「隣人や自分に我慢を強いる必要はない」
カナダ首相が卒業生たちに熱弁した“真の勇気”の価値

ニューヨーク大学 卒業式 2018 ジャスティン・トルドー

カナダのジャスティン・トルドー首相が、アメリカ・ニューヨーク大学(NYU)の卒業スピーチを行いました。雨のヤンキースタジアムで、トルドー氏は「多様性の価値」を卒業生たちに熱弁。異なる価値観と宗教などを持つ人たちと共感する重要性を語りました。

カナダ首相の卒業スピーチ

ジャスティン・トルドー氏:今日この場に、みなさんといられることを喜ばしく思っています。大変誇らしく思っています。そして、親切な紹介の言葉をありがとうございます。今日、NYUが私にくれたこの特権に感謝します。ご存知の方もいるかもしれませんが(学長の)アンドリューさんは栄誉あるカナダ人、そしてブリティッシュコロンビア州の方です。

彼は私と同様、以前ブリティッシュコロンビア州大学で学びました。カナダがアンドリューさんを形成している一部だということで誇らしく感じます。ちょうどNYUが、私のスタッフ2名を含む、多くの素晴らしいカナダ人を生み出したのと同様です。

(会場歓声)

実際2018年卒業生のNYU生徒の中には180名のカナダ人生徒が含まれているとお聞きしました。こんにちは! ようこそ!

(会場拍手)

今みなさんと、地球上でもっとも素晴らしい都市の、もっとも素晴らしいヤンキースタジアムでお話をするというのは光栄なことです。

(会場拍手)

友であるみなさん、あなたたちは今、最高で輝かしいNYU卒業生となられました。あなたには大きなポテンシャルと可能性があります。つまり、非常に大きな責任感も伴います。私は今日、その両方についてお話をしたいと思います。そして、あなたたちに一つ挑戦します。それはあなたたちの成功と、将来なるであろうリーダーにとって不可欠なことです。

私がNYUで尊敬していることは、生徒のうちの5分の1が外国人ということです。

(会場歓声)

すばらしいのが学生たちが家族の中で初めて大学に入学したということです。

(会場歓声)

この大学は本当に多種多様で、私はこれこそが本当に価値のある、重要なことだと考えています。

仲間との世界旅行で得たもの

私が1990年代初頭に卒業した時、仲の良い友達と一緒に、世界を回る旅行に出かけました。その時の彼らは今でも私の仲の良い友人たちです。奇跡的と言える旅でした。私たちはゆっくりとヨーロッパからアフリカ、アジアまで、陸路を旅しました。その旅は人生の中で、自分を作りあげた素晴らしいものとなりました。

その経験は、広い意味での「学び」に非常に寄与しました。なぜなら、大人になって初めて、自分とは全く異なる見方や経験、アイディア、価値観、言語を持つ人たちと出会い、友となることができたからです。

考えてみてください。モントリオールで生まれた少年が、モーリタニアで韓国人の漁師に出会い、アフガン戦争に行ったロシア人の退役軍人に出会い、ダナンに住む店主と家族に出会ったのです。そしていつでも興味深い会話が始まりました。もしかしたら、この中にも卒業したらそんな旅行をしたい人がいるかもしれません。

まわりの人は「今の時代、若くしてそんな旅行などできないよ」「危ないよ」といった警告をするでしょう。しかし私は問いたい。あなたを愛する人が、あなたの身の危険を感じて、言った言葉を鵜呑みにしていいのでしょうか。

もしかしたらコミュニティや価値観、信念といった枠から、あなたが出てしまうことを恐れたから、とも言えます。しかし、私たちは旅することで、自分自身を深く知るかもしれません。あなたを愛してくれる人にとって、全く新しい人間に生まれ変わることなのかもしれません。

現在の社会情勢は1990年代中期と比べれば、ずっと複雑であることに疑問の余地はありません。社会が格闘し続けなければならない、深刻で重要な問題があります。しかし、もし私たちが特定の社会イデオロギーや知的な固定概念にとどまり続けるなら、共通する問題を解決できる中立な立場に達することはできません。

(会場歓声)

「あなたの仲間」とは何なのか?

私たちには、悪の指導者に独特の魅力を感じる文化があります。映画やテレビでもありますね。しかし現実は映画やテレビと違い、アンバランスです。私たちは非常に大きな可能性とポテンシャルのある、幸運な時代に生活しているのです。ひどい貧困や、マラリヤや結核といった恐ろしい疫病を終わらせ、この惑星に住む全ての人々に教育のチャンスを提供できる時代が我々の手中にあるのです。

(会場拍手)

しかし、我々が前へ進み続けるには、一致団結しなければなりません。人類は種族的な考え方と戦わなければなりません。

「あなたは私と同じ教会に通っているんですってね」「それは良かった」「あなたは私の仲間です」「あなたは私と同じ言語を話しますね」「では、あなたは私の仲間です」「あなたはNYU同窓生ですから私の仲間です」。

「あなたはポケモンGOをやるんですね」「あなたはベジタリアンなんですね」「あなたはヤンキースが好きなんですね」「あなたは射撃場に行くんですね」「あなたは中絶する権利の擁護派なんですね」。

仲間とは何なのでしょうか? 考えてみてください。もちろん、本当の問題は仲間になることではありません。問題はそれによる必然的結果です。あなたは私の仲間だけど、彼らは違う。

それが人種かもしれませんし、性別、言語、性的嗜好かもしれません。または宗教、民族、信仰、自己価値かもしれません。多様性は我々の弱点になる必要はありません。多様性は私たちの一番の強さとなりうるのです。

(会場拍手)

我慢を強いる必要はない

人々は「努力するために耐え忍ぶ」といいます。もちろんこの世界では、もう少し我慢すれば良くなる場面もみられます。しかし、今ここで正直に考えてみてください。私たちは我慢以上のことができるのではないでしょうか。

(会場歓声)

あなたが誰かに「我慢しろ」という時、相手は「仕方がないから」と否定するかもしれません。「あなたの権利をイヤイヤ認めよう」「でも、私の目につくところにいないでくれ」「私の妹と付き合うとか言わないでくれ」というのが相手の本心でしょう。

さまざまな宗教の訓戒の中に、隣人や自分に我慢を強いる教えはありません。ですから、もう少し進んだことをしましょう。受け入れ、尊重し、友情、そして愛を示すのです。

(会場拍手)

なぜそれが必要なのでしょうか。私たちの夢や目標、家族への愛情、この世界をよりよくするために貢献したい気持ち。これらは違いはあれど、我々はみんな同じです。外国から来た人や、違う文化で異なる言語を話す人、崇拝の方法が異なる人と出会い、友情を築く時、あなたもすぐにそれに気がつくでしょう。

ここが私の要点です。そして私が今日みなさんへ挑戦したいのはここです。私たちが違いを賞賛できるようになるには、価値観や信条の違いを受け入れることなのです。

多様性には、政治的・文化的な側面も含まれ、問題解決の手法やアプローチの多様性も含まれます。ソーシャルメディアのみを使うと、仲間と認めた人のみと交流するようになってしまいます。実は、この世界はそれより大きいのです。

(会場歓声)

異なる信条や価値観を受け入れよ

これが私からのお願いです。ここから巣立つあなたたちが、自分とは異なる信条や価値観を持つ人とわかり合えるようになってほしいと思います。その人たちの言葉に耳を傾け、理解してほしいのです。そして、その人たちとの共通点を探すのです。

あなたの指先には可能性ある世界が広がっています。あなたがこれから前へ進み、道を曲がると、全く異なる秩序を学ぶ機会が開かれています。そこには生活や教育レベルや信念、ライフスタイルが異なる、あなたの先生となる人が現れることを覚えていてください。

そして、私はあなたたちがその機会が貴重なものになるよう願います。みなさんは卒業生ですが、これからの人生もずっと学び続けられることでしょう。

そして今、みなさんはリーダーとなる時でもあります。いつの時代においてもリーダーは出現します。なぜなら彼らはある日、この問題を解決するには、「誰かに頼るのではなく、自分たちにかかっているのだ」と気がつくからです。ですから今こそ、あなたがリードを取るべき時です。

リーダーのみなさん、このような呼びかけはよく耳にしてこられたかもしれません。この何時間、数日間、数週間、数年間、明日のリーダー、今日のリーダー、と言われてきたかもしれません。しかし、一体それはどういう意味なのでしょうか。21世紀のリーダーにはどのような特性が必要になるのでしょうか。

今日、そして明日、人々がリーダーに一番求めるものは一体何でしょうか。私は、今こそあなたたちが勇気を持つべきだと思うのです。真の勇気です。みなさんが勇気のあるリーダーを考える時、執念深く、恐れずに自分の正義に根ざし、自分のアイディアを後進に投げかける人たちのことを考えるのではないでしょうか。

そしてリーダーが勇気だけあればいいわけではありません。私たちが共にする未来。あなたに求めるものはそれでは十分ではないです。

カナダの先人の偉大な功績

ウィルフリッド・ローリエのことについて少しお話ししましょう。彼は19世紀後半に将来を約束された若い弁護士でした。そして後に私が2番目に好きな首相となりました。彼は誇り高きカトリックのフランス系カナダ人として育てられ、教育されてきました。数十年前にカナダを築く2つのアイデンティティが同居した、模範的な代表者となったのです。

イギリスとフランスはかつて対立していました。イギリスの人々は英語を話すプロテスタントです。君主に忠誠を示し、互いを尊重し、協力しました。カナダを作り上げるために英仏が互いに譲り合ったのです。亀裂と欠点が約1,000年にも渡って英国とフランスの間の緊張と戦争につながってしまっていたのです。

このことはウィルフリッドの先生や長老を通して、若い彼に引導を渡しました。彼は自分の受け継いだものの価値や、アイデンティティのために立ち上がらねばなりませんでした。その信念やチャレンジ精神は、彼が生まれながらに持つ権利であり、遺産でもあったのです。これこそが、リーダーシップです。

しかし、ウィルフリッドはそれで満足する男ではありませんでした。「自分が正しい」と思う信念に基づいて立ち、他の人が自分に歩み寄り、自分の正しさを他の人へ押し付ける機会を待つことは、簡単だと気がついたのです。

彼はそれよりも、妥協をしたり、自身のアイディアや信念を嘘偽りなく掘り下げること。自分が他の人にどのように奉仕できるのか、どこに立場を定めたらいいのかを探すことの方が難しいと理解したのです。こうすると他の人の見方を受け入れ、共通点を見つけるのです。

それこそが、ウィルフリッド・ローリエ退任後、100年に渡っての政治的遺産となったのです。他の人たちの見方に対して、自分自身の視線を合わせるのです。それこそが本当の勇気なのです。他の人たちの信念に対して解放的になり、その人たちの考えの正当さに説得されるリスクを冒すのです。

それは怖いことです。自分が全く同意できない相手の見方が正しいかもしれない。しかし、それは恐ろしいことでも、脅かされていると感じるべきではないです。

とくにみなさんのように真実を追求し、学習し、成長してきた人たちにとっては、そう言えます。他人に対してオープンになること、違いこそが弱みではなく強みであること。こういったことをカナダ人に理解させたのです。それは徐々に理解させたというべきでしょう。なぜなら20世紀のカナダの歴史は、その反証とひどい挫折であふれていました。いまだに修正しようと努力しているところだからです。とくに先住民の方々に対する組織的疎外と抑圧の問題が顕著です。

リーダーの理想像は変わった

私たちはもちろん完ぺきではありません。解放的になること、他の人たちの見方を尊重すること、互いに受け入れ合うこと。これこそが、現代の私たちの抱える大きな問題を解決するための大きな支えとなるのです。私たちがいい人だからというわけではありません。もちろんいい人ですけどね。

(会場笑)

しかし、多様な見方を持つ人々が共闘することで、困難を乗り越えるのが容易になります。その時にみなさんが必要となるのです。世界が必要とするリーダーになっていただきたいのです。

かつて、リーダーシップとは人々に共通の行動を起こさせることでした。「我々は新しい国を作ろう」「我々は戦争に行こう」「我々は月に行こう」などと言って特定のグループの人たちが自分についてくるように説き伏せたり、強制したりしてきたのです。

そして部族の対比をすることで、それが容易になってきたのです。「彼らは違う神様を信じている」「彼らは違う言葉を話す」「彼らは私たちが求めるのとは違うものを求める」。

しかし今、そして将来に必要とするリーダーは、人々に手を取り合わせることができる人です。

(会場拍手)

それこそが、多様性を当たり前のこととさせ、対立や攻撃的な国家主義、現在のようなアイデンティティ政治とは正反対のものとなるのです。

もちろん、より難しい課題です。これまでも、いつも人々を分かつことの方が一致させるよりも難しかった。つまり、これは何よりも、真の勇気を必要とします。なぜなら、あなたの周りにいる人々に、あなたの考え方を理解させるためには、あなた自身が相手の考え方にオープンであることを示す必要があります。

積極的に会話をすると、あなたの考え方が変わるかもしれない。相手の考え方に敬意を払うのです。そうするなら相手も、あなたの考え方に耳を傾ける可能性が高くなるでしょう。その結果がどうであれ、議論に勝つという目的ではなく、互いに理解をすることに焦点を当てた、純粋な意見交換をすることができるでしょう。そして結果的に両者が成長できるでしょう。

全ての人に慈愛を示す

はっきり言いましょう! これは道徳の話でも、全ての見方が正当だという宣言であるわけでもありません。どれほど伝統的に長い間行われてきたとしても、ある部族の女性器切除は間違っています。ある人たちはそれを否定するとしても、こうした変化は本当に起きています。

(会場拍手)

しかしそこで聞きたいのは、あなたの目的は、議論に勝ち、自分が他の人より偉いと感じ、気分を良くすることですか? それとも、行動や信念を実際に変えることでしょうか?

アブラハム・リンカーンとジェファーソン・デイビスとの違いは何でしょうか? デイビスは議論に勝つことを好んだのに対して、リンカーンは戦争に勝つことを好んだという点です。そこで質問が生じます。あなたは議論に勝つことを望みますか? それとも世界を変えることを望みますか?

(会場歓声)

「誰にも悪意を示さず、全ての人に慈愛を示す」。とあるアメリカ大統領の言葉をあなたたちに捧げます。家族や国家、この惑星の希望がこの言葉の中にあります。この世界にはいつも皮肉や自己中心的な態度が見受けられます。そのような人たちの正解になるのです。彼らの解毒剤となるのです。

私が考える未来は非常にポジティブなものです。なぜなら、みなさんがいるからです。この世界を作り、形作るのはあなたたちなのです。もちろん、あなたのアイディア、リーダーシップ、クリエイティビティ、ビジョンが求められます。しかし、どんな努力に対しても、一番大事なのは、真の勇気であると忘れないでください。

2018卒業生、おめでとうございます。世界を変えるのです! Merci(おめでとう)!

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