「400億円やるから、企業価値を5倍にしろ」–孫正義氏の後継者の条件

ソフトバンクアカデミア開校記念特別講演・孫正義氏 #7/7

ソフトバンク・孫正義氏の後継者を育成するために開校されたソフトバンクアカデミア。開校記念講演に登壇した孫氏が、自身の後継者にふさわしい人材の資質と、それへの報酬について具体的に語った。

将棋の「王」のように、全てにおいて高次元な能力を

孫正義氏(以下、孫):次に「智信仁勇厳」。これは、皆さんがリーダーとして持っておくべき心構えですね。

:「知」。これが我が社にとって皆さんにとって、この知という言葉が意味するもの。はい。

参加者:知恵を絞ることだと思います。

:知恵を絞ること。はい。もっと具体的に。

参加者:相手を知ることだと思います。

:相手を知ること。はい。

参加者:ノウハウだと思います。

:ノウハウ。はい。

参加者:テクノロジーだと思います。

:テクノロジー、はい。皆さんにとって我々にとって、具体的なこの知というものは、

:考える力であり、グローバルな交渉力、プレゼン能力、我が業界におけるIT、インターネットのテクノロジーに対する深い理解力、ファイナンス。先程から言っているファイナンスの世界の深い理解力、分析能力、分析力。

こういうものを持っていないと、リーダーとしての素養として、まだ甘いぞと。こういう点からいくと永遠のテーマだよね。なかなか十分っていうのはないよ。

ファイナンスについても知り抜いてないと、営業一本槍というだけじゃダメ。技術一本槍いうのでもダメ。それは将棋で言えば、飛車にはなれる。角にはなれる。でも王にはなれない。バランスよく知的能力を持っていなきゃいけない。バランスよく小さく、はダメよ。どれやってもできるけど、どれやっても小っちゃい、これじゃああかんよ。

どれやっても、それぞれの分野の専門のやつと丁々発止して、どれやってもその専門の一番深いやつと、一番高い次元のレベルでの議論ができると、そういう能力を持っていないとダメだ、ということですね。

考える能力、プレゼンする能力、考え抜く能力、理解能力、専門的な知識。そういうものを素養として持っていないと、「それはちょっと担当の役員に聞きましょう」、そういうお神輿に乗ったやつではダメなんです。

もちろん専門の人間を使いこなしてないとダメよ。専門の人間を使いこなす。「専門の人間に頼る」というのと「使いこなす」とは全然違うからね。

自分でやるって言われれば自分でもできると。でも自分は全方位やらなきゃいけないから、自分と同等かそれ以上の能力のある人を使いこなす能力をつけていないといけない。しかも最高のレベルの専門家を使いこなせると、そういう素養を身につけないと真のリーダーにはなれん。だからこれ、勉強しまくらないといけないよ、っていうことですね。

「信」「仁愛」がないと、5000社による同士的結合は生まれない

:「信」これは何だと思う、はい。

参加者:期待に答え、信頼を得ることだと思います。

:信頼を得ること。はい。

参加者:信念を貫き通すことだと思います。

:信念。はい。

参加者:自分をとことん信じることだと思います。

:とことん信じる。はい。

参加者:思い続ける信念だと思います。

:信念。はい。

参加者:仲間を信じることだと思います。

:信じる。皆さん全部正解です。「信義・信念・信用」、こういうものを基本的に持っていないと、同士的結合を集められない。パートナーシップを組めない。

5000社の同志的結合したい、という時に、あいつは能力はあるけどダマされるんじゃないか、それだと人は寄ってこない。あいつは金持ってる、技術も持ってる、でも裏切られる気がする。こういうことだと同士的結合が、2、3社はダマせたとしても、5000社は集めきれない。そりゃあ無理。

だからやっぱり信義に熱くて、信義に熱いということは自分もパートナーを信じる、自分が信じられるに値する立場にならなきゃいけないし、強い信念・信義、そういうものを持っていないと、パートナーとして尊敬されない。そういうことだと思います。

:「仁」。はい。

参加者:○○と申します。仁とは相手を思いやる気持ち、仁愛敬徳の仁だと思います。

:ピンポン。仁愛。仁っていうのは仁義の仁じゃないよ。

:仁愛。やっぱり我々は、何のためにこの情報革命をしているのか。人々の幸せのため、人々への仁愛のため、そのため情報革命をしているんだ。そのことが一番の事の本質だから、そういうことの本質をリーダーである皆さんが、自分自身に深い仁愛がないとダメなんだ、っていうことです。

戦う勇気、退却の勇気

:「勇」。はい。

参加者:自分よりも強い相手がいたとしても、勇気をもって立ち向かう決断をすることだと思います。

:勇気をもって決断、戦う。はい。

参加者:戦う勇気も必要ですけども、退却する勇気も必要だと思います。

:退却の勇気も。はい。他に。はい。

参加者:勇敢に行動することだと思います。

:勇敢に行動。はい。他に。

参加者:腹をくくることだと思います。

:腹をくくる。皆さん正解です。

:戦う勇気。腹をくくる、退却の勇気。先程から僕、何回か言っていますね。攻める勇気、退却する勇気。退却する勇気は、10倍の勇気がいる。これは本当に欠かせない。繰り返し言っとく。退却の勇気がないリーダーは、会社を滅ぼす、国を滅ぼす。退却するというのは10倍難しい。

退却をする勇気。実力があるから攻められる。退却するときにボコボコに叩かれる。それに耐えうるという信念と勇気があるから、攻められる。これがないと攻められない。退却の勇気。退却戦の、ボッコボコに非難される、やられる、恥ずかしい。これに耐える勇気、腹がないと、本当に怖くて2、3回失敗すると、もう戦いに行けなくなる。腰が砕ける。

何回も私は退却戦をしている。手遅れになる前に、これは大事だということですね。しつこく言っとく。絶対にこれを身につけよと。退却の時は決断をしなきゃいけないから。退却の時の決断は、トップしかできない。攻める時はみんな気がはやってるからね。あちこちガンガン、勝手にでもどんどん攻めていける。退却の時というのは、トップしか決断できない。

この退却する時は、トップが自分1人で泥をかぶるという覚悟がないとできない。部下のせいにしちゃいけない。自分が一番反省してそういう覚悟がないと「誰々が悪かった」、こういう形で人のせいにするやつに、部下はついてこない。これをぜひ身につけて欲しい。

泣いて馬謖を斬れ

:「厳」、はい。

参加者:正しいことは正しいと言う、相手に対しての厳しさと、それを言う自分に対する厳しさだと思います。

:相手に自分に言う厳しさ。

参加者:自分自身に一番厳しいことだと思います。

:自分自身に一番厳しく。はい。

参加者:頭がちぎれるくらい自分に厳しくできるか、だと思います。

:ちぎれるぐらい自分に厳しく。はい。

参加者:泣いて馬謖を斬る。

:泣いて馬謖を斬る、はい。そういうことですね。

:厳しい、泣いて馬謖を斬ると。本当に仁愛があって、本当に深い愛情があって、初めてできることです。単に冷たいやつが厳しいということでは、部下はついてこない。単に厳しくて冷たいというやつに、何千人何万人何十万人という部下はついてこない。

無茶苦茶厳しくても、無茶苦茶ボロクソ言われても、心の心底に、あの人は誰にも負けない愛情がある、深い仁愛があるという人だったら、たとえその時無茶苦茶ボロクソに言われても、愛のムチとしてそれはむしろ部下を鍛える、組織を鍛えることになるということですね。

ですから本当のリーダーになるためには、時として鬼なれと。強烈な鬼になれと。自分自身に対しても、自分が一番信頼する部下に対しても、愛する部下に対しても、鬼になれということですね。ただしそれは、心底自分が愛してると自分で思えるときだけ、鬼になれと。そうでないと部下がついてこない。

また、鬼になれない、あの人はいつもいい人だ。これではまた組織がもたん。「あ~あの人いい人だからね」と皆組織がだらんとなってしまう。だからメリハリが大事です。メリハリが大事。真のリーダーになるためにはそういうものです。

戦場の跡地は「海」にしろ

:大分時間が長くなりましたので今日はこのぐらいで終わりにしますが、この最後の行、風林火山。

これは皆さんね、武田信玄、孫子の兵法で何回もいつも出てくるから、風林火山のところまでは意味は知ってると思います。知らないという人は次回から来なくていいと。そもそも失格。その程度はね、うろ覚えだったら明日にでも本屋さん立ち寄って、或いは今晩にでもネットで検索して、その程度の意味を掴んでほしい。

ただ、ネットに書いてない、僕が言った以外は、或いは本には少なくとも載っていないという一文字が、最後の「海」という文字です。

:海。風林火山の風、素早くそして林静かに。

:皆さんGoogleと提携、昨日発表あったけど、「Yahoo! JapanがGoogleと提携するに間違いない」と思っていた人手を上げて。

いないでしょう。一人くらいいる。でもそれ思っただけだろ。まさか半年以上前から交渉してたというのは知らないでしょう。当然極秘でやっていたから。ほんの少人数しか知らない。でももう半年以上です。

もうほとんど毎週ずっと交渉してて、アップルのiPhone、ドコモだauだーっていろいろ社長がいろんなことをマスコミとかが言ってたけど、今から数えて6年ぐらい前から交渉開始してたと、知らなかったでしょう。

だから、やるときゃ深く静かに、深く静かに超極秘で、そーっと静かにそーっとやらなきゃいけない。水面下の交渉情報コントロール。ということで林のように静かに動く、時には火のように。そして動かない、時には山のように微動だにしないと。で、この最後の一文字が僕のオリジナルです。はい、なんだと思いますか。

参加者:はい。戦いに勝った相手を包み込むこと。

:知ってた?(笑) 僕が何かのインタビューとかで答えてとか? 勉強熱心で偉い。

風林火山で戦いをして、火の山になって、無茶苦茶になって死人だらけと疲弊すると、そのままで戦いは終わらないということですね。戦いが終わって、広い深い静かな海のように全部飲み込んで、平らげて、そして初めて戦いが終わる。

焼け野原のままでは、またそこから火が起き上がってしまう。またそこから下克上が始まる。世が収まらない。動乱のままだということですね。

:だから本当に戦いに勝つということは、最後の静かな広い海の状態にして、初めて戦いが完結すると。

本当は孫子の方は「海」という字じゃなくて、「雷の如し」とか「影の如し」とかいろんな他の表現があるんですけども、僕はそっちよりも、この海と言うほうが戦いを終わらす、本当に戦いに勝つという意味で適している、というふうに勝手にバージョンアップしたということですね。もう孫子はどうせいないから、勝手にバージョンアップして怒られないだろうということです。

ということで以上が私の「孫の二乗の兵法」。今日はずいぶん時間をかけて皆さんに話をしましたが、でもこれは、1回僕から話を聞いて理解した、納得した、ということで終わっちゃいけない。そんな甘いもんじゃない。20年30年100年かけて、心底腹の底から理解できたと、実力が身についた、実戦ができたと言って初めて、真のリーダーになれる。

永遠のテーマだと。僕自身、まだ実際に達成できてるというふうには思っていない。満足してない。まだ途上だということであります。

このアカデミアでこれからずっとやっていくのは、この25文字の「孫の二乗の兵法」。これをいろんな応用編でいろんなテーマで噛み砕いて、皆さんのプレゼンとか皆さんのアイディア・議論、そういう中で活かして欲しい。そして心底身につけて欲しい。

僕はいろいろ今まで何千冊も本を読んで、あらゆる体験・試練を受けてこの25文字で、これを達成すれば、到達すれば、僕はリーダーシップを発揮できる。後継者へなれる、本当の統治者になれるというふうに心底思っている、その25文字です。

後継者には100億円分のストックオプションをプレゼント

:本当はこれはね、会社経営者、事業家というだけじゃなくて、大学の学長でも大統領でもみんな当てはまる。リーダーシップ、リーダーが持つべき素養としての「戦いに勝つための25文字」だというふうに思ってます。

皆さんが僕からバトンを受けたら、ここに居る皆さんとustreamの向こうにいる……今日はニコ動やってる? ニコ動は今日やっていないか。今度からニコ動の激しい人たちも入れたほうがいいんじゃないか。

毎回は放送しませんよ。だけど2、3ヶ月に1回ぐらい、要所要所のところで、僕がこういう形で話すことは公開したい。それ以外は非公開でもっと、さらに本音の具体的なやつとかをガンガンやっていきたい。ケーススタディしていきたい、議論したい。でも、外からここにチャレンジしたい、という人どんどん集めるから。

外の人たちにも、皆さんが負けないぐらいに頑張って欲しいし、外の人たちもいずれ我々の仲間になる。将を得なければいけない。大きな志を達成するためには、小さな心の器ではいけない。常に優れた高い志がある。将を集めなければいけない。そういう意味で門を外にも開いていきたい。

後継者になった皆さんは、平均10年、2代目の人は後継者として活動してもらう。3代目の人も平均10年、4代目の人もだいたい10年くらいの単位でやってもらいたい。もう途中で失敗したらクビっていうのはあるかもしれない、リコールはあるかもしれないけど。平均10年ぐらい、10年で平均5倍ぐらい伸ばす、そういう腹のくくれる人じゃないとダメ。

その代わり、その5倍伸ばしたら後継者の皆さんには、ストックオプションを100億円ぐらい渡したいと思いますので、100億が500億になるということは、皆さんは400億、10年頑張って儲けると、個人的にも。

10年で400億って言ったら悪くないよ。だけど10年で5倍にできると、我々の企業価値を5倍にできると自信のない人が後継者になったら困る。我がグループのリーダーにふさわしくない。10年で5倍ぐらいせにゃいかんよ。私も10年で5倍以上にはしてるということですね。

そういう10年で5倍、そのためには何をなすべきか。どんな手を打たなきゃいけないか。図らずも社長になりましてと絶対言うなと、明日から今日から、ソフトバンクの社長だったと思えと。

俺だったらここから5倍にこうやってする、私だったら5倍にここからこういうふうな方法でやる、ということ今日から考え続けろ。今日は開校の記念講座ですけどもね、今から皆さんの中から具体的な第1期生が内部から270人、外から30人選ばれますが、正式な入校生第1期生になった人に真っ先に出る宿題。

自分がどうやって5倍にするか。このアイデアを競い合ってもらう。自分がソフトバンクの社長なら、ソフトバンクの企業価値をどうやって10年で5倍にするか。どんな手を使って何をするか、それが先程から言ってるように具体的なビジョン、具体的な戦略、その事業ドメイン、資金、技術、そういう角度で具体的なプレゼンをしてもらいたい。

そういうことに答えられない人間は、そもそもリーダーなってもらったら困る、部下が困るということですね。常に考え続けよと。少なくとも僕は常に考え続けてる。そういう執念、信念、これがないとリーダーにはなれないということであります。

:志高く頑張りましょう。ありがとうございました。

じゃあまたね。正式な第1期生、もう1回会いましょう。補欠の人も、チャンスはいくらでもあるからね。今日僕が話したことは、正式な1期生にならなかった人も、自分の人生のなにがしか、足しになると思います。ムダにはならなかったと思います。ぜひ、大切にしてください。ありがとうございました。

制作協力:VoXT

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