中東で有名になれた理由

武者慶佑氏(以下、武者):では、先ほどの話に戻った時に、半分はお酒、半分は何がきっかけなんですか?

鷹鳥屋明氏(以下、鷹鳥屋):もう半分は、こういうことをやる人間がいなかったというのが大きいということです。

武者:オンリーワンという?

鷹鳥屋:はい。私よりも圧倒的に中東関係に詳しい人とか、アラビア語を話せる人っていっぱいいるんですよ。でもこの格好で日本の文化を紹介したり、日本の文化を経験してみたりする人間が、今まで1人もいなかったんです。そもそもこの服自体、日本であんまりなかったというのもあるんですね。

武者:ちなみにそれ、どこで売ってるんですか?

鷹鳥屋:日本じゃ売ってないですよ。私が毎回サウジとかクウェートとかカタール、バーレーンに行く度に、大量に買って帰ってきてるんですね。それが積み重なって、70着ぐらいありますね。

武者:友達は70人?

鷹鳥屋:「70人だけ」みたいな感じになっちゃうじゃないですか、それ。

(会場笑)

でも、そうですね、どんどん増えて、8畳1間の部屋が民族衣装でどんどん埋まってきています。

中東には石油王はいない

武者:そもそも「広めよう」という方だったり、そこにもっと、自分がオンリーワンの存在になろうって思っていたのかというと、何かしらの課題意識であったりとか、私がやらなきゃという使命感みたいなものがあったんですか?

鷹鳥屋:そうですね。もともとみなさんも思っていると思うんですけど、中東といえばだいたい石油王がいて、テロリストと、あとアラビアンナイトとラクダがいるんだろう? みたいな、そんな感じだと思うんですよ。

(会場笑)

中東に赴任したことある人は例外だと思うんですけど、ほとんどそんな感じだと思います。

でも、実際石油王なんていないんですよ、今は。「石油王のいない中東」って、この前連載で書いたりとかしたんですけど。そこをいかに現地の正しい目線で……。「女性は抑圧されてる」とかいうんですけど、女性もけっこうエンジョイしてたりする現実もあったりするのを、現地の目線で伝えたいという思いがあったのが大きいですね。

「楽しいこと」が人を呼び寄せる

武者:それは、ブログで伝えるというのとはちょっと違う手段ですか?

鷹鳥屋:ブログで伝えるというのは、発信力があればいいんですが、その前に、実際に着てみた瞬間に、「あっ、あの人たちがつけてるのってこんな感じなんだな」とか、「日本で着るには暑いんだな」とか、これ絶対足広がらないから、「こいつら絶対走らねぇんだな」とか。

(会場笑)

そういうことがわかると思うんですよ。でも、着てみて体験して、そこで初めてわかることって多いと思うんです。だからそれをやることが大事だと思って。

武者:僕も先ほどみなさんに渡してしまったんですが、着ていて。鷹鳥屋さんが私服で僕が(中東の衣装を)着ているといういい写真が撮れたんですけど。

鷹鳥屋:日本人のコスプレをたまにしてるんで(笑)。

武者:あれ、コスプレだったんですか?

鷹鳥屋:あれはコスプレです。こっちが本物。

武者:ははは(笑)。けっこう暑いなというのは、確かに印象としてありますね。

鷹鳥屋:でも、向こうは湿度が0パーセントから10パーセントなので、そんな蒸れないんですよ。日本のこれからの季節だと、絶対に蒸れるんですね。なので6月とかにこの格好すると、本当にあせもができちゃって。

武者:ふっふっふ(笑)。

鷹鳥屋:向いてないんですよ、この格好は。でも、中東だと、本当に日が強いんです。日陰と日向の温度ってぜんぜん違うんですよ。これからたぶんどんどん上がって、7月、8月とか、たぶん60度ぐらい行きます。その時はこの格好じゃないと逆にやばいです。

武者:Tシャツ短パンじゃぜんぜんダメ?

鷹鳥屋:むしろ、全部水ぶくれになっちゃいますよ。それぐらい危ないですから。『マスターキートン』にも同じこと書いてありましたからね。

(会場笑)

武者:すいません、勉強不足で……(笑)。

鷹鳥屋:いえいえ(笑)。

武者:そうやって「自分が広めなきゃ」って。しかも体験したことを広めなきゃという、その使命感みたいなものとかって、それは日本にニーズがあったんですか?

鷹鳥屋:ぜんぜんなかったと思います。

武者:半分遊び?

鷹鳥屋:半分遊びで、「こうやったら楽しいだろう」みたいな感じでやって、その上で楽しいだろうと思って集まってきた人がこんな感じでバッとやってて。

「明星」の元ネタ

武者:なるほど。じゃあ、この半分遊びというところからうまくつながった気がするので、本格的なセッションベースでいきます。

鷹鳥屋:はい。

武者:僕、この写真が気に入ってるんですよ。

鷹鳥屋:どぅはは!(笑)

(会場笑)

武者:この写真、本当にねぇ……。こう言っちゃなんですけど、バカでしょ?

(会場笑)

鷹鳥屋:いや、これねぇ……。

武者:これ、日本人にしか伝わらないですよね?

武者:いやいや……。

鷹鳥屋:ここのフリップのテキストとかを自分で作ってるんですよ。

武者:自分で作った。

(会場笑)

武者:(笑)。

鷹鳥屋:この中で、「明星」を知ってらっしゃる方いらっしゃいますか?

武者:世代的に知ってると……。

鷹鳥屋:世代的に、みなさん知ってらっしゃいますよね?

武者:30代の方がもしいたら。

鷹鳥屋:これ、この元々の写真はすごいまともな。

武者:ジャニーズとか写ってる。

鷹鳥屋:元ネタの写真があって。それがけっこう、すごい日本のビジネス界隈で有名になった写真があって。撮る人から「お前の写真って昭和っぽい」って言われて。確かに顔も昭和っぽいんですけど、「昭和のアイドルっぽいかな、明星っぽいよね」って言われて。

じゃあ、それが誕生日の1週間前だったんで、誕生日のために私、明星の雑誌を全部見て、一番人気だった号のやつを丸々構成をパクって、作って、誕生日に公開したんです。

武者:ふふふふ(笑)。いやぁ、本当にバカなことを……。

鷹鳥屋:ねぇ。「あなたのハートをキャメルクラッチ」とか、自分でもバカだなぁと思いなから書いてましたから。

武者:キャメルクラッチって何?

鷹鳥屋:プロレスの技です(笑)。「最高4大ふろく、原油、ガソリン、天然ガス、メタンハイドレート」って。

(会場笑)

武者:1985年3月26日?

鷹鳥屋:誕生日、誕生日。

武者:誕生日ね。本当に、やりきってますよね。

鷹鳥屋:巻頭グラビア、ヤシの木の下で。

武者:ただ、これでお金もらえるわけじゃないですよね?

(会場笑)

鷹鳥屋:それをやりたかっただけ。

武者:日本人だけで?

鷹鳥屋:日本人だけで。砂漠系の、サバサバ系男子の実態を知りたいという声がけっこうありましたよ。

(会場笑)

武者:あっ、今日はいない。

(会場笑)

鷹鳥屋:これを選ばれるとは。

武者:じゃあこの話、戻すと……。

鷹鳥屋:はい(笑)。

(会場笑)

好きなものの見つけかた

武者:好きになったきっかけというところの話で、「好きなものの見つけ方」を聞いてみたいと思います。好きなものの見つけ方をストレートに聞かれた時に、なんだと思いますか?

鷹鳥屋:それを、時間を忘れて何時間でもできるというところだと思うんですよね。

武者:夢中になって?

鷹鳥屋:夢中になって。時計を見たりとか、あとあとの時間のことを考えずに取り組むことだと私は思ってますね。

武者:鷹鳥屋さんの好きなものって、中東以外に?

鷹鳥屋:中東以外に? う〜ん、うまい中東の飯を食うこと。

武者:中東じゃないですか(笑)。

(会場笑)

鷹鳥屋:中東だ、ダメだ。だいぶ毒されてるからなぁ。他に好きなこと? 歴史書を読んだりすることは好きですね。もともと歴史専攻の人間で、そっちの世界へ入っているので。

武者:確かに歴史好きというところが1つきっかけにはなって……。

鷹鳥屋:なってますよね。

武者:なってますよね。

鷹鳥屋:あと高校の時に一番好きな本が「アヘン戦争」でしたからね。

(会場笑)

武者:若干ズレてるというところもポイントかもしれないですね。

鷹鳥屋:もう、ズレてる。

武者:「アヘン戦争が好き」というのはあんまり言わないですよね。

鷹鳥屋:アヘン戦争好きな人?

(会場笑)

鷹鳥屋:ダメですね〜。

武者:アヘンが好きって言ったら、まずヤバい人ですよ。

鷹鳥屋:(笑)。ダメですよ。やばい、ログミーが入ってるんですね、失礼しました。

面白いと思ったものを突き詰める

武者:好きなことの見つけ方という時に、生きていく中で、ごく自然的に身につけている、見つかってるほうなんでしょうか? 自分で探さなきゃって思って探しているタイプではない?

鷹鳥屋:そうですね。なんか、ひょんなきっかけでおもしろいなって思ったものを突き詰めていったところがあります。

最近反省してるのが、「ヨーロッパとかいいよ」という人がいるんですけど、ご存知のとおり、中東とヨーロッパってあんまり仲良くないんですよ。だから私もちょっと、若干中東マインドが出てきて、「ヨーロッパ怖い、ダメ」「石とか投げられるんだろうな」とか、勝手に中東マインド的な考えで接してしまって、逆にヨーロッパは怖くて行けないとか思っちゃうんです。

(会場笑)

そんなことないんですけどね。ただそんな食わず嫌いをやってしまって、もしかしたらヨーロッパ行ったらどハマりするかもしれないですから。

武者:確かにね。ヨーロッパおじさんになるかもしれない。

鷹鳥屋:ヨーロッパおじさんになるかもしれないですよ。これを脱ぎ捨てて、「俺、ゲルマン系目指すわ」って。

(会場笑)

なるかもしれないですよ。だから、年取ったら頭固くなっちゃうから、食わず嫌いは良くないなと思ってますね。

「グミ好き」は後付けだった?

武者:一方で、僕の話になってしまいますが、僕はけっこう自分で後付けで好きなものを探すタイプだったりもしています。なんか「見つけなきゃな」という、「自分が活き活き生きるために、なんか好きなもの探さなきゃな」みたいなのを後から考えて。

ここ、わりとあんまり言っちゃいけないかもしれないけど、「グミ好き」ってわりと後発的です。嫌いではなかったですよ? でも、みなさんも嫌いじゃないですよね、グミって。マツコさんは嫌いだって言ってましたけどね、逆に。

(会場笑)

嫌いだという方、あんまりいないと思うんですよ。中東はまぁ、好きか嫌いかというと、ちょっと判断しにくいですけど。

鷹鳥屋:う〜ん、嫌いって言う人もたまにいますからねぇ。

武者:お菓子とかもあんまり好き嫌いというのはあんまりなくって、たぶんばっくりと、甘くておいしいお菓子が好きだと思うんですね。

鷹鳥屋:確かに。

武者:だからそれを、僕は実験的に「より好きになってみた」みたいなこととか、「こう『好き』を伝えたらどうなのか」みたいなところをけっこう後発的に。

鷹鳥屋:けっこうあとあと、戦術、戦略立ててやってるということなんですね?

武者:そんなタイプだったので、嫌いじゃないんですよ、本当に好きなんですけど。毎日食べていますし、今も無意識に食べてますけど、だけどそういう好きな方法もあるのかな、好きなものの見つけ方という時に、そういうのもあるかも、的な。