2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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福井崇博氏(以下、福井):きっかけさえあればそうですね。そういう(新しいことをする、現状を変えていきたい)人がいるとは思ってて、うちの会社のビジョンとも、ビジョンの本質とも似てると思ってるんですけど、うちの会社のビジョンの本質って「機会の格差をなくすこと」だと思っているんです。
ユニバーサルサービスが義務だとか、社会的使命だとかいろいろあるんですけど、140年間以上ずっとやってることは、基本的に機会格差を均等化しているんだと思うんです。
毎日郵便を届けてるとか、最近でいくと金融では投資信託を広げていますけど、今までだったら、投資商品というのは高リテラシーの人や高所得層にしか選択肢として提供されてなかったのが、より広い層にきっかけを、選択肢を提供していくのがうちの会社の役割だと思っています。
僕が仕事でやりたいことと、うちの会社のビジョンは似てるから、僕は今この会社にいるんですけど、それを仕事のプロセスにおいても、プログラムでいろんな人を巻き込みながらきっかけを提供していけば、なんか偉そうですけど、それに気づく人にとってたぶん新しい選択肢やきっかけが増えていく。それをより広げていけば、機会格差がなくなっていくのかなと思っています。
僕は、「金持ちの子どもは金持ち」みたいなのは嫌いなんですよ。「頭がいい人の子供は勉強する機会がいっぱいある」みたいなのがすごい嫌いで。ちょっと話それましたけども。
残間光太朗氏(以下、残間):いや、なんかすごくよくわかりますね。大企業にいると、企業風土に染まってしまう。企業から求められることばかりを優先していたら、いつの間にか入社当初に抱いていた志を失ってしまう人も多い。
富樫憲之氏(以下、富樫):先ほどの(光村さんの)話にもあった、大企業のなかでの人事は絶妙に効率的に今の事業がちゃんと行くように作られてるというのは、まさにそのほうが事業としてうまくいくから。それはそれでひとつの正解という話ですしね。
ただそれだけだと、今は大企業も新規事業や新しい売上をつくるところがなかなか起きにくいというのが、現状の文脈というか。
残間:そういう人がベンチャーと会うとやっぱりいいと思うんですよ。「あ、俺と同じ、もしくはもっと若いヤツが自分でこんなことやってるのか」というのは、たぶん衝撃だと思うんですよね。
やっぱり大企業に入れる人はそれなりの教育を受けて、それなりのプライドがあって入ってきてるわけじゃないですか。で、「俺はもう負けないぜ」と思ってるわけじゃないですか。
ところがそういうベンチャーの人が独りでガーってやってる。で、俺は2~3年たったら組織のなかでちょっともうぼーっとしている。そういうことを見たときに、なにか気づけば、もしかしたらきっかけになるかもしれないですね。そういう意味でオープンイノベーションはすごくおもしろいと思うんですよね。
福井:僕も本当にそうで、3年前に初めて地方創生のイベントに出たときに「自分で会社つくって自分で事業つくって、しかもこの人って歳下なの?」みたいな人が、めっちゃいました。
言ってることのレベルもぜんぜん自分と違っているのが本当にカルチャーショックで、それは(出向先の)ローソンでもそう思ったし、そのイベントに出て初めてベンチャーさんと話したのも強烈で、そこが自分の原体験になってるのかなと思っています。
そういうのに触れるきっかけがいろんな人に生まれていけば、たぶん変わる人はいっぱい増えると思います。
福井:僕がローソンに出向したときは、育成出向みたいな感じだったんですけど、ローソンのマーケティング本部というところで、社員の一人として2年間働かせていただいたんです。
そこで店舗レイアウト、新店のレイアウトを作る仕事をしていたんですが、それを決めるためにいろんなゼロイチをばーっと、何個も回していくチームだったんです。なので、外で経験したことが今の仕事にすごい活きてるなとは思います。
僕はローソンから戻ってきた年に、国内のMBAに通い始めて、イノベーションマネジメントを専攻したんですけど、最後に、出向経験がもたらす変革型リーダーシップへの影響についての修士論文を書いたんです。ギャップがあるので、出向して最初は絶対に落ち込むんですよね。
その谷間があって、そこから頑張って仕事を覚えて、ちょっとずつ周りにも認められていって、最後は自信を取り戻して返ってくる。自信を取り戻して返ってくると、外からの視点もあるし、自分のもともとの会社に対するコミットメントが上がる、と先行研究で言われています。
自動車メーカーとかは、系列会社に出向したりとか出向を受け入れたり。ゲストエンジニアと言うんですけど、そうやって組織コミットメントを上げていくのは戦法としてやられていて、それが経験できたかなと思います。
残間:私も出向してたんですよ。
福井:そうなんですか。
残間:経営研究所というコンサルファームに5年くらい出向してたんですよ。その経験はすっごい活きますよ。外から見られたし、おっしゃる通り3年間は絶望の淵に落とされましたから。「お前はなんてできないんだ」と言われて、3年間やって、やっと普通レベルに上がった、というところから見えるようになりましたね。
やっぱりそういう経験のためには外に出るのも必要で、外の人と会うこともすごく大事なのかもしれないですね。
残間:ローソンに出られたのは、ご自分で出られたんですか。
福井:そうです、希望して行きました。
残間:私もそうなんですよ。言わされて出るんじゃなくて、希望して出たんですよ。そこも大事な気がしてて。
富樫:自ら。
残間:「すみません、私、ここ行けないと辞めますから」ぐらいな感じで行ったんですよ。ほとんど脅して(笑)。私の場合は、もう最初の制度があったんですよ。最初の公募制度があって、その第1号だったんですけど、もう絶対に行きたいと思いました。それでボロボロになったんですけど。
福井:僕の場合は、もともといた部がローソンとのカウンターのところだったので。年に一人枠があって、僕の代は「僕が行きたい」と役員にずっと言い続けて行かせてもらったんです。
残間:うちも(出向する人には)2タイプいますよ。そういう(会社にいわれて行ったり、自分のキャリアのために出向した)人は、出世コースに行ってます。私みたいに、自分のために行ってる人は出世コースは関係ないので、好きなことしかやってないわけですよ。でもおもしろい。
富樫:それはまた会社にとっても違いますよね。役割という言い方は違うかもしれないですけど。稼ぎ頭みたいな役割はもちろん必要でしょうし。でも、新しい文化をつくって新事業の種をつくるのはまた違う役割の人かなと思います。
残間:自己実現のやりかたがたぶん違うので。でも、正直にいくほうが幸せねと、そんな気がします。
富樫:絶対それがやりたい人はそういう道に進まれたほうがより幸せであって、死んだ魚の目にはならないですよね。
残間:やっぱり日本人ってすごい真面目ですから、会社のためにとか、組織のためにとか、頑張っちゃうんですよ。素晴らしいことなんですけどね。でも、なかにはそれで沈んじゃう人もいるんですよ。だからそこはちゃんとこう、出るときは出るといいような気がします。
富樫:そういう意味で、最初の「自分がなぜやりたいか」に立ち戻るってやっぱり大事で、そこまで考えたからこそ、こういう行動をされてらっしゃるのかなと思います。(オープンイノベーションは、)そういう死んだ魚の目になってる方や、悩んでる方については考えていただく機会にもなるかもしれませんね。外を見たりとか、自分の内を見たりとか。
残間:「(自分はやりたいことが)できるんだ」というところを知ってほしいですよね。それだけでぜんぜん違うような気がします。それまでは、私自身もなんかもう本当にもがいていて。もがくことをやめなかったかな、という感じではありますね。
当然、行きたくないところへ行ったこともありました。そのときは「私、ちょっとここは違う気がします」みたいなことを言いました。「がんばりますけど、ここで1年がんばりますけど、その暁には」みたいなことも。
富樫:会社に対して未来であったり、いい会社だと思って入社してくれたのに、ちょっと合わずに目が死んでしまって、さよならって出てってしまうのは、もったいない気がしますよね。1回目の縁談(採用活動)はうまくいったのに。
福井:これは、あるVCの人が言ってたんですけど、「元気玉」と「かめはめ波」というのがあるんですよ。それを自分なりに解釈すると、向き不向きでいくと、1個のプロダクトをつくりたい人は、ベンチャーに行く選択肢を取るんじゃないかと思っています。
僕は完全に元気玉担当なんですよ 。エンドロール(でいろんな人に)いっぱい載ってもらって、元気玉をやりたいんですよね。1個のプロダクトに注力するっていうよりも、今はそっちに興味があります。
残間:確かにそれはあるかもしれないですね。私、けっこうかめはめ波撃ってたんですけど、でもそれをなんとかして元気玉でみんなでやりたくなったんですよね。そうすると、一人でやるよりもっと大きいことができるような気がしたんですよ。
福井:僕も小さいながらいくつかはかめはめ波撃ってきたんですけど、かめはめ波だけを撃っても大企業は変わらないのかなと思ったんですよね。
残間:そうですね、確かに。
福井:そう思うの早すぎだろうな、と思うんですけど(笑)。
残間:まあでもそうですよね(笑)。
福井:大企業のなかで1個のプロダクトを作るよりは、そういう仕組みや組織を作りたいというところで僕の強みとかやりたいことが合ってるのかなと思っています。
残間:やっぱり大企業のほうがでかいことができるということは間違いないですよね。そのぶん大変で、ものすごい動かさなきゃいけないわけですけど、でもあると思います。それはすごい生きがいになりますよね。
富樫:その人のやりかた、どう生きたいか、何をやりたいかによって大企業さんなり、スタートアップという生き方ももちろんあるでしょうし、大企業のなかでどっちの事業になるのか、出世コースを選ぶのか。それは自分が何をやりたいのかを自分で知るしかないですよね。
残間:そんな気がしますね。
富樫:というような感じで、本日はありがとうございました!
(終了)
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