ明らかになっちゃう時代なんです。そうすると、人の(神経細胞の)配線をぜんぶ真似て電子回路を組めば、人間の脳みそと同じようになります。見えなかった機能も、ぜんぶそこに入ってきます。

だから、これは完全に「脳みそ」です。その(細胞の)一粒一粒は、人間の脳みそよりも、はるかにすごいパフォーマンスを出します。そうすると、この脳みそはどうなるでしょう。感じて、考えて、想像もしていっちゃうんです。

世界中の物理や科学の論文をロボットが読んで、アルベルト・アインシュタインの数倍の脳みそをもって、しかもそれを集めて咀嚼して、「もっとこんなことやったらおもしろいだろう」と考えて、創意工夫で論文を書いちゃうんです。それも世界中のデータを集めて、なんの計算ミスもなく、どんどん論文を書いちゃうんです。そうすると、科学の発展は、今とはまったく違うレベルになります。

さらに言うと、作文とか小説も、彼らは小説をぜんぶ読んで、音楽をぜんぶ聞いて、感じて、感動して、次のユーミンよりも、すごいものを作っちゃうんです。そこら辺に出ている小説や音楽もぜんぶ、ペンネームだからわからないけど、ぜんぶAIが書いてる時代になっちゃうんです。さらに、もっと簡単なのは経営なんです。経営の難しさは何か。人を扱っているからです。

(社員)全員がAIで機械になっちゃったら、文句を言う人もいない、モチベーションも必要なくなるんです。そうするとどうなるか。世界中のデータを集めて、マーケティングして、すごいものを作っちゃう。スティーブ・ジョブスだって、死ぬ最後の10年間で5個くらい、すごいものを作りました。2年に1個くらいは作りました。

そうじゃなくて、毎週のようにスティーブ・ジョブス並みの(商品)ができちゃう。それを今度は製造のAIがいて、なんの歩留まりもなく、ジャストインタイムで作っちゃう。それを販売のAIがいて、欠品なんか絶対起こらないようにロジスティクスしちゃう。そうすると、どうでしょう。

働かなくてもお金がもらえるのに、幸せを見失ってしまう?

毎週、すごく買いたいものができる。なんで今、デフレかといったら、買いたいものがないから、みんな貯蓄しちゃうじゃないですか。買いたいものがあったら、すごく経済は伸びる。さらにいうと企業は、労働者がいないからすごく儲かる。でも、すごく儲かっても雇用がないから、お金や人がなくなってくる。

こういう社会ってどうなるか。国は儲かった企業に猛烈な税金をかけて、その税金を今度はみなさんに生活保護として配る。これが「ベーシックインカム(basic income)」、シンギュラリティ後の社会。そのころになったらどうなるんでしょう。寝てても月収100万、200万もらえちゃうんですよ。

「働くって何だろう」。いきなり、ここ(の状態)にいっちゃったら人間はおかしくなってしまいますけど、その途中にすき間労働というのがあって、疑似体験をしているわけです。こうやって、いつの間にかやることがなくなっていく。

「ちょっと待って、俺、(働かなくても)100万、200万もらえるんなら、趣味に徹しよう。ちょっと小説とか書こう」って小説書くと、いくら書いてもAIロボットの方が上手いから、小説のコンクールじゃ賞をとれない。

街中を歩いていると、自分好みのすごくかわいい女の子がいて、声をかける。声をかけると駆け引きがあって、その後、なんか上手くいって、自分の家で同棲するようになる。けっこう喧嘩もするけど、なんとなくいいタイミングで謝ってくれて、だんだん仲良くなる。3ヶ月くらい経って愛が深まってきたときに、クレジットカード会社からくるんですよ、請求が。「弊社のアンドロイドをご使用のようなので、いくら払ってください。」

こういう社会になってくるわけなんですよ。そうするとどうですか。今度は恋愛の苦しみも楽しみも、わからなくなってくる。人間は満たされるけど、幸せってなんなのかがわからなくなるのが、シンギュラリティ。こう言われているわけです。ここまでの話、よろしいですか。

2035年~2050年の間に、1体で6人分働くロボットができる

これ(スライド)を見てみるとわかりますけれども、すき間労働の時代はまず、士業のような知的単純業務がなくなってくる。製造業とか、肉体労働とか(仕事に)就けるところは、すき間労働です。でも、次のフェーズで雇用崩壊する。今度はクリエイティビティとか、営業とか、ホスピタリティが必要な仕事が「すき間労働化」する。すき間労働の次のステージだと、雇用崩壊する。

雇用崩壊する前に1回だけ、このようなすき間労働というものを過ごしながら、人はがんがん働かなくなっていく。これが、今いわれている世界なんです。ここまでよろしいですか。こう書くと、野村総研みたいで嫌になっちゃうけれども、でも見ていただくと、技術の進歩でいうと、全脳アーキテクチャの時代に入るのは、どんなに早くても2035年と言われています。

順当に見ると2050年ぐらいだって言われています。でも、全脳アーキテクチャの時代に入った後、すぐに浸透することだけは確かみたいです。全脳アーキテクチャで、サービス業でも製造業でも、なんでもできるロボットができたら。(会場の参加者に)「そのロボット、いくらまで下がれば買いますか?」最初にできた時は10億、20億円くらいはすると思うんだ。でも、代わりにぜんぶ製造作業をやってくれる。

会場参会者1:人件費。

海老原:いくらだったら(買いますか)?

会場参会者1:え? いや、わからないです。

海老原:一声でいくらだったら買う? 5,000万円だったら買う? 雰囲気で(答えてもらっていいですよ)。

会場参会者1:いやあ、買わないです。

海老原:1,000万円だったら買う?

会場参会者1:内容によっては買います。

海老原:そう、これが1,000万円くらいが上限だと思うじゃないですか。ところが5,000万円で投資価値が猛烈に取れるんです。だから、5,000万円まで下がれば、すぐ売れちゃうんです。

納得いかないじゃない。1人の年収が200万、300万、400万だから、15年も経たなきゃ元が取れないものって買わないじゃん。ところがこれ(ロボット)は、3年で元が取れちゃうんです。なぜかと言うと、そいつは24時間働くから、まず3人分働いているんです。

休みが(年間)120日もいらなくて、メンテナンスで15日くらいだから、4人分働いているんです。そして、製造機械が3個と土地も3倍必要だったのが、製造機械も1個で済むから、設備投資が必要ない。これで5人分になるんです。その上に、「明日までにやっておいて」「いや、できません」と言っていたのが、24時間営業なので、明日にできちゃうんです。機会ロスが減るんです。

こう考えると、(ロボットが)1人で6人分くらい働くって言われているんです。5,000万円なんて、あっという間に元が取れちゃうんです。というので、これは浸透が速いと言われています。全脳アーキテクチャが始まったら、あっという間に雇用崩壊が進むでしょう。そして、その次に全脳エミュレーションの時代、これは2100年を超える。玄孫の時代です。これくらい、僕らは良い時代に生きているんだねってことなんです。