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ほぼ日のビジネスモデル(全3記事)

CFO篠田氏が語る、ほぼ日のビジネスモデル 人々をひきつける“コンテンツと場”の思想

2018年5月23日、EDGEof にてビジネスモデル学会が主催する、第14回Evening Sessionが開催されました。今回は、「 ほぼ日の目指すもの – 次なる資本主義を見据えて 」と題して、株式会社ほぼ日の取締役兼CFOの篠田真貴子氏が登壇。ほぼ日という会社のビジネスモデルや社会との関わり、ほぼ日の組織や人材、上場の理由などを語ります。本パートでは、提供しているさまざまな「コンテンツ」や「場」を事例に、現在のほぼ日の事業概要について紹介しました。

ほぼ日のビジネスモデルをご紹介

西田治子氏(以下、西田):みなさま、今日はようこそいらっしゃいました。私、ビジネスモデル学会の代表幹事をしております、西田と申します。今日は、ある意味では私の長年の友人というか、尊敬している篠田さんと一緒に対談できることを、大変楽しみにして参りました。

メニューとしましては、こういうタイトル(『ほぼ日の目指すもの – 次なる資本主義を見据えて』CFO 篠田真貴子さんに聞く ほぼ日的働き方)ですけど、何が出てくるかわかりません(笑)。まず1時間くらい篠田さんにおまかせでお話をいただきます。

そのあと30分くらいですが、私と質疑応答をしたり、会場のみなさんのいろいろなお話、手を挙げて質疑応答をするような機会を設けたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは篠田さんにお話をいただきたいと思います。

篠田真貴子氏(以下、篠田):改めましてご紹介にあずかりました、ほぼ日の篠田です。今晩はよろしくお願い致します。西田さんは昔の職場の大先輩、大って言っちゃ失礼なのかな、偉大な先輩でして(笑)。今回お声がけいただいて大変光栄です。

ビジネスモデル学会という場なので、思いっきりビジネスモデル的な話がしたいなと思ったんですけど、なかなかけっこうほぼ日という会社は複雑でして。そんな簡単に歯は立たないので、精一杯やってみてますよ、というところで温かく見守っていただければと思います。

それから、ご案内のタイトルが、『次なる資本主義を見据えて』となっていますが、見据えていただくのは西田さんとみなさんにおまかせしたいと思います。私はあくまでも前座で、「ほぼ日はこういうところですよ」という話をしていこうと思っています。たっぷり1時間いただいてますので、精一杯、ほぼ日のビジネスモデルと言えるであろう内容(をお伝えしたいと思います)。

それから、その(ほぼ日のビジネスモデルの)前提になる考え方が、大事だなと思っています。私もほぼ日に入る前はわかりやすい外資系の大企業で働いてきたので、けっこうそれらと違うところがあるなと思いまして、そのあたりもお話します。

そこから、その考え方を起点にして組織のあり方、人材のあり方、そして、ずっと必ず聞かれる「なんで上場したんですか?」という、このあたりも触れていきたいと思っています。

この4つのテーマに通じるのが、「人は、なにがうれしいか」。

小学生の問いのような設問ですけど、これが実はずっと通奏低音になっていきますので、なんとなく覚えておいていただけたらと思います。

みんなが集まる多くの「場」を提供している

篠田:さっそく、ほぼ日の事業の内容からお話していきます。IRなどの場で、まず「ほぼ日はどういう会社ですか?」というときに、今はこういう自己紹介をしています。

「株式会社ほぼ日は、人々が集う『場』をつくり、『いい時間』を提供するコンテンツを企画・編集・制作・販売する会社です」。いくつかキーワードがあるんですけど、「コンテンツ」と「場」について先にお話をします。

まずコンテンツなんですけれども、一般的なコンテンツという言葉より少し定義の幅を広げています。日本語に訳すなら演目、つまり番組とか出し物とかお楽しみだとイメージしております。

ですので、クリエイティブがある種のかたちを成して、人々にお届けできるものになっていれば、それは一般的にコンテンツとされる読み物やキャラクター、画像以外にも、イベントやモノのかたちをした商品も全部、コンテンツだと私たちは考えています。

じゃあもうひとつのキーワードの「場」。「場」とはなんでしょう。これはちょっと具体例を通じてお話したほうがいいかなと思います。今ほぼ日が提供している主な場として、たくさんありますけど、このような8つを挙げてみました。

中核となっている「ほぼ日刊イトイ新聞」というWebサイト。主力商品の「ほぼ日手帳」という商品。「ほぼ日ストア」というeコマースの場。「HOBONICHIのTOBICHI」というギャラリーショップ。

(スライドを指して)あちら側にいきまして、この「ドコノコ」は、ぜひみなさんダウンロードしてください。犬と猫と親しむアプリです。「生活のたのしみ展」」という物販のイベント。「ほぼ日のアースボール」、これは商品であり、ある種、情報インターフェースになり得るものです。

そして「ほぼ日の学校」という……あ、通っていただいている方もこの会場にいらっしゃいますね。学校といえば学校なんですけど、なかなかにおもしろい取り組みをしています。それぞれちょっと簡単に内容をお伝えしていこうと思います。

20年前からWebサイトを毎日更新

篠田:まずWebサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」ですが、こちらは1998年6月6日から毎日更新をしています。

トップページを見ていただくと、糸井重里が毎日日替わりで、「今日のダーリン」というエッセイを書いています。最新コンテンツというところに読み物、それからこれは白いシャツ、今日販売になった商品です。これはイベントの告知。また俳優の山崎努さんのインタビューとか、さまざまなコンテンツがここに並んでいます。わかりやすくするために、読み物コーナーと物販コーナーで分けて見られるようになっているんですけども。

さっきお話ししたとおり、ほぼ日は1998年(開設なので)、(今年の)6月6日で20周年を迎えます。ありがとうございます。迎えるんですけど、みなさん、20年前を思い出していただけますか? 何歳でいらっしゃいましたか? 20年前、お家にインターネット接続があった方っていらっしゃいますか?

(会場挙手)

さすが、多いですね、たぶん日本の(中では)。でも、ざっと見た感じ3、4割って感じですかね。

こちらのグラフを見ていただくと、折れ線が日本のインターネット普及率で、1998年は13パーセントくらいでした。もうダイヤルアップですよね。ピーヒョロロっていうやつで、テレ放題とか、みなさんお金持ちだったらあまり気にされていなかったかもしれないですけど、夜になって電話をつなぎたい放題になってからインターネットに繋ぐという時代から、ほぼ日はずっと営業しており、糸井重里が1日も落とさず毎日エッセイを書いています。

インターネットの普及率が70パーセントを超えたあたりから、だいぶ伸びが平らになっていくんですけど、一方ここの黄色いグラフが当社の売り上げです。ちょっと凹んでいるところは決算期変更があったので、丸一年じゃないというだけで、こんなところから前年度が40億ちょっと、今年の予想が47億くらいの規模まで、ゆっくりですけど着々と成長してきました。

次の「場」です。HOBONICHIのTOBICHI。実は、場というものがウェブサイト以外に広がり始めた(のは)、けっこう最近で、2014年にオープンしています。

先ほどお伝えしたように、これは本当にWeb内にしかなかったほぼ日がリアルに飛び出したというコンセプトで作った場所です。例えば作品の展示とか、体験型のイベントであったり、あるいは食品など、Webではちょっと楽しめないタイプのコンテンツを楽しんでいただいています。

ほぼ日グッズの販売スペースもあって、そこではWebの通信販売ではできない、実際に商品を手にとって購入することができます。東京の南青山と、ちょうど1年前に京都にもこうした場をオープンしました。

「ほぼ日手帳」のユーザーは67万人

篠田:続きまして「ドコノコ」。これは2016年の6月にローンチしまして、もうじき2年になります。このように写真型のSNSで、犬や猫を投稿して楽しんでいただくんですが、さまざまな仕組みだけじゃないですね。

本当にいろんな幸運が重なって、ユーザーのコミュニティが、非常に質が高いものになっています。こちらローンチした2016年には、Apple Storeのほうでは話題になったアプリとして、ポケモンGOとMiitomoが出た時に、一緒にドコノコも選んでいただきました。

次いきます。ここまでお見せしたのは「場」ですよ、というとなんとなくイメージ湧くと思うんですよね。実際に人が見にくるところだったり、SNS型のアプリだったり。「ほぼ日手帳」も場なんですよ。手帳なのになんででしょう。

まずほぼ日手帳というのは、けっこうボリュームがあって、去年の2017年までで67万部、たぶん普通手帳は1人1冊なので、67万人のユーザーがいる商品です。

ずっと右肩上がりなんですよね。一度も前年割れしたことがないもので。LOFTの文具コーナーで13年連続No.1の売上げを続けております。例えば今年……あ、ほぼ日手帳という商品を見たことある方っていらっしゃいます? 

(会場挙手)

おお……何人か見たことない方もいらっしゃるので商品を紹介しますね。サイズは3つしか出してないんですけど、メインは文庫本サイズの1日1ページ型の手帳で、本体(リフィル)とカバーが別売になっています。多くのユーザーの方がカバーを買って、カバーは何年も使う方も毎年買う方もいますが、中身の本体のほうは毎年買う。こんな感じで使っていただいています。

その「場」だということの1つがカバーなんですけど、ここにも写真ありますけど、例えば今年出したのがBEATLESと組んで、(実物を持って)これは「HELP!」ですね。

(実物を持って)これはシュタイフというドイツのぬいぐるみです。1体5万円とかするタイプもあり、コレクターズアイテムになっているようなブランドです。そのメーカーとコラボレーションして、ぬいぐるみの生地で作った手帳カバーとか。

(実物を持って)このちょっと大きい、笹尾光彦さんという画家の方の絵をデザインしたもの。あるいは星野道夫さんという自然写真家の方がいらっしゃいますね。その星野さんの写真をカバーにしたもの。

というようにさまざまなクリエイターの作品、あるいはブランドとコラボレーションして、このほぼ日手帳ができあがる。つまり、そういったコンテンツホルダーが集まる「場」になっているんですね。

学校という「場」も開校

篠田:同時に、ユーザーが集まる「場」にもなっています。実際ここ何年かは、「ミーティングキャラバン」などと呼んで、さまざまな場所でその地域のユーザーの方に集まっていただいています。本当に手帳を見せ合って、「私はこうやって手帳を使ってます」って言い合うだけのイベントなんですけれども、すごく楽しい。

例えば銀座、八戸、熊本、香港、上海というように、各地で同じようにユーザーが集まる。こうやってこうユーザーが集まる「場」にも、実はほぼ日手帳はなっています。

リアルだけでなく当然SNSでも、Instagramですとハッシュタグ「#hobonichi」が使われています)。中国だとInstagramはあまり使えませんので、微博でハッシュタグ「#hobo#」ですけれど、もしお手もとでよろしければ検索していただくと、Instagramの投稿数はたぶんもう70万は超えてると思うんですよね。世界中のみなさんが自分の手帳をこうやって撮って投稿をされています。というように、手帳も「場」を成していたんです。

今、ちょっと海外のこと少し、香港や上海にユーザーが集まったり微博やInstagramのことも申し上げましたけど、2017年版が、80ヶ国以上のユーザーにお届けをしています。我々は通販、直販が主なチャネルなこともあって、世界中からオーダーをいただいて、普通にEMSでお送りしているんですね。結果このように世界にもユーザーが広がりました。ここまでが上場前からあった「場」です。

ここから先は上場後に、この1年ちょっとで出したものをいくつか紹介します(スライドをさして)。まずこちらが「ほぼ日の学校」。これは古典というコンテンツをほぼ日が扱おうという試みで、講座形式で開いています。

まだ1回目のこのシリーズの最中なので、まだまだここからさまざまな発展をするんだと思うんですけれども、シェイクスピアというテーマで講師のラインナップをちょっと見ていただいて、私よりお詳しい方がここにもたくさんいらっしゃると思うんですが、シェイクスピアの専門家の先生もいらっしゃいます。あるいはシェイクスピア劇を演じたり演出している方もいらっしゃいます。

でも、それ以外にも例えば、医師の向井万起男さんですとか、ベンチャーキャピタリストでDeNAの一番初めの外部投資家の村口和孝さんというような方々も講師にお迎えしています。

ここで行っているのは、狙いとしては古典をいわゆる大学の文学部のように学術的に学ぶというよりも、現代の私たちが生きていく上で、暮らしていく上でのさまざまな知恵、あるいは人間とはなんなのか、社会とは、歴史とはなんなのかというところを、古典を通してそれぞれが発見していけるような場にしたいし、なり始めているのかな、と思っています。

クリエイターとイベントを開催

篠田:2つ目が、「生活のたのしみ展」という「ここにしかない、とくべつな商店街」をつくるというコンセプトでやっているイベントです。

これは、1回目・2回目は六本木ヒルズでやりまして、2回目は(スライドをさして)こんな感じの人出です。ちょっとこれは、1分くらい動画があるので……。

こんなふうにさまざまな生活雑貨だったり、食べ物だったり、アパレルだったり。こういうのを販売するんですけれども、これもさまざまなクリエイターにお声がけして、私たちがプロデュースをして商品ラインナップを決める。

https://youtu.be/eBP8pdfuEqc

販売にあたっては我々総出で、あとアルバイトスタッフに来ていただいてやっています。ちょっと人出だけ見ていただきたいんですけど、おかげさまで人がすごくて。大勢のお客さまにお越しいただきました。

6月7日から、第3回を恵比寿ガーデンプレイスでやりますのでぜひいらしてください。今回は場所は変わりますが、規模感は同じくらい。60店舗くらいで5日間行う予定です。美味しい食べ物、楽しいお買い物、あとイベントも日替わりでいくつか用意してますので、詳しくはWebサイトのほうをご覧ください。

続いてが、「ほぼ日のアースボール」ですね。こちらもちょっと画像を見ていただくのがいいので。これはフルですけど1分20秒です。

はい、という商品を2017年12月に発売しました。今見ていただいた通りの商品で、ビーチボールのような柔らかい素材で地球儀になっていて、アプリと連動してアプリ側でさまざまなコンテンツを楽しんでいただける設計になっています。

今配っていただいたカードは、アプリをダウンロードしていただきますと、そこにある画像で試しにそのARがどんな感じかをちょっと遊んでいただける仕様になっていますので、それでお気に召したらぜひ商品を買ってみてください。

地球は世界最大のプラットフォーム

篠田:これ(アースボール)も「場」になるポテンシャルがあると思っていて。まだ始まって6ヶ月の商品なんですけれども、地球って当たり前ですけど、我々がもう知っているものはすべて地球上にありますので、全コンテンツは地球に載るんですよ。そう思うと、プラットフォームとしてはもう世界最大であって。

そうしますと、そのコンテンツが今ご紹介しましたように、小学館の恐竜図鑑であるとか、NHKの世界遺産の画像など、さまざまなコンテンツをこの地球の上に載せることが可能なんですよね。おかげさまでこれも発売してからかなり反響をいただいていて、今後どういうふうに伸ばして行こうかなと今さまざまな実験を考えているところです。

ここまでさまざまな「場」の話をしてきたんですけど、実際その数字的にどうなのよ、というところをさっとご紹介して、ビジネスモデルの深いところに入っていきます。我々は8月決算で、この間の2017年8月期売上40億のうち、ほぼ日手帳が今3分の2で26億円。手帳だけで26億円ってけっこういい数字だと思うんですけど(笑)。

それ以外のほぼ日商品、さまざまな商品で10億円です。その他のところは、我々通販をやっているので、その通販の送料・手数料をいただく分、それから先ほどのほぼ日の学校のようなイベントの収入が3億円くらい。1割弱ですね。

こんな構成になっていて、営業利益率が12.5パーセント。たぶんこういった消費財の小売にしてはだいぶ良いと思います。これも、今ご覧いただいたようにけっこう新しい事業ないし企画を立ち上げつつあるので、実は自分たちとしては、このへんでコストをわりと乗せてる状態なんですね。

なので、まあ新しい事業が全部はうまくいくとは限らないんですけど、仮に全部うまくいったらもうちょっと利益率も出せたらいいなと思って、CFOとしてはいつかそういう日が来ないかなと思っております。

ちょっと触れましたように、直販が中心ですと申し上げました。数字でいうと約6割が直販です。

それから、ほぼ日手帳で海外のユーザーのご紹介をしましたけれども、海外の売り上げがだいたい2割くらいです。ここの示唆するところも非常に重要で、とくに私の年代、あるいは前後の方々って、糸井重里と言えば文化人の印象が非常に強い。

糸井重里の会社でしょ、と。ほぼ日の商品は糸井重里のファングッズですか、というようなイメージがある方もいると思うんですけれども、少なくともこの2割の海外の方々は日本語が読めない。当然、糸井重里を知らなくてほぼ日手帳を愛用してくださってるんですよ。それがなぜなのかというところに、私たちの会社の未来は1つのヒントがあるのかなと思っています。ここまでが会社の概要でした。

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