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悪意なき慣習や既得権益の壁をどう乗り越えるか Sports Techスタートアップの成長戦略

2018年2月28日、インキュベーション施設「Plug and Play shibuya」にて、スポーツ×テクノロジーをテーマにTechベンチャー6社の経営陣がトークイベントを開催。成長産業の一つとして注目されているスポーツビジネスの発展に向けて、Sports Techスタートアップが目指す世界を語ります。本パートでは、グローバル展開やイベント運営、メディア展開をする際のさまざまな課題についてトークセッションを行いました。

海外のトッププレイヤーとタイアップして逆輸入を狙う

泉友詞氏(以下、泉):コアなユーザーを増やしていくという観点では、(大谷氏の電玉の)事業拡大のストーリーとしての枠組みは、HADOもすごく似ている気がしますが、どうですか?

福田浩士氏(以下、福田):似てますね。DARTSLIVEの話がありましたが、僕らもまさにそのモデルをすごく参考にしています。ロケーションベースで、そこに来た人がいかに体験して、ファンになって、コアユーザーになっていくかというところですね。その先に大会があって、プロリーグがあってというように。

:ありがとうございます。ロケーションベースでグローバルで広がるというところは、やっぱりコアなユーザーをつかまないとなかなか広がっていかないということがあると思います。

一方で、例えばBONXさんだったら、スノボとかスケーターとか、一定のボリュームがあるスポーツ人口に対して切り込まなきゃいけませんよね。今後事業を拡大していくときに、どのへんから切り口を入れていこうとされていますか?

峯岸孝次氏(以下、峯岸):やっぱりインフルエンサーと言われる、我々のプロダクトをユーザーに届けてくれる人たちを活用していきたいということがあります。

先ほどもお話ししたとおり、ナイキのマイケル・ジョーダンとかタイガーウッズとか、彼らが伝道師となってプロダクトを伝えたと思うんです。グローバルで見るとバイクとかスノーボードってすごく大きな市場で、そこに切り込んでいくにはやはり海外のトッププレイヤーとタイアップしてプロダクトの魅力を伝えていかないと、ユーザーは増えないと思います。

逆にそこをやると、意外と逆輸入のようなかたちで日本にも入ってきますし、penetration(浸透)としてはすごく良い。

:具体的に「この人をつけてユーザーがすごく増えた」という事例はありますか?

峯岸:先ほどご紹介したBrandon Semenukとか、日本国内ではまったく知られていない存在だと思いますが、アメリカでは本当に有名なプレイヤーでかなり問い合わせが多いです。

:なるほど。インフルエンサーマーケティングはどの領域でも必要ですよね。

学生スポーツを速報する理由

:ookamiさんの場合は、メディアという立ち位置で、どういう感じで切り込んでいくんですか?

尾形太陽氏(以下、尾形):そこは明確にありまして、うちはコンテンツベースのメディアなので、当然コンテンツが重要です。プレゼンでもお話ししましたが、スポーツには未開拓な領域がけっこうあると思っていて、それが学生スポーツとかユーススポーツです。

プロ野球とかJリーグとかはGoogleでもYahoo!でもどこでも速報が見られますが、「『息子の試合を追いかけたい』という欲求は解決できてるのかな?」とか「OB・OGにメルマガ飛ばしてるけど、それって今OKだっけ?」ということがあったり。

テレビでもスタジアムでも、パソコンでもあまり解決できてなかった、未開拓なコンテンツの領域で集客をするというところで、この1年でけっこうできるなって思いました。

:「それって俺らじゃん?」って、福田さんが見てました。

尾形:そうだと思います(笑)。

:(笑)。

尾形:うちはメディアなので、HADOさんでやっておられる新しいスポーツとかをどういうふうに露出していくかをやっていきたいです。たぶん新しいスポーツという切り口も今後いくつか出てきたり、XsportsやeSportsみたいなところが出てくると思っているので。

:なるほど。逆に登壇者の中で「実はこの人にこれ聞きたい」ということがございましたらお願いします。

大谷宜央氏(以下、大谷):じゃあ福田さんに質問です。HADOは、大会でコンテンツを盛り上げてるじゃないですか。日本で開催するにあたって、いろいろと気をつけなきゃいけないことがあると思うんです。

福田:法律の話ですか?

大谷:そうです。とくに何に気をつけてやっていたというような、そういう苦労話が聞けたらうれしいです。

福田: eSports界隈の最近の話題にもよく出てきますが、イベント大会をやろうとすると、景品表示法、あとは賭博罪と風営法、これが非常に絡んできます。

大谷:風営法も絡むんですか?

福田:僕らのようなロケーションベースのビジネスはとくにそうですね。法律の知識も押さえながら、仕組みを作っていく必要があります。

「放映権」は法律には存在しない

尾形:風営法というのは、クラブとかに近いということですか?

福田:ゲームセンターですね。例えば、店舗が主催の賞金付き大会を開催してはいけないんです。そういったお話になってきます。

:おもしろいですね。風営法って、ぜんぜん関係ない感じがしますが。

福田:電玉さんもそうだと思いますが、実際に店舗をやろうとすると、僕らのようなものは風営法では第5号という、遊技機に入れられちゃうんです。

:どうですか、この回答で?

大谷:そこらへんを気にしてるんだろうなということはわかりつつ、まだうちはちゃんと大会みたいなかたちでできていないので、心強い先輩がいて(笑)。

:オリンピックみたいな感じで、隣でHADOやって、こっちで電玉やってというようなことができたらいいですよね。

大谷:そういうのも楽しい。

:それを「Player!」で放送するみたいな。

尾形:僕もいいですか?

:お願いします。

尾形:メディアの領域ですと、法律というより慣習的なところがすごく多いんです。既得権益のビジネスなので、法律の問題じゃないのに法律っぽい感じでくるんです。

例えば放映権が象徴的で、そもそも契約の問題なので放映権って法律的には存在しないんですが、著作権の中に入っている。結んだ契約で主張してきたりするんです。

うちはその人たちと放映権の契約を結んでないので、そもそも契約違反にならない。ただ、著作権違反になったらもちろん法律違反ですが。

その権利っぽい感じで主張してきたり、それを本当に法律の問題とか権利の問題として扱っている。本当にわかっていなくて、悪意がない感じで慣習になっていることがメディアビジネスでは多いんです。だから、そこをどういうふうに突破しようかというところです。

慣習で決めるのではなく、きちんとルールを統一したい

尾形:僕たちが扱っているのはデータですが、データには法律的な著作性がないんです。映像は著作性があるんですが、データにはないので、報道の範囲でメディアとして配信するのはOKなんです。ただ、ここも慣習的にはまだ統一感がない。

シェアエコ(シェアリングエコノミー)とか、まだルールがないわけではないけど曖昧なところで、シェアエコの協会を作るという動きがあるんですが、そういう意味では、メディアにもこういう方針なんだっていう団体があってもいいんじゃないか、とは思います。

:作っちゃいますか?

尾形:作っちゃいましょう(笑)。

:(笑)。

尾形:小泉さんはDo Howでなにか、法律とか権利とかでありますか?

小泉真也氏(以下、小泉):いや、Do Howは比較的個人の問題なので。Doで今一番厄介なのは子どもの写真ですね。

:個人情報的な問題ですか?

小泉:そうそう。僕らの狙いとしては、アプリを使って試合をしていれば、基本的には誰でもそのチームの情報とか試合の結果が見られるようにしたいんです。

ただ、それを意図せずやって、アプリに登録した子どもの写真がWeb上に乗っちゃうとなると、今はかなりうるさいわけです。そこはものすごく気をつけています。

:どう気をつけるんですか?

小泉:写真を見せない機能をつけるとか。当然、利用規約に書くのも大事ですが。

:なるほど。

小泉:一応、扱ってる個人情報って、写真ってあんまり実はそうじゃなくて、メールアドレスぐらいなんですが、それでもだいぶユーザーの情報に対して、規約だったり、気をつけるようにはしています。

単純なマーケティングでは海外まで届かない

:ありがとうございます。じゃあ峯岸さん、いろいろ質問したそうなので、ぜひなにかあればお願いします。

峯岸:我々って説明商材だと思うんです。こういうプロダクトで、こういう体験ができますということをきちんと説明しないと、ユーザーはなかなかわかってくれない。グローバルを意識するとそれがけっこうな障壁になってくるんですが、とくにXenomaさんはどうやられているのかをお聞きしたいです。

網盛一郎氏(以下、網盛):実は、似たような質問を全員にしようと思ってました。うちは恥ずかしながら、海外でしか展示会を出してないのに、国内・海外の売上比率は、国内が9(割)超えてるんです(笑)。

:おお。

網盛:さっき福田さんが、今年が6(割)で来年が7(割)とおっしゃってましたよね?

(福田氏が頷く)

網盛:海外7割って、けっこう理想的な数字なんです。単純にマーケティングしたり、知名度があるだけでは、実はなかなか結びつかないところがあるんです。

1つは、体験型だと言語にほとんど依存しない部分があって、感覚でほぼいけるんですが、実際は、それまでに似たような製品がありますよね。実際は同じじゃないけど、似たような製品があるので、なかなか体験までいかない。そうすると、結果的にコミュニケーション量が多い日本に集中する、という分析をしています。

:なるほど。でも、情報商材といいますか、コミュニケーションとか実際体験するという部分だと、最近クラウドファンディングとか、ああいうものを使って一般の人たちに情報を届けにいく取り組みがバンバン刺さったりしますよね。

そういうものが組み合わせとして親和性が高いということは個人的にも思うんですが、Xenomaさんの場合だと、情報商材としてはどういうふうに親和性というかコミュニケーションをとっていくんですか。

網盛:うち、Webサイトも日本語版はないんです。

尾形:へえ。

網盛:でも、クラウドファンディングは日本のほうが多いんです(笑)。クラウドファンディングはさすがにそこまで日本に冷たくできないので、ちゃんと日本語のページと、あと中国のページも用意しました。

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