酸素にまつわるサイエンス

ステファン・チン氏: 小学生のころは、誰しもが木の素晴らしさを学びました。それは何も木登りをしたり、木の上に隠れ家を作ったりする楽しさだけではなく、呼吸に必要な酸素を作ってくれるという点においてもです。

私たちの細胞は、食べたものをエネルギーに変換する上で酸素を必要としているので、酸素がなければ死んでしまいます。さらに、木をはじめとした植物は光合成と呼ばれる化学反応によって酸素を作っています。

太陽から届く光エネルギーを使って二酸化炭素と水を結合させることで、糖と酸素、わずかな水を作り出すのです。もう少し踏み込んで考えてみると、寒くて暗く、また葉っぱが落ちる冬場には、光合成はそれほど行われなくなります。

では酸素も少なくなるのでしょうか。結論から言えばそのとおりです。ですが本当にわずかな量です。

そもそも冬場でも普通に呼吸できるほど地球には十分の酸素がありますし、大気中の量も極めて安定しています。量に注目すると、酸素は私たちが吸い込む空気の21パーセントを占めており、そのほとんどが光合成によって作られています。

ですが地上に生えている植物だけがその供給源ではありません。半分以上の酸素は微生物、つまり海中にいる植物プランクトンが行う光合成によって作られているのです。

ですがその酸素のほとんどは、直接大気中に放出されるのではなくまず海水に溶け込みます。

実際、地球上で光合成を最も多く行っているのは、プロクロロコッカスという海中の藍藻なのです。海中で行われる光合成は季節によっても変化します。高緯度では夏になると、太陽が高い場所に位置するため光が海中のより深いところにまで届きます。

そのため植物プランクトンは一層多くの光を受けられるので光合成も活発になり、さらに酸素を作り出します。

海水温度が温かいほど、海中に溶け込める気体の量は少なくなります。温かい分子はそれだけエネルギーも大きく活発に動きまれるので、酸素も大気中に飛び出しやすくなります。

研究者たちが季節ごとの酸素濃度を定期的に計測するようになったのは、1990年代に入ってからでした。地球上にあるいくつかの観測地点で空気のサンプルをフラスコに集め、定量化したサンプルとして比較できるようにしたのです。

窒素濃度がほぼ一定なのを利用して、厳密には酸素と窒素の比率の変化を測定しました。すると北半球における冬場の酸素濃度は、体積比で24ppm下がっていました。大気中の酸素濃度は21万ppmなので、わずか0.01パーセントほどです。

南半球での酸素濃度の変化はさらにわずかです。地球上にある陸地のほとんどは北半球にあり、そうした地上の植物が空気中に直接酸素を放出します。

つまり、冬場に光合成が減る影響をわずかにですが多く受けるということを意味します。ですが総合的に考えれば、私たちが生きていられるのは植物と光合成のおかげです。冬になっても十分すぎる量の酸素を供給してくれているんですからね。