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ディスカッション:ブロックチェーンが築く経済圏について(全2記事)

ブロックチェーンが変えるID認証の在り方 超管理社会は到来するのか?

2018年2月14日、Blockchain EXEが主催するイベント、「Blockchain EXE #9 ブロックチェーンが築く経済圏 将来展望と課題」が開催されました。あらゆる産業への応用が期待され、仮想通貨を火付け役に注目を集めるブロックチェーンの動作原理や基礎・応用、最新技術の共有に重きを置いたエンジニアコミュニティ、Blockchain EXE。本パートでは、ブロックチェーン技術を用いたサービス開発の最前線を歩む4人が登場。ブロックチェーンが築く経済圏について熱い議論を展開します。

ブロックチェーンがもたらす新しいID認証

石井敦氏(以下、石井):あと、例えばHyperledger Fabricなどでは、IDを認証した上で入れているわけですね。誰かわからない人は入れない。それでプライベートもしくはコンソーシアムでやっていると。イーサリアムみたいなかたちであれば誰でも入れてしまって、そのぶん誰が来るかわからない前提で作られたりするわけですけど。

その新しいIDの特定とかを、始めにどうやっていくべきか、とか。そこって今後すごいキーになると思って。みなさんいろんなコンテンツとかアセットをそこで売ったり、移転したりするわけです。その時の、始めのIDをどうするかについてはどう思われますか。川田さん。

川田修平氏(以下、川田):難しいですね(笑)。

石井:(河崎氏に向けて)あっ、なにかご意見ありますか(笑)。

河崎純真氏(以下、河崎):では。一応今、実際にメジャーで出てきてるのが「uPort」という。

石井:あぁ、はい、はい。

河崎:ブロックチェーン上で1個、自分のアイデンティティを作って、そのアイデンティティからさまざまなサービスに接続することができる、というサービスになっています。要するに、アイデンティファイにブロックチェーンを使っている。

それで、uPortだったら今エストニアのE-レジデンシーと連携したり、マイナンバーカードと連携したりすることで、「このuPortのIDはこのマイナンバーカード、このエストニアのIDと連携しているから、ある程度公的認証が終わっている」ってなって。アイデンティティのクオリファイとしてはかなり高い。そのクオリファイを利用して参加できるネットワークの承認レベルが変わる。

いろんなIDが世の中に存在するので、それらがたぶん、1つのコア認証といろいろ密に連携してくるような時代になってくると思います。

石井:はい。小高さんどうですか。

小高奈皇光氏(以下、小高):いや、そのとおりだと。

(一同笑)

新しいID認証が抱える課題とは

小高:ちょっとだけ補足すると、グローバルで台帳ができちゃう時代になりえるので、今考えても完全に悪いことはできないというか(笑)。超管理社会、っていう可能性もゼロではなくて。

石井:そうですね。

小高:でも、それが全部に互換性があるユニバーサルIDがあって、オタクコインに行くにはここで接続して、例えばうちの、Tokyo Otaku Modeのアカウントとそれを接続するのか、とか。いろんなその他の接続の仕方があるんでしょうね。でもどっちにしろそれを特定化しないと、「ウォレットがわからない」とか「どうやってオンチェーン上に流すんだ」みたいな話があって。

でも、大元のグローバル台帳みたいなのは、でき……る? と思います。

石井:そうですね。uPortはまさに、ニューヨークで僕が発表した時も一緒に発表したんですけども。彼らが言ってるビジョンとして、例えばAmazonで買ったものの評価とか、自分のeBayの評価とかが、そこから移せないんですよね。TwitterならTwitterの中で自分のデータが入っていきますし、eBayならeBayの中に入っていって。自分のデータなのに別のサービスにそれを移すことはできなくて、それはおかしいんではないかと。

uPortの場合はブロックチェーンに、自分のIDのベースを作って。真ん中にあってそれをみんなで使う、みたいなアレなんですけど。IDをなくした時の復活の仕方が、uPortの場合は確か、「友達何人かに証明してもらう」みたいな感じなんですよ。なのでけっこう、友達がいないと。

(会場笑)

ジ・エンドみたいな可能性が。

川田:「違う」って(笑)。

河崎:ツラいですね(笑)。

石井:そうそう、そうなんです。で、そこをなんかいろいろやってるみたいです。……あ、ここからはみなさんで、自由に質問をしてください。誰に対してでもいいので。なんでもいいですよ。

(会場挙手)

ICOしない場合、コインの値付けをどうするか

質問者1:すいません、先ほどTokyo Otaku Modeの話をうかがってて、1つちょっと理解ができなかったと言うか、理解不足なところがあって質問したいんですけど。

ICOをしない……コインを発行して、それに価値を付けるっていうのは、どこか取引できるようにはする、っていうことなんですか?

小高:現時点の構想は、例えば100万枚という設定があるとして、1万枚はまずガーッとギブアウェイで渡しますと。エアードロップというやり方かもわかりませんが、ばーっとユーザーに配ります。配った瞬間は無償価値ですよね。かつ値段がついてないので。

ICOするといいところは、値付けができるんですよ。「1オタクコインは1イーサだ」って言いきったら、今1イーサって10万円くらいですかね。10万円って価値が決まるので、まさに増資すると株価が決まる、みたいなことで。株価が決まらない謎のトークンが配られるだけなんですね。

それで、ICOしない場合、値付けを最初にどうするか。我々の構想では、「Otaku Mode.com」という弊社ショップ、Eコマースサイトで、「1オタクコインは1ドルです」と仮に定義して、「値付けをとある一企業が始めます」と。これは参考値としてあるだけです。

このオタクコインというものも、いわゆる仮想通貨取引所で取り扱われるには、そもそも取引所の方でオタクコインに魅力を感じるかが必要なので、今何か決まっているものがあるわけでもなんでもないんですけども、それができるとさらに流動性が加わってセカンダリーが活発にはなるだろうなと。

そうすると「1オタクコイン=1ドル」で一企業がプライスした後に、さっきの投票権自体にも賛成して「欲しい」と思えば101円で買う人もいる、102円で買う人もいる。でも「売りたい」という人が出てくれば下がっていく。

ですが、ミソは、「1オタクコイン=1ドル」って定義しておくと、たぶん50円とかには下がづらいんですよ。なぜなら、50円だったら誰かが買いにいくんですよ。100円で2枚買えて、そのうち1枚使って、Tokyo Otaku Modeで100円のものが買えるので。

なので、そういう仕組みで下値はウォッチしながら、上値はモチベーションインセンティブ設計をして上げていく、っていう方法がICOをせずにできるんじゃないかな、っていう現時点のリサーチです。

質問者1:わかりました、ありがとうございます。

石井:はい、ほかに。

(会場挙手)

ブロックチェーンの導入コスト

質問者2:みなさんに質問なんですけれども。今、証券会社に勤務しつつも友人たちと「新しく事業をやろう」という話をしていて。ブロックチェーンを導入する上で「どうしたものかな」と話をしてはいるんですが。

「導入する上でコストがかかる」「実現可能性がない」っていう話ですとか、「実際ランニングする上でどれくらいコストがかかるのか」とか。大手の企業さんとかでも、ブロックチェーンを開発するための子会社を作ったりすると思うんですが、実際小さなスタートアップでやっていく上で、内製化して従業員のエンジニアを雇うのか、それともアウトソーシングするのか。

さらにいろいろそのあたりの体験をおうかがいしたいんですけど。海外の話を聞いていると、わりと日本はFin Techがイギリス、アメリカに比べて遅れてる、エンジニアもインドが強く育っていっている、って中で、実際話をしてるのも外国人たちで、「日本のエンジニアのグレードはどうなんだ」ということを聞いたりしていて。

とくに海外バンクが志向されているので、日本のブロックチェーンのエンジニアのレベルって世界と比べてどう思われているのか、おうかがいしたいと思いまして。ちょっといろいろあるんですけども、どうでしょうか。お願いします。

川田:僕、あんまり答えられないんで(笑)。

(一同笑)

河崎:私自身がエンジニアなので何個か質問があったと思うんですけども、まずブロックチェーンが向いてるところと、向いてないところがあって。向いてるところだと、ものすごくコストが抑えられるんですよ。

例えば今までの単純なポイントシステムもそうですし、お金の管理システムもですけど、それを普通の会社が開発会社に発注したら、数億円とかする見積もりが来ると思います。ブロックチェーンを使うと、まともなエンジニアでまともにやったら、「数百万くらいでいいよ」と。「それでも別にセキュリティ担保できるよ」みたいなことを言うフリーランスのエンジニアとかはいるかもしれないです。

なので、当たるところにやったらかなりいいです。でも当たらないところにやったら結局、ブロックチェーンってただのデータベースなんで、アプリケーションは作る必要あるし、バックエンドの管理画面も作る必要があるし、フロントエンドも作る必要がある。そこらへんのコストは普通にかかると思います。数千万とかにはなってくるかな、と思います。

日本のエンジニアのレベルは、普通に高い人も多いです。ここは非常に個人差があるので、なんとも言えないんですけど(笑)。

(一同笑)

ただ、言葉の壁とかいろいろあると思うので。信頼できる人に「いいエンジニア紹介してよ」といっぱい言って、探していくといいかなと。ここらへん(川田氏)にも頼んで、発注してみればいいし(笑)。

(一同笑)

川田:発注いただければ、はい(笑)。

日本のエンジニアはレベルが高い

石井:エンジニアのレベルは高いと思いますよ。僕はAIもやってるんでわかるんですけど、AIの場合はいわゆる解釈の技術で、脳の仕組みは結局わからないので。このAIの処理を強いて数式にするならこうなる、みたいなことをみんなやってるので、いろんな解釈があるんですけど。

ブロックチェーンはルールの話なんですよ。なので日本国憲法みたいなもので、追っていけばルールがきっちりしているわけですね。そうすると一つひとつの技術はけっこう昔からあるものなので、真面目に追っていけば非常にわかりやすいです。それで、わりとこう、下支えする技術なので。あまり派手さはないんですけども、そういう意味で「きっちり真面目に本質部分を作る」みたいな人は日本人に非常に多いと思うので、けっこう向いてるとは思いますけどね。

小高:僕も応援メッセージを入れると、日本のエンジニアのレベルはけっこう高いと思いますね。一応正確に言うと、アメリカとか海外のエンジニアで、「超天才だな」ってやつがたまにいるんですよ。「なんだこいつ!?」みたいな、ド変態レベルの人はいるんですが、たぶん標準のレベルだと日本が世界のトップだと思います。

というのがまず確かなのと、あとはそれこそブロックチェーンを考案したSatoshi Nakamotoという人が……これは本当にその人なのか、本当に日本人なのか、というのは誰も確証が取れてないんですけども、「日本人かもしれない」と思うぐらいには(日本のエンジニアは)レベルが高いと思います。

質問者2:どうもありがとうございました。

石井:では、これでディスカッションは終了となります。ありがとうございました。

(会場拍手)

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