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人工の「クモの糸」が変える世界

クモの糸で変わる世界: 関山 和秀 at TEDxTokyo #1/2

「クモの糸」は、世界で最も強くタフな繊維だと語るスパイバー・関山和秀氏。人工のクモの糸をつくり実用化するための研究を続けてきた関山氏は、このまま開発が進めば、人がぶつかっても歩行者に怪我をさせないような自動車や、着ているかどうかも忘れてしまうような軽くてしなやかな衣類や防護服など、世界を一変させるようなものづくりが可能になるかもしれないと語る。TEDxTokyoより。

防弾チョッキの7倍のタフさ「クモの糸」を実用化する

関山:こんにちは! ちょっと僕、声大きいんですけど、よろしくお願いします。

僕たちはクモの糸を開発しているんですね。世界で最も強い、最もタフな繊維、それはクモの糸なんですけれども、今日はその話をしたいと思います。

クモの糸の最大の特徴というのは「強くて伸びる」、ということです。強くて伸びる、強さと伸びというのは本来、相反する特点なんですけども、これを見事に両立しているのがクモの糸です。強さと伸びを兼ね備えているということは、つまり破壊されるまでに必要なエネルギー、これがものすごく大きいということで、つまり、タフということなんですけれども。

こちらは上から三つが、緑のバーがクモの糸のタフネスを表しています。この一番上のDarwin's bark spiderというクモの糸、これは最もタフな材料と思われている防弾チョッキに使われているアラミド繊維の、大体7倍くらいのタフさがあると。

関山:私達はこの自然が生み出したクモの糸を、何とかして実用化したいと思いました。微生物を使って、遺伝子を組み換えて、クモの糸の成分を作り出して、化学繊維のように紡糸する、繊維化する、と。それが私達のアイデアです。

石油からできている化学繊維というのは私達の身の回りのありとあらゆる製品に使われていて、私達の生活を支えています。しかし、これ、石油が枯渇してしまったらそれは使えなくなってしまう。

もし、この石油からできている化学繊維と同じくらいの、もしくはそれを上回るような性能を発揮する、しかも原料を石油に頼らないクモの糸が実用化できたら、これはものすごいことだと、ものすごいイノベーションだと。私達はそのクモの糸がもうありとあらゆる私達の製品に使われていって世界を変えていくんじゃないかと。そう確信してこの研究を始めようと思ったんです。

実はこのアイデア、研究室の仲間達とお酒を飲んでいる時に、飲み会の席で思いついたアイデアです。飲み会の時に、朝まで飲んでたんですけども、「クモの糸、ものすごい」と。で、これを量産化する技術を開発して、ベンチャーを作って実用化しようと、仲間達とものすごく盛り上がったんです。

その後に研究室の真面目な会議で「僕達はクモの糸を実用化します」と言ったら、もう皆会場中大爆笑で、えー、要は僕が冗談を言ったと思ったんですけれども。その後に僕は実は冗談じゃなくて真剣に言ってるということが分かったら、もう皆こぞって「そんなことできるわけはないじゃないか」と。「不可能だ」と言ったんです。

僕達はその後、大学4年生の時だったんですけども、修士課程に進学して、もう何とかしてこれを実用化しようと研究を進めました。で、卒業間近にこのクモの糸のタンパク質を、微生物を使って、えー、本当に微量なんですけども作ることができて、で、それを繊維化する実験を行いました。そして、はじめに作った繊維がこちらです。

このミミズみたいなやつがはじめに作った繊維なんですけども、これを見てものすごく感動して、本当にクモの糸が人工的にできるんだと思ったんですね。これを見た時に僕たちはベンチャーを作ろう、と決意したわけです。

でも、またこんなゴミだか埃だか分かんないような繊維ができた段階でベンチャーを作るなんてオマエ達頭おかしいんじゃないか? みたいな、もうクレイジーだ、と皆から言われて大反対されたんです。

でも、このクレイジーなアイデアを実現しようという勇気のある仲間達とベンチャー企業を立ち上げて、ま、皆お酒の飲み仲間なんですけども(笑)、えー、ベンチャーを作ったんですね。で、こちらは会社を作ってから約一年後くらい、我々が開発してきた技術の粋を集めて作ったクモの糸の成分です。

これ、20mgくらい入っているんですけれども、これだけの量を作るのにフラスコ、毎日毎日培養して3ヶ月間かかって、これだけなんです。でも、これだけの量を微生物で作らせるというのは、もう当時としては画期的なことでした。

クモの糸を量産化して、世の中を変える

しかし、これでは量産化できない、と。そして、5年間研究を続けてきたわけなんですけれども、私達はついに世界で最高の生産性を実現することができました。こちらが今、ラボでこれだけの量をたったの2、3日で作れると。大体研究を始めた時から2,500倍くらいの生産効率になっています。

ここまでできたんですけども、このポリマーを今度は繊維化しないと実用化はできないと。繊維化しないといけないんですけども。こちらもここまでできるようになってきました。

人工的に作ったクモの糸をここまで自動で巻き取れるようになっている、と。誰もこのミミズを見た時にはここまで思いつかなかったというか、想像だにしなかったことなんです。今日は皆さんにこちらをお見せしたいと思うんですけども、こちらがですね、私達が世界でおそらく初めて作ったカラーのクモの糸です。

本当に美しいんですけれども、この会場にいる皆さんは、このカラーの人工的に作られたクモの糸を目撃する世界でほぼ(笑)最初の人類です!

ここまでの繊維をこれだけの量、作れるチームっていうのは世界に私達しか、おそらく今いません。しかも私達は繊維だけではなくて、このポリマーを使ってフィルムを作ったり、スポンジを作ったり、ゲルを作ったり、ナノファイバーを作ったり、いろんな加工技術を平行して開発しているんです。

じゃ、このクモの糸、実は何からできているんでしょうか? って言うと、実はタンパク質でできているんですね。で、タンパク質っていうのは、私達の身体を構成している、生物を構成している最も大切な成分、最も大切な材料です。

このタンパク質、例えば私達の身体は大体10万種類くらいのタンパク質でできているんですけれども、この10万種類のタンパク質、驚くべきことにたったの20種類のアミノ酸、これが繋がった分子なんです。

つまりこの20種類の並び方がどう並ぶかで、例えば髪の毛になったり、皮膚になったり、爪になったり、筋肉になったり、ホルモンになったり、酵素になったり、そしてクモの糸になったりすると。つまり私達はこのアミノ酸配列の並び方をデザインすることで、クモの糸をより強くしたり、より伸縮性を高めたり、生態的合成をコントロールしたり、そういったことができるんじゃないかと。実は、それが私達の本当のチャレンジです。

これがもし可能になれば、おそらく、例えば人がぶつかっても歩行者に怪我をさせないような自動車だったりとか、着ているかどうかもう忘れてしまうような軽くてしなやかな防護服だったり、ジャンプして着地したのが分からないくらい衝撃を吸収してくれるスキーだったりスノーボードだったり、本当に強いんですけどものすごい軽くて発電効率がいい風車だったり、もしかしたら人の身体を守る次世代の宇宙服にも使えるかもしれない。

タンパク質のその生態適合性を活かして人工血管だったり手術の縫合糸だったり、次世代の医療を担うような材料が作れるかもしれない。

本当にこのクモの糸がありとあらゆる製品に使われて世の中を変えていく、と。ものづくりの概念を一変する、という風に私達は思っているわけです。本当にこの飲み会の席から始まった、半ばクレイジーなクモの糸を実用化するというアイデア。はじめは皆不可能だ、と言いました。皆さんはこれを見て不可能だと思うでしょうか? 私達はそう思わない。

ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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