自虐グセはもうやめよう
犬山紙子氏が語る、ロスジェネ世代の生きづらさと“負の連鎖”

第二部 ここが変だよ! キャリジョたち #2/2

2018年6月20日、本屋B&Bにて、博報堂キャリジョ研×犬山紙子氏によるイベント「働く女の”欲望”を解剖する」が開催されました。第二部では、「ここが変だよ! キャリジョたち」をテーマに、コラムニスト、イラストエッセイストの犬山紙子氏が登壇。前回に引き続き、男性陣から寄せられたアンケートへの回答をもとに、キャリジョたちの本音や世代論などを語りました。性差に関わらず、多様性が認められる社会を実現する大切さとは。

女子会=「恋バナ」はメディアが作ったイメージ

白根由麻氏(以下、白根):次に行きます。「なんでそんなに女子会を開催してるの? マウンティングとか聞くけど、恋バナばっかりして楽しいの?」ということなのですが……。

犬山紙子氏(以下、犬山):私、怒ってもいいですか?(笑)。スーパーサイヤ人みたいになってしまいそうなんですけど(笑)。先に聞いてもいいですか? 女子会って恋バナばっかりしてますか? してないんですよ!(笑)。これもイメージなんです!! 

これは男子が悪いわけではなくて、メディアが作り出した女子のイメージというのがすごくあって、本質を見ないでそこにひっぱられると、こういう意見が出てくるのかなと思います。女子会は開催しますけど、男子だって同期と飲みに行くでしょ? 一緒です。

女子会っていう名前がついていて、しかもその中身って『東京タラレバ娘』のイメージがすごく強いと思うんです。ああいう女子会も、もちろんあります。みんなで恋愛のことを話して、誰か1人はたぶん不倫してるんです(笑)。「どうしよう」みたいな。

そして「やめときなよ」って言って、「でも出会いがない」とか言って、グダグダ飲んでクダを巻いて終わるイメージがすごく強い。そういう女子会もありますが、一部なんです。けっこうみんな、金と健康と保険の話をしています(笑)。

白根:確かにこの年齢になると、そのあたり話したりしますよね(笑)。

犬山:なので、恋バナばかりはしてません。別に恋バナしてても良いんですが。そして、マウンティングがある女子会もあります。

松井博代氏(以下、松井):怖いですね~。

犬山:マウンティングをする女子会は本当にあります。でも、そればかりではない。「ただ本当に気の合う女子だけで集まって飲む=マウンティングが起こる」のではなくて、本当にアホみたいな女子会もあります。

これは、私が過去にやったある女子会の話です。私もマウンティングが存在する女子会はすごく苦手だったので、そういうところには行かないことにしたとき、何が起こったかというと、私の友達の女の子が急に、乳首の色で対決しようって言いだしたんです(笑)。見ました(笑)。その乳首の色の対決の方法は、黒い方が勝ちっていう(笑)。

松井:そのルール、どこから出てきたの(笑)。

犬山:かっこいいなと思って! 価値観をひっくり返して、「この女、本当にかっこいいな」と思いました。ピンク色の乳首というのは、私たちの価値観からしても「戦闘力 5」くらいなんです。でも、真っ黒な方というのは、本当にフリーザですよ(笑)。

そんなしょうもないことを女子会ではやってるんです(笑)。そんなしょうもない女子会はあんまりないと思いますし、もっと有意義だと思いますけどね(笑)。だから、これはけっこうイメージ先行の意見なのかなと思います。

男子会では酔っても仕事の話をずっとしている

松井:そうですね。男子会って名前がついていないので、(女子会ほど)イメージ化されていないですけど、男子だけで飲むことはもちろんありますしね。

この話で少し思ったのが、私が会社の後輩と飲むと、後輩が私を恋愛対象として見ていないからか、男子会になってしまうんです(笑)。男子会に参加するとびっくりするのが、すごく酔っても仕事の話をずっとしてるんです。「こんなに新しいビジネスをやってやるぜ」くらいの勢いで夢を語りだして、いきなり図を描きだすみたいな(笑)。

犬山:それは同じ会社のみんななのか、それともぜんぜん違う職種の?

松井:同じ職場の同じ年くらいの人と、先輩や後輩もばらばらといて、わりと若手です。私もちょっと年が近い先輩みたいな感じで、仲良しだったので、同じ部署や近くの部署で集まって飲んだときに「おーっ(驚き)」みたいな感じで。

それで思ったのが、これも男子への偏見もあるかもしれませんけど、男子は「男のプライド」みたいなものがあって、恋愛話をしにくいようなところがあるんじゃないかと。そこで、女子が恋バナをちょっとでもすると、「女子って恋バナばっかりしてるな」みたいに、相対的な量の問題で気になってしまうような。実際、もちろん(恋バナを)している場合もありますし……。

犬山:男子って恋バナします? 

(会場挙手)

するって言っている人がいる! あの方すごく反応してくれるので、私すごくありがたいんです。

松井:うちの会社の方です(笑)。

犬山:ありがとうございます。助かっています。

松井:さすがよく分かっています(笑)。

犬山:(男性も)恋バナもするということなんですね。

松井:(恋バナの)量的な問題での目につきやすさだったり、(女子会という)ラベルが付いていることとか、複合的な問題なのかなというところがあるんですかね。

マウンティングをするのは自分のコンプレックスの裏返し

犬山:マウンティングは本当にきついですよね。なんでマウンティングをするのかというと、クソバイスもそうなんですけど、コンプレックスが強い人ほどマウンティングしがちということがあります。

私も過去にマウンティングをしてきたんですけど、クソバイスもマウンティングもどういうところでするかというと、自分が1番コンプレックスに思っていることだったりするんです。

言ってはいけないクソバイス

私は例えば6年間ニートだったんですけど、仕事がないのがコンプレックスだったんです。ニートの間は、一応漫画家を目指して活動はしていたので、仕事をしようとしてたけどもらえない時期があったことが、けっこうコンプレックスだったんです。

そして、やっとデビューできて、仕事がもらえるようになった瞬間、友達の男子に「あんたブログ始めたらいいじゃん」みたいな感じで言い出したんです(笑)。

松井:急に上から(笑)。

犬山:ぜんぜんあっち(彼)のほうが実力もあるし、おもしろい人で、私はたまたま運だったのに、急に自分が上に立ったみたいな感じでマウンティングをしだして。けっこうそれにゾッとして、「私はこれにこんなにコンプレックスを持っていたんだ」と分かりました。

だから、マウンティングしてくる人に対しては、「この人はここがコンプレックスなんだな」というふうに少し憐みの目で見てあげると(いいなと)。私もその男子に「こいつ6年もニートしてきたからそう思うよな」と思われていたかもしれないのですが、そういうふうに見てもらえるといいなと思います。

松井:そのことがわかっているだけで、攻撃されている感が緩和されますね。たぶん自分が何も考えたこともないようなことがコンプレックスだったりすると、そのことに気が付けないと思うんです。

でも、コンプレックスは攻撃されやすい、しやすいと分かっていると、「この人はそういう(コンプレックスを抱えているという)ことなのかもしれない」と、うまく許容できるようになってくると思うので、すごく有用な話だなと思います。

セクハラをしないために意識すべきこと

白根:では、次の話題にいきたいと思います。「昨今話題のセクハラ問題が怖くて、最近なんだか話しかけるのが怖い、By男子」ということです。もうすぐにセクハラと言われてしまうということで。

犬山:セクハラをちゃんと理解したら、やみくもに怖がらなくて良いと思います。これは女子も危機感を持った方がいいと思いますけど。女子も男子にセクハラしますから。ただ、権力を持っている方が(セクハラ)しやすい構図なので、今はどうしても男性のほうが力が強いから、女の子に対するセクハラが多いという構図なのかなと思います。

人間は権力を持つとグロテスクになるものなんです。グロくなる人とグロくならない人は、そこ(権力を持った時にどうなるか)で、スパッと分かれるのですが、女性でもグロくなる人はいるというのは感じつつも、やっぱり男子側は気になる問題ですよね。

松井:どうしたらいいんでしょうか、ということですね。

白根:部の中で、年齢がすごく近いメンバーとの飲み会があったりするのですが、部のメンバーって、逆に仕事の話はしにくくて。年齢が近すぎるからこそ相談しにくいし、同じくらいの年齢だと、切磋琢磨しているライバルみたいな意識もあるから、仕事の悩みが言えない。

そういうときに何を話すかというと、プライベートの話くらいしかなくて、「好きなタイプ誰? どんな人?」みたいな恋愛話が話の逃げ道になりがちだなって、いろいろな飲み会に行っていても思うんです。

どこからがセクハラなのか違うのかがわからなくなって、でも、セクハラという言葉もすごく聞くから、結局「ごめん、今の時代は『彼氏』とか聞いちゃいけないんだよね」という話になっていくところがあると思います。

松井:これも我々の(『働く女の腹の底 多様化する生き方・考え方』の)インタビューの中で、犬山さんにも答えていただいていましたけど、「関係性の問題ではないか」ということですよね?

働く女の腹の底

犬山:私は「関係性+総合力」だと思います。本当にセクハラって超単純で、「相手が言われて嫌な気持ちするかな」と1個考えるかどうかだと思います。それをちゃんと考えられる人は、自分が考えたうえで、それでも相手が嫌がった時に、リカバリーできると思うんです。

「セクハラだと思って恋愛の話をしたらアウト」とかではなく、それが犯罪として立証されるには証拠が必要なので、実はまだなんでも一発アウトというほどの世の中ではない。

ただ、「相手がこれを言われて嫌じゃないかな」ということさえ(考えてくれたらということです)。しかも、「女性はまるっと(みんなが)これを言われたら嫌だよね」ということではなく、男性もそうなんですけど、女性も一つにくくれるものではなくて、一人ひとりに個性があるんです。だから、「この人はこれを言われたら嫌かな」ということを気にするだけでよくて、女性としてまるっと一つにくくることの弊害がけっこうあると思います。

セクハラは男女問わず気を付けるべき問題

犬山:例えば、デートとかに誘われたときに、いかにも女子ウケしそうなところに連れていかれると、自分という個人ではなくて、女という記号でこの人は動くんだなって、がっかりすることけっこうないですか?

松井:なるほど、自分がこういう嗜好だから、このお店を選んでくれたって感じではないと。

犬山:だからセクハラ問題は、女の子もそうなんですけど、例えば若い男の子に対して、「彼女いないの? 男なんだから自分でいかなきゃダメだよ」みたいな説教をしてしまうことはあると思うのですが、それはセクハラに当たると思います。

男の人も女の人も、相手が嫌な気持ちにならないかどうか(に配慮することが大切)。そして、飲み会とかで、自分よりも権力のない年下の子たちから恋愛の話を振ってきたりしたら、ぜんぜん(話に)のってもいいと思います。でも、「この(場にいる人の)中で誰がタイプ?」というのは、圧力がかかるので違いますけど。

「芸能人でどういう人が好きなの?」というのも、ヘテロ(セクシャル)であるという前提のもとでの質問なので、開けた世の中ってなかなか難しいとは思いますが……。

白根:結婚する人だって減っていくかもしれないし、離婚率も高くなっていく中で、個々(人の話)じゃないですか。男だから女だから結婚しろとか、そういうことではないのではないかなと思いました。

「いくつなんだからそろそろ彼氏くらいいた方がいいんじゃないの?」とか、「彼氏もう何年もいない」なんて、本当に言ってはいけないですね(笑)。

犬山:でも、さすがにもうそれを言う人はここにはいないですよね。どこかのすごく昔気質のところだとまだぜんぜんあるんですけど、さすがに今いじりをするところは……。

そろそろ女子は自虐をやめよう

白根:でも、私が思うのは、「早く子ども生んだ方がいいよ」とか……。

犬山:もう絶対ダメです! それは「女性男性両方に絶対ダメ」ということが言えます。

松井:早く生んだ方がいいというのは、身体的には事実だと思うのですが、たぶんいろんな事情がある中で産んだし、(自分が早く産んで)よかったから勧めたいと無邪気になっていたり。そこは想像力が(必要で)、自分ではない人のことを考えるのは難しいなと思うのです。

我々が広告を作るときも、広告は人を動かす仕事なので、自分ではない人たちをどう捉えるかを日々(意識して)やっているつもりではあるのですが、やはりこういう仕事をしていてもなかなか難しいのが、この想像力を働かせるというところなのです。

犬山:本当に、子どもを産む産まない、結婚するしないはガチクソバイスですが、それって言ったら気持ちいいんです。自分がその道を通ってよかった、正しかったということを確認したい行為であって、相手の事情をまったく気にしていないんです。相手のことを心配するのであれば、まずはどういう状況なのかヒアリングをします。

仕事でもそうですよね? 何もわからないのに、「お前これやれ!」っておかしいじゃないですか。そういうクソバイスみたいなものが蔓延しているのもセクハラと密接(した問題)です。あと、そろそろ女子に言いたいのが、「自虐をやめよう」ということです。まだ難しいかもしれないんです。

私もさんざん自虐をしてきたんですけど、私の責任ってかなりあると思うので、かなり猛省中なのですが、例えば私が、「私、ぜんぜん結婚もできないし彼氏ができなくて、やばいんです」ということを自虐するとします。

自虐する意味って、誰かからそれ(結婚や彼氏の話)を言われるので、「まず自分を守りたい」という気持ちがあったんです。ですが、それ(自虐)をやってしまうと、下の子たちが、「私もその年齢になったら、そう言わないといけないのかな?」とか、「この人って、結婚していないとやばいっていう価値観なの?」と冷ややかな目で見られてしまう。

本当に多様性というものを理解していないと、どうしてもそういう言葉が出てしまう。私は自虐してきた人を絶対に責められないんです。だって、責められてきた世の中だったんです。女の人が結婚しないってすぐいじられるし、すぐセクハラにつながるし、嫌な気持ちになる。

でも、それを人から言われるくらいだったら、「自分で(自分を)守りたい」という気持ちがすごく分かるし、自分もそうだったから絶対に責められないけど、これから徐々に解脱していけると、下の子たちもどんどん生きやすくなってくるのではないかなと思います。自虐はセクハラを助長するというのは、(要因として)少しあると思うんです。

周りを気にし過ぎて素直に生きられない理由

松井:今、ちょうど過渡期でだんだん発言しやすくなってきていますし、そういうことがどんどん定着していくといいですよね。

犬山:ちょっとずつですけど、そうなっていったらいいなと思っています。

白根:「逆に相手がどう思うかを気にした言動をする人が多い気がする……。もっと素直に生きればいいのに」という(男性の)意見もあります。

松井:空気を読みすぎてるんじゃないかという話ですよね? 

犬山:私は、男性に「もっと気にしなくて大丈夫な社会にしていこう」って、もっと言ってほしいです。というのは、これも(女性のほうが)立場が弱いから気にしちゃうんです。これを言ったときに、「上司にどう思われるんだろうか?」とか「女のくせに生意気か」とか、立場の弱い人がすごく周りを気にしてしまう。

逆に、王様は周りをまったく気にせずに好きなことを言うじゃないですか? 女性にこれ(相手を気にした言動)があるということは、こういう(立場が弱い)ことの表れだったり、相手のことを思いやっている可能性もあると思うのですが、これ(素直でいいということ)は、男性側にもっとどんどん言ってもらえるといいですね。

松井:そうですね。女性側は言いにくいというか、(周囲や立場を)気にして言えないので、発信(すること)はなかなか難しい。今日、男性はこういうことがあると学んだと思うので、今日の夜からどんどん運動を起こしていただければと思います。

犬山:素直に生きたいけど生きられない現状なのかなと、私は思っています。

異性だろうが同性だろうが衝突はある

白根:続いて、「女子同士だとより分かり合えるんじゃないかなと思って、同性で上司と部下を組ませたところ、意外と不仲になりがちなのはどうしてでしょうか?」という質問です。

犬山:急に具体的になりましたね(笑)。誰かを思い浮かべたんでしょうか?(笑)。

白根:すごく困っているんじゃないかという気がします。

松井:これは私も聞いたことあります。どうしてなのかというのは、これからのディスカッションポイントではありますけど、本当に泣いてしまうくらい喧嘩になって、周りが「どうしよう」ってなってしまうくらいだったんですけど、そのあと笑顔で出てきたみたいな(こともあります)。

その会議室でどんなドラマがあったのかというくらいな感じだったみたいですけど、やっぱり衝突もあるということなんでしょうね。

犬山:別に異性だろうが同性だろうが、衝突はありますよね。女性同士だから分かり合えるというのは……。

白根:だから最初の一文がちょっとね……。

犬山:でも、そう思っちゃいますよね。私も男子同士分かり合えるだろう、って思っちゃってるかも。

白根:男子同士の上司と部下がまったくうまくいかなくて、絶縁状態になったという話もすごく聞くから、合わなかったということはよくありますよね。「女子同士」というのが1個できているというか、「女子同士だからどうせ群れられるでしょと」か……。

犬山:イメージとかね。女同士はドロドロしていると思いたい、だから男同士はサバサバしているだろうっていう、マウンティングですよね。でも、マウンティングとかクソバイスを見ていると、女性から女性へのクソバイスもすごく多いので、不仲になってしまうのは、けっこう「負の連鎖」が多いなとは思います。

「男らしく、女らしく」は、とっととすたれるべき

犬山:「自分はセクハラを耐えてきた」とか、「こういうひどいことをされてきたけど、女だから我慢してきた」ということを、下の子に「私もやったんだからお前もやれよ」みたいなことで(押し付けてしまう)。同性のマウンティングとかクソバイスで悩んでいる方は、本当に「呪い」というか「負の連鎖」で起こっているなという印象があります。

松井:それは男性もありますしね。「自分がやってきたことが常識」というような教育方針で部下に接することは、男女問わずけっこうありますけどね。

犬山:「男は男らしくしろ」とか、「男は嫁と子を食わせて一人前だ」とか、男子もかわいそうというか、生きにくかったりするポイントはあると思います。

松井:本(『働く女の腹の底 多様化する生き方・考え方』)の中でも、インタビューでお答えしてもらっていたと思うのですが、「男性は弱みを見せたら情けない」みたいな感じで、弱音を吐きにくいところがあったり。やっぱり、昔からなんとなく築かれている男性像があるということで、生きにくいところがあるんでしょうね。

犬山:私は、「男らしく女らしく」という言葉がとっとと廃れたらいいなと思っています。個人でいいじゃん、って思いますけど。

白根:あと、世代によって意識が違うことがあると思っています。私が組んだ(年)上の上司も、すごくバリキャリ世代で、「バリバリ働くのは当たり前だろう!」みたいなタイプでした。

私もわりとバリキャリ系だったので、「ついてきます!」みたいな感じだったのですが、意外とそうではない後輩たちもいて、「その価値観はわかりません!」という子たちもいました。同じ部下の立場でも考え方が違うということ。そこは、私も年齢がどんどん上がっていくので、気を付けなければいけないなと思います。

松井:自分が部下を持った時に、さっきの負の連鎖を行わないということをけっこう気を付けていかないと、ついうっかりやってしまう可能性があるということですよね。

「負の連鎖」を生んでしまう自虐グセ

犬山:本当におっしゃる通りで。今、私は36歳なんですけど、案外36歳って自分では年取ったなとか言いつつも、けっこう気持ちは若いつもりでいるんです。デジタルネイティブだし、価値観もどちらかと言ったら、「成果主義でいいんじゃない」という人もけっこう多いし、何が悪いんだと思いつつも、実は自分たちの世代のいいところもありつつ、悪いところも絶対あるんです。

私は、バブル世代のことを「バブル世代(笑)」みたいな感じでけっこう言うことがあるんですけど、私たちの世代も実は(そういうカテゴライズは)あって。私は、私たちの世代は自虐をしてしまうんだと思います。それは負の連鎖になるから、そろそろ切り離さなければいけない。

もう1つが「気軽に差別用語を言ってしまう世代」だなと思っています。多様性って言いながら、仲間内で集まったときにゲイの人を笑う。「あいつ、ゲイなんじゃないの?」という笑いが成立してしまう。

まだマスコミで成立しているから、そういうことをやってしまう最後のロスジェネ世代という感じはあると思うんです。それはガチの負の連鎖なので、切り離さなければいけないと思っています。

それぞれの世代が自覚的でなければいけないんです。自分はずっと下っ端だと思っちゃうじゃないですか? 案外力も持ってしまっているし、案外上にいるんです! 権力に自覚的になるのはけっこう大切なことだなと思います。

松井:キャリジョ研はけっこうそうなんです。(メンバーが)17人いると、本当に2年目、3年目の若手から15年選手みたいな、ある意味中堅・ベテランにかかっているところまで、幅広い年代の社員がいます。そのなかでもジェネレーションギャップは起きる。

ただ、私たちはそのギャップが新しい発見でもあるし、おもしろく研究にもなっていくので、そういう多様性はやっぱり重要だなとは思います。悪いところは自覚して自重しつつ、いいところもありますよね。

犬山:若い子が全部正義ではないですしね! 若い子たちにも悪いところはあるし、冷静に見たいですよね。

白根:これは女性だけではなく男性にも言えるんじゃないかなということですね。

犬山:でも、やっぱり負の遺産というのはあるのかなと思います。

「男女平等」と「女性優先」は違うレベルの話

白根:それではいよいよ最後の質問です。最後はシンプルかつすごく重いんです。「男女平等と女性優先の建前と本音」です。

松井:補足します。(アンケートには)これしか書いていなかったので、解釈にはなりますけど、おそらく「『男女平等にして』と女性から言ってくるくせに、急に『女性優先してよ』とも言ってくる。この建前と本音はなんなの?」という話だと思います。

犬山:女性優先が何を指すのか、私はあんまりわかっていなくて。レディース・デイとか?

松井:電車(の女性専用車両)?

犬山:電車は単純に痴漢がいるからですよね。痴漢がいなかったらあれはないので、女性優先じゃなくて単純に犯罪防止なんです。これはまじめな話をすると、「男女平等」と「女性優先」という話のレベルがぜんぜん違います。

女性は子どもを産んだら、やっぱりほぼ女性が育休を取らなくてはいけないです。男性は取りたくても取りにくいんですよね。それは男子もつらいところではあると思うのですが、女性がそこでキャリアを諦めなければいけない状況がまだあったりするし。日本のジェンダーギャップ指数は、114位でしたっけ? 

なかなか女性は役員になれません。男性に比べたら平均収入が非常に低い状況と、レディース・ランチなどを比べるのはぜんぜん話が違うでしょ、という。レディース・デイも、企業が勝手にこうすれば儲かるという判断でやっているだけで、国がやっているわけではないので、ぜんぜん違う話だと思うんです。

松井:たしかに女性優先は解釈が難しいのですが、例えば会社によっては女性の役員を3割出さなければいけないということで、女性が優先的に昇進するという状況がひょっとしたら含まれているのかもしれませんね。

女性だからと恩恵を受けたり、女子だったら何やってもちょっと許されるところがあったりしないかと、男性目線でたまに聞く意見だったりします。

犬山:女子の方がセクハラは許されやすいということはあると思います。それプラス、(役員のうちの)3割を女性にということですけど、なんで今5割じゃないんだ、みたいな!(笑)。でも、やり方が違いますよね。

(女性の役員を)無理やり3割選ぶのではなく、そもそも女性が不当な評価を受けず、産後もキャリアを作れる仕組みを作るほうが先。「なぜ5割ではないか」を考えると、不当な現状が見えてくると思います。

松井:今まで(5割にできる状況じゃ)なかったんだってことなんでしょうね!

全員が自由な選択ができるのが男女平等

犬山:今までがあまりにも(男女で)差があって、それを縮めていこうという中で、上にあげるような目につく行為に対して、男性が「女の子が優遇されてるんじゃない?」と言うなら「お前はキャリアをいったん中断されてみろ」と思うし、2人目の子どもを本気で産むときに、1人目でもそうなんですけど、1回キャリアを中断するのはめちゃくちゃ怖いんです。仕事を4ヶ月休むって、想像できますか? 

松井:4ヶ月で済めばいいんですけどね。

犬山:そうですね。1年とか休むとなると、一気に自分が現場(の人間)じゃなくなって、そこに自分の席が残っているかどうかもわからない。そして、なぜか子どもが生まれたあとに時短勤務をするのは女性の方が多い。自分がやりたい仕事や部署から外される可能性も大いにある。

女性から、「すごくやりがいのある仕事があったけど、子どもを産んで周りが逆にすごく気を使って、ぜんぜんやりたくない仕事に回された」という話もすごく聞きます。(男性には)これをくらってみてから言ってほしい! というのは、けっこう強く思っています。

男女平等って、女性でも働きたいと思ったら、キャリアを持ってずっと働ける。男性も育児をしたいと思ったら育児ができる。逆に、男性も専業主婦になりたいと思ったらなれる。全員が自由な選択ができるのが男女平等なのかなと思っています。すみません、熱くなりました。

松井:いいえ、とても大事なことですよね。私は今回、犬山さんにインタビューさせていただいて、ハッとしたのが、「女性だけではなくて男性もぶりっ子がいる」とか、「男性の多様性も進んでいる」という話でした。

私たちがこの本(『働く女の腹の底 多様化する生き方・考え方』)を書いたきっかけは、女性がこれだけ多様化しても、まるっと「女性」でひとくくりにされやすいので、こういういろんな人がいるということは(知ってもらえれば)、仕事でも、付き合いとしても役立つし、もっと知ってもらいたいと思ったことでした。

働く女の腹の底

これは、女子同士でもそうだと思うんです。「自分と違うからちょっと変わっている人」ではなくて、「こういう考え方の女子もいるんだな」と知ることで、うまく付き合えるようになるのではないかというメッセージを発信したくて。

(キャリジョ研を)5~6年間やっているので、女性のことを本に書くことにしたのですが、男性も多様化していて、「私も女子のことばっかり言い過ぎたな」とか「考えすぎてたな」と、すごくハッとした発言だったと思っています。

犬山:結局、男女ではないというか、お互い個々でやっていけたらいいなと思っています。こういう話をすると「めんどくさい人認定」される世の中で。

私はこういう仕事をしているから、ぜんぜんいいんですけど、一般の女の子たちがこれを会社で言ったときに「こいつ、めんどくさい」みたいな雰囲気がまだ残っている。でも、これって全員がハッピーになるために必要だったりするから、話しやすい空気を作ることは大事だなと思います。

多様化社会を実現するために助け合う必要がある

犬山:私は逆に、男性がそこに対してフラットな目線で見て話してくれることほど、心強いことはないというか。やっぱり、まだまだ力があるのは男性なので、そういった方が動いてくれないとなかなか(世の中が)動かないというのはありますね。

私は、女性活躍というのは、女の人が仕事を諦めずに働き続けることで(社会が)潤うので、ゆくゆくは税収とかもどんどん上がって、経済的にもよくなることだと思うんです。

松井:働く女性が増える中、女性の今までの(枠組みの)中で働くだけだと、ただ(仕事に育児にと)負担が増えるだけでマイナスなところが多いので、どう役割分担するか。やりたい人はやるし、やりたくない人はこういう部分は貢献するという、多様化社会の中でそれぞれがどう助け合って生きるか、そんな感じのことを考えていけるといいですね。

犬山:最後、すごく丁寧にまとめていただきました。

松井:では、こんなところで、犬山さんの力強い叫びが男性陣中心に届いてくれることを願いながら。

白根:キャリジョ研としても、今後も女性の多様化というところを見ていきたいと思いますし、まず「キャリジョ(女)」と言ってしまった時点で女性とくくってしまった感じもするのですが、それを発信することで、男性も女性もよりフラットになって考えるきっかけになってもらえるといいなと思っています!

松井:今日はありがとうございました!

犬山:ありがとうございました!

(全員拍手)

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博報堂キャリジョ研×犬山紙子 「働く女の“欲望”を解剖する」 『働く女の腹の底』(光文社)刊行記念

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1 女性に悩みを相談されたときの正解は? “共感を求める心理”の本当の意味
2 自虐グセはもうやめよう 犬山紙子氏が語る、ロスジェネ世代の生きづらさと“負の連鎖”

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