PR視点で企業価値を高める 「インハウスエディター」の役割

大島悠氏(以下、大島):では、さっそく始めたいと思います。まず簡単にお二人から自己紹介と会社紹介をしていただければと思います。藤村さんからよろしくお願いします。

藤村能光氏(以下、藤村):みなさん、こんばんは。藤村でございます。今、サイボウズという会社のコーポレートブランディング部に所属していて、「サイボウズ式」というメディアの編集長をやっております。

サイボウズ式を見たことがあるという方? ちょっと聞いてみてもいいですか?

(会場挙手)

津田氏(以下、津田):すごい! 100パーじゃないですか?

藤村:やばいですね。ありがとうございます。挙げさせた感じがすごく……。

(会場笑)

藤村:……すいませんという感じで(笑)、サイボウズ式は立ち上げてから6年ぐらい経つメディアです。

「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイトということで運営しておりまして、800記事、月間20万ページビュー、月間10万閲覧者ぐらいの感じのメディアです。

正直、規模はそんなに大きくないんですけど、BtoBの会社が提供しているメディアとしては意外と影響力があるなと思っています。最近はメディアだけではなくて、いろいろな取り組みにも挑戦しています。

(スライドを見て)これはミートアップですね。イベントを運営して、より近い距離を保ちながら、読者の方と知り合いになりたいというか、バイネームで「サイボウズ式を読んでいる読者はこの人だ」と言えるようになりたいと考えながら運営しています。

今日も「インハウスエディターの役割」という、かなりおもしろいテーマになりそうなので、そのあたりの話ができればと思っております。よろしくお願いします。

(会場拍手)

クラシコムが運営する2つのメディア

津田:こんばんは。クラシコムの編集チームでマネージャーをしている津田と申します。じゃあ、会社のことを(紹介します)。

クラシコムが運営している「北欧、暮らしの道具店」というWebサイトに掲載する記事を、私たちの編集チームが作っています。

いわゆるWebメディアなんですけど、ECサイトの機能もあったりして、よく代表の青木(耕平)が「カートボタンがついた雑誌のようなメディアを目指している」というふうに、いろいろなイベントで紹介させていただいてます。だいたいのデータなんですけど、サイトのアクセス数は月間1,500万PVぐらいです。

藤村:すごいですね。

津田:本当ですか? ありがとうございます。ユーザー数は月間160万人くらい。そのような数字の他に、週に1回以上(サイトを)訪問しているユーザーが全体の96パーセントという感じで、たくさん訪問していただけるサイトとしても考えられるということが1つの特徴です。

SNSの運用は、FacebookとLINE@とメルマガは編集チーム、Instagramはバイヤーチームがやっています。

大島:そうなんですね。

津田:Twitterはお客様係のコミュニケーショングループがやっているという感じで、けっこうバラバラで(運用を)やっているということも会社の特徴かなと思います。

クラシコムが運営しているメディアは、大きく分けて2つあります。

1つ目は、ビジネス寄りの話をしている「クラシコムジャーナル」。

2つ目の「北欧、暮らしの道具店」には、ECサイトで商品を売っているので、その紹介をする商品ページと、自分たちで企画、取材、執筆している読み物の2つがあります。読み物の中には、最近自分たちで特集しているもの以外に、タイアップをいただいて記事広告をする「ブランドノート」という商品もあります。以上です。

(会場拍手)

「PR視点」と「インハウスエディター 」はどう結びつく?

大島:ありがとうございます。今日は「PR視点で企業価値を高めるインハウスエディターの役割」というテーマを設定したんですけど、「PR視点」と「インハウスエディター」がどう結びつくかというところで、今回なぜお二人を呼んだのか、少しだけお話ししたいと思います。

期待を裏切ることになってしまうかもしれないのですが(笑)、今日はあまりオウンドメディアの編集テクニックや運営ノウハウの話はしないつもりです。

インハウスエディターの役割はそれだけではないというところで、もっと俯瞰した役割、ブランドをつくるとか、企業の価値を高めるとか、そのようなところを担える役割として可能性があるのではないかというお話をお二人としていきたいと思います。

なぜPR Tableという会社がそのようなことをやるのかと言いますと、「PR」は日本ではプロモーションとかパブリシティという文脈で捉えられがちなんですけど、本来は「パブリック・リレーションズ」という考え方の略称で、「社会との良好な関係構築」ということなんです。

なので今回は、企業を取り巻くステークホルダーの方たちと関係を構築するために、企業の中で編集を担っていらっしゃるお二人という認識で、お声がけさせていただきました。

サイボウズさんはBtoBの事業で、クラシコムさんはBtoCの事業なのに、共通点がすごくあって、すでにコラボレーションされている事例もあるということで、今日はいろいろとお話をうかがえればと思います。

参考:「私は長時間働いているのに、あの人は……」とならない理想の立て方──クラシコム青木耕平 ✕ サイボウズ青野慶久

藤村:(コラボレーションの)いきさつをちょっと説明すると、弊社の青野が『チームのことだけ、考えた。』という、サイボウズがいろいろと考えて実践してきた経営戦略や人事設計の本を出したところ、(クラシコムの)青木社長が読んでくれたんです。

大島:そうだったんですね。

藤村:青木社長が「この本、すごくいいです」とTweetをしていたのを僕が発見して、クラシコムの編集者の方に「何か企画になりませんか?」と言ったら、「ちょうど僕も見てました」とメッセージをもらって、そこからできたんです。

メディアを持っていると、このような連携ができたりするので、インハウスエディターは狭義の編集ではなくて、メディアを使っていろいろと仕掛けることもできるんじゃないかなと思いました。脱線しました(笑)。

サイボウズの「コーポレートブランディング部」が担う仕事

大島:いえいえ、ありがとうございます。その流れでさっそく本編に入っていきたいと思います。

1つ目のトピックとして「そもそも編集とは何か?」というところをお話ししたいと思いますが、お二人は社内でどんな役割を担われていて、どんなミッションを背負っているのかお伺いしてもいいですか?

藤村:今は「コーポレートブランディング部」という部署にいるんですけど、会社のブランドをつくることが部署自体のミッションになっています。

僕はメディアの編集長をしているんですけれど、基本的には、会社の価値を「伝えていく」ところが仕事の大枠になっています。

すごくわかりやすいアウトプットでいうと、コンテンツを作りながら、メディア全体を運営していくというところがあるんですけど、実はそれ以外にも部署の中ではいろいろな仕事をやっておりまして、例えばこんな取り組みです。

働き方改革に対して「楽しくないのはなぜ?」というような、社会に対してちょっと問題提起をするようなプロジェクトですね。このようなものを僕たちの部署の中でやっていたり。

参考:働き方改革、楽しくないのはなぜだろう。

あとは「チームワーク経営シンポジウム」と言って、中身は株主総会ですね。

大島:新しいですね。

藤村:株主総会は、これまでずっと株主様向けの場を提供していたんですけど、より会社としての価値観をいろいろなところに伝えていきたくて、イベントをくっつけてシンポジウムにして、株主さんやそれ以外のステークホルダーの方ともコミュニケーションしていくとか。実はこんな仕事もやっています。

なので、会社が持っているブランド自体を、編集というスキルを使って、さまざまなアウトプットにして届けて、会社を取り巻くいろいろなステークホルダーとコミュニケーションしていく。ここがけっこう大きな仕事かなと思っています。

大島:コーポレートブランディング部自体の体制・人数はどうなっていらっしゃるんですか?

藤村:人数は10人ぐらいいます。もともと広報の部署なので、広報由来のキャリアの人がけっこう多いです。

大島:そうなんですね。

藤村:僕はけっこう異端で、メディアをやっていた人がたまたま入ったみたいな感じですかね。

副(複)業をしていて、週2日だけサイボウズで働いていて、基本は新潟にいる人もいます。あとは1回サイボウズを辞めちゃったんですけど、一緒に仕事したいと言って、パリからリモートで参加している方とか、あとは学生のインターンとか、そんな感じの構成です。

大島:藤村さんの役割としては、「サイボウズ式の編集長」というのがみなさんもよく目にする肩書きだと思うんですけど、IRはまたちょっと別の領域じゃないですか。(担当部署が)分かれている会社が多いと思うのですが、コーポレートブランディング部で見ている領域はどこまであるんですか?

藤村:みなさん見えますか? これが、サイボウズのコーポレートブランドのドメインです。

真ん中にサイボウズという法人格があって、そこを取り巻く円は、会社が事業を展開していく上で、関係性が絶対に必要なステークホルダーです。

例えば、お客様であったり、採用であったり、社会に対する働きかけ、あとは株主ですね。このように、いろいろな関係者とコミュニケーションすることでサイボウズという事業が成り立っています。

それで、ここの(サイボウズとステークホルダーの)間にあるのがメディアですね。いろいろなステークホルダーとの関係性を良くしていくための媒介になるということがざっくりとしたイメージです。

ここに対してメディアを使ったり、いろいろな動画を使ったり、手段は何でもいいんですけど、そこは年によってけっこう変わっていきます。

大島:これを見ただけで、ものすごく幅広いということがよくわかります。

藤村:僕も全部は見れないですね。この中のいくつかという感じです。

大島:その時のフェーズに応じて、必要なものを担っているという感じですか?

藤村:おっしゃるとおりです。

大島:なるほど。ありがとうございます。津田さんにも「そもそも編集?」とはというところで、どんなことをやっているのかお伺いしてもいいですか?

編集経験者ほぼゼロからのメディア運営

津田:私は編集チームのマネージャーなので、編集チームが作っているコンテンツのクオリティ、納期、コストのチェックというところが一番わかりやすい仕事かなと思います。

基本的には、先ほどご覧いただいた「北欧、暮らしの道具店」の商品ページと読み物を見ているんですけど、それ以外にSNSの運用だったり、最近は商品動画も作っているので、「北欧、暮らしの道具店」のメディアと同じ編集方針や感覚で、いろいろと作っているもののクオリティチェックが大きいかなと思います。

あとは先ほど「幅広くて見きれない」というお話があったと思うんですけど、まったく一緒の悩みというか……。

大島:そうなんですね。

津田:自分ひとりだけで、「北欧、暮らしの道具店」のあらゆるコンテンツのクオリティを維持し、「らしさ」を作り続けていくことは、正直限界があるだろうなと思っていて。

自分の限界が、お店だったりメディアだったりの限界にならないように、自分が上司(=店長佐藤:クラシコム取締役)から学んだこと、編集方針やお客様との関係性において大事にしたいことなどを、チームメンバーに伝えていくのも、最近では編集チームのマネージャーの大事な仕事のひとつだなと考えています。

大島:少し補足させていただくと、私が津田さんを知ったのはクラシコムジャーナルの記事なんです。

津田:ありがとうございます。

大島:2017年ぐらいに出ていた記事ですよね。チームのマネジメントについて、入社1年目の方とインタビューされているのがすごく印象的でした。

たぶん(会場に)オウンドメディアの運用をしている方もいらっしゃると思うんですけど、長期的に継続することが一番大変だと思うんですよね。

それをあのクオリティで、あの世界観を維持して運営されているのはけっこうすごいことだと思っていて、それをまさに担っているというところで。

津田:そうですね。でもやっぱり、すごく共感して入社してくれるスタッフが多いので、そいう意味だと教育は楽といえば楽という気もします。

大島:今、チームは何人ぐらいいるんですか?

津田:編集チームは全部で14人います。基本的に編集経験者はゼロです。

大島:それがすごいですよね。

津田:やっていたスタッフもいるんですけど、Webメデイアの編集をやっていたスタッフはいないです。

チームは今、編集第1チームと編集第2チームに分かれていて、私は第1チームのマネージャーをしています。第2チームにもう1人マネージャーがいて、ペアでチームマネジメントをしているような感じです。

入り口は編集スキルよりも共感が大事

大島:編集未経験で入社してくる方を育てるのは、けっこう大変なことだと思うんですけど、そのあたりはどういう体制で育成されているんですか?

津田:一番最初に、商品紹介のページを3ヶ月ぐらいみっちりやっていきます。週に1個とか2週間に1個という感じでやるんですけど、食器もあって、カトラリーもあって、布ものもあって、革もあって、洋服もあって……みたいな感じでやっていて、そこに教育係の先輩スタッフが1人ついて、1on1でずっと教えるという感じでやっています。

大島:その編集体制を維持したり、育成するのも津田さんが担っているということですよね?

津田:そうですね。新人スタッフの教育だけではなくて、ディレクターの教育もやっています。

大島:なるほど。そのあたり、サイボウズさんはどういう体制になっているかお伺いしてもいいですか?

藤村:うちも基本的に、編集経験者はいないですね。ソフトウェアの会社で、基本的には製品がコアコンピタンスになってくるので、それを売っていく・伝えていくというところが事業の中心です。

「ブランドづくり」は、そこではないところになるので、それを伝えたくて、かつ編集のスキルも持っているという人はなかなかいないので、やっぱり入ってきてくれた会社に共感を持ってくれている人を一緒に育てていくしかないかなと思っています。