2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
提供:株式会社セグメント
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谷本有香氏(以下、谷本):AI時代、もしくはシンギュラリティ時代に、組織がこれからしていかなければいけないこと、もしくは人の価値を上げていくためにできること。例えば、人の行動データを1個1個取っていくとか、今からどういったことができますか?
落合陽一氏(以下、落合):人の価値って、どこの、誰にとっての、何の価値ですか?
谷本:企業にとって、企業の生産性や利益を上げるための、人それぞれの価値かな。
落合:「企業の利益を上げるためには、人が一人ひとりの価値をつくらないといけない」という定義が間違っていると思う。
谷本:おお、なるほど!
落合:企業が利潤を追究するときに、別にそれが人間に即したかたちである必要はまるでない。限界費用を下げることは、人がなるべくいなくても働けるように企業体を回すような経営が必要なわけで。「一人ひとりが働きやすい会社をつくろう!」みたいなことを言ってる限り、おそらくなにも始まらないと思うんですよね。
そこまで考えたとき、「それはそうなんだけど、じゃあどうすんだよ?」という話になったときに、「じゃあコスト削減しましょう」ということで、コストを削減する会社はいっぱいあるし、今、世の中で進んでいると。逆にいうと、ソフトウェアプラットフォームを導入して意思決定のスピードを速くしましょうと、おそらくみんな速くしてると。
それによって、最終的にイノベーションを起こして、それが市場に出てくると価値があるかと言われたら、その価値づくりにはたぶんもうちょっといい仕組みがあるんじゃないかなと思っていて。
つまり、プロダクトを内製しようとしたらうまくいかないから、オープンイノベーションだとか言ってやるんですけど、なんかオープンイノベーションの半分ぐらいは僕は巧妙な罠だと思っています。
オープンイノベーションと言っているコンサルタントに払うお金のほうが高いんですよね。もしくはオープンイノベーションと言っているやつを食わせる金のほうが高くて。そんなことをする必要はまるでないと思うんですけど。
そうなったときに、どういう事業体をちゃんと構想できるかというところが、経営層にはたぶん求められているんじゃないですかね。
谷本:いつになるかはわかりませんが、シンギュラリティ時代が到来したとき、どういった基準というか、KPIのようなものが必要になってくるのでしょうね? 例えば、いま、いわゆる世界共通の判断基準として、経済的な成長性をGDPで測ったりしていますよね。
落合:なるほどね。でも、これは難しいですよね。社会の中でなにが幸福かとかいう議論になると、これはまた成立しないような問題になってくるし。
谷本:そうですよね。
落合:お金で測れるところはやっぱり非常にわかりやすい指標ではあると思いますけど。ただ、ここでポイントなのは、対象をお金に換算できないような問題が起こるわけですね。いや、根拠があれば別に価値算定する方法はいくらでもあるから。
谷本:なるほど。そこで、次のQ3にいってみたいと思うんですが、ハンナ・アーレントが『人間の条件』でいう「労働」「仕事」「活動」の3条件を満たせなくなったときに、新しい価値観が求められる時代がやってくると。そのとき、どのような人間が人間らしく楽しめるのか? と。
落合:ああ。これはおそらくハンナ・アーレントの『人間の条件』が言うところの人間という定義が違っていると思うんですけど。なんでかというと、人間はこの社会にとって、手段であって目的ではないんですよ。これはなかなか攻撃的な意見かもしれないですけど。
谷本:ええ、そうですね。
落合:我々は社会を成り立たせるために人間の定義を成立させてきたという、ヨーロッパの歴史があるわけじゃないですか。だって、人権の定義なんて社会をつくるために定義を作っているわけですから。
それを考えたときに、人間が人間らしいということ自体が目的になっている状態が間違っている。これは、我々が受けてきた近代教育においては、たぶん価値観が丸っきり違うわけですよね。つまり、この「労働」「仕事」「活動」みたいなものが出てきたと。「ワーク」と「ライフ」と、あとなんだ? あれ、「労働」と「仕事」って一緒じゃないのか。
谷本:確かにそうですね。
落合:ワークとライフがあったときに、(そもそも)ワークとライフって話じゃないだろうというようなときとか。あと「Work as Life」って僕はよく言ってますけれども、そういった価値観が求められるというよりは、人間の定義を守ろうとするような価値観自体がもう瓦解しているということだと思います。
それは限界費用が0にはならない人間というのがいて、0にならないということを規定しているおかげで、我々はイノベーションを阻害しているところももちろんある。
落合:よくベーシックインカムという話になってますけど、我々の社会において、今ベーシックインカムが成立していない感じでいるのは、一見そう見えているだけで、例えば、どこに住んでいるかによって我々は社会として恩恵を受けている。
例えば、税金の割り振りがだいぶ違うわけですよね。僕が山奥に住んでいたら、そこでかかる生活コストは、おそらく僕が払う税金よりはるかに高い。これはどこかの誰かが負担しているわけですよ。例えば人口密集地域で容積率の高い東京とかね。
そういうところを考えたら、僕らって実はなにもしないでも、ある1個の国民国家の枠組みの中で生きている以上、明文化されていないだけで、ほぼベーシックインカム状態になっているわけですよ。それは「どこでも我々は同様の国民国家としてのサービスが得られる」という規定の下、過ごしてきたわけです。でも、そのサービスは人口が増加していくか、人口が急激に減少しない条件の下で成り立っていた。
つまり、我々の社会が今迎えているのは、山の向こうにおじいちゃんたちが1,000人ぐらい住んでいると。あと5年したら500人ぐらいになってる。でも、その生活インフラをカットしたらおじいちゃんたちが困るから、カットできないわけじゃないですか。
その人たちはベーシックインカムはもらってないにしろ、我々の負担している額は非常に多いわけですよね。それをどうやって、中央集権型の配電システムやインフラシステムではなくて、非中央集権型で回していくかというようなチャレンジが、今我々が人口減少社会において向かっている自動化や機械化の本質的な側面であるし。
あと、我々の持っている社会保障をどう考え直さないといけないのかというところは、人間が人間らしいという話をするときにはもちろんすごく重要です。だって、今は定額で治したい放題ですからね。病院に行けば行くだけ治せるわけですよね。
谷本:そうですね。
落合:でも、それが今の人口が減っていく社会において成り立たなくなっているのは間違いないと思います。それはふわっとした話じゃなくて、おそらく具体的なプロセスに落とせる。
「負担がいつ増えるの・減るの」というのを、もう決める必要があるんですよ。もしくは、そこで「インフラをカットするの・しないの」ということを決める必要がある。それを決められないのは、おそらくもう前提条件が間違っていて、手遅れになる前に決めないといけないことは決めないといけないんですね。
「やっぱり人間だからそうやって言うわけにはいかないじゃないですか?」とか言っている間に、船が沈んでしまったら、成立しなくなるわけなので。やらないといけないことはものすごくたくさんあって、それはできる範囲で片っ端からやっていくしかないんじゃないでしょうか。
谷本:落合さんのご著書『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』に、AI×BI(ベーシック・インカム)と、AI×……。
落合:VC。
谷本:VCですよね。今後、そういった二極化が進んでいかざるをえないということですか?
落合:AI×BIとAI×VCって、最初に言ってたのとまったく同じ話で、給与所得とエクイティインセンティブって話ですよね。
谷本:そうですよね。
落合:つまり、給与所得として労働対価が固定給で払われるというような考え方と、それが金融商材もしくは有価証券みたいなものになるという考え方があったときに、その2つが同一の場所で成立しうるかというところが僕は最近よく考えている問題なんです。あんまりしないんじゃないかなと思ってはいて。
そういったときに、なんでAI×BIなのかといったら、人が働くということを規定するのはプラットフォーム側にあるから(という考え方が1つあります)。もしくは、人が新しい価値を生み出すときにプラットフォームによって限界費用を下げるか、という2つの考え方がありますと。
前者はなんだったかといったら、みなさんたぶん『Pokémon GO』って1回ぐらい遊んだことあると思うんですけど、『Pokémon GO』とUberはやっていることは本質的には一緒ですよね。
『Pokémon GO』でポケモンをピックアップするのとお客をピックしておくのは、やっているタスクはほぼ一緒です。車に乗っているか乗っていないかの違いでしかないです。片方はお金が使われて、片方はお金がもらえるわけですよね。そんなに大した問題じゃない。
落合:逆にいうと、そういうサービスが生み出される枠組みを作るほうには、おそらく投資は必要です。それによって得られる価値をエクイティインセンティブによって獲得するための仕組みは、もちろんAIがなければ限界費用が低い状態でものをつくるのはけっこう厳しいですから、そういったものがどんどん出てくる社会になってくると、だいぶ二極化すると。
二極化するなかで、単純に「二極化する」という言葉だけじゃなくて、動かす職能が違うわけですよね。片方は、機械が言うとおりに動いて、ストレスを感じずに毎日が楽しく生きられるマインドセットを作らないといけないし、片方はすごいストレスフルか、もしくは働いているときにストレスを感じないような、プレッシャーに強い人材がリスクを取って動ける社会を作らないといけない。
その両者のどっちが悪いかといったら、悪いわけじゃないじゃないですか。だって、僕だって昔はたぶんポケモンをやってるときがあって。ポケモンをやっているときは、僕はAI×BI型の人間だし、逆にいうと、自分で会社をやったり研究してるときはAI×VC型の人間なんですよね。そういうバランスを個人がどう取っていくかが本質的な問題だと思います。
谷本:いずれにしても、これからAIや機械との共存ということになっていくと、今よりもストレスフリーな生き方ができるようになると思うんですが、そもそもそういった安定性や幸福感、満足感に常に満たされている状態というのが、本当に人間の最良の状態であるかということも議論をしなければいけないと思うんですよね。
また、医療技術が進み、病気がなくなって健康になっていくとか、人から「苦労」や「辛さ」という要素がなっていくというのは、人間がこれから生き延びていく上で良いのかどうかというところが、私は気になっていて。
落合:どういうことですか?
谷本:人間って苦労をしたり、プレッシャーを受けたり、それに対して、耐え忍ぶということが、意外に人間のDNAを保存していく上ですごく重要な役割を果たすような気がしているんです。
落合:適度な負荷ってことですか?
谷本:そうそう。
落合:いや、適度な負荷はかかりますよね。
谷本:かかるかしら?
落合:適度な負荷は絶対かかると思うんですけど。ストレスというと、みんななんか「職場で働くストレス」みたいなことを思っちゃうので。これはたぶん名前がよくなくて、ストレスというのは“頭脳の負荷”だと思うと、非常におもしろい。おもしろいというか、それが本質的なストレスの意味なんですよ。
つまり、ストレスマネジメントができているということは、処理能力の負荷をどうやって分散させるかということです。つまり、生産活動が多い社会というのは、頭脳生産活動によって、肉体負荷ではなくて頭脳負荷がかかるんですよ。
そういったときに、ものを選択するとストレスって溜まるじゃないですか? 有名な話ですけど、例えばアインシュタインが月〜金まで着る服を決めてたとか、スティーブ・ジョブズが同じ服しか着ないとか。
それは、ものを判断することがひたすら多い人は、ものを1回選ぶときにちょっとでもストレスがかかるので、そのストレスを減らしたいと思うのは当然な発想なわけですよね。そういう人間が感じているストレスをどれだけ減らせるかということがあります。
例えば今、自動運転の仕組みが世の中に出てくると言われていますけど、アウディのAIとかレクサスの新型車に乗っている人からすれば、首都高に入ったあとはほぼ自動運転なわけですよね。首都高の入り口から出口までは自動運転で運んでくれる。でも、あそこのETC料金を払えない人が自動運転の恩恵にあずかれていないんですよ。
つまり、我々の世代はもうとっくにある一定の意味で自動運転になりつつあるのに、はっきり言って、その自動運転にありついていないというのは、明らかに所得とエクイティインセンティブで生きているかどうかの違いであって。それは今、恐ろしく我々の社会に効いてきていると思います。
つまり、なんでそのお金をその人たちがコストで払うのかといったら、運転するという脳負荷をちょっとでも下げたいからなんですよね。タクシーの後ろに座ってても脳負荷がかかるじゃないですか。(運転手さんが)なんか言い出すかもしれないしね。
谷本:(笑)。
落合:でも、そういうことを考えたときに、我々はいかに、どこの脳の負荷とか、逆にどこが気持ちいいストレスなのかを見極めて、自分の生産性を最大化させていかないといけないんじゃないですかね。
谷本:その考え方、とても面白いですね。では、最後の質問にまいりたいと思います。中国のマーケット拡大とテクノロジーの進歩が進んできている中で、日本がどうやって勝ち残っていくか。
例えば、日本において、テクノロジーという意味での勝機があるかどうか。そして、それを含めて、日本がどのように再興していけばいいのかということです。
落合:中国の何社からお話を頂いているわけなんですが、僕がこの中で一番思っているのは、我々の価値基準がこっちにあるものは比較的うまくいくと思うんですよ。ただ、社会を抜本的に変えるとか、完全に自動運転でこのコミュニティを成立させますみたいなものって、中国はやっぱり速いから絶対勝てないと思うんだよね。
でも、向こうからアプローチはあるわけじゃないですか。「日本の技術を突っ込んでみませんか?」と。「Society 5.0はすばらしい考え方です。じゃあ実装するのは中国でやってください」って言われているわけです。我々の社会は。我々の製品はね。
そういったことを言われているときに、我々がそれをそのままやるのかといったら、「どうせ技術は絶対盗まれる」と。「盗まれてもいいから社会を変えるんだ」と。「とりあえずテストケースを作らないと我々の社会は変わらないからやる」というならやったほうがいいと思うし、それはもう決断の問題だなと思うわけです。
これで我々が今考えないといけないのは、勝つというのはどういうことか。勝つというのは、たぶん我々の生み出したイデオロギーによって、我々の生産性が最大になる状態だと思います。
我々は高度経済成長期にはうまく社会構造としてそういうものを持ってきたわけです。今は「社会は自信を失っている」と言うのですが、あれは抽象的な言い方で、我々には今、イデオロギーがないです。でも、それって作れるといえば作れると思うんですよ。
落合:例えば、我々はもう社会が高齢化するから自動化・省人化は正義なのだと決める。つまり、テクノロジーを使って問題を解決することを第一義に考えないと、我々は高齢者の問題とか介護施設の問題とか、はたまた安定的な社会を維持できないから、「テクノロジーを使ってものを変える」と決めれば、ある種、やれることはいっぱいあるわけです。
我々の社会は、産業用ロボットだって生み出していますし、オートメーションだって昔からやっているわけですから。かつ、我々はITの敗北があるからソフトウェア的にうまくないかといったら、そんなにうまくないなんてことはなくて。
そこに適切なお金が支払われれば、我々の社会はそこで人を獲得できないこともないし、僕はリサーチフィールドにいますけど、そういう人たちがここ(研究分野)に来てくれないかといったら、そんなことないわけですよね。
それは我々に漂っている閉塞感自体が、マインドセットの問題であって、「変わる」と決めれば変わる問題なのに、なぜ変えずにうだうだ言ってるのかが僕にはわからない。
しかし、それはもう(マインドセットが)変わった人たちにとってはブルーオーシャンになっていて、非常に生産性が高い状態を維持できる。しかしながら、なにか架空の命題に対して向き合っているうちは、おそらく経営の判断もできない。それは決めてないからなんですよね。
だから、例えばシェアエコノミーとかだったら、非常に我々の社会と相性がいいじゃないですか。だって遊休資産がこれから死ぬほど増えてくるわけですからね。
その遊休資産をそうやって活用していくという考え方それ自体は、人口増加社会では、遊休資産をつくるよりは、今生み出しているものの限界効用をどうやって上げるかと考えるわけですよね。それってぜんぜん違う問題です。
でも、アメリカは人口が増えています。イギリスも人口が増えていますと。日本は減っていますと。ほかのアジア諸国が増えてますかといったら、増えていますと。日本は減っていますと。放っておいたら、日本のことを誰かが問題解決してくれますかといったら、してくれませんと。マーケットはでかいですか? 小さいですと。
そうしたら、我々は我々の価値基準によって問題を解決していかないかぎりは、別に誰も解決してくれないわけですよ。海水面が上昇するからって、我々は必死でミクロネシアの国を守ろうと努力しましたか? お金は払ったかもしれないけど、別に自分ごとじゃなかったですよね。それと同様なことが、今この社会で起こっているわけですよ。
落合:お隣の国は比較的今(高齢化問題は)重要ですと。中国は2040年〜2060年の間に高齢状態に突入しますから、おそらく12億人以上の人口を維持するために非常に大きな問題がやってくると。
しかしながら、あそこの国は国境線が比較的、例えばインドと……まぁインドと仲良くなるのかはわからないですけど、労働人口が流れやすい構造にはなっていると。我々の社会がそうかといったら、なぜか海に囲まれている。これは大きな差がある。
そういったときに、例えばドラスティックにテクノロジーを取り入れて我々は(社会を)変えられるかといったら、中国に比べたって変えるのは遅いですよね。
そういったときに、我々の社会で高齢化に対して向き合っているノウハウをどうするか。中国は絶対にその(高齢化社会への)準備を早くし始めます。2020年ぐらいには絶対します。そうなったとき、我々はどういう輸出政策にしていくかということは考えておかないといけないし。
我々は課題先進国に見えますけど、課題解決をやりながら走っていくにはいい土壌を持っているんじゃないかなと思っていますけどね。
谷本:今マクロ的なソリューションや方向性をおっしゃってくださったんですけど、例えば企業の方が勝ち残る手段であるとか、道筋について、なにかキーワードであったりアドバイスするとしたら、どういったことになりますか?
落合:フットワークの軽い組織をつくるって最初に言ってたことですけど。あとは、自動化・省人化して、第一義的にテクノロジーで問題を解決することを考えることです。
谷本:なるほど。
落合:ほぼすべてのエンジニアリングの問題は、発明によって解決されてきたわけなんですが、我々の社会は「いやー、技術的にはできるんだけどね」という言葉をすごい免罪符にするんですよ。「技術的にはできるんだけどね」「じゃあやれよ」という話であって、「技術的にできるんだけどね」と言いながらやらない状態が続いているかぎりは、我々のGDPは回復しない。というか、伸びない。
谷本:個人として勝ち残る道筋は?
落合:個人としての勝ち筋は、そういったような「いやー、技術的にはできるんだけどね」と言われた瞬間に、辞めてベンチャーを起こして、技術的にできるようにすることです。
谷本:素晴らしい!
落合:そうすれば年収2倍ぐらいになる。いや、3倍、4倍ぐらいになりますよね。でも、本質的にそういったことなんですよ。「できるんだけどね」と言われてできない理由は、企業の中にあるか法令側にあって。大企業が品(質保)証を取れないからできないんだったら、小さい企業を使ってリスクを取ればいいじゃないですか。
深圳ではそういうアプローチを取れるわけですよね。だけど、我々の大きくなっちゃった企業体にはパッと取れない。でも、その差は本質的にはなにかといったら、自分が飛び出して小さい会社をつくるかどうかですよね。そういった判断基準で動ける人ががんばっていかないと、なかなか、ものによっては沈んでいく船なんじゃないかなと思います。
谷本:そういった危機感であるとか、価値観を根本から覆すようなきっかけになりうること、もちろん、自分自身で変われればいいんですけど、どういったことが必要なんでしょう?
落合:そうですね、この社会で生きていくのにあとどのぐらいのお金が必要なのかとか考えてみると、意外と身に染みるんじゃないですか。だって、お金ってぜんぜん重要じゃないけど、お金で評価されている経済の考え方なんだから、数値化できることはできるし。
はたまた、日本国内の様子じゃなくて、海外の様子を見ればいいと思うんですけど。例えば、学び直すのにPh.D.取り直すのは普通ですし。専門家と呼ばれている人たちがどういう教養を身につけて、対象の問題を発見するのかとかを考える。
逆にいうと、社内政治になってきたなと思ったら、それは潔くそうじゃないというアプローチをしたほうがいい。自分がプレイヤーの立場にないんだったら、逆にそれをサポートする投資家の立場に回るか、もしくはそれをサポートするスタッフの立場に回るほうが、僕は建設的だなと思っていて。
それは若い人だけじゃないです。ビジネススキームに慣れた40〜50代後半の人は、今ベンチャー企業が非常に求めているわけですよね。「そういう人がいてくれたらいいのにな」って僕も会社で思うし、実際にそういう人を採用してますから。
落合:そういうことを考えた上で、じゃあ我々はどうやってやれるのか。別に、一人ひとりが違うことでいいんですよ。
谷本:(笑)。
落合:でも、ライブコマースと配信が揃っている状態で、その配信コストはもう本当に安くなったわけで。
谷本:そうですね。
落合:そういったものができるようになってきた以上、我々の社会って自由度は上がっていますから、しかも自動化も省人化もプラットフォーム化も正義なわけで、そういった状態においては非常にやれることは増えていると。僕はやれることをやっているけど、人によってやれることは違うから、自分が向いていることをやるんじゃないですか。
谷本:そうですね。まだまだお伺いしたいことたくさんあるのですが、お時間ということになりました。
落合:これ、俺、文庫本2冊ぐらいしゃべってる!
谷本:ね、本当に。得しちゃった。ですよね、みなさん。たしかアメリカの科学者が言ってた言葉があって。「未来を予測するのに最善な方法は、未来を開発していくことだ」というふうにおっしゃってて。
落合:アラン・ケイだね。
谷本:そうそう、まさに今日、落合さんがおっしゃってたことだと思うんですけど。
落合:ちなみにアラン・ケイはすごいよね。3兆ドルぐらい生み出しているから。
谷本:そうですか!
落合:たぶん。パロアルト研究所はすごくよかった。しかしながら、ゼロックスは勝てていない。これがイノベーションの答えだと思います。ゼロックスの研究所にいたアラン・ケイは、別にゼロックスに勝たせていない。勝たせたのはAppleですからね。
谷本:そういうことですよね。
落合:つまり、パクリでいいんですよね。とりあえずは始めれば。だって、Appleが勝っちゃったんだからしょうがないじゃん。
谷本:そうですよね。あと、そのアラン・ケイの言葉ではありませんが、私たちが価値観を生み出していかなければいけないなと改めて落合さんのお話を伺っていて思いました。
落合:いや、これはね……ちょっと1分だけ延長していいですか?
谷本:もちろん。
落合:いや、1995年~1996年の『新・電子立国』というNHKのドキュメンタリーの番組があって。悲しいことに、ネットで探して見ると、例えばビル・ゲイツが平気で出てるんですよ。アラン・ケイだって出てるんですよ。そしてウォズニアックだって出てるんですよ。
だから20年前は、我々はそういう人たちを普通にテレビに出してたんですよ。それで会話ができていた。僕たちが今、「NHKでドキュメンタリーを撮るから、ビル・ゲイツ来てくれ」って言ったら、来てくれないでしょ? じゃあ、ここの前まで芽はあったんだけど、芽はなくなっちゃったんだよね。
(その)キーが1個あって。昔、僕が家に置いてあった親父の週プレの連載を見てたときに、ウォズニアックにインタビューした回があって。「日本はハードウェアは最高だ。でも、ソフトウェアはいまいちだ」ってウォズニアックに言われてたんです。
「それ、どうしたらいいですか?」ってうちの親父が聞いたら、「そんなの簡単だ。若者を自由にすることだ」って言ってましたね。でも、それが25年経ってもなにもできていないのは非常に悲しいですね。
谷本:本当ですね。
落合:でも、単純です。自分の社内と社外の算定を考えたときに、社外のほうが高い人はこれからは社外に出てきますから。
谷本:そういうことですよね。
落合:社外に出ていったら、そういうシチュエーションでやったほうがプロジェクトは早く進むんですよね。
谷本:そんな未来を見据えて、本当に私たちが価値を創造していかなければいけないということだと思うんですが、このトークセッションが本日お越しのみなさんにとって、いいきっかけになり一歩を踏み出していただけたらと思います。
落合さんにあらためて大きな拍手をお送りください。どうもありがとうございました。
落合:ありがとうございます。
(会場拍手)
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