マスクは細菌感染から本当に守ってくれるのか

マスク着用は感染予防に効果があるのか

オリビア・ゴードン氏：いい知らせです。ようやく私たちは厄介な風邪の季節を乗り越えたようです。たくさんの予防注射や手洗いによって、風邪の菌を防ぐことができたと思います。今年どこか遠くへ行ったとき、人ごみでの細菌感染を防ぐために、外科手術用の高精度なマスクを身につけたことも予防できた理由なのかもしれませんね。

そもそも、マスクを着用することで細菌感染をしっかり防ぐことができるのでしょうか？　しかし、そんなにシンプルな問題ではないんです。

風邪になったり、菌に感染した場合、魅力的な紙マスクは他人への感染を防ぐのに効果があります。実際の研究によっても明らかですが、一見とても効果的と言えます。

2009年のある研究で、カナダのオンタリオのおよそ450人の看護婦たちが、普通の紙マスク、外科手術用マスク、そしてN95保護マスク（注：使い捨て式の防じんマスク）の着用を命じられました。

これらのマスクは顔に近い構造でデザインされており、少なくとも95パーセントの細かな粒子をブロックします。この研究では、きちんと予防対策用のマスクをしているのにもかかわらず、およそ23パーセントの看護婦が菌に感染したという結果になりました。

マスクは他の高性能なマスクと同様に、人を細菌から守る効果があります。しかし、ある場合を除きます。菌に感染することと、菌をまき散らすことには違いがあります。他の研究によると、外科手術用マスクは菌から人を守るには、とくに適していない結果が出ています。

菌の拡散予防においてマスクは効果的

2006年のある調査では、空中にある病原体をマスクがどの程度守れるかをテストするため、無害なウイルスを使用しました。そうすると、保護マスクでは5パーセントだった反面、20～85パーセントの病原体とされる物体が、外科手術用マスクを貫通したという結果になりました。これは大きな違いです。

したがって、最初の研究での看護師の両グループが頻繁に病気になってしまったとしても、外科手術用マスクを着用していた人たちが、よりたくさんの粒子をまき散らしたということになります。これを考えてみると、実は何も驚くことはないのです。理由は簡単です。

外科手術用マスクは、人間を危険な細菌から守るためにデザインされたものではありません。唯一、保護マスクは私たちを外部の細菌から守るようにデザインされています。その代わり、マスクは反対のはたらきをします。他の人を私たち自身がまき散らす菌から守るのです。

保護マスクは顔にぴったりとフィットするのにたいし、外科手術用マスクは、着用すると顔との間によゆうが出ますよね。そのマスクはきちんとあなたの鼻や口をカバーしますが、おそらく外部の粒子はマスクの周りから入っていきます。

ですからマスクがあなたの健康を保つ役割を果たしていたとしても、それはマスクの主な使命ではありません。あなたが持っている菌を抑制するとき、マスクは最大の効果を発揮するんです。2013年に出版された『Journal PLOS PATHOGENS』の研究によると、科学者は外科手術用マスクを着用している感染者と着用していない感染者約40人の呼気のサンプルを集めました。

この研究で、被験者が空気中に放ったウイルスを、マスクが劇的に減少させる働きがあると実証されたのです。そして2009年の『Journal Clinical Infectious Disease』の研究によると、外科手術用マスクは高価な保護マスクと同様に、菌の拡散を防ぐのに効果があることを証明しています。

こういったことが、病院で咳をしたり、鼻をすすっている患者さんに対して、マスクを着用するように医者が指示する理由です。そうすれば、待合室で待っている他の患者さんたちへの感染を防ぐことができます。

医学の専門家のアドバイスを紹介します。あなたがもし風邪をひいていない場合、菌に感染しないように気をつけること。そのためにはマスクを着用することが効果的で、あなたが菌に感染する確率は下がるそうです。

しかし最大の予防方法は四の五の言わず、予防注射を受けることですね。