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Go Global 2020年に向けたアプリビジネスの展望とは(全4記事)

日中米のゲームビジネスは『三国志』状態 テンセントのシン氏らが語る、国境なきネット業界の戦い方

2018年2月7日に、スマホアプリの頂点を決める「App Ape Award 2017」が開催され、アプリオブザイヤーの授賞式やパネルディスカッションなどが行われました。アプリマーケットセミナー内のトークセッション「Go Global 2020年に向けたアプリビジネスの展望とは」では、日中の経営者らが集い、アプリビジネスについて語りました。本パートでは、グローバル化が進むネット業界の活路をテーマに意見を交わしました。

他国のアプリ利用状況データを分析して見えたこと

渋谷修太氏(以下、渋谷):今ちょうどグローバルな話が盛り上がってきたので、仕込みのスライドをお願いしてもいいでしょうか?

私自身すごく反省している点があってですね。僕らは日本のアプリのデータを持っているので、日本の話をどんどん輸出して生きてきたんですけれども、でも逆にそれがすごい反省点で。やっぱり「アメリカ市場が」とか「海外の市場が」みたいな話をしていかないといけないんじゃないかなと思ってあるデータを持ってきました。

(スライドを指して)これが日本と韓国とアメリカの月間利用者数(MAU)の、1月時点のTop 10なんですね。アプリの(利用者数)ですね。メルカリちゃんといますね(笑)。(スライドの)一番右がアメリカなんですけど、マーケットの印象がなんか違うなと思っていて。

僕が、最近一番驚いたのは、アクティブで見てNetflixにTwitterとほぼ互角のユーザー数がいることです。「これやばいな」と思って。日本だとそういう感覚ってないかなと思ってるので、こういうのをどんどん表に出していきたいなと。

もう1枚あって、(スライドが変わって)ゲーム側も持ってきているんです。やっぱり日本って、(スライドを指して)左側の列を見ていただきますとわかるように、けっこうIPとかキャラクターゲームとかってガンガン稼げるようになっていて。

右側のアメリカのほうって、意外に3年前や4年前ぐらいからトップラインにあんまりチェンジがないんです。『Clash of Clans』とかもそうなんですけれども。

海外のIPを借りてきて(事業展開する)みたいなことを、もしかしたら日本の企業がすごくうまくできるかもしれないなと思っていたりします。そうしないと中国がやるのかなみたいなことを思わせるのが、この持ってきたデータです。

分析データの提供でグローバル展開の起爆剤になりたい

(スライドを)もう1枚めくってもらっていいですか。これ、アメリカのMAUの数字が出てるんですけど、ランキングなんですね。去年1年間、米国のデータをがんばって集めたんですね。

これを使って、韓国もそうですけど、アメリカとか海外で、いま一度日本企業ががんばっていけるようなムーブメントを2018年に起こしたいなと思っていて。このアメリカのデータを無料で公開しようかなと思っています。大丈夫? 言っちゃったけど(笑)。

(会場拍手)

アメリカのデータ、1ヶ月間って言いすぎか。1週間……いい? 1ヶ月間無料で公開しますので、ぜひその期間、「いま一度アメリカ(のデータ)を見たいな」とみなさんが思って、日本のみんなが「やっぱり日本だけじゃなくて、(海外に)展開していこうぜ」ってなっていくのに火をつけられたら、すごくうれしいかなと思ってやったりしています。

(会場拍手)

なので、これ終わったら、2017年の「App Ape Award」の特設ページに入力フォームを設置して無料で解放しますので、じゃんじゃん見ていただければと思います。

僕らはそのデータの精度が上がっていくようにがんばり続けるので、マインドの面もですが、みなさんが世界で展開するのをちょっとでもサポートしていけたらなって思っています。

アプリビジネスを取り巻く現在の環境

小泉文明氏(以下、小泉):すごいありがたい話なんですけどね。こうやって話していて1個、グローバルで思い出したのが、ゲームはまた別ですけど、アプリというのがけっこう日本独特に、逆になっちゃってる部分があるなと思っていて。

例えばTencentを見ても、アプリゲームじゃなくて。もう今は、Webもそうですし、たぶん家庭用ゲーム機もそうですけど、ソニーの最高益だって結局は家庭用ゲーム機の利益であって、世界を見ると実はもうゲームの業界(の主流)ってあんまりアプリゲームじゃないなと思います。

僕らもUSを想定した時に、Webに関して「しっかり考えないといけないよね」というくらい本気度が低かった話だったのが、「またWebに戻っていくな」というのは考えたりしています。

渋谷:そういう意味で「Webのデータもあればいいな」みたいな、そういう話?(笑)。

小泉:まぁ、それも含めてなんだけど(笑)。だからこういうアプリの販売数があるんだけれども、やっぱりグローバルで考えたときに、アプリだけで勝負するとやべえな、失敗するなと。

渋谷:とくに最近の傾向で、僕、去年ぐらいからアメリカでの体験ですけれども、スターバックスのWifiを借りると、店舗にいるたくさんのお客さんに、アプリのインストールを宣伝できる。

そこで数百万人からダウンロードされるんですね。そうするとそのポイントみたいなのものがどんどん巡ってくるということを考えたときに、オフラインの人たちがWebやアプリにどんどん出てくるようなことがあるのかなと思っていて。小泉さん、そっち側ってどう捉えてるんですか? 

小泉:そこも中国なんかはやっぱりWeChat Payに対して、実はオフラインのクーポンを含む、いろんなバリューチェーンを作っていて。ペイメントの上にいろんなオフライン事業者が乗っているんですよね。

渋谷:なるほどね。

海外展開先の選定基準は

谷本有香氏(以下、谷本):大丈夫ですか。海外展開のところでもう1つうかがいたいのは、例えば海外展開する上で選ぶ国というか、「どういった基準でこういった国に興味を持った」とか、そういったお話はありますでしょうか?

渋谷:堀江さん。

堀江裕介氏(以下、堀江):わからないです。僕はやってないから。あんまり信憑性がないのはあれなので。小泉さんいかがですか。

小泉:僕らも二次流通なので「いいものが出てくるかどうか」というところでいくと、なるべく経済発展した国というのと。物、決済とか、物流まるごとなんだけれども。そういう意味だと、日本、アメリカ、次にイギリスですね、ヨーロッパの展開として。

アジアはそのもう少し後なんじゃないかと思っています。まだまだ時間がかかると思うんですけれども、二次流通に信用性が高いところとかが出てくると、アジアのほうはむしろ、もう少し違ったかたちを考えないといけない。

中国については、僕が見てると、Tencentとアリババの戦いがもう激しすぎちゃって、逆に中国から出ていくのがしんどいんじゃないかと思うんですね。アジアの中でも中国は日本より成長速度が速いし、ビジネスが強いから、なるべくTencentとアリババはそのまま中国の中で競っていてほしいなと勝手に思っていて。出てこないでほしい(笑)。

渋谷:応援してます。

小泉:僕も。2社が同率で戦ってほしい(笑)。

渋谷:(シン氏に向かって)日本で展開していらっしゃるじゃないですか。日本以外はどこでやってみたいですか?

シン・ジュノ氏(以下、シン):Tencentとしてやってる事業ですけれども、ゲームでいうと、欧米ですよね。やっぱりプラットフォームは強いんですけど、正直コンテンツのほうが強いと思います。昔はプラットフォームが強かったんですけど、コンテンツがあればプラットフォームを作れる時代になってきたなと思います。

例えば、ゲームの例を出すと、『Overwatch』とか『StarCraft』とか『World of Warcraft』といったBlizzardのゲームがBattle.netというプラットフォームで作られています。1つのキラーコンテンツがあれば、そのプラットフォームに人が来るんですよ。でも、プラットフォームを作ってから人に「来てください」という時代はもう終わったと思っています。

僕らからすると、一番いいコンテンツを作る国はどこですかというと、今間違いなく、当然アメリカですね。なのでTencentからすると、中国が一番重要です。海外からすると一番重要なのはアメリカ。それで、次がヨーロッパ。そういう順番ですね。

顧客体験をどう活用するか

谷本:この4名のみなさんに質問したい人が会場の中にたくさんいるとお聞きしたので、ぜひこの機会にという方、いかがですか? ……というと手が挙がらないですよね。せっかくの機会でございますので、いかがですか? はい。お願いいたします。

質問者:じゃあすいません。お話ありがとうございました。今日はアプリの話でしたが、アプリを作るにあたって、顧客体験というか、お客様の体験の中のどこを重視しているかというところを教えてください。

小泉:そうですね、メルカリの場合は、けっこうデータで出てるのは、知名度はすごく高いんですけど、まだ使ったことがないという方はけっこういるんですよね。ダウンロードしたけどまだ使ってないとか、まだ手をつけていらっしゃらない方。

最初の顧客体験のところを、どうやってちゃんと成功させるのかというところはやっぱりすごく気にしますね。アプリでいうと、最初に成功しないといろんなアプリにキャッチアップされちゃって、二度と(人気が)出てこないというケースがあるので、やっぱり最初のところに一番こだわっていますね。

それ以降は、当然売買が成立するとそのあとのリテンションレートがすごくいいので、最初のところの成功経験というのはすごく大事だなと思っています。アメリカでもけっこう同じことが起きていますね。

堀江:同じです。

小泉:やっぱりアプリはね、キャッチアップされちゃうようなものはもう二度と出てこないので、非常に危なくて怖い。だからそこは対処しないといけないなと思いますね。

プッシュとリテンションを考える

小泉:あと、うちの場合はプッシュはあんまり打ちすぎないようにしてて。本当に打ちたいとき、響いてほしいときに打つようにしています。

堀江:クラシルのユーザーの多くはまだ1年とか10ヶ月とかそういうレベルなので、だいたいAnalyticsとかで取れるのがday1からday4のところなんですけれども、30日目以降って、まさに今おっしゃってたプッシュのところが重要で。

短期的には、現場は30日目までのリテンションが目に見えていて、そこを上げたいからプッシュを多くする意思決定をしてしまっていたんですけれども、最近はそこから脱却し始めています。

渋谷:プッシュとリテンションみたいな話、めっちゃおもしろいなと思ったので、これを全部解明できる機能をどんどん出していきます。そういうフェーズにアプリが入ってきてるってことはおもしろいなと思います。

僕らが出していくデータも、どんどんそれに追いついていかないといけないと思っているので、そういった動きができればなと思います。

アプリビジネスに向けた新しい指標を作りたい

谷本:はい。そうですね。では、そろそろお時間になりましたので、最後の質問ということで。(これまでは)2018年のみなさま方の取り組みということで(質問を)設定してたんですけれども。

最後の質問は2018年と言わず、その後、「中長期的にどういったことをやっていく気持ちなのか」を、背景とかそういったことも含めて、「どのくらいの規模感になりたいのか」など「大きな野望」みたいなものを聞いてみたいです。どうしましょう。

渋谷:いっちゃいますか?

谷本:そうしましょう。

渋谷:そうですね、やっぱり僕らは本当に「グローバルでやりたい」と思っていて、今年はやっぱりもう1回。けっこう韓国はわりとうまくいって、お客様に使っていただけるようになってきたので、やっぱり、どっちかというとそのグランドラインの先みたいな感じなんですけれども、そこを僕らも本当にやっていかなきゃいけないというのが1つ。

あとは、僕らがやり始めた時って、いわゆるダウンロード数よりちょっと先の、アクティブユーザー数とか、その先の起動回数とか、純粋にそういうのを出していってたんですけれども、さっきのリテンションの話のように、その行く先や「最終的にみんなどうなっていくんだっけ」みたいなことを考えながらもっと中長期的に考えたときに、細かく新しい指標を作っていったりしたいですね。

先ほどの、いろんなみなさんがスマホのアプリをやっていくなかで、2、3年後には僕らが、本当に全員に頼ってもらえるような存在になる頃かなと思っております。はい、そうですね。そんな感じです。

スピードと資金力で勝負する

シン:Tencentとアリババの戦いというのは、ぶっちゃけそのとおりでございまして、要は中国企業が、とくにTencentとアリババが、投資に使う金額がけっこう多いんですね。両社とも、年間で数兆円のお金を投資に使います。

それで日本にはソフトバンクさんがいらっしゃるので、だいたい中長期視点で見ると、お金の勝負の話が出てきます。日本のお金、中国のお金、アメリカのお金がぶつかるんですけど、そのぶつかった結果、「三国志」みたいなことになりつつありまして。

だからこそ、スピーディーに判断し、M&Aを打ちつつ。ネット企業というのは国境がないわけですから、そこではAmazonもGoogleもTencentもアリババも同じ競合だと思いますので。

この3年から5年後は、インドはまだまだ先になるかと思いますので、東南アジアは10億人がいるわけですけど、この10億人の奪い合いになると思ってるんですね。ヨーロッパもまだ順調に上がっているので。グローバル化をがんばってやりつつ、ほかに勝負できるところがあればという感じです。

当たり前のことを積み重ね、何回か奇跡的な勝負を勝ち抜く

堀江:「あえてどこのジャンルにも張らない」というのがいつも僕のやり方なんですけれども、きちっと来た波を捉えられるような会社にしたいなと思っています。

僕は天才タイプではないなと思っているので、そのためには、1プロダクトでバーンっとやっていくという感じよりは、どちらかというと「凡人としてできることは何かな?」とか、「人としてきっちりする」「いいメンバーを育てていって、社風をきっちりと作っていく」という、当たり前のことを当たり前にやっていかなければいけないフェーズに入っていまして。はい。そんなキャラなんですよ。

僕は、本当に当たり前のことをきっちりとやれる会社というのは少ないなと思っていて。最近ソフトバンクさんや日本電産さんを見ていて思うのは、やっぱり1個1個コツコツ積み重ねていくなかで、何回か奇跡的な勝負を勝ち抜いているんだないうことです。

そういうときに備えて「僕が強い組織を作っていく」というところと、ある意味、時代に逆行する根性論みたいなのかもしれないですけど、「1回1回の勝負に絶対負けない」「1個1個絶対勝ち抜く」というこの強い気合ですね。僕は気合で進めたい。メルカリの逆ですね。

「やらないことを決める」ことで活路を見出す

小泉:(笑)。僕らはですね、スピードという話をしましたけど、やっぱりUS・UKでやってると、本当にスピードとか資金量とかがすごく大事です。今なにをやってるかというと、僕らも成長していく過程でやれることがたくさん出てきたんですね。

これ全部やったら負けるんですよ。やっぱりフォーカスしなきゃいけないかなと思っています。どこに張って、ちゃんと勝ったのか? 

結局、僕らも最初の頃ってヤフオクさんがいたりとかで、ともすると簡単に大手から潰されそう(な環境だった)……潰そうと思えば潰せたと思うんですけども。でも、大きな会社の中にはいろんな事業があります。一方で、僕らはそれを一点突破して突き抜けていったわけなので、結局アリババでもTencentでも、たぶん一点突破されたら、もたないです。

それはFacebookでもGoogleでもそうだと思います。そこを見つけて突破していく中で、自分たちの未来を作っていくしかないなと思います。まぁ、けっこう「やらないことを決める」というのはすごい大事なフェーズになります。

その中でどれだけ人々のライフスタイルが変わるような、そういうものをしっかりと提供できるかというところかなと思ってますね。そういういいサービスを作っていきたいと思っています。

谷本:さあ、まだまだみなさんお話をおうかがいしたいところだと思いますけれども、お時間になりました。立ったまま聞いてくださったみなさん、本当にありがとうございました。では、あらためて、4名のパネリストのみなさまに大きな拍手をお送りください。どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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