「シャーデンフロイデ」はメシウマ感情
亀山敬司氏(以下、亀山):本日のゲストは中野信子さんです! 初めまして!! …って言いたいところだけども。
中野信子氏(以下、中野):会うのは2回目なんですよね(笑)。
亀山:「実は、会ってた」というのがさっき発覚しまして。会ったの忘れてました(笑)。
中野:記憶力の低下が見られますね…(笑)。
〜(中略)〜
亀山:「シャーデンフロイデ」って何だっけこれ。
中野:「シャーデン」は「損害」って意味で「自分の損害」じゃなくて「誰かの損害」。「フロイデ」は「喜び」って意味なんです。喜びの歌の「喜び」。つまり、シャーデンフロイデは誰かの損害を喜ぶことです。
亀山:なるほど。人の不幸は蜜の味ってことか。
中野:そうです。一言でいうと「メシウマ」。
亀山:メシウマって何?
中野:「他人の不幸で今日も飯がうまい」で、メシウマです。
亀山:そういうことね(笑)。 『シャーデンフロイデ(他人を引きずり下ろす快感)』よりもわかりやすいね(笑)。本のタイトル「メシウマ」のほうが30パーセント売上伸びると思うよ。
中野:じゃあ帯変えましょうか(笑)。 幻冬舎さんに言って「他人の不幸で今日も飯がうまい」って替えてもらおうかな。
亀山:ご飯食べながら「うまい!」って、うまそうな顔の写真で。それで売上倍増よ。
中野:検討します。話を戻すと、シャーデンフロイデとは、メシウマって呼ばれる感情ですよね。
亀山:メシウマの感情。要は、他人を引きずり下ろすのを快感っていう。
中野:そうです。今だと誰が一番いいかな……。例えば、小泉今日子さんが不倫宣言したじゃないですか。あれを見て「かっこいい」っていう人もいたけど、「自分で地雷を踏みに行ったね、ざまあみろ」って思ってる人もたぶんいますよね。
亀山:まあ、いるよね。
中野:その「自分で地雷踏んじゃってざまあみろ」っていう感情がシャーデンフロイデですかね。
亀山:最近の不倫なんて、みんなそう思ってるよね。
中野:他人の損害が快楽として機能するので、他人の損害を集めて雑誌にする人たちがいたり、ネットでそういう話題を集めたりっていう人がいるわけですよね。
亀山:コンテンツとしては、もはやメインディッシュだよね。
中野:なので、今はシャーデンフロイデをみんなに感じさせるための仕組みが整ってる世界ですよね。
怖いのはサイコパスより普通の人
中野:もともと『サイコパス』って本を書いたときに「サイコパス怖いね」っていう声がけっこうあって、「いや本当に怖いのはまともな人のほうだ」と私は思ってたんですよね。
まともな人がなぜ怖いかっていうと、社会正義を執行するふりをして、本当はシャーデンフロイデが欲しいんですよ。「お前こんなことするなんていかがなものか」と調子乗ってる人をバッシングしてやれとか、いろいろするじゃないですか。
それで、そういうことをしているときって、自分が正しいことをしているような感覚がおそらくベースにあって、そのほうが本当に悪いことを無意識にしているサイコパスっていう人たちよりもずっとマス(大衆)になりやすいし、正義感によって結束しやすいし。
亀山:そうだね。サイコパスって要は共感力がない人だから、ある意味冷静だよね。