経営判断で「社員の仲をよくする」
CA曽山氏が見出した、社員の力を活かす3つのポイント

社員の力を活かすために重要なこと~現場の声とテクノロジーの活用~

HR Intelligence Forum 2018
に開催

2018年5月23日、リクルートジョブズが提供する「HR Intelligence Forum Showcase Conference」が開催されました。雇用や労働環境を取り巻く状況が大きく変化している昨今、経営と現場の接続をテーマに、さまざまな人事課題の解決を目指すイベントとなっています。本セッションでは、サイバーエージェントの曽山氏が登壇し、「社員の力を活かすために重要なこと~現場の声とテクノロジーの活用~」と題して、自社の具体的な人事施策とその成果について紹介しました。

提供:株式会社リクルートジョブズ

曽山氏がサイバーエージェントに入社するまで

司会者:それでは、よろしくお願いいたします。

曽山哲人氏(以下、曽山):みなさんこんにちは。サイバーエージェントで人事責任者をしている、曽山と申します。今日は貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。

私どもサイバーエージェントは、今こちらにあるインターネットサービス、Abema TVをはじめとするいろんなサービスを作っている会社です。

今日はテーマとしては、「社員の力を活かすために重要なこと」というお話をさせていただきますが、私どもの会社は、まだ20歳のベンチャー企業で、どんどんチャレンジをしている会社です。これをみなさまに少しでも事例としてご紹介できれば、と思っております。

私自身の自己紹介を、簡単にさせていただきます。私がサイバーエージェントに入ったのが、1999年。社員数が20名のときでした。現状、サイバーエージェントは有期雇用の社員も含めますと、ここに8,000名と書いてありますが、8,500名になっております。

20年で、20人が8,500人になった。そういった会社で、この20人からの変遷を……すごく大変なたくさんのことを経験してきました。

私は今43歳で、この世代に近い方はご覧になったことある方もいらっしゃるかもしれませんが、高校時代にストリートダンスを踊っていて、『元気が出るテレビ』という番組の『ダンス甲子園』に出場して全国3位をとったこともあります(笑)。

(会場笑)

そんなようなこともやりながら、大学時代はラクロスをやって。それで、就職活動を普通にして、百貨店の伊勢丹に入りました。伊勢丹には1年間しかいなかったのですけども、たくさんの学びがありました。

新宿の本店の、今でいうメンズ館で紳士服の販売を担当させてもらいました。それと同時に、伊勢丹がインターネットの通信販売を開始したときに、「曽山も1年目だけど手伝う?」って言われて「ぜひやりたいです!」って言ったら、ネットで服がたくさん売れました。

「すごい!ネット業界はこれから急激に伸びるな」と感じて、未経験でしたけど、それをきっかけにサイバーエージェントに入った、という経緯です。

社員の強みを活かすことが業績アップにつながる

サイバーエージェントでは、大きく2つの仕事をしています。法人の広告営業の仕事、いわゆるマーケティングの仕事を6年間。それから、30歳のときに人事本部長になりまして、今、13年間人事をやっています。

ネット業界で10年以上、人事のトップをやっている人は、あまりいらっしゃらないので、そのあたりのいろんな変遷を経験しています。

著作をいくつか出していまして。神戸大学の経営学の教授である金井(壽宏)先生と、社員のクリエイティビティをどう作るかというテーマで、『クリエイティブ人事』という本を共著で出させていただいています。

クリエイティブ人事

それから、これは人事制度で非常に大事にしているポイントなのですが、「社員の強みを活かす会社は社員の定着率が上がり、結果、業績が上がる」という考え方があります。その強みを活かす方法論や考え方をまとめた、『強みを活かす』という本も出させていただいております。

強みを活かす

まず、その社員の力を引き出すにあたって、すごく大事にしていること、それは、「社員同士の仲をよくすることに投資をする」ということです。

「社員の仲をよくする」という経営判断

現状は、例えば「働きがいのある会社」ランキングに、10年ほどベスト企業として表彰していただいています。これも社員へのアンケート結果によって作られている調査なので、「社員同士の風通しがいい」というところで高いスコアが出ています。

風通しをよくするということで、「社員の仲をよくする」ことに投資をする、と申し上げましたが、この「社員の仲をよくする」というのは簡単な言葉に見えて、経営判断に入れていない会社がとっても多いということを、この10年間人事をやってわかりました。

「社員同士の仲をよくする」というのを経営判断とすると、具体的に何があるか、僕らの場合、やったことを3つ紹介したいと思います。

「社員同士の仲をよくする」ためにやったことの1つ目は、まず「飲み会代の支援」です。「懇親会支援制度」という名前で、1人あたり毎月5,000円、飲みに行くお金を出します。1つ条件があります。「部署で行く」ことが条件。そこに上司もいるしメンバーもいるし、それで食事に行くということです。べつにお酒が嫌いであれば、もちろん飲みに行かなくてもいいのです。

これをなぜ始めたかというと、あるチームで業績がものすごく伸びていまして、それを研究してみたら、実は飲み会に頻繁に行っているのです。そこで、すごくたくさん喋っていました。何が言いたかったかというと、「仕事以外の関係性がどれくらいあるかによって、社員の信頼関係の高さは変わってくる」ということです。

なので、この飲み会代は、そういったプライベートな話ができるような関係性を作ろうというものです。まぁ昼のランチでもいいのですけど……最初、「1,000円とかにしようか」って話もあったのですが、1,000円だと特別感が薄いから、みんな行かないだろうとなりました。

(会場笑)

ということで、みなさんもなにか感じていただけるかもしれませんが(笑)、もう思い切って5,000円出そうと。年間一人当たり6万円出そう、ということを続けています。

翌月に、(飲み会代は)持ち越しができない仕組みになっています。なので、なにが起きるか。月末最終日は……。

(会場笑)

もうわかっていただけましたね(笑)。社員がよく飲みに行きます。「これがあるから飲みに行こうよ」って、この会話が生まれる。「ルールがあるから行こうよ」でも、コミュニケーションが生まれればいいのです。

サイバーエージェントは、渋谷を拠点に大勢の社員が働いているのですが……これが生まれたことによって、渋谷道玄坂の居酒屋は、月末最終日に「サイバーエージェント割引」をけっこう展開していただいています(笑)。

(会場笑)

そのような感じで、コミュニケーションが活性化していくという事例があります。

辞めない理由は、良質な人間関係があるかどうか

仲をよくする2つ目は、部活動です。部活動をやってらっしゃる会社もあると思いますが、10人集まったら一人当たり毎月1,500円出すよというルールで、サッカー部とかフットサルとかゴルフとか。サイバーエージェント社長の藤田晋は、麻雀が非常に好きなため、藤田も参加する麻雀部が、150人の最大勢力です。

(会場笑)

私も先程ご紹介したとおり、ダンスをやっていましたので、ダンス部というのを作っています。以前、みんなと踊っていたら、最前列で僕が前に出たところで、ギックリ腰になっちゃいました。それから僕はもう、飲み会担当ということで参加しています。

(会場笑)

これも50人くらい。これも、仕事以外の関係性。そのため、「関係性の質」というのが、今すごく重要になってきています。

やっぱり今って、すごく転職もしやすかったり、辞めることも簡単になっていたりしている以上、辞めない理由がどれだけあるかってこともすごく大事です。その理由がなにかと言うと、「良質な人間関係があるかどうか」。これが非常に重要だということです。

そして、仲をよくするためにやっていることの3つ目。これは、「合う人を採る」ということです。採用基準において、僕らが掲げていることは1つしかありません。「素直で良いヤツ」。これだけです。この採用基準をもとに採用しよう、と。

これをどうやって見るかと言いますと、面接で「素直ですか?」って聞いたら、みんな「素直です」って答えちゃいます。

(会場笑)

なにをやっているかと言うと、インターンシップです。そうして先輩社員と話す機会をたくさん作ります。最近はオフィスで実際に仕事に携わってもらうインターンを増やしていますが、なるべくインターンを増やすことによって、そこから採用につなげるということをやっています。

あと、面接は一人当たり5~6回やっています。そのときに面接官にお願いしている選考の基準は、「一緒に働きたいかどうかだけで選んでいい」。もうこの1点です。

ママ社員の96パーセントが復帰

これは2000年からの売上グラフですが、売上高は32億円から今、3,700億円になっております。今年は4,200億円を目指しています。

サイバーエージェントのビジネスが、インターネット広告から始まり、アメーバブログなどのインターネットのメディアサービス。いわゆる、インターネット上の雑誌みたいなものですね。そしてゲームをやって、今、スマートフォン上でのサービスを展開しています。会社の基幹事業を変化させながら成長してきました。

今日はその中でもいくつか、人事制度で特徴のあるものをちょっとご紹介していきたいと思います。

当社の概要として、先ほど8,000人くらいの従業員がいると申し上げましたが、平均年齢が31歳で、男女比が7対3。エンジニアが多いこともあり、女性の比率が3割くらいになっていますけども、女性の管理職比率がだいたい2割くらいです。これが3割くらいになっていくといいね、ということで今徐々に増えています。

それと、ここにもありますけども、ママ(になった社員)の96パーセントが育休明けに戻ってきています。150名のママが復帰して、今は40名が産休中なので、たぶん来年は200名になると思います。10年前くらいは、ママ社員はまだいなかったのですが、現在は一人ひとりの声を聞いてアクションをとる、ということをやっております。

セカンドチャンスを増やすことの重要性

今日のテーマである「社員の力を活かす」という切り口で、結論となるスライドがこの3つになります。サイバーエージェントとして、この3つを大事に、社員の力を活かすための取り組みをまとめているのがこちらになります。

まず1つ目。「言わせてやらせる」というキーワードです。これはなにかと言うと、本人に意思を表明してもらう応援を、どれだけ会社ができるかということです。

例えば、キャリアです。社内の転職ができる制度があったり、あるいは新規事業を提案する仕組みがあったり、その提案できるハードルを、どれだけ低いものにできるか、手を挙げていいという雰囲気を、どれだけ作れるかということです。

言った以上はそれを任せると、みんながんばってくれるので、言ってもらって、それをやってね、ということを仕組みとして持っています。今日の事例として、あとで「あした会議」というものをご紹介します。

もう1つ、社員にチャレンジをしてほしい、主体性を発揮してほしい、というふうに、経営の中で課題や議論になることがあるかもしれません。そのときにもっとも重要なのが、2番です。チャレンジした結果失敗した人をどれだけ守って、失敗した人がどれだけ復活しているか、僕らは「セカンドチャンス」と言っています。

私たちのミッションステートメントの中に、このキーワードがあります。「挑戦した敗者には、セカンドチャンスを」というもので、チャレンジをして失敗する人は出るものなので、チャレンジした人をねぎらうというキーワードを入れています。

サイバーエージェントは、新規事業をたくさんやります。毎年10社くらい新会社を作っていますが5年間でその新規事業が生き残る率は50パーセントです。半分は統合したり、吸収したりすることがあります。

ただ、今多くの新規事業をやろうと言っている会社、たくさんおありになりますけれども、私たちが大事にしてよかったなと思うのは、「失敗は絶対にある」ということです。失敗に対するセーフティネットとか、失敗に対する仕組みがどれだけあるかないか。当たり前ですけど、チャレンジして失敗してから評価が厳しくなったり、給与が下がったりすると、「やらない」ということになるので。

このセカンドチャンスの事例を、とにかく増やす。これは具体的にどういうことか。「チャレンジして失敗した人で、その後活躍する人が何人いるか」ということです。何人いて、それが誰で、その誰かが社内で伝わっているかどうか。

その事例がどれだけあるかによって、「あの人も失敗して生き残ってがんばっているから、チャレンジできるよね」っていうことに(なります)。セカンドチャンスを増やすことが、イノベーションとか新規事業を増やす、非常に重要なポイントになるかと思います。

経営陣が自ら新規事業を考えてバトルする「あした会議」

そして3つ目。一人ひとりの社員の力を活かすには、個別の対応はすごく大事なのですけども、サイバーエージェントの場合は全体でアンケートをとって、必要な人に個別で対応するというアプローチをとっています。

人事ではどちらかのパターンになることが多いようです。「全社で従業員満足度調査のアンケートをとるのだけど、一人ひとりのアプローチができない」というケースと、「一人ひとりの面談をしているのだけど、従業員数がとても多いので、全員にフォローができない」。

これに僕らも悩んでいたのです。それで、今僕らがやっているのは、「全員に聞いて、その上で個別アプローチ」というのをやるようにしています。これものちほど、「GEPPO」という仕組みをご紹介したいと思います。

まず、「言わせてやらせる」の典型的な仕組みが、この「あした会議」というものです。

「言わせてやらせる」という仕組みは、言わせてやらせるためには誰かが模範にならなきゃいけない、そのため僕らは、「経営陣が自ら新規事業を考える」ということをやっています。

これは役員対抗でチームをつくり、役員会の決議案となる新規事業案や課題解決案を持ち寄って、それで良いか悪いかでバトルするというものです。これをみなさん、サイバーエージェントの取締役だと思って見ていただきたいのですが、その結果や順位が社内・社外に公表されるという仕組みがあります。

これは右側見ていただくとですね、ポスターで「優勝 曽山哲人」と書いてありますね。

(会場笑)

優勝したときのだけを持ってきました!

(会場笑)

実は私もビリにもなったことがありまして、このポスターに記載されているのは全員サイバーエージェントの役員の名前で、もちろんビリになりたくないので、会社に大きな影響が出るような決議案を持ち寄ります。

あした会議の1ヶ月前に役員会の中でチームメンバーを決めるドラフト会議をやります。自分(曽山)のチームに4名、どの部署からでも招へいしていいのですが、このときにルールが1個あります。「自分の担当分野は提案してはいけない」というルールです。

曽山は人事なので、自分の担当分で決められるものは提案してはいけないとなると、他の部門の課題を見つけて、サイバーエージェントの未来につながる提案をしなきゃいけないということになります。それを提案するためには、私の部下ではなく、ほかのチームのメンバーを4人招へいして、1週間に1回くらい、たとえばピザとかを食べながら「サイバーエージェントの課題を見つけてきて!」といった形で一緒に議論をします。

そういうことを行うと、部署横断の交流と経営と現場の交流ができて、その上で提案をするため、新規事業や人事制度がどんどん決まっていきます。実は、サイバーエージェントの人事制度は、私が発案したものは多くありません。ほとんどが社員から提案されているもので、それが非常にありがたいと感じております。

人材の市場価値は「決断経験」の中身で決まる

これはあした会議イメージです。本当にイメージだけなのですけど、右側にグレーのパーカーを着ている人、これが社長の藤田晋で、あした会議の審査員をやっています。ここに背中で映っているメンバーが、ちょうど3分間の新規事業プレゼンをしています。そこで、20点満点で点数がつきます。10点以上だと決議になり、「やるよ!」と決まります。

これは見えないかと思うのですが、藤田が点数つけているのはほとんど2点とか3点とかなんですよ(笑)。すごく厳しい点数がバシバシついていくのです。

点数をつけた上で何をやるかというと、藤田が点数の低いチーム順に、30分ずつ、各チームのブラッシュアップ会議に参加するんですね。そうすると社長と役員と社員で、たとえば「あの新規事業の提案、切り口はよかったけど、ちょっと人選が違うよね」というアドバイスを得ながら、経営と現場が経営決断を一緒に考えることができます。

これを毎年繰り返してやっています。これによって経済効果と言うか、業績の効果が起きています。まずこの「あした会議」、2006年から始めて約10年やっていますけども、ここから生まれた会社がまず30社あります。30社の新規事業が生まれて、そこから生まれた売上が1,000億円。そこから生まれた営業利益、100億円。これは年々増えています。

新規事業の仕組みはやっぱり、経営が模範となって社員と一緒にやる、というのが今までいろいろやった中でも1番よかったです。これも「言わせてやらせる」という仕組みになっています。

そんな中で一人ひとりの能力を活かすために、人材育成というのは、研修が大事なのか、現場が大事なのか、いろんなキーワードがあります。どれも大事だと思いますが、サイバーエージェントで大事にしているのはこれです。「決断経験」というキーワードです。

「自分が決めた」と言える経験がどれだけあるかによって、その会社の中における自分の価値も変わるし、例えばヘッドハンターがその人に声をかけるときも、同じ会社に所属している人であっても「どんな決断をして、その決断からなにを学んで、次にどんな決断ができそうな人なのか」ということは価値が高いです。

市場価値は決断経験の中身で決まる。ということで、サイバーエージェントにおいては、決断経験の量、そして質。これがたくさん得られます。例えば新規事業ができるよ、とか大きなプロジェクトを任せるよ、ということを採用でも育成でも中心に見ています。こういうところをすごく大事に感じています。

挑戦と安心はセットで考える

一方、今こういったチャレンジの機会を増やしながらも、実際には社員の能力を活かすために大事なのは、「安心」という感情です。サイバーエージェントには人事ポリシーがあります。人事制度を設計するときに全体像の中で持っているキーワードは、「挑戦と安心はセットで考える」というものになります。

今、挑戦の人事制度は足りているのだろうか、安心して働ける環境はできているのだろうか。この2つを常に自問自答を繰り返しながら、サイバーエージェントの成長に合わせて人事制度をバージョンアップする、ということをやっています。

「あした会議」が挑戦の仕組みだとすると、こちらの「表彰」は安心の仕組みになります。だいたい正社員が4,000人いますので、その4,000人が全員で集まって、表彰式を行います。

ホテルに全員で集まって、表彰式をやるのですけれども、その中で10賞ほど表彰をします。

新人賞からマネージャー賞、それから社長賞みたいな感じで、この賞を決めるために社員からの推薦を集め、受賞者を決定し、ここにマイクで喋っている方が、壇上に呼ばれてスピーチをします。

ここで1つ大事にしていることがありまして。実は表彰というものは、非常に「シラケ」を生みやすいということです。「えー、あの人、周囲からすごく嫌われているのに表彰するの?」みたいな形です。

(会場笑)

ということが、昔のサイバーエージェントでもありました。そういうこともあり、今このキーワードを経営陣がすごく大事にしています。「人望ある人を表彰しよう」。これは結果を出しているのはもちろん前提なのですけども、その中で周りからも人望がある人を表彰しようとしています。

「人望ある人をどうやって見つけるの?」というのはあるので、いくつか切り口があるのですが、1番効果的に効いているアクションを1つだけご紹介すると、社員からの投票です。しかも任意で強制ではないというところです。

新人賞とかマネージャー賞とか10賞くらい名前があって、「この賞にふさわしい人を推薦してください」という事を全社に告知します。そのときに、(推薦したい人が)いなければ推薦しなくていいです。それで、もしこの新人賞に当てはまる人、マネージャー賞に当てはまる人が1賞でもいいのでいたら、その人の名前と、ひと言でいいから推薦文を書いてください。

そうすると、僕ら4,000人くらい社員がいますけど、ちょうどのべ4,000人くらいの推薦されているリストが出るわけです。これは公開もしないので、はっきり言って別に投票しなくてもいいわけです。しかしながら、推薦してくれるということは、当然ですが壇上に立ってほしい、ということになります。

人事制度の成功確率を上げる「シラケのイメージトレーニング」

このリストを毎半期ごとに見るのですけども、私からしても「人望がある人リスト」なんですよ。とにかく褒められているので、この人たちは僕らの中では将来の抜擢の候補にもなるし、実際に昇格に値する人でもある、といったことでピックアップします。そして光を浴びる、ということをやっています。

こういう安心材料があると、お互いに対して支え合いとか認め合いが生まれてくる。なので、表彰の力はあなどれない、というのがポイントということになります。

また安心して働けるためには、妊活と育児の支援というのをやっています。それが1番上に書いてありますけれども、3~4年くらい前から「macalonパッケージ」という、女性活躍の促進制度を始めました。

例えば、1番上の妊活休暇。妊活のために月1回、休暇をとって構いませんということで、毎月だいたい15~20人くらいの人材が活用してくれて、たまにそういったうれしい報告とかもしてくれます。

2番、保健師さんに会社に来ていただいて、マンツーマンで相談に乗る。必要であれば社外であっても、旦那さんや奥さんを呼んで相談してもいいということで、そういう相談できる場を用意します。

3番。これは最近、認可(保育園)に入れないという問題も多いので、認可外保育園に入った時、高額な保育料との差額をサイバーエージェントが補助します。そうすると、サイバーエージェントにとっては労働力としては増えるし、ママ・パパ側からしてもきちんと育児とか支援ができる、というようなことでやっています。こういった環境を整えることも、大事にしています。

ただ、こういう制度を作るときは、かなり慎重にやらないといけません。僕らは人事制度を1つ作るときに、具体的にやっている習慣が1つあります。それは、人事制度を展開する前に必ず「シラケのイメージトレーニング」というものをやっています。本当に、人事制度の成功確率がぜんぜん違うので、これを毎回やっているのですけど。

イメージトレーニングが社内の炎上を防ぐ

例えばこの「macalonパッケージ」をやります。そこで、妊活とかママの支援をやるとなると、どんな「シラケ」が……具体的になにをやるかって言うと、「誰が」生まれるか、これが①です。

②は、「どんなセリフでシラケが生まれるか」を考えます。3つ目に対処方法を考えるのですけど、例えば女性だけではなく、男性にもこういう話題にポジティブな人・ネガティブな人がいるので、それを全部ホワイトボードに書きます。「誰が」「こういうふうに」「こんなふうなセリフ」が出てくるかもしれない。

この「シラケ」をイメージトレーニングしながら、この制度を成功させるためにはなにをしなきゃいけないか。全員に対応すべきなのか、ここのところだけ対応できればいいのか、ということを議論します。

イメージトレーニングを先にやることで、言ってみれば人事制度をリリースしてから、反発ってたまに起きるわけですね。僕はよく「炎上」って言っていますけど、この炎上をどれだけ「シラケ」のイメトレで先にやれるかで、対策が打てるのです。

具体的にこれでなにをやったかと言うと、7番についている「エフ休」というのが「シラケ」のイメトレによってできたものなのですが、これは女性(Female)のFということで、「Female休暇」の略です。「妊活休暇」といっても、男性の上司は言いにくいです。

例えば女性のホルモンバランスによる休暇とかいろんな休暇があるけど、これも男性上司には言いにくいです。これは普段妊活に関係ない女性ですら言いにくいというものがありました。それは確かに「シラケ」のイメトレとしては大事だから、もうこの際、女性の休暇は全部「エフ休」と言おうとしました。

「エフ休で休みください」と言ったら、それはもう理由を聞かない、というふうに決めよう。その代わり、その女性の社員は、休みの申請のシステムに、実際はなんで休むかの詳細を、女性の労務担当に届くデータとして申請をする義務があるのですが、上司には言わなくていいよ、としました。

それを上司のみなさんにも、勉強会で「そういうものだからちょっとよろしくね」というふうにお願いをします。実際に「エフ休」という言葉を使っている人もいるし、もちろん使わない人もいるのですが、そういうふうに言っていいんだよ、とした。このようなイメトレを繰り返したりもしています。

いい人事制度のネーミングは採用力を上げる

私たちは「マカロン」という名前をつけていますが、右に映っている女性が労務担当で、この「マカロン」というネーミングを思いつきました。人事制度はネーミングがすごく大事だということを意識しています。

もう少し言うと、人事というのはもう、マーケティングであると。社員の感情が今どうなっていて、その感情をどういう状態に持っていきたいのかを考えるのは、まさにマーケティングだと。このマーケティングをやる中では、ネーミングというのはすごく大事だということです。

「マカロン(macalon)」の「マ(ma)」は、「ママ」ですね。「カ(ca)」は「サイバーエージェント(CyberAgent)」の略で、ちょっとだけムリしていますけど、これで「カ」って読んでいます。「ロン(long)」は、僕らサイバーエージェントはベンチャー企業なのですけど、終身雇用の会社を作ろうと、実力主義型の終身雇用の会社を作ろう、ということを言っています。

これをセットにして、「マカロン」と名前をつけました。いろいろある人事制度もこうやってパッケージになっているものを「マカロン」と総称して、パッケージ化しているのです。

ネーミングをつけるとなにがいいかと言うと、実はいくつかポイントがあります。1つはまず、社内での利用の促進が生まれます。「マカロン使った?」という軽い言葉で話せるのはすごく大事です。

これが「妊活休暇女性ナントカ支援」と言ってしまうと、私もそうですが噛んでしまったりして、流行らないですね。ネーミングをつけることで、人事制度の利用促進につながります。

さらに、もう1つ重要なものがあります。いいネーミングを作ると、採用力も上がります。これがぜんぜん違います。「マカロンというパッケージがあってね」というのを、内定者がほかの大学生とか同級生とか家族とかに、どんどん言ってくれるのです。そうすると面接受けたときも、「マカロンというのを友達から聞いて、調べてみたらサイバーエージェントって会社に出会って、調べてみたらすごくいい会社だってわかったのでエントリーした」と、本当にある話なのです。

社名やサービスを知られていなくても、もしかしたら制度が口コミで回る可能性があるので、こういったネーミングはすごく大事だと思います。ということで、ネーミングを作るときに、すごく時間をかけてがんばっています。

人のモチベーションは山の天気のように変わる

そして、一人ひとりの力を活かす仕組み。これが最後のまとめになっていく仕組みなのですけども。サイバーエージェントは、社内にヘッドハンターがいます。今4,000人の従業員がいるので、どこで誰がどんな活躍をしているのかは、ふだん見えないです。もしかしたら、優秀な人材を埋もれさせている可能性があるかもしれない。ということで、このヘッドハンターの部署を専門で作っています。

これは異動担当とも言えるので、意味を転換すればいいだけかもしれませんが、具体的にやっていることがこれです。適材適所の専門チームが、私、曽山の直下にあります。「キャリアエージェントグループ」というグループで、まるでヘッドハンターとか社内のエグゼクティブなコンサルタントとかキャリアのカウンセラーのように、社内の人材の流動化とか転職を促進しようとしています。

サイバーエージェントは100社も子会社がありますから、それぞれやっていることも違いますし、必要なポジションも違うので、それを専門で集めるチームになります。

やっているステップが3つあります。1つは、毎月社員にアンケートをとっている。これが実は、退職率や定着率を改善し、一人ひとりを活かす意味ですごく大事です。のちほど画面もお見せしますけれども、オンラインのアンケートをとって、コンディションを聞いています。

サイバーエージェントでは、人のモチベーションは山の天気のように変わる、とよく言っています。「昨日までノリノリだったあの山田くんが、上司の冷たいひと言によって、すごくモチベーションが下がって、下手をすると辞めることまで考えちゃう」ということが起こり得るので、なるべくタイムリーに聞いていこうと、このアンケートをやっています。

そのアンケートのデータから、個人別で気になる声を持っていったり、あるいは部署別の集計をしていったりして、それを役員会で共有しているので、毎月社員の情報について議論しています。

そして3つ目になりますけども、必要な社員、例えばSOSを出しているような社員においては、このヘッドハンターチームが面談をして、必要であれば役員会議にどう提案するか、ということを仕組みとしてやっています。

「どしゃ降りの人材」をフォローする仕組み

ごめんなさい、イメージだけになるのですけども、具体的にちょっとだけ紹介させてください。内容としては、「GEPPO(月報)」という仕組みを作っています。これ、「月次報告」の略です。営業日報とかあるじゃないですか、それを月報ということで、「GEPPO」ってちょっとだけ英語にすることでカッコよく見えるかなと思ってやってみたら、意外にハマったという感じです。

これはなにかと言うと、天気がこれだけあります。これが質問1個目。下に文字が書いてあるのですけど、これが2個目。質問は基本的には3つしか聞かないというのを原則にしています。

1番目が固定の質問で、これはアンケートとして聞いているのですが、業務として必ずやるようにと経営で意思決定して、全社員に回答してもらっています。だいたい3日で85パーセントくらい回答して、月の中旬くらいになるとだいたいほぼ全員が回答してくれている、というようなものになっています。

これでなにを聞いているかと言うと、「あなたの先月の成果はどうでした?」と聞いています。これを、毎月ずっと聞いています。ここにありますけど、天気は快晴からどしゃ降りまで。これは、日経新聞とかの産業天気図を参考にやってみました。自分でピッと押すだけなので、簡単です。

これを見ると、もう4年やっているので、データで48ヶ月の山田太郎くんの天気推移があります。晴れ、晴れ、晴れ、晴れ、晴れ、雨、くもり、晴れ、晴れといった形です。当然ですけど、天気急変はすごく危ないので、僕らのヘッドハンターがすぐメールやメッセージを送って面談するようにしています。

1番右を、僕らは「どしゃ降り」って呼んでいるのですけど、どしゃ降りの人材は毎月だいたい50人くらいいます。2ヶ月くらいどしゃ降り(が続いている)人材がだいたい10人くらいいるのですが、その10人くらいをちゃんとフォローして、キャリアアップとか異動のサポートをする、ということをやっています。

データと直感は両方並列すべき

2つ目、3つ目は毎月質問を変えていまして、例えばミッションの浸透度を聞いたりします。例えば「サイバーエージェントはセカンドチャンスって言っているけど、それってありますか?」っていうのを天気で聞くなどです。

これが非常に良いのは、天気で聞くと、その個人のコンディションがわかるだけでなく、集計すればチームの雰囲気もわかるわけです。そのためチームの天気を見ると、部署の目標の達成の状況と、この天気の情報をデータで突き合わせれば、どれくらい相関があるのかないのかもわかります。

「ちょっとここは大変そうだな、雨が多いな。もしかしたら人事が効いてないのかもしれない」ということで、これをまさに全体で聞く、ということをやっているのが、このアンケート「GEPPO」になります。

実際に、具体的にどういうことを聞いているかと言うと、1問目は今申し上げたとおり「先月の成果はどうでした?」と聞いていますが、2問目は毎月、経営の状況によって変えています。

例えば「今のチームの熱量を天気で答えてください」。こんな主観的なものとかも、天気5つで聞くとデータ化できるわけですね。快晴が5点、どしゃ降りが1点であれば、チームごとのスコアが出せます。

私が人事のテクノロジーにおいて大事にしているのは、主観情報、つまり定性情報をいかに定量化するかです。経営っていうのはだいたい、直感とかでやりがちです。私もそうですけど、直感ばっかりいきがち。そんなところを、「GEPPO」でデータをとることで、この主観情報を定量化することで、より客観的に判断ができます。

データと直感は両方並列すべきだということで、そういったチームの熱量みたいなものを聞いたり、あとは貢献の実感を聞いたりします。「あなたは組織に貢献できている実感がありますか?」と聞くと、人によって差が出ます。

また、組織の改善点をフリーコメントで聞くこともあります。例えば最近だとハラスメントとかの話もあるので、「会社のリスクで気になることありますか?」ということをフリーコメントで聞いたりもします。

社員の力を活かす3つのポイント

ここで大事にしているのは、身分の保証です。具体的には、このデータはヘッドハンターチームと役員しか絶対に見ません。なので、上司にも絶対フィードバックしないから素直に書いてください、というのをずっと積み重ねていくと……最初はみんな怪訝な顔で「『GEPPO』って書いても大丈夫なんですか?」と書いたりしてくる人もいるのですが、それをどんどん積み重ねていくと、ちゃんと回答してくれるようになります。

これによって毎月社員の声を聞いているので、このヘッドハンターのチームが毎年、実際どれくらいの人材を異動できているかと言うと、だいたい毎年100~200人くらい人材の異動を、この「GEPPO」を通じて提案しているというようなことがあります。

あと、ここに書いてあることだと、例えば棚卸。「業務の棚卸をちゃんとチームでやれていますか?」。これはけっこう、働き方の考え方を古くから大事にしているもので。知的労働だと、業務の中身がなかなか見えないので、業務の棚卸をちゃんと行い、不要な仕事を捨てていくことがけっこう大事です。捨てる習慣があるかどうかも聞いたりしています。

こういったことを聞いて、チームとコンディションと個人のコンディションを拾うようにしています。これはたまたまなのですが、リクルートの皆様にすごくお褒めいただいて。合弁会社を設立し、当社で使っていたシステムをベースに外販用のサービスを開発し、「Geppo」として販売しています。すごく営業になっちゃいましたけど。

(会場笑)

ご興味ある方は、もしよろしければ、調べていただければと思います(笑)。

「社員の力を活かすポイント」ということで、改めて整理になります。「言わせてやらせる」安心してどんどん言える環境があるかどうかをとにかく大事にするというのが、まず1つです。

2つ目は「セカンドチャンスの事例」。どれだけ名前と事例があるか。新規事業をやらせる以上は、失敗があり得るということです。

3つ目は「GEPPO」などでご紹介したとおり、「全体で聞いて、個別で対応する」。これをぐるぐる回していくことで、社員の力を活かすということをやっています。

ということで私、サイバーエージェントの曽山からのプレゼンテーションは以上になります。どうもご清聴、ありがとうございました。

(会場拍手)

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