1日に何回「あ」と思うか
「デザインあ」佐藤卓氏が語るアイディアのヒント

あ moment: 佐藤 卓 at TEDxTokyo #1/2

小さい頃、時計が壊れた原因を突き止めたときに発した「あっ!」という言葉。NHK教育で『デザインあ』という番組も担当しているデザイナーの佐藤卓氏が、こうした小さな「あ」を日常の中に見つけていくことで、未来をつくっていく方法について語った。TEDxTokyoより。

時計が壊れた原因に気づいて「あっ!」

佐藤:どうもこんにちは。佐藤卓と申します。

私は色んなデザインの仕事をしています。で、今日はですね、私が小さな時に起こったある出来事の話をしたいと思います。なぜかっていうと、それはとっても小さな出来事だったんですけれども、その出来事以前とそれ以降では、何かとても自分が大きく変わったんじゃないかって、今思うからですね。

その話はですね、ある時計の話です。

家の壁に掛け時計がありました。私が小学校6年生ぐらいですから、12歳ぐらいですね。時代は1960年代後半ですね。日本の家もなかなか小さい家で、その壁に掛け時計があったんですね。その掛け時計がある日、壊れました。で、母親が私のところにその時計を持ってきて、「掛け時計壊れちゃったのよ」って、言うんですね。

それで、その話を聞いた隣にいた父親が、「俺が直してやる」っていう感じで、その時計を持っていったわけですね。で、父親が色々ゴソゴソ直し始めました。私はもう小学校6年生ですから、外で歩き回るの、走り回るのが大好きですから、家から遊びに行っちゃったわけですね。

夕方、家に帰って来たら、その時計が壁についていなくて、机の上に置きっぱなしになっていたんですね。ということは、どういうことかって言うと、それはもう瞬間的に子供でもわかるわけで、「父親が直せなかった」っていうことですね。

その時、大体そのぐらいの少年は、どう思うでしょうか。俺が直してやるぞ。それはそうですね。父親と息子っていうのは、もうほとんどライバルみたいなもんですから。小さい時。特にもう男の子は機械が好きですよね。それで、それを見たわけです。その時計を、手に取りました。父親は、直し始めた時に、色々すぐに分解をし始めてたんですね。バラバラにしてたんですね。ですから、同じ方法で直すのではこれは直らないはずだ。私よりも経験豊富な父親がそうやって直してるんだから、その方法ではダメだということが分かるわけですね。

それで、まずこれはどういう状態で壊れたんだろうっていうことを、原因を探った方がいいと。それで、その時計がついてた壁にネジ一本でひっかけて止めてあった訳ですね。そのネジを見た時に、すぐに分かりました。ネジは下に傾いていて、そこからスルッと時計が落ちたっていうことは、そのネジの角度を見て、何となく分かった。時計の重さで徐々に徐々にネジが下に傾いていって、多分落ちたんだろうと。

そうすると、時計はそのままの形のまんま、真下に落ちただろうということですね。多分、転がって落ちたりとか何かじゃなくて、そのままストーンと落ちたんだろうということです。ということは、当然、時計の真下がぶつかる。床にぶつかるということは誰でもわかると思うんですね。

その時計を見てみると普段は気がついてなかったんですけれども、下から金属の棒が一本出ていて、それが床にあたって上に突き上げられたっていうことは、見れば、考えればわかったんですね。それで私は時計を裏返しにして、時計の機械の蓋をあけました。それでその金属の棒を上に辿っていったわけですね。この金属の棒が上に突き上げられるとどこにぶつかるのか。原因はその先にあるだろう。

で、金属の穴、ここは突き抜けてるから力が加わらないだろうと。それを上の方に辿っていくと、ネジとか色んなものがついてます。ここもあまりストレスがかからないだろうと。そうやって辿っていくと、あるところで確実にぶつかるっていう場所が見つかったんですね。ところが、一見わからない。一見わからないんです。ほんのわずかだったんで。

そこででも、よーく見てみました、そこを。よーく見てみたら、0.3ミリへこんでたんですね。ほんのわずかへこんでたんです。そのほんのわずかへこんだところをくっと直したら、「あっ!」、カチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッって動き始めたんですね。

「やったー! おやじに勝った!」って、思いました。何か、その時に何か問題が起きた時に、探っていって、原因はどこにどう影響しているのかっていうのを探っていった。自然とそれは考えたんですけれども、それが何かすごく大きな経験で、実はすごく家庭の中ではものすごく小さな事件なんですけど、自分にとってはとっても大きな経験だった気がします。

この時の「あ」っていうのは、問題を解決する方法に気づいた時の「あ」ですよね。でも日常生活は結構色んな「あ」がありますよね。例えばデザインの仕事をしていると、何かにアイデアに気が付いた時に「あ」って思いますね。日本語だと「あ」なんですね。これはちなみに、平仮名の「あ」です。ABCのAのようなものです。

その「あ」っていうのは、色んな「あ」があって、その一つ一つは結構些細な実はことなんじゃないかと思うんですね。本当に小さな「あ」だと思うんですね。でもその実はすごく小さな「あ」を普通は見逃してしまう。

「あ」という気づきを活かす社会

今、土曜日の朝ですから今朝、7時から15分間、『デザインあ』という番組を子供の為の番組に携わっているんですけども、子供たちはすごく純粋に色んなものに「あ」って注目するはずなんですね。

で、その「あ」をすごく大切にした方がいいんじゃないか。その「あ」って思っている瞬間はまだ言語化されてない。言葉化されてないわけですよね。でも、その「あ」って思った瞬間に人間って言葉がその「あ」にどんどん貼りついてきます。どんどん言語化して、一体何が「あ」って思わせたんだろうっていうことを言語化する。

でもその実は言語化する前の体全身で全体で「あ」って気づいてる時っていうのが、ものすごく大切で、それはほんのわずかな「あ」なんだけども、実はもしかしたら、これからの生活や未来を切り開く「あ」かもしれない。だからそれはもう誰でも経験してることだと思うんですね。我々毎日。例えば、帰り道ちょっと違う道通ってみようかな、っていうのありますよね。いつもやっぱり忙しいですから、毎日同じことをずっと繰り返してると、こういう感覚が死んじゃいますけども。

あ、ちょっと今日なんかあそこの店寄ってみようかなっていうのも、一つの「あ」だし、そっちの方に行ってみるとまた思いがけない出会いに次々出会っていくっていう、それも「あ」ですよね。その感覚、人間の感覚を総動員して、感じる「あ」っていう。それは、日常生活にいっぱいあるので、それをどうやったら活かしていくか、いけるか。

今の社会というのは、実はこの「あ」っていうものが活かされない社会になってるんじゃないかっていうふうに思いませんか。

例えば何か目標がありますよね。目標が。そうするとそのために、プロセスを考えます。それに準じて進むわけですけれど、その過程で、その途中で、やっぱりそこに行ってみなければわからないことに次々出会いますよね。で、その時に、あ、こうした方がもっといいんじゃないかなあって思った時に、それが世の中は許されないことが多い。

いや、最初に設定した目標はこうで、プロセスはこうなんだから、その通りにやりなさい。そこに行ってみなければわからない「あ」がいっぱいあるのに、それが活かされない。だから、やっぱり明日地震があるかもしれない。もう1秒後に何が起こるか実はわからない。

そこに行ってみなければわからない「あ」っていうものを、どんどん取り入れながら、何か動いていく、流れていく、進んでいくっていう社会になると、何かこの硬直した今の状態っていうのが、打開できるんじゃないか。

それは実は、すごい小さな「あ」をどう活かせるかっていうことなんじゃないか。誰でも「あ」、子供でも「あ」、大人でも「あ」だと思うんですね。こんなにいっぱい「あ」が日常生活にはあると思います。

一日に「あ」って思うのが、何回あるか。数えてみるってどうですかね。それは結構、数が多い方がもしかしたら、幸せかもしれないなあっていうふうにすごく思うんですね。

ですから、今日は、すごくシンプルで色んなデザインの仕事をやってるんですけど、やっぱり一番なんか「あ」っていうものが今までの社会を作ってきたし、未来を作っていくんじゃないかって思うものですから。あ moment。あ moment。大切にするのって、どうですか?

あ、りがとうございました。

<続きは近日公開>

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