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第3部ゲストトーク:プロノバ(全1記事)

プロノバ岡島氏が語る“戦略人事”の重要性 AI/オーナス時代に採るべき人材とは?

2018年7月3日、株式会社LiB主催による「HR Knowledge CAMP」が開催されました。トークセッションの第3部には、プロノバ岡島悦子氏が登壇。「AI/オーナス時代の人材活用戦略」をテーマに、今後の組織が採るべき人材について語りました。

AI/オーナス時代の人材活用戦略

松本洋介氏(以下、松本):では岡島さん、どうぞよろしくお願いいたします。

岡島悦子氏(以下、岡島):よろしくお願いいたします。

松本:第1部では、技術に人の力を掛け合わせたユーザーエクスペリエンスを組織でどのように作るかというテーマでお話しいただいたのですが、岡島さんからもお話をお伺いできればと思っているので、よろしくお願いいたします。

岡島:よろしくお願いします。今日ちょっと大仰なタイトルになっていて、「AI/オーナス時代の人材活用戦略」ということだと思うんですけれども、私は人材というか、労働市場の最適配分ということをすごくやりたいと思っています。

もちろん人事のみなさんは、採用、育成、配置、代謝ということを考えていらっしゃると思うんですけれども、よくよく聞いていくと、いろいろな仮説があって、おそらく「(人口)オーナス期」と言っているところでいうと、労働市場の人口は減っていきます。

ただ、人生100年になっていくので、みなさんのほとんどがおそらく80歳ぐらいまで働くということなので、労働寿命が60年ぐらいになっていきます。

なので、働き方改革の基本は、「長時間労働から長期間労働へ」ということだと思います。

一方では、AIの話があって、野村総研調べでは「49%ぐらいの仕事はAIにとって代わられる」と。人間がやる面倒くさいこと、統計解析などはAIがかなり補完的にやってくれるようになります。

会社のマニュアルに落ちているような仕事はほぼAIがやってくれるので、オペレーション人材と呼ばれているものの中でも、マニュアル化されているものに関しては、労働力がいらなくなる。

このような仮説で言うと、結果的に何が導き出されるかというと、完全な労働市場の二極化。もう少し言うと、モテモテな人とモテない人の差異がものすごく開くということですよね。

松本:そうなりますよね。

岡島:なので、2025年ぐらいの風景は、獲得競争される人とAIに取って代わられて代替可能になってしまう人が二極化して格差が生まれます。そして、みなさんはモテモテな人を採り合うという構図になってくるわけです。

松本:今も若干その片鱗がありますよね。

岡島:そこで何を考えなければいけないかというと、大きな問いですけど、「AIができないことは何なのか」「人間にしかできないことは何なのか」ということを東大の松尾(豊)先生としょっちゅう話をしているんですけど、今のところの私たちの仮説は、「ワクワクすること」あるいは「ワクワクさせること」です。

松本:心を動かすということですね。

岡島:機械には「共感」というキーワードがないので、何に対して共感するのかということをアルゴリズムに入れれば、機械はできるようになるわけですよね。

例えば、「こういうものにみんなワクワクするよね」という方程式ができれば、AIはそれをもっと収れんしていく機械学習ができて、パターン分けして作ったりできます。

だけどAIは、「どの写真を見せると実家のお母さんが泣いてしまうか」ということは探せないんですよね。

松本:そうですよね。

岡島:なので、みなさんの会社でBTC人材ということを言われているかもしれませんが、ビジネスとテクノロジーとクリエイティブの合わせ技ができる人たちを作っていくのか、採るのかという話になっています。

人事戦略は組織の中核を担っていく

松本:岡島さんにお聞きしたいことが2つあります。1つ目は、今後、人事の仕事はAIに取って代わられるのか。どう価値をつけていくべきなのか。どうお考えになっていますか?

岡島:人事戦略を立てるということに関しては、おそらくものすごく重要なテーマになっていくので、むしろ(組織の中で)中心的な役割になっていくと思います。

先ほどの(第1部の)メルカリの話でいうと、もともとは小泉さんがやっていたような仕事で、組織設計をして、そもそも理念に共感できない人は採らないという話がありました。

彼はmixiでいろいろな鉄を踏んで、早め早めに仕掛けておくということをやってきたわけですけれども、社長ではなくてもそういうことを考える人、CHROのような人は圧倒的に重要な役割になります。

結局、人材獲得競争ということなので、採用もそうですけど、リテンションやエンゲージも含めて、「いかにワクワクさせるか」ということを考える仕事はすごく重要な役割になると思います。一方、おそらく制度設計などに関してはもっとアウトソースされていくと思います。

先ほどの(第1部の)お話を伺っていて、少し耳の痛い話で申し訳ないのですけれども、「メルカリさんはどんな制度をやっていますか?」という話があったと思うんですけど、そういうことを聞いてもダメなんです。

松本:なるほど。

岡島:もともとの人事哲学があってのものなので、制度だけ輸入しても無理なんです。

ただ、人事戦略だったり、OKRの決定、評価フィードバックなど、人が関わらなければならないところ。あるいは文化づくり・理念浸透みたいなところについては、人事の役割はすごく重要になっていくという感じだと思います。

松本:ここ数年、「人事」という言葉が含む業務領域や経営からの期待というのは、相当広がって、別物になりましたよね。

岡島:とくに今日は、スタートアップ企業の方が多かったりすると、そのあたり(の業務領域)が採用中心だったり、大企業でいうと、採用と育成とが分かれてしまっていたり、という担当になっていらっしゃるかもしれませんが、今後は少し変わっていくのではないかと思います。

CHRO(最高人事責任者)に必要な資質

松本:たくさんの経営者や戦略人事と接点のある岡島さんから見て、戦略人事もしくはCHRO(最高人事責任者)になれる人の差というか、どのような分け方になると思いますか?

岡島:この中にいたら大変失礼なんですけど、人事畑で何回も転職しているという人がいると、それはもう「人事屋さん」という感じですよね。「評価制度作ってまーす」とか。

どちらかというと、私はよくベンチャーの経営者に相談を受けて、「うちは本当にいい人事がいないんです」と言われるんですけど、そういう時には「営業のエースを引っこ抜け」と言います。

もちろんビジネスドメインにもよるので、エンジニアをすごく採らなきゃいけないということだったら、「それ(営業)で採れんのか」って話はあるんですけど、営業の仕事は今日の「コミュニケーション人材」という話と少し関係があると思います。

相手を徹底的にプロファイリングして、どんな戦略で、どこの心のスイッチを入れていくかというところで、おそらく広報も、人事も、営業も、そのコンピテンシーは似ていると思うので、プロファイリングどこまでやれるか、どこまで(心を動かしに)行けるか、ということに尽きますよね。

松本:なるほど。営業的なターゲットを決めて、心を動かしに行くということが1つ。人事からCHROに駆け上がっていくタグというと、他に何がありますか?

岡島:本当は事業ドメインについてよく理解していないとまずいわけです。自分たちの戦略上の比較優位性はどこにあって、そこを逃したらいけないということなので、経営者目線で考えられないといけないと思うんですけど、知識の部分と経験の部分と能力の部分とがあるので、まあ能力があればいいんじゃないかと思います。

「地頭採用」はもう通用しない?

松本:なるほど。もう1つの質問は、二極化して、優秀な人は取り合いになります。そのような方々を引き寄せて、採用する力を上げにいくためには、今後、どんなことが必要だと思われますか?

岡島:これは人の見方を変えたほうがよくて、私はマッキンゼーというコンサルティング会社にいたんですけれど、みなさんこういうことに毒されすぎていて、人の採用をする時に「地頭採用」とか言っているじゃないですか。

「論理的に思考できないのか」みたいなことをすごく思っていると思いますし、あとは一番やってはいけないことでいうと、採用のときに「どんな実績がありますか?」と聞いていると思うんですけど、みなさんが採用しなければいけないのは、「これからどんな実績を出すか」という話であって、「どんな実績を出してきたか」ということはいらないかもしれません。

これも言葉を選ばずに言うと、「ビジネススクールを出たからいい」というわけではまったくなくて、経営の秘伝のタレなんて、ググれば全部出てくるわけです。

この中で、3C分析を知らない人はいないと思うので、そういう意味で言うと、それをどう使えるかという話が出ていて、先ほどの「共感力」とか、「ワクワクさせる力」ということと地頭は、似て非なるものかもしれません。

松本:どういうことですか?

岡島:つまり、「なんかあの人ゆるふわだけど、めっちゃ人を共感させる力はあるよね」みたいなことでOKかもしれないわけです。なぜかというと、「地頭が良い」というところに関しては、スーパーコンピューターがやってくれるかもしれないわけです。

もちろん、(候補者の)パラメーターを入れることはやらなきゃいけないんですけど、そのパラメーターを入れられればいいわけじゃないですか。

私だったら、コミュニケーション人材というところで、どういう人を採ろうとするかというと、仮説が100個出せる人ではなくて、「お客様の気持ちがわかる」ということなので、(その人を採るための)「キラークエスチョンは何か?」という話ですよね。

おそらく、それぞれの会社にキラークエスチョンはあるはずなんですけれども、例えば、ブライダルの例がわかりやすいと思うんですけど、「子どもの頃から、幹事気質だったのは誰なの?」という話です。つまり、「いろいろなパーティや誕生日会の幹事をやっています」「なんだかみんなが喜んでいます」みたいな人がいいんです。

“化ける人材”の採用に問われる目利き力

松本:なるほど。「どこのスイッチを押すとお客さんは喜ぶのか」ということがしみ込んでいるということですよね。

岡島:そこで、会場にいらっしゃる人事のみなさまからの非常な重要な問いは、「うちの会社にとってのキラークエスチョンは何なのか」「どういう質問をすると、うちが本当に採りたいと思っているポテンシャルの人が採れるのか」ということです。

そこで、みなさんの目利き力が問われるのは、「今がMAX」では最悪なわけです。もう少し言うと、「中学時代に開成に入りました。そこが私の人生のピークでした」とかでは最悪なわけですよ。

それよりかは、ちょっと不良だったかもしれないけれど、今がんばってやっていますみたいな、「化ける人をどう探すか」という勝負です。

例えば、みなさんに10年後にこの会場に戻ってきていただいて、同じ会社で人事をやっていらっしゃったとしても、同じビジネスドメインとは限らないわけです。

なので、みなさんが何をやらなければならないかというと、いかにここから伸びそうな人をうまく吸着して、いかにその人たちをリテインしていくか、維持していくか、最も活躍できる環境を作るかということです。

松本:そうなると、かなり経営とシンクロして、事業構造を理解して、「うちのビジネスにおける秘伝のタレをあぶり出すクエスチョンは何なのか」ということを話せることが必要ということですよね。

岡島:それが、固有であればあるほどいいんです。「子どもの頃、秘密基地を作っていたやつは誰だ」とか、「ゼロから遊びが作れた人は誰だ」みたいなことがすごく重要な会社もあるだろうし、それぞれ固有のクエスチョンだとは思いますけど。

松本:そう思うと、人事の仕事って相当おもしろいですよね。

岡島:めちゃめちゃクリエイティビティが必要だと思います。

松本:例えば、ウェディングがわかりやすいと思うんですけど、テイクアンドギヴ・ニーズさんは、ホテルで決まったものをパパッとやる会社ではなくて、オリジナルで人を喜ばせることが強みだったわけですよね。そんな会社が採りたいのは、幹事気質の人だということはすごくよくわかります。

岡島:そうなんです。私はテイクアンドギヴ・ニーズも長いこと手伝っていて、今もお手伝いをしているんですけど、見ている人たちでも、それこそ頼まれてもいないのにお客様のお家に着いて行って、押し入れから写真を出して、全部並べて、「どれが一番いいか」みたいなことまでやってしまう気質の人がスーパープロデューサーになるわけです。

松本:すごくイメージが湧きますね。でも、テイクアンドギヴ・ニーズさんがいろいろな事業をやっていく中で、それも変わるということですよね。

岡島:そうです。規模化する時には、誰かがやったものを徹底的にパクッて、エグジケーションする人も必要なので。

会社の成長はすべてを癒す

松本:ありがとうございます。もう1つ質問があります。人材採用が激化すると、労働マーケットの中で、優秀な人材に選ばれることが必要だと思うんですけど、そのあたりの優位性というか、差のつけ方はどうしたらいいと考えますか?

岡島:これも言葉を選ばずに言うと、答えは1つです。とにかく成長がすべてを癒します。

松本:伸びている会社に集まると。

岡島:今はメルカリがそうですけれども、10年後にメルカリがそうかというとちょっとわからない。それは小泉さんとも話をしています。

そういう意味で、成長していると何がいいかというと、活躍の場がどんどんできるということなんです。

残念ながら昨日、W杯で日本が負けてしまったんですけど、私は香川さんや本田圭佑さんと仲が良くて、彼らと「どうやって若手を作っていくか」という話をしているんですけど、やっぱり試合に出られなければ意味がないわけです。

若手が試合に出て、試合勘ができるから、(W杯の舞台で)乾さんが点を入れるということになるわけで、やっぱりみなさんの会社にどれだけ代表戦のような試合の機会があるのか、ということに限りなく関係があります。

そうでないと、(優秀な人材には)「自己成長機会がないから」と言われて、もっと急成長の確度が高いところに引き抜かれます。

松本:1個難しいことを質問したいんですけど、みんながメルカリのようになれるわけではない。それでも優秀な人は採らないといけないという中で、どのような磨きどころがあると思いますか?

岡島:やっぱり「レッドオーシャンでは厳しい」という話だと思います。メルカリと攻め合って人を採ろうなんて話はやめたほうがいいし、それは向こうに行きますよ。もしかしたら「もうちょっとステージが若いほうがいいや」という人はいるかもしれないですけど。

ここにいるみなさんが採らなければいけないのは、顕在層ではなくて潜在層ですよね。潜在層は、転職したいかどうかわからないけど、先々にもっと成長したいと思っているので考えたいですという人。もしくは「今、めちゃくちゃ活躍しているけれども、先々のこともオプチュニティとして考えておきたいです」という人たちです。

だからもう、どっかと取り合うような人ではダメで……今日は無料なんでしたっけ?

松本:無料です。

岡島:じゃあ、あんまりいいことは言っちゃいけない?(笑)。

松本:どうぞお願いします!出し切ってください(笑)。

優秀な人材を呼び寄せるキラーフレーズ

岡島:私がこの16年間で毎年200人、何百人、何千人という経営者に会ってきて、最も喜ばれているアドバイスがあるんですけど、聞きたいですか?

松本:聞きたいです。

岡島:これは最近、いろんなところで言い始めているから、メディアに出ているかもしれないんですけど、キラーフレーズがあります。

それは、とにかく「こいつと一緒に働きたいな」という人を見つけたら、いつでもどこでも「いつか●●さんと一緒に働きたいよね」と言うことです。

松本:言い続けると。

岡島:言い続けるんです。これがすごく大事です。

例えば、みなさんの会社で、「内定を出したけどどこかに取られてしまった」とか「今の会社にとどまります」と言われてしまったとか、あるいはカンファレンスで人に会うということ含めて、私自身が知っている限り、そういうことを言われた大物の人たちが動いています。

松本:実際にそうですよね。

岡島:これはどの経営者も「すごくよかった」と言ってくれています。なぜかというと、転職というのは、会社基点ではなくて自分基点で動くんです。なので、「声をかけた時にはたまたまタイミング合いませんでした」ということがすごく多い。

だけど例えば、「うちの会社が買われちゃったとか」「自分がずっと一緒に働いていた良い上司が辞めてしまった」というケースがあるわけです。

そのような「ちょっと考えようかな」と思った時に、みなさんの顔が想起されるかどうかという勝負ですよね。

松本:おっしゃるとおりですね。

岡島:SHOWROOMの前田(裕二)さんだって、起業しようと思ってNYから戻ってきて、南場(智子)さんのところに行って、「起業しようと思うんですけれど、ビジネスプラン見てください」と言ったら、「あんた馬鹿じゃないの。経営やったことないでしょ? うちでやってからやったら?」と言われたって。めちゃめちゃひどい口説き文句だと思いますけど(笑)。

松本:でも「いつかおいで」とずっと言っていたんですよね。これはうちも含めて、なかなか徹底できないんですよね。

岡島:誰にでも言うのではダメなんです。みんな「俺も言われた」と言っていたら価値がないからダメなんですけど、ここぞという人には、「一緒に働きましょうね」言うことがすごく重要です。

もしかしたら、自分たちの会社を辞める人にもそうかもしれませんね。マッキンゼーもすごく出戻りが多いんですけど、「またいつか一緒に働こうね」と言っておくことは、やっぱりすごく重要です。

松本:メルカリがすごいなと思うのは、社員のリファラル(採用)がすごく多いんですよね。まさに今の話で、社員一人ひとりが「いつか一緒に働きたい人」に付箋を貼りまくっているんですよ。ランチに行ったりとか。

岡島:松本(龍祐)さんもそうだと思うし、青柳(直樹)さんが「決済をやるんだったらメルペイでやろうかな」と思うということは、絶対に(転職前に)声がかかっているんですよね。

松本:すごいですよね。全社員が「いつか僕が働きたい人」という主体性でランチに誘ったり、常に付箋を貼り続けているからリファレンスも強いというか、ちょっと迷ったら「そういえばメルカリのあいつに言われたな」と言って集まってくる。それをやり切っているから無双なんだなと思いました。

岡島:みなさんの会社でもそうだと思いますよ。なんかすごく、こっからやっぱり、人として合うかどうかっていうこともすごく関係があるから、この人に言われたらまた想起しようかなってなるわけじゃないですか。

コミュニケーション人材の重要性

松本:ありがとうございます。最後に、岡島さんが考える今後のユーザーエクスペリエンスの作り方であったり、そこにおける人の役割はどのように定義できると思っていらっしゃいますか?

岡島:リーダーシップの世界で確実に言われているのは、コレクティブ・ジーニアス(集合天才)ということです。例えば、カスタマージャーニーをつくるという話でも、エンジニアとCSの人、プロダクトマーケティングの人たちが一緒に作っていくということをやっていくので、1人で全部やる必要はありません。「三人寄れば文殊の知恵」的に一緒に作っていくということが1つ。

それと、顧客インサイトも少し古くなってしまっていて、「お客様の中に解があるのではないか」ということも間違っていて、お客様とともに解を作るということをやっていかないといけません。

おそらく、アジャイルにこちらからいろいろサービスを(お客様に)当てて、どんどん磨いていくことになっていくので、先ほどの「共感」という話も非常に近いんですけど、そこを聞き出せるとか、一緒に作れるとか、そのあたりの環境整備ができる、もっと言うと、お客様にもっといい「問い」を立てられるかということがすごく重要になってくるので、(必要なのは)そのようなコミュニケーション能力ということですかね。

松本:ありがとうございます。トークセッションはここまでにさせていただいて、Q&Aに入りたいと思います。岡島さんに聞いてみたいことがある方は挙手をお願いします。

人事担当者が抱える組織の課題

質問者1:先ほど、キラークエスチョンの話があったと思うんですけど、弊社は13人ぐらいのスタートアップなので、「どうやってキラークエスチョンを導いていくか」ということをお聞きしたいです。

岡島:ありがとうございます。まあ13人なら今いる人と違う人を採ると思うので、13人に聞き出してもダメですよね。共通項を出していっても、ちょっとN数が足りないので難しいという感じだと思います。

そうすると、やっぱり「創業者が原体験として持っていることで、こだわっていることは何なのか」ということを探っていったほうがよくて、それに共感しそうな人を探していくことだと思います。

質問者1:ありがとうございます。

質問者2:うちの会社は今20名なんですけど、プロダクトを持っている会社なので、エンジニアが働きやすい環境を作りたいと思っています。

エンジニアリングの部分は組織作りが非常に難しくて、ビジネスサイドとコミュニケーションの取り方が違ったり、志向性が違う方が多いです。

そこをどこまでエンジニアに特化した風土づくりにしていくのか、そもそもそこをやめてフラットにしていくべきか。バランスのとり方に非常に悩んでいて、アドバイスをいただきたいと思います。

岡島:ありがとうございます。いろいろな会社さんでお手伝いをしているときに、やっぱりリードエンジニアとプロダクトマネージャーは分けてもらっているケースが多いです。

リードエンジニアと言われる人は、DeNAの川崎(修平)さんのように、あまりラインを持たずに、「この人、化け物のように頭がいいよね」という人がいいわけです。彼はかなり草食系の人だと思いますけど。

質問者2:ちなみに私も元DeNAです。

岡島:じゃあ、すごくよくわかりますよね。では、ああいう感じの人がエンジニア部隊をすごく率いることができるかというと、そうではないと思います。むしろ違う人で、もう少し親分肌っぽいエンジニア、プロダクトマネージャーがいたほうがいいと思います。

なので、多くの会社でやっていただいているのは、ピンで行くプロフェッショナル職と、ラインを持っていただくようなエンジニアとを分けて、評価制度も変えていく、組織設計上も変えていくということをやっていただいているケースが多いです。

前者のプロフェッショナル職の方に対しては、やっぱりチームワークとか言っても、たぶん「それっておいしいですか?」とか言われてしまうと思うので、文化という意味では、理解し合うという受容性は必要だと思うんですけど、そこを持っていないと上に行けないかというと話とはまた違うと思います。

風土はごり押ししない程度のものは出てくるかなと思うので、そこを運用で解決することが1つかなと思います。

一方、やはりビジネスサイドとエンジニアサイドで「どちらが上か」ということがよく起こると思うので、そのようあケースの中で、士農工商のようにならない風土づくりは相当やらないといけないと思います。

なので、どの会社でも横ぐしのプロジェクトをかなり早い段階から仕掛けていただいていて、私もいろんなことをやっているんですけれども、縦横の設計を作りながら、風土を作っていくということの合わせ技かなと思います。

質問者2:大変参考になりました。ありがとうございます。

質問者3:今まで、創業者が質重視でしっかり盤石な経営をしてきたところから、社長が変わりまして、事業拡大の方にどんどん進んでいこうということで、一気に人材を集めようということになってきています。

現場としては医療専門職が中心の会社ですので、看護師をどうやって採用しようかすごく悩むところではあるところなのですが、一方現場では「そんなに一気に採用してどうするんだ、質を保てるのか、育成にどうやって時間を割くのか」という声が出てきていまして、いっぱい人を入れようと思っている一方で、現場が一緒にやっていこうという気がまったく起きていません。

企業が成長していくことがすごく望ましいということはわかりますし、「ワクワクさせる」というところで、現場をどのように口説いていけばいいか。何かいい方法があったら教えてください。

岡島:ありがとうございます。メディカル系だということはわかったのですけれども、どのようなビジネスモデルなのかわからないので、何とも言えないのですけれども、1つ考えなければいけないのは、労働集約的なビジネスなのかどうかということです。

人がたくさんいるとそれに伴って成長ができるモデルなのか、プロフェッショナル人材がたくさんいて、プランニングはするけれども、エグゼキューションはどこかに任せるということでいいのか。そのどちらなのかということとすごく関係があると思います。

今、看護師さんというお話も出たので、おそらく前者で、わりと労働集約的なのではないかなという仮説なのですけれども、そこでやっぱり「看護師さんたちが何にこだわっているのか」ということですよね。

「量を取ろうよ」と言っているときに、そこで言われている量とともに必要だと言われている質は、おそらく看護師としての技術とかではなくて、「患者さんのことを考えられるかどうか」みたいなことだと思います。

なので、そこをちゃんと洗い出して、「こういう人を採用していきますよ」という方向性についての理解と納得を得ることをやらないと、人はどんどん入ってきて、ぜんぜん技術もなくて使えなくて、技術を教えたんだけど出ていってしまうという感じになると思います。

なので私だったら、今いらっしゃる方たちへの納得度(を洗い出すこと)のフェーズを1回作りますかね。

あとはもう1つ、やっぱり「人数がいると何ができるようになるのか」ということの納得感も必要で、世の中に対するインパクトなのか、今、競合に取られるところだから時間軸が大事なのかという、戦略上の話もあると思うので、その両方の合わせ技かなと思います。

質問者3:ありがとうございました。

松本:お時間となりましたので、岡島さんとのセッションはこちらで終了となります。ありがとうございました。

(会場拍手)

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