肝臓は何度も復元できるのか

ハンク・グリーン氏:あなたの肝臓の半分を、移植が必要な方に提供した場合、あなたの肝臓は1年以内に元通りになるようです。では、献血をするように肝臓のかたまりを繰り返し提供し、復元を待つことは可能でしょうか? 答えはノーです。

残念な事実ですが、その理由は興味深いものです。これは肝臓細胞の復元の仕方がポイントとなります。27人の肝臓ドナーの調査によると、肝臓の機能はわずか1ヶ月で通常どおりに回復し、1年以内には元の大きさに戻っていたといいます。さらに肝臓の再生が可能なのは、一度のみではないと考えられています。

あるネズミを使った研究で、肝臓を何度も取り出して再生を検証したところ、なんと肝臓は12回も復元されたといいます。どうやらネズミ類の肝臓の構造は我々人間とは異なるようです。ですので、人間の場合はこのようにはいきません。

また、仮にあなたの肝臓を再度提供できるとしても、医者がそれを奨めることはないでしょう。第一に、あなたが60歳以下の健康体だったとしても、肝臓移植は大きな手術になります。さらに肝臓は再生されますが、厳密にいうと完全な復元とは言えないようなのです。

サンショウウオのような生物は、欠損した体の部位を完全に再生できます。サンショウウオが足を失うと、傷口周辺の細胞が脱分化します。言い換えると、細胞が器官形成前の状態に逆戻りするのです。まだ特定の役割を持つ前の胚となり、骨や皮膚、筋肉など、状況に応じて、いかようにも変化できる状態になります。

これらの胚は増殖し、グループ分けされ、再度、特定の機能を獲得することで足を復元するのです。こうしてサンショウウオの足は新たな完全体として再生されるのです。人間の肝臓だとこうはいきません。人間の肝臓は未分化の代わりに、現状の細胞を増殖させることで欠損した分を復元します。大きさはほぼ元の状態に戻りますが、形や血管の配列などが等しく再生されるわけではありません。

つまり、肝臓の機能が回復したからといって、それは本当の再生ではないのです。これは専門的には代償性過形成と呼ばれるものです。この状態の肝臓だと安全に摘出するのが容易ではなく、移植するときの血管の結合が難しくなります。

肝臓の臓器提供は人の命を救いますが、提供を複数回行うのは、あなたにとっても、移植を受ける側にとってもよくないことなのです。