経営に必要なのは最高の会計士
柳井氏が語る、日本企業再建のストーリー

公認会計士制度70周年記念講演 #2/2

公認会計士制度70周年記念講演
に開催
2018年7月23日、東京国際フォーラムにて「公認会計士制度70周年記念講演」が行われました。当イベントは、今年70周年を迎えた公認会計士制度を記念し、また今後90年、100年と継続的に成長していけるよう、日本公認会計士協会の会員や準会員を中心に行われたセレモニー。その記念講演に、株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏が登壇しました。後半となる本パートでは、AIやRPAの時代における公認会計士の在り方について、柳井氏が展望を語ります。

公認会計士も経営者も、その本質は同じ

柳井正氏:本題の公認会計士と経営、この両者の関係についてお話ししたいと思います。会社とは、生きているもの。継続的な努力せずに、永久に続く会社は存在しません。当たり前ですよね、これ。

どんなに儲かっている企業でも、ただ同じことを繰り返すだけでは、遠からず潰れます。だから私たちは、常に自ら変わろうとしてきました。今後もそうしていきます。

公認会計士の仕事も本来は、本質的には、私は経営者と同じだと思います。

自ら変化し続ける企業の透明性や公平性を担保し、経営の方向性をより確かにするために公認会計士の制度があると思います。

会計、損益計算書、貸借対照表、会計原則。これの仕組みを作り、会社の経営をわかりやすく見えるようにする。どうやって会社の経営を良くするのか。

経営者と一体になって、経営に取り組む公認会計士は非常に重要で、そういった意味で必要不可欠な存在だと思います。

しかし、残念ながら、今日本の中小企業は、元気がありません。これは、日本の最大の問題だと思います。

公認会計士は、帳簿をチェックする人というイメージがあります。監査が公認会計士の仕事になってしまっています。仕組みや制度にのっかかって、お墨付きを出す人、はんこを押す人になっています。本当にこれでいいんでしょうか?

「本当にこれでいいんでしょうか?」ということを問いたいです。

RPAやAIの時代に必要な公認会計士の能力とは

数字や情報を間接的に聞くだけで、実態はわかりません。本質的な問題を把握し、会社をより良くするために、公認会計士はもっと経営者と一緒になって、企業経営自体を内側から主導する人になっていくべきではないんでしょうか。

そのためにもっとも重要なのは、業務を整理して、業務プロセスを把握すること。現状は、大企業ですら自身の業務の整理がしっかりできていないというのが現状です。

事業プロセスを経営者自身がよく知らないケースも多いと思います。数字を知らない、何が問題なのか、何が課題なのか、何がチャンスなのか、何が成果なのか知りません。

そうだとしたら、公認会計士が率先して経営者にそれを要求し、経営者と一緒になって業務を整理してプロセスを理解し、その標準化、最適化、最新化、明確化を目指して進めたらどうでしょうか。

その前提がなければ、今巷で導入が始まったばかりのRPA(Robotic Process Automation)、ソフトウェア、ビジネスプロセスのロボット化あるいはAI・人工知能、これらを導入しても業績は改善するどころか、むしろ悪化する可能性すらあるんじゃないかなと思います。

大事なことは、数字の背後にあるそれぞれのビジネスの本質、勘どころを掴んで、経営資源を再配置して、最適なパートナーと今後の成長プランを練り、収益を上げ、社員とともに成長して成功すべく、計画を作り実行することじゃないかなと思います。

先ほどお話ししたRPAやAIの時代になると、数字はすべて自動的に計算できるようになります。単純な分析や整理は必要なくなります。

そうなった時に、人間ができることは何なのか。今それらを深く考えないといけません。そういう時代になったんじゃないかなと思います。

単純計算や分析、整理ではなく、計算された数字を見て、どのように解釈するのか、どのような可能性があるのか。

企業の経営理念や目標に基づいて、数字をどう見て、何を変えて、何を実現していくのか。そういう仕事として、組み立てなおしたらどうでしょうか。そういうことが、本当はもっとも重要なことではないでしょうか。

既存の枠を超えた「非」公認会計士となれ

私の場合は、非常に幸運です。上場を決意して、たまたま公認会計士の人が書いた本を読んで、一緒に経営について深く考えることができました。

公認会計士の仕事が、数字を読んで「はい合格です」「これでオッケーです」と与えるような制度になっていること自体、考え直さなければならないんじゃないかなと思います。

既存の仕組み自体を乗り越える必要があると思います。公認会計士という既存の枠を飛び越えてほしいと思います。

非公認会計士、これは悪口ではありません。こうなってほしいなと思っています。枠を超えるという意味で、非公認会計士あるいは超公認会計士という名称でどうでしょうか。

国の制度に守られ、国の監督下に会計士がいて、制度で解決しようという、レールの上を走る仕事ではいけないのではないでしょうか。

なにより大切なことは、会計士が経営者と一体となって、会社のビジョンと計画を作り、それを実現するためのレールを敷く。

今の経営者に会社が何を目指すべきなのか、それをどうやって実現するのか。そのプロセスを相談できる、実行できるパートナーになったらどうでしょうか。その最高の相手が、公認会計士だと思います。

「社長、あなたの最終的な目標はなんでしょうか?」

「何を実現するためにこの事業をやっていますか?」

「その計画はありますか?」

「誰がいつまで、どの水準でやるんですか?」

それらを経営者に問いかけていただきたいと思います。本当にそのように思います。

金融を否定する「マイナス金利」

今の世の中で、日本が置かれている状況。その中で我々はどう生きるべきなのか。このことについてお話ししたいと思います。

日本は少子高齢化にまっしぐらです。もっとも成長性が高いアジア太平洋の絶好のロケーションに居るにも関わらず、ますます内向きになっている。

アジアにも出ていかない。アメリカにもヨーロッパにも行きません。技術単価、超情報化社会。この世界では、世界の国々との差は開くばかりです。国の財政状況、これは惨憺たるものがあると思います。

私は最初、「日本はポルトガルのようになる」と、そう言っていました。かつて、ポルトガルには大航海時代があり、日本はジャパン・アズ・ナンバーワンと言われる時代がありました。

日本は、なんとかポルトガルのようにギリギリの状態ですが、その状態を維持できるのではないかと思っていましたが、どうもそれすら難しくなってるんじゃないかなと思います。

ギリシャのように破綻してしまう可能性すらあるんじゃないかなというのが現状です。今の日本は、ゼロ金利、マイナス金利です。これは金融を否定しています。金利がマイナスということは、お金の計算なんかやっても無駄ということですよね、これ。

企業のモラルがなくなるということに通じると思います。今、崩壊しつつあるのではないかなと思います。本来は退場をしないといけない会社が、低金利のおかげで退場しない。

最近話題になった会社などは、最悪の例であると思っております。いちばん儲かっている半導体の部分を売って、時代遅れの重厚長大の部分を残すという経営判断としては、どう考えてもこれはおかしいです。

日本全体が変な方向に行ってるんじゃないかなと思います。国が劣化してると思います。誰もが国のお金を当てにしてます。「公的な資金が出るから事業をしよう」、そんな事業がうまくいくわけありません。

経営課題を議論でき、実行できるパートナーに

かつてアメリカのケネディ大統領が、「国があなたのために何ができるかでなく、あなたが国のために何ができるか問いかけてください」と言いました。国民から金をもらうようになったら、その国は終わります。この状況を救えるのは、自立した個人、自立した民間企業だけです。

政府や行政ばかりに頼っていては、救えません。何をどうすればいいかは、人に教えてもらうのではなく、自分で自分に問いかける。自分で答えを出す。それが自立した人間、自立した企業だと思います。

そういう人間、そういう企業が集まってこそ、強い国ができると思います。今の日本には、そういった想いが欠けているんではないかなと思います。

企業も同じです。そのために会計士ができることはたくさんあると思います。私たち経営者がもっと日常的に相談でき、経営課題に関して議論できて実行できるパートナーとなる会計士、ぜひそうなってもらいたいと思います。

会計という武器を携え経営を担う

最後に個々にお集まりの公認会計士の方々に、私からの期待をお伝えさせていただきたいと思います。極論ですが、先ほど述べた公認会計士から「公認」を取ったらどうかなと思います。

公認ということは、既得権益、制度にのっかかるということ。これじゃいけないんじゃないかなと。会計が企業の体温計、あるいはなんて言いますか、健康検査などとする。体温計を見るだけ、検査の数値を見るだけでなく、企業の健康状況が正常かどうか、日常の経営活動がどうなのか、それを経営者と一緒になって考えて実行するパートナーが、本当は必要なんじゃないでしょうか。

会社経営に関して、会計に対する意識の低い経営者が多いのも事実だと思います。ほとんどの人は、監視がないかもしれません。あるいは知らないかもそれません。

しかし、そういったことを教育して、会計士以上に会計や経営のことを勉強し、そういう人たちを増やしていかないといけないんじゃないかなと思います。

そうやって日本の企業経営全体のレベルを上げる。それこそが会計士の仕事ではないでしょうか。もっと会社の中に入り込み、経営の一翼を担う。会計士は会計そのもので生きる必要はないと思います。

会計だけで生きる必要はないと思います。会計という強力な武器を使って、経営者のマインドを持って、企業経営そのものをやってみたらどうでしょうか。

今我々は、世界中で経営者を募集しております。これは、半分冗談半分本気だと思って聞いてもらいたいんですが、なんならウチの会社に来ていただいて、経営をやってみたいと思いませんか?

それぐらいのつもりで、僕は公認会計士をやってもらいたい。そう思っています。自らの専門知識を武器に、より幅広く、深く、貢献できる道を模索したらどうでしょうか。

自分たちで仕組みを作り、自分たちでレールを敷く。どんな会社でも、会社は経営者次第であります。良い経営は、良い経営者と良い会計士が作る。私は、強くそう信じております。みなさんの履歴書をお待ちしております。

(会場笑)

公認会計士主導で政治を動かす

もう1つあります。ときどき想像するんですが、もし政治家が全員会計士だったらどうなるのか。世の中ガラッと変わると思います。

こういうことはみなさん考えられたことがあると思いますが、公認会計士がもっと行政政治を指導したらどうでしょうか。行政とか政治から指導されるんではなくて、行政とか政治を指導するのを、公認会計士がやったらどうかと、僕は思います。

公認会計の、あるいは会計の発想を、すべての行政区に入れてみたらどうでしょうか。会計士協会として、そういう活動をしたらどうでしょうか。社会をより良い方向に変えて行くには、何をすればいいのか。

経営者や行政者と一緒になって考え、行動し、成果を出したらどうでしょうか。そうやって、世の中をより良い方向に変えるための仕事をぜひお願いしたいと思います。これが重要なことの2つ目です。

その次に、志。人間にとって、いちばん大事なことは、志だと思います。今この国は、あるいは日本の中小企業は危機的な状況にあると思います。

その中で、自分はなんのために生きるのかという、自分のミッション、自分のビジョンを、全員があらためて自らに問いかけ、そして考えて、実行する、行動する必要があると思います。

会計士のみなさまが客観的なデータで、世の中のあらゆる指標を作り、それを変えて、効率を上げる。イノベーションを起こす。そうやって会社を、社会をより良い方向に変えていっていただきたいと思います。

そうすれば、世の中はもっといい方向にいくんじゃないかなと思います。自分たちこそが、世界を変えられる。個人ひとりひとりが世界を変えられると思います。

ですから、自分がそう思うことが、世界を変えること。それくらいの高い自負を持って、あらゆる産業を成長させていっていただきたい。そう思います。そうしないと、本来成長するべき産業も成長できないと思います。

新しい公認会計士の常識をつくれ

今、日本に必要なのはビジネスの原点。これに戻って、しっかりと儲け、ビジネスの原点に戻って、しっかりと儲け、稼ぎ、無駄な経費は創意工夫して抑え込み、個人も企業も信頼を取り戻し、成長することではないのでしょうか? そのときに、日本と海外の国々と、垣根を作らないようにお願いしたい。そう思います。

もうすでに、垣根はありません。経済にはボーダーはないんです。ボーダレスの世の中になっています。国だけじゃなしに、産業自体もボーダレスになっている。そういう世界に今、我々は生きている。その中で、我々公認会計士は何をすべきなのかということを考えてもらいたいと思います。

現在は、制度そのものが制度疲労しています。今の制度は、過去の常識になっています。だったら、今の常識は何なのか。今の常識を作ってやろうじゃないか。そう思わないといけないんじゃないですか? とくに、公認会計士のみなさまには、それを期待します。

制度を作り変える。むしろ公認会計士、あるいは会計に携わるみなさん、企業経営に携わる全員が、現在の仕組みはどんなものがいいのか、将来その仕組みはどうなるべきなのかを考えて、制度そのものを変えないといけないんじゃないかと思います。今まさに、このときが来ました。

最後にお願いなんですけど、公認会計士のみなさまの斬新な発想と果敢な挑戦力に、強く強く期待します。ぜひ一緒に、日本を、世界をよりよい方向に変えるためにがんばりましょう。本日、ご清聴ありがとうございました。どうもありがとうございます。

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