クラウドサイン責任者が語る、リーガルテック“エコシステム”構想
変わりゆく法律業界のゆくえ

リーガルテックの全体像と、クラウドサインが担う未来

Legal Tech Forum Vol.1
に開催
2018年7月12日、弁護士ドットコム株式会社が主催するイベント「Legal Tech Forum」が開催されました。伝統的な文化を重んじる法律業界をアップデートすべく、リーガルテック企業3社が一堂に会して、法務の未来を語り尽くす本イベント。年々市場が成長しつつあるリーガルテック分野において活躍する日本企業が、自社の挑戦を明かします。本イベントの主催で、クラウド契約サービスの「クラウドサイン」事業部長の橘大地氏は、リーガルテックの最新動向と自社の取り組みを紹介。乱立しつつあるリーガルテックサービスにおいて重要性が高まる、“エコシステム構想”を紹介します。
提供:弁護士ドットコム株式会社

クラウドサインが語る、リーガルテックのこれから

橘大地氏(以下、橘):お越しいただきありがとうございます。今回、Legal Tech Forumを三井住友銀行さんと一緒に共催させていただくことになった訳ですが、そもそもこれを主催しようと思った理由は、やはり法律領域に関してはまだインターネットサービスが少ない業界であり、テクノロジーを適切にご案内したいと思ったからです。

一方で、ここでテクノロジーの進化が始まると、ユーザーにとっても、もちろん業界にとっても大きなプラスになるだろうという手応えを感じています。リーガルテックとひとことで言ってもいろいろな会社さんがあり、適切にご案内することで、リーガルテック業界を閉じた業界ではなく、オープンな業界にしていきたいということで、今回開催しました。

私は弁護士ドットコムの執行役員で、クラウドサイン事業部の責任者をやっております。

クラウド契約サービスであるクラウドサインの他にも、ブロックチェーン技術を活用したスマートコントラクトやAIを活用した契約書自動作成などの研究開発も担当しております。

日本では、契約が破られた場合、当然ながら裁判所に訴訟提起をして、裁判所を通して強制執行や差し押さえを行い、財産を被告から原告に移転する法システムになっています。ですが、スマートコントラクトでは、契約段階で合意した内容に従って、BからAに財産物やSmartDockと呼ばれる鍵を開けるコードの権利をBからAに移転して、裁判所を介さずに合意内容を履行させることが可能です。

最近ですと、日本の裁判をデジタル化しましょう、IT化しましょうという動きが進んでいます。例えば、わかりやすいところだと、訴えの提起の訴状をクラウドにアップするだけで裁判所に提出したことになるとか、証拠閲覧をクラウド上で確認できたり、そういった裁判のIT化戦略が今年から大きく動き出します。

また、法人領域のFintechはなかなか進んでいません。マネーフォワードさんを代表とする家計簿アプリをはじめ、個人間のFintech領域は浸透していますが、法人決済市場はまだまだといった中、当社は「クラウドサインペイメント」という決済サービスを先日リリースするなど、関心を持って取り組んでおります。

今回は、リーガルテック業界の全体像と、クラウドサインがこれからどうやってこの業界を育てていきたいのかをプレゼンさせていただければと思っております。

世界のリーガルテック市場

まず、リーガルテックの現在地が今どうなっているかです。現在の世界の市場で見ると、米国の他にはフランス、ドイツ、日本、中国あたりが続いているという市場感です。このすべてを説明するわけにはいきませんが、リーガルテックはおおむねこの4つの領域で進化していると言われております。

1つがLaw Firm。これは米国の特性なんですが、日本よりも圧倒的に弁護士の数・法律事務所の数が多く、法律事務所の最適化だけでも莫大な市場が眠っているとされています。

他には、Enterprise LegalというBtoB領域。あとは判例検索の最適化や、弁護士の働き方を支援する顧客管理サービスなど、そういった市場もあります。

他はBtoC。日本の場合、ここが一番進化していないんですが、例えば交通違反を取られた場合、それに対して反論するのはなかなか難しいです。どうやって反論したらいいかわからないので、交通違反切符の罰金を払ってしまうなどの事例が諸外国にもあります。

その反論を行うアプリケーションで、ピッピッピと違反切符を切られたときに反論書を出す、「支払わない」という意味の「Do not pay」というイギリスのサービスがあります。海外ではそうした個人向けのリーガルテック市場も立ち上がっています。

日本のリーガルテックの今

日本におけるリーガルテックは、正直まだまだ供給量が足りません。世界のリーガルテックマップで見比べると、市場としてまだ出てきていませんが、もともと当社では2005年より「弁護士ドットコム」という、困っている人と弁護士をマッチングするプラットフォームを運営しておりまして、今では全弁護士の3人に1人が弁護士ドットコムにご登録いただいております。これは世界で最も進化したリーガルテックサービスと呼んでいい規模ともご評価いただいているのです。

先日、韓国のリーガルテック企業と交流してきたんですが、みなさん本当に弁護士ドットコムのことを研究していました。これほどまでに「3分の1も弁護士が登録するようなプラットフォームになるのはすごい」と言われているのは、2005年から地道な改善を繰り返して、弁護士や弁護士会のみなさまに理解を深めていただきながら事業を作ってこれたからだと考えています。

クラウドサインは2015年にリリースいたしました。それ以降、日本でリーガルテックという言葉が浸透してきはじめました。他には、商標登録を自動化する「Toreru」さんとか、外国人のビザ取得の書類作成が自動化できる「one visa」さんとか。

最近ではAI系が発達してきまして、「AI-CON」や「LegalForce」では、AIを用いて契約書を自動レビューするなど。このように供給量が増えてきたのが、現在の日本のリーガルテック市場です。

しかしながら、世界のリーガルテックマップの市場で言うと、まだまだBtoCが出てきておらず、法律事務所向けのソリューションもまだまだ少ない状況ですので、供給はこれから育てていかなければいけないというところは課題と捉えています。

これが現在地でして、クラウドサインがこのリーガルテック業界においてどのような役割を担わせていただいているのかを中心に、プレゼンさせていただきたいと思います。

クラウドサインの使いかた

先ほどのとおり、2015年10月にクラウドサインをリリースいたしました。

ご存知の方も多いかと思いますので、簡単にご説明します。融資案件になりますと、多いときであれば30枚くらいの契約書をファイリングしなければいけないとか、契約当事者が30当事者になってしまうとか。ベンチャー実務やられている方だと、エンジェル投資家の株主が30人いるなど、そういった株主間契約ってざらにあると思います。

この30人が契約を結ぶとなると、まず30部を用意して、30部製本して、この30枚の契約書すべてに30人が割り印を押していく。最近はシンガポールなど海外の投資家も多いので、世界ツアーかのように、この契約書が回っていきます。なので、契約交渉に1ヶ月かかるけれど、契約締結に2ヶ月かかります、といった事例もけっこうよく聞く内容になっています。それを解決するのがクラウドサインです。1分くらいの短い動画ですので、ご覧ください。

https://vimeo.com/163784995

今、無料で使えるプランと有料のプランがありまして、無料プランは1名に限り1ヶ月10件までお使いいただけます。

企業様に向けては、ユーザー数も契約送信件数も無制限で月1万円からスタートできます。安価で提供していることもあり、徐々に浸透してきています。

半年に1つ新規事業を展開

そのほかにも「クラウドサイン」は次々とリーガルテックの新規事業を仕込んでいます。例えば契約締結と決済の自動処理です。

紙で契約した場合には、契約した後に取引先がお金を払っていただけない方が一定数いらっしゃるという経験があるかと思います。「クラウドサイン」の場合、契約締結段階でクレジットカード情報や口座情報を押さえることによって、契約の履行段階で支払処理を「クラウドサイン」上で行うことができます。それによって、債権回収率が100パーセントになります。

また、これから結ぶ契約をクラウドで契約締結するということはやったけれども、過去に膨大な紙の契約が眠っている会社も多いので、そのスキャン作業をすべて我々が代行する「クラウドサインSCAN」です。

例えば段ボールを100個送ってくれれば、そのスキャン作業を全部我々が代行して、「クラウドサイン」内に全て格納するという新規事業も始めています。

そのほかには、りそな銀行さんと提携して、ブロックチェーン技術への投資を始めたり。

交通事故が起きた時に、どちらの責任になるのか。例えば右折した時に急に車が出てきた時に、「20パーセントはわたしの責任だけど80パーセントは向こうだよね」など、そういった過失割合がすぐに判定できるチャットボットを既にリリースしています。

クラウドサインはなぜ市場に受け入れられたのか?

クラウドサインはさまざまな企業に導入していただいて、現在導入者数は約23,000社を超えており、野村證券さんやリクルートさん、モルガンスタンレーさんなど。最近の会社ですとメルカリさんやZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイさん、マネーフォワードさんなど、みなさんご存知のスタートアップでは、多くの企業がすでにクラウドサインを活用していただいているなど、そういった市場感になっています。

海外では34ヶ国ですでに導入されていて、当社全体の売上も順調に成長しています。

2015年に出したリーガルテック市場が、我々の想定より早いスピードで浸透しているというのがわかるかと思います。

クラウドサインがなぜ市場に受け入れられたのか。起業家の方の相談に乗ることもあるんですが、一番大事にしてほしいところが今回のまさにリーガルテック業界を盛り上げたいと思った趣旨の1つであり、パートナーのみなさんとこの市場を一緒につくっていく「エコシステム」という考え方を大事にしたいという気持ちなのではないかと思います。

まだリリースして2年半という短期間ですが、Salesforce、サイボウズ、Box、キャリアさんだとKDDI、不動産会社のLIFULLさんなど、いろいろな会社とパートナー連携を進めております。

採用では、まずは営業やマーケティングを急いで採用注力するかと思いますが、弊社では初期の段階からパートナーアライアンス担当ということで、業界を盛り上げる専任の社員を4番目に雇って、一緒にこの市場を育ててまいりました。

こんなパートナープログラムや定例会などを行ったり、マネーフォワードさんのイベントで登壇したり、グッズをこれだけつくったり。

SmartHRさんをはじめとしたSaaS企業と共に、SaaS業界への貢献もしてきました。

ほかは企業法務分野に向けた仕掛けです。企業法務として楽しく仕事をする文化を一緒に育てていきたいと思っていましたので、契約書締結のリーガルバトルゲームを主催することで、業界を身近に感じてもらったり、交流を深めてもらうためのきっかけを企画しました。

乱立するリーガルテックサービスをエコシステムでつなぐ

今回、当社が発表した「リーガルテックAPIエコシステム」というのは、基本的には業界を育てることを具体化した内容になっています。

なぜクラウドサインはこのエコシステム構想を発表したかというところですが、今、各社さまざまなリーガルテック企業が出てきて、なんのサービスをいつ導入したらいいのかわからないという状態になっています。

導入したはいいけれど、いろんなサービスに逐一ログインパスワードを入れて、さまざまなサービスがつながっていないので、いろんなサービスを個別に使いこなさなければなりません。

サービス同士でつながっていないとデータが連携されないので、このサービスで契約書作成をして、このサービスで稟議を回して、このサービスで契約締結をして、このサービスで契約保管すると、当然データがばらばらになりますし、いちいちID、パスワードを張り直したりなど、ユーザーからすると面倒な事態がリーガルテック業界で浸透していくことが、容易に想像できるんじゃないかなと思います。

ユーザーからすると便利なサービスを使いたいという、ただそれだけの要求なので、クラウドサインはリーガルテック企業のほとんどすべてのサービスとつながっていきたいと考えています。クラウドサインを導入するだけで、一気通貫でほかのサービスとつながることが可能です。

当然ながらデータ連携もできたり、クラウドサイン上で契約作成もできたり、場合によっては稟議を回したりなど、さまざまなことができるように進化していきたいと考えております。

「いろんなサービスがあって使いこなすのも難しいよ」という状況は容易に目に見えていたので、こういったことを現在試みています。すでに第1弾として、これから登壇していただくhubbleさんとのAPI連携の構想を発表しています。

API連携だけでなく、クラウドサインからの支援も

今回API連携でつながっていただいたリーガルテック企業のみなさまには、さまざまな支援をして業界をつくっていこうというのが「エコシステム」の構想になっています。例えば資金支援やノウハウ支援、あとはわたくし自身が弁護士資格を持っていますので、法律事務所や企業法務への販売促進を一緒に手伝うなど。

我々もみなさんと一緒につながりましょうと口で言っても、プロダクトのリソースもありますし、なかなか重い腰が上がらないという企業もいらっしゃると思いますので、つながっていただくメリットをこれだけ提示して、みなさんに呼びかけているところでございます。

なので、気持ちとしてはこのリーガルテック業界が進んでいって、業界に浸透すると、自然とクラウドサインもあとから伸びていくと考えています。過去にマネーフォワードさんがFintechという言葉を育てたように、我々がリーガルテックという言葉と業界を育てて、同時にクラウドサインも成長したいと考えております。

日本はまだまだ供給量も少ないですが、今年に入っていろいろなサービスが出てきていて、ユーザーがいろいろ悩みだす時期が今年、来年に迫っていますので、それに備えていち早くユーザーが一気通貫で使えるように、これからもアップデートを重ねていきたいと思います。

これから契約領域以外のリーガルテック企業さんが出てきますので、今日のイベントを楽しんでいただければと思います。

以上です。

(会場拍手)

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