2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
How Scientists Protect the World's Most Famous Art(全1記事)
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オリビア・ゴードン氏:芸術家は、絵画や彫刻、建築などの手法で、世の中を美しく装飾したり、歴史上の一瞬を形に残してくれます。
しかし科学なくしては、美術品が世に残ることはありえなかったでしょう。美術品は年を経て汚れ、劣化します。科学を考慮に入れなければ、修復どころか大きな損害を及ぼします。
幸いにも、これまで美術品の修復については、科学の観点から効果的で安全な、時にはびっくりするような画期的手法が開発されています。
立体的な芸術品、つまり彫刻や建築物などを洗浄する手法の一つが、レーザー照射です。なんとも斬新な手法ですが、画期的です。これはレーザーアブレーションと呼ばれる手法で、ブラッククラスト、つまり「黒い外皮」と呼ばれる、大理石の汚れを除去する目的で、1970年代に開発されました。
ブラッククラストとは、大理石が酸性雨などで汚染された場合に発生する、汚染物質と石膏とが反応して生成する外殻で、除去は困難です。化学薬品を用いたり、削り取ったりする場合は繊細な作業は難しく、下層の彫刻本体を痛める危険があります。
レーザーアブレーションでは、ハンディタイプのレーザー発射装置から短波レーザーを照射し、黒ずみを除去するので、上にあげたような問題点を回避することができます。修復の際に誤って彫刻本体を破損することのないように、レーザーの波長はコンピュータで慎重に制御されており、100万分の1秒、ないし10億分の1秒に設定されています。
また、レーザーに用いられるのは波長の長い赤外線なので、可視光線よりも損壊の危険を低減することができます。レーザーを照射すると、ブラッククラストは熱により膨張し、生じた圧により除去されます。こうして下層の大理石にまったく影響のないまま黒ずみがとれるのです。
これは、タトゥー除去の過程に似ていますね。ただしタトゥーの場合は、レーザーを使って行われるのは、細胞内のインクの分解であり、表皮からのインクの分離ではありません。
レーザーは、科学的手法としては金字塔的な手法に見えますが、絵画の修復ではさらに科学的にしてクリエイティブな手法が存在します。なんと、汚れを食べるよう「調教」されたバクテリアが開発されているのです。
数年前、イタリアの修復師が、湿った石膏の上に描かれる絵画である、400年前のフレスコ画の修復にあたっていました。長年の鳩の糞害やずさんな修復のせいで、フレスコ画の保存状態は劣悪でした。
フレスコ画は、糞や塩害、過去のぞんざいな修復で用いられた糊に覆われていたのです。さらに悪いことに、これまで絵画を洗浄するために使われていた化学薬品は、絵画にダメージを与えるものでした。
ここで、件のバクテリアが投入されました。修復技師たちは微生物学者と協力し、絵画を覆っている塩や糊成分だけを食べるバクテリアを特定しました。そのバクテリアは、わずか数時間で、下層の色素をまったく損なわずにダメージ部分の80パーセントを除去したのです。
このバクテリアは「シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)」というもので、泥水などでごく一般的に生息するものです。雑食性で、どんなものでも養分にしてしまいます。また、摂取した養分により異なるたんぱく質を生成します。
生物学者たちは、この特性を利用して、特定の糊と塩分で培養することにより、フレスコ画の汚れを除去するに適したたんぱく質を生成するよう、バクテリアを「調教」したのです。バクテリアに色素を摂取するよう、とくに「調教」しない限り、元からあるフレスコ画部分を侵食することはありません。
この微生物は、投入して数時間で、フレスコ画をまるで描いたばかりのようにきれいにしてしまいました。少なくとも、人力での修復よりはるかに質の高い仕事をしたのです。これ以降、バクテリアによる絵画修復は盛んにおこなわれました。
中には、700年以上前の古い絵画もありました。バクテリア側としては、人間を助けるかわりに食事にありつけるわけですから、win-winでお互いさまと言えるでしょう。
絵画の修復でもっとも成功した例といえるのは、化学反応を利用した黄ばんだワニスの除去でしょう。ちょっと検索すれば、実際の作業例はいくらでもウェブ上で見ることができます。
ワニスは、油彩やアクリル画を保護する目的で用いられます。その原料は多岐にわたりますが、乾性油や樹脂(レジン)、シンナーなどが一般的です。
まずレジンです。レジンは松脂などでも見られるように粘性が高く、絵画を乾燥させてから、ハードコーティングとして用いられます。欠点は、経年で変色することです。長年、紫外線や酸素などに晒されると変質して黄ばみ、ひどい時には茶色く変色し、汚らしくなります。
化学薬品を使ってワニスを除去するのは、下層の絵画本体を損壊しやすいので困難です。そのため、絵画の修復師は科学に精通する必要があるのです。
まず、修復師たちは、樹脂を溶解する性質のある、炭素を基とするアセトンなどを用いて慎重に古いワニスを除去します。
次に中和剤を用いて、絵画本体まで侵食する前に、アセトンの残滓を除去します。この中和剤とは、オイルなどの化学薬品の混合剤です。この混合剤は酸性ないしアルカリ性に偏りすぎないように作用して、ワニス除去剤の反応を抑えます。
修復師が使う薬品は、除去剤の種類によって異なります。例えば、アセトンであれば、ぺトロールとウィンターグリーンオイルを用います。汚れをひととおり除去すれば、絵画に再度ワニスを塗布したり、展示できる状況になるのです。
科学の力がなければ、修復作業は大失敗に終わる危険があります。美しい芸術品、さらには歴史が無事に保存され、私たちがこの先何十年も鑑賞することができるのは、数々の技術のおかげなのです。
SciShowのご視聴をありがとうございました。美術品の修復以外にも、贋作検出における科学の活用を知りたい方は、ぜひSciShowをご覧になってください。
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