ダイエットは「必ず失敗する」ようにできている
脳の仕組みから紐解く、健康に痩せるためのたったひとつの方法

なぜダイエットは成功しないのか #1/2

なぜダイエットは失敗するのか? 神経科学者・Sandra Aamodt(サンドラ・アーモッド)氏は、その理由が体重をコントロールする脳の仕組みにあると語ります。肥満に悩んだ彼女がたどり着いた、健康に痩せるための唯一の解とは?(TEDより)

なぜダイエットは難しいのか

サンドラ・アーモッド(以下、アーモッド):3年半前、私は人生で最高の決断を下しました。新年の抱負として、ダイエットをやめ、体重を気にせず、食べるものを注意して選ぶことを掲げました。そして今はお腹がすいた時に食べていますが、それでも5キロ痩せました。

これは初めてダイエットをした13歳の頃の私です。今こうして写真を見て思うことは、あなたが必要なのはダイエットではなくファッション講座でしょ、と言ってあげたいです(笑)。

でも当時は痩せなくちゃいけないと思っていました。リバウンドをすれば、自分自身を責めました。その後も30年以上にわたって様々なダイエットを試してはやめてきました。いくら頑張っても減った体重の分だけまたリバウンドしました。

みなさんもこの気持ちをわかっていただいけると思います。神経科学者として私はなぜダイエットがこんなにも難しいのか不思議でなりません。事実、体重は食べる量と消費するエネルギーによって変わってきます。

しかし多くの人が気付いていないのは、私たちの空腹感とエネルギー消費は多くの場合で無意識的に脳によってコントロールされているという点です。私たちの脳は裏で様々な仕事をこなしています。これは良いことです。

なぜなら私たちの意識は、なんと言うか……、簡単に乱されてしまいます。映画に夢中になっても息をすることは忘れませんよね。夕食に何を食べようかと考えていても、歩き方を忘れはしません。

脳が体重を制御する

そして脳は、あなたがどう信じさせようとしても、理想の体重の値を独自に設定しています。これをセットポイントといいます。でも、これは曖昧な表現ですね。この値は通常4kgから7kgほどの幅があります。この範囲内での体重変化であればライフスタイルを変えることで可能です。

しかしこの範囲を超えるのは、大変難しいのです。脳の体重を制御している部分である視床下部では、「体重を増やせ」という化学的信号が何10個も出されており、また数10個の別の化学的な信号が「体重を落とせ」と命令します。

そして状況の変化に応じて、視床下部はサーモスタットのように体中から発せられる信号に反応し、飢えや活動、代謝などを調節し体重を一定に保とうとします。サーモスタットも同じ働きをしますよね?

外の気温が変化しても、家の中の温度を一定に保ちます。だから冬に窓を開けて部屋の温度を変えようとしても、サーモスタットの設定は変わっていないため、すぐに暖房のスイッチがはいって温度を元に戻します。

脳もこれと全く同じように働きます。体重が落ちても強力なシステムによって脳が正常とみなす状態へ戻そうとするのです。体重を大幅に落とした場合、脳は飢餓状態にあると判断します。

スタート時の体重が重くても軽くても、脳は全く同じ反応を示すのです。もし脳が勝手に、自分が体重を落としたいかそうでないかを察知してくれたら良いのですが、そんなことは出来ません。

歴史上は過食よりも飢餓の方が問題だった

体重を大幅に落とした場合、空腹感が増して筋肉のエネルギー消費量は減ります。コロンビア大学のルーディー・ライベル博士の研究によると、体重を10%落とした人は代謝が下がり、エネルギーの消費が250から400カロリーも減ってしまうそうです。

食べ物ならかなりの量に相当しますね。つまりダイエットをした人は、落とした体重を維持するために、元々痩せていた同じ体重の人よりも食べる量を少なくし続けなければならないのです。

進化論の観点からすれば、私たちの体が減量を拒むことは理にかなっています。私たちの祖先は食料不足の時にエネルギーを蓄え、食料がある時には体重を増やすことによって次の飢餓に備えた。

人間の歴史においては、過食よりも飢餓の方がもっと重大な問題でした。これは悲しい事実を浮き彫りにします。つまり、セットポイントはあがることはあっても、滅多に下がらないということです。

あなたのお母さんが人生は不平等だと言っていたなら、まさにこのことでしょう(笑)。ダイエットに成功したとしてもセットポイントは下がりません。たとえ7年間痩せた体重を維持出来たとしても脳は元の体重に戻そうとするでしょう。

その体重の減少が長期間の飢餓によるものならば、その反応は顕著に現れるでしょう。ドライブスルーでハンバーガーが買える時代に生きる私たちには難しい問題です。

暴飲暴食しやすい人の特徴

私たちの祖先の時代と飽食の現代との差異に着目したオタワ大学のヨニ・フリードフ博士は、彼の肥満患者たちを食べ物が少なかった時代に連れて行きたい、食生活を変えることこそ1番効果的な肥満への解決策だと考えています。

さらに悲しいことに、一時的な体重の増加は持続する可能性があります。長い間その増えた体重のままでいると、大体数年程度で、脳がその体重をあなたの通常の体重とみなすでしょう。

心理学者は食べる人を2つのグループに分類します。空腹感に反応して食べる人と、ダイエット中の人たちのように自制心でコントロールしようとする人。ここでは、直感的に食べる人と自制的に食べる人と呼びましょう。

おもしろいことに、直感的に食べる人たちのほうがやや肥満が少なく、食べ物の事を考えている時間も短めである傾向にあります。そして自制的に食べる人たちは広告や特大サイズの食べ物、食べ放題ブッフェなどに弱く、食べ過ぎてしまう傾向にあります。

アイスクリームを一口だけ食べるなどという、ちょっとだけという甘えが自制的に食べる人たちを暴飲暴食へと導くのです。子供たちは特にこのダイエットと過食のサイクルに飲み込まれやすいです。

生活習慣と死のリスクとの関係性

いくつかの長年の研究によると10代の前半にダイエットを経験した少女たちは、たとえスタート時に標準的な体重であっても、5年後に肥満になる確率が3倍高くなります。さらにこれらの研究から、同様の場合に体重増加に加え摂食障害も引き起こしやすくなるということも判明しました。

ところで、その他の要因として挙げられるのが、お子さんのいるご両親の皆様に言いたいのですが、家族が体重についてからかうことです。だから、そんなことをしてはいけませんよ。

(会場笑)

グラフはほとんど家に置いてきてしまいましたが、これだけは持ってきてしまいました。なぜなら私は数学オタクで、これが私のやり方ですから(笑)。

これは14年もの歳月をかけて研究された体に良いとされる4つの生活習慣と死のリスクとの関係性を表しています。その生活習慣とは、十分な果物と野菜の摂取、週3回の運動、非喫煙、適度な飲酒の4つです。まずは標準的な体重の人から見てみましょう。

グラフの縦軸は死に至るリスク、横軸の0、1、2、3、4といった数字は先ほど紹介した良い生活習慣のうち何項目当てはまるかを表しています。そして期待通り、より健康的な生活を送っている人ほど亡くなってしまう人は少なくなりました。

では、やや肥満の人の場合はどうなるか見てみましょう。良い生活習慣を全く行っていない人は死のリスクがより高くなります。たった1つでも良い習慣を行っていると、死のリスクは平常のレベルまで引き下げることが出来ます。

肥満で良い生活習慣を全く行わない人は、この研究の中のもっとも健康なグループに比べ、死のリスクが7倍も高いことがわかりました。しかし、健康的な生活習慣は肥満者にも効果があります。

お腹がすいていないのに食べるのが太る原因

実際、良い生活習慣4項目全てに当てはまる肥満グループは、体重によるリスクの差はほとんど見られませんでした。たとえ体重を減量・維持できなくとも、良い生活習慣を保てば、健康状態を正常に保つことができます。

ダイエットに確実性は見込めません。ダイエットから5年も経てば、ほとんどの人はリバウンドをします。40%の人はスタート時よりも太ります。つまり、長い目で見た場合、通常ダイエットは体重を減らすよりも増やす結果になってしまうということです。

ダイエットは問題だということを納得してもらえたのなら、次に出てくる質問はきっと「ではどうしたら良いか?」ですよね。私の答えは、ひと言で言うと「意識すること」です。

なにも瞑想を学びなさいとか、ヨガをしなさいと言っているのではありません。食べる時にしっかり意識することです。身体からの信号を理解して、空腹の時に食べて満腹になったらやめること。

なぜなら大半の体重の増加は、お腹がすいていないのに食べてしまうせいなのですから。では、どうやるか? まずは、あなた自身に食べたい時に食べることを許可してあげてください。そして自分の体にとって丁度良いと感じる量を見つけてください。

邪魔されない環境でいつもの食事をしてください。食べ始める時と食べ終わった時に自分の体はどう感じているかを考えて、自分の空腹感から食事を終えるタイミングを決めてください。

「予防」という視点が重要

これができるようになるまで、私は1年かかりました。でもそれだけの価値がありました。今の私は人生の中で最もリラックスした状態で食べ物と向き合っています。食べ物のことを考えない時もあります。

家にあるチョコレートのことさえ忘れてしまいます。まるでエイリアンが私の頭を乗っ取ったかのように、前とは全く違う思考になりました。ひとつ言っておかなければならないのは、もし空腹でもないのに食べることを続ける限り、この方法での減量は成功しないでしょう。

医者でさえ、多くの人々に有効な大幅減量の方法など知りません。だから最近では体重を落とそうとするのではなく肥満を予防することに注目が集まっているのです。事実、ダイエットが成功するなら皆とっくに痩せているでしょう?

(会場笑)

同じことを続けながら違う結果を求めても仕方ありません。ダイエットには害が無いように見えますが、実際にはダメージが付随します。最悪の場合、人生をおかしくすることさえ有り得るのです。

体重への執着心は、特に年齢の低い子供たちに、摂食障害を引き起こします。アメリカでは10歳の女の子たちの80%がダイエットの経験があります。私たちの娘の世代は人の価値を間違った基準で判断しています。

ダイエットをしている少女たちへのメッセージ

ダイエットは時間とエネルギーの無駄遣いでしかありません。ダイエットから強い意思は学べるかもしれません。子供たちの宿題を見てあげたり、重要な仕事のプロジェクトをこなすのには必要です。

しかし強い意思には限界があるので、それだけを当てにするという戦略では、何か別の事に気持ちが移った時に確実に失敗するでしょう。では、最後にもう1点だけ。

たとえば、ダイエットしている少女たちに「お腹がすいたら食べていいんだよ」と言ったら? たとえば、食欲を恐れるのではなくうまく付き合って行く方法を教えたら? きっと彼女達は今よりも幸せで健康的になるかもしれません。

彼女たちが大人になる頃には、今よりも健康的に痩せているかもしれません。それを誰か私が13歳の時に教えてくれていたら良かったのに、と思います。ありがとう。

<続きは近日公開>

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