長尾氏のトランプコーナー

山本一太氏(以下、山本):今日はやっぱりユーザーのみなさん、なかなか厳しい方が多くて。

長尾俊介氏(以下、長尾):そうですね。

山本:はい。でもこういう時期でもやるのが『直滑降ストリーム』のいいところなので。

長尾:よろしくお願い致します。

山本:どんな意見でもきちんと取り入れるのが、ニコ生のいいところでもあるので。

長尾:そうですね、はい。

山本:こういう状況ですから、いろいろ厳しい意見もありますが、がんばっていきたいと思います。

長尾:はい、そうですね。

山本:ということで、みなさん、長尾さんはスイス生まれ、スイス育ち。英語もフランス語も完璧なんですが、長尾コーナーでは、なかなか普通のメディアが取り上げないヨーロッパの情勢もちょっと取り上げます。今日もあとでちょっとフランスの話もやってもらいたくて。

長尾:はい、実は先週。

山本:パリに行ったんですよね?

長尾:先週1週間、パリにいたんで。そのパを大きくする意味が分かんないですけど。はい、パリにいました(笑)。

山本:長尾俊介のパリ報告も、ちょっとあとで。

長尾:わかりました。

山本:パリッとやってもらいたいと思います。つまんねぇ。

長尾:(笑)。

山本:まずはみなさん、トランプコーナーからいきたいと思います。

長尾:はい。

山本:ちょっと心配です。

長尾:冒頭ですね。

長尾:週末(4月7日)にあったこのシリアでの事件を取り上げたいんですけども、化学兵器が(使われたのが)首都のダマスカスの北東のこの地区です。反政府軍と政府軍がけっこう争っているこの地区で、化学兵器が使われたのではないか? という疑いが(ありました)。今のところ確証はないんですけれども。

山本:専門家の人たちが見ると塩素ガスじゃないか、とか言って。

長尾:そうなんです。今、テレビの映像を通してしか確認できていないので、例えば、実際使われたとされる化学兵器のサンプルまでは取れてないんです。このBBCなんですけれども、今のところ、何がわかっているかというと、繰り返しになりますけど、このドゥーマというところですね。

ここは、もうずっと数ヶ月間に渡って、政府軍と反政府軍がやり合っていて、徐々に政府軍が押し切っている形で、反政府軍はどんどんどんどん北へ逃げているというところです。

山本:だから、これもなんでドゥーマでやらなきゃいけないのかということを、けっこういぶかる人いますよね。

長尾:そうですね。

山本:化学兵器を使われたとして、ですよ。

シリアの化学兵器事件疑惑への欧米の反応

長尾:はい。特に今のところ、その西側はアサド大統領側が使ったんじゃないか、というふうに言っているんですけども、政府側がもう押してこの地区を取り返せそうだとしたら、余計なんで使ったのかっていう疑問が残ります。

山本:はい。、今日はちょっと時間がないんですけど、アサド大統領については、実はすごくおもしろいエピソードがあって。

長尾:はい。

山本:河野太郎が外務大臣になる前に一緒に中東に行って、私だけが早くシリアから帰ったっていう事件があって、大変だったんです。アサド大統領と会えないと思っていたのに、帰りの便も全部決めた後で、急にアサド大統領が会ってくれることになって。それでもどうしてもヨーロッパに行かなきゃいけなかったんで、その便で帰ろうと思ったら、大変な目にあったという。いつかゆっくり話したいと思います。

長尾:すごい。すごい小出しですね。

山本:恐かったんです。

長尾:なるほど。

山本:なぜお前は帰るんだ、って言われて。Why! っていろんな人に言われて。飛行機も飛ばなかったりして、大変だったんです。

長尾:事件ですね。

山本:はい。

長尾:楽しみです。

山本:恐いです。シリア、恐い。ということで。

長尾:今のところをちょっとまとめますと。

長尾:この化学兵器事件疑惑の前からの対立構造なんですけれども、この左側に欧米諸国というか、トランプ大統領をはじめとして。

山本:メイ首相と、それから。

長尾:マクロン大統領です。これはみなさんも聞いたかもしれませんけど、特にトランプ大統領がけっこう強硬な声明を出してまして。48時間以内になんらかしらの行動をするぞ、というふうに声明を出しているんです。

それに呼応する形で、今のところの情勢では、イギリスもフランスもなにかしらの行動を一緒にすると言っているんですけれども。

山本:間に合うかどうかわからない。

長尾:はい。でも、フランスのマクロン大統領は今日、何かしら。

山本:日本のメディアもだいたい恐らく、米英仏が一緒にやるんじゃないかっていうような憶測、流してますよね。

シリア政府の公式の声明

長尾:一方、こちら側です。今、話にも出ていたアサド大統領。そして、プーチン大統領がこの対立構造の逆側にいるんですけれども、当然ながら先ほど言ったみたいにシリア政府は公式の声明で、われわれは化学兵器を使っていない。これは捏造であるとフェイクニュースであると言っています。

ロシア側の国連の代表部のたぶん大使か公使も、現場にロシアの軍隊が行ったけれども。

山本:ぜんぜんケミカルウエポンは見つからなかったと、化学物質は見つからなかったとか言ってるんですよね。

長尾:そうなんです。ましてや死体もないし、なんのことを言っているのか、甚だ分からないぞ、と言ってるんです。なので強調しておきますけれども、今のところは疑惑なんですけれども、こういうふうにトランプ大統領の元、48時間以内に、つまりアメリカ時間の今日に軍事行動が起こる可能性がある。

山本:しかしこれ、トランプ大統領がやる可能性、高いよね。だってもともとオバマ大統領が化学兵器というレッドラインを指定しながら、やっぱり空爆をしなかった、と。それが外交力の低下を招いたと非難しているから、これはきっとやらざるを得ないですよね。

長尾:そうですね。あとタカ派の軍事行動が比較的好きなボルトンさんも、最近側近についたんで。

山本:はい。なんか眼鏡、取るとスタンハンセンみたいな感じのね。まあどうでもいいですけど。

長尾:はい(笑)。あまりそんなこと、言っちゃだめです。

山本:はい。ボルトンさん、大事です。

長尾:はい、それでそんなシリア情勢があるんですけれども、一方でトランプ大統領、自国の中でどんなことが起きているかというと、ユーザーのみなさんは見ているかもしれませんけど、スタンハンセンってみなさん、書き始めちゃった(笑)。

山本:いや、別にボルトン補佐官は大事にしなきゃいけない。日本のためには。

長尾:そうです。

山本:はい、すみません。戻ります。

顧問弁護士マイケル・コーエン氏の支出への疑惑

長尾:はい、戻りますと、トランプ大統領、自国でどんなことが起きているのかといいますと。

長尾:モラー特別検察官と相変わらずいざこざが続いていまして、トランプ大統領の個人的私設弁護士のマイケル・コーエンさんのところにがさ入れが入ったんです。これは恐らく、もともとモラー検察官がいろいろとロシアゲートのことを調べていて、マイケル・コーエンさんの支出に関してちょっと疑惑が出たんで、がさ入れをすることになっているんですけど、これにものすごくトランプ大統領は反応してまして。

長尾:この『POLITICO』に書いてある。

山本:完全に怒ってます。

長尾:そうなんです。ホワイトハウスも報道官が大統領の権限として、特別検察官をくびにできるのではないかと。そういうふうにわれわれは理解しているって、声明を出したかと思ったら、トランプ大統領は今度、この大文字で昨日4月10日にツィートを出していて、「A Totall Witch Hunt!」、魔女狩りではないか、と。

山本:これ、長尾さんと言及してるんだけど、トランプ大統領はTwitterで大文字をけっこう効果的に使いますよね。

長尾:そうです。

山本:けっこうスペル間違ったりするけど。

長尾:はい。そんなお茶目なところもある一方で、恫喝のように見えなくもないですけど。

山本:「A Totall Witch Hunt!」大統領がこれを言うわけですもんね。

長尾:そうなんです。特に恐いのはシリア情勢もあったんですけれども、本当はトランプ大統領は、今週末にラテンアメリカを歴訪する予定だったんです。それをキャンセルをして、今度は週末ずっとホワイトハウスに立てこもるというか、待機する方針を打ち出して。

強調しますけれども、当然ながらシリア情勢もあるんですけれども。トランプ大統領はホワイトハウスにいると、いつもこれをやるんですけれども、けっこう特定のテレビ番組を一生懸命見て、そこの報道の内容によって。

山本:きっと、FOXニュースとか。

長尾:そうですね。けっこう興奮して、それでいろいろ意志決定をするきらいがあるので、ちょっと週末、どうなるか要注意です。

口止め料の出どころと違法性

山本:また、元ポルノ女優との話も出てきて、どこからお金が出てるのかっていう。

長尾:そうなんです。日本円にして1,500万円くらいの口止め料がポルノ女優に払われたんですけれども、それを払ったのが、顧問弁護士のマイケル・コーエンさんなんです。マイケル・コーエンさんがどのようにして1,500万円を出したか。

大統領キャンペーンの支出だったのか、自分のお金なのか、トランプ大統領のお財布からなのか、と見られていたんですけれども、どうやらコーエンさんが自分で家を担保にしてローンを借りて、それで払ったということなんです。

山本:なるほど、なるほど。

長尾:でも今、問題となっているのが、家を担保にして調達したローンは口止め料には使えないですよね。なので、その使用の目的が違法性を帯びているんじゃないか、ということで今、がさが入っているようなんです。

山本:なるほど、わかりました。さっきのボルトン安全保障補佐官、大統領補佐官で思い出したんだけど。もちろん保守強硬派じゃない。今、政権で最後の砦といわれているマティス国防長官は、非常に慎重で、とにかくイラクへの軍事行動についても、かなり慎重だって言われてるじゃないですか。

長尾:そうですね。

山本:今までは、ポンペオさんとマクマスターさんとが強硬派で、マティス、ティラーソンが慎重だと言われてて。ティラーソンさんが解任、マクマスター氏もいなくなって、今度はボルトン氏が入ってきますよね。

これはアメリカの新聞、メディアにも書いてあったけど、マティスが初めてボルトンに会って、「あなた、悪魔の化身と聞いていた」っていうふうに、なんか軽いジョークで笑いを誘ったらしいけど。

長尾:ああ、ジョークになってないような気がしますけどね(笑)。

山本:あなた悪魔の化身と聞いていたって言ったらしいけど、なんか2人ちょっといい感じで会話を交わしたらしいんです。ここからマティスがどこまでちゃんと踏ん張ってもらえるかというところですよね。

長尾:そうです。そういう意味ではけっこうトランプ大統領が突っ走りそうな時に、まあまあまあと言ってくれる人が減ってきているんで。マティスさんが一生懸命そういう役割を果たさないと危険です。ちょっと今週末、要注意です。

山本:そうですね。わかりました。

フランスの国鉄のストライキの2つの原因

山本:ここからちょっとせっかくですから、長尾俊介パリ出張コーナーをお送りしたいと思います。

長尾:はい。実は先週1週間行ってきまして、ちょうど放送がなかったんで、回をミスらなくて済みました。私が目の当たりにしたこのお家芸といったらば失礼かもしれないですけど。

山本:フランスのお家芸、ストライキ。

長尾:実は私が(フランス)に到着したのが先週の月曜日だったんですけど、たしかちょうど翌日の火曜日から、なんと3ヶ月の国鉄ストに入りまして。

山本:ああ、これ。すごい。これ読んでくれませんか。

長尾:はい。SNCFが国鉄の名前なんですけれども、「greve」というのがストです。

山本:なるほど。

長尾:その理由が大きくわけて2つあるんですけれども、1つ目がLextinction du statut du cheminot.

山本:はい。

長尾:はい。Cheminotというのが国鉄で働いている人たちを指す名称なんですけれども、その人たちの優遇待遇っていうのをLextinctionなので、無くすというのがまず1つの議題なんです。

山本:なるほど。

長尾:終身雇用であったり、特別な有休だったり、57歳あるいは職種によっては52歳での定年退職。そういうのを削るぞとマクロン大統領は言っているんです。それがまず1つ目の大きな問題。

山本:なるほど。

長尾:もう一つが、Louverture a la concurrence.「concurrence」というのは、Competitionなんですけれども、要するに市場を開放してプライベート、私鉄とかを入れて、競争環境を活発にしようというのがマクロン大統領の2つ目の選挙公約です。

当然ながら働く側にしてみれば、今までの社会保障とかが受けられなくなるという点と、全体として国鉄が競争環境に晒されるんで、経営が危なくなるんじゃないか、という危惧があって、この3ヶ月のストに入っているんです。

フランスの世界最先端かつ最大のインキュベーション施設

山本:フランスはマクロンがかなり国民の期待を受けて大統領になって、最初調子が悪かった。急に人気が落ちちゃって、けっこう今、政治基盤が弱いでしょ。

長尾:そうですね。

山本:移民の問題もけっこう大変でしょ。

長尾:はい。

山本:今日、参議院の政策審議会に田原総一朗さんが来たら、「今、世界中が混乱だ」とか言って、「ヨーロッパも全部だめだ」とか言って「日本だけが安定して」と、小泉総理みたいな感じで言ってたんですけど。

長尾:はい。

山本:あれなんですよね。今のフランスはなかなか大変なんですよね。

長尾:そうですね。当然ながら、これは社会保障とかに頼っていて、なかなか21世紀型の経済に移行できない人たちの葛藤がこういうふうにある一方、実は仕事で行った先でSTATION Fという世界最先端の、世界最大のインキュベーション施設(を見てきました)。

山本:インキューべーションって、あの。

長尾:ベンチャー企業とか。

山本:ベンチャー企業を生み育てるところ。

長尾:そうなんです。

山本:すごいきれいだね。

長尾:私、行ってきたんですけれども、これはパリの市内にありまして。

山本:みなさん、長尾さんはただのスイス生まれ、スイス育ちの人じゃないです。一応ベンチャー企業のインキュベーションとかやってるんですよね。

長尾:はい。

山本:英語とフランス語が得意なただの人だと思わないでください。世界経済フォーラムにも出ましたから。

長尾:はい、ありがとうございます(笑)。それで、これが去年の6月に開いたんですけれども、実は1920年代くらいから活用されていた古い駅を変えて、インキュベーション施設にしたんです。

山本:こういうところって、なかなか日本にないからね。

長尾:そうですね。

山本:あ、今ちょっと、官房長官が登場しました。すいません、官房長官。もうちょっと。今入ってきて、どうぞやっていてくださいって。

長尾:そうしたら、ちょっと巻きに入りましょうか。

山本:はい、相変わらずの兄貴でございました。ちょっと一気に巻きに入らないと。

長尾:そうですね。

縦割りをなくして行政機関もスタートアップを支援

山本:この次の施設、見せて。すごくきれいな。

長尾:はい。これが実に改築前はこんな感じだったんです。

山本:ああ、すごいね。この施設が一気に新しい物になるっていう。

長尾:そうなんです。だいたい1年間くらいかけて。

山本:ああ、すごいな。

長尾:このようにきれいになっていきまして。

山本:こういうのないからね。すばらしいね。

長尾:そうですね。実に1,000人くらいの起業家の人と、あとはMicrosoftとかGoogleとか、そういうところが入っていて、起業家養成プログラムをやっています。それでこんなきれいなパノラマビューで撮ってるんですけども。

山本:すばらしい。

長尾:1つ、最後にこれだけ紹介したいんですけれども、French Tech CentralというイニシアティブがそのSTATION Fの中でありまして。

山本:行政機関のイニシャルですね。

長尾:そうなんです。これはいろいろ移民も司る移民局だったり、関税とか徴税を司る日本の国税局にあたる(行政機関です)。

山本:こういう行政機関もインキュベーションセンターに入ってきてるんだ。

長尾:そうなんです。

山本:政府なのに。

長尾:いわゆる縦割りをなるべくなくすという。例えば、職を探しているハローワークに相当するところも入っています。スタートアップの人たちが必要な人材募集をしていると、なるほどそういうニーズがあって、そのニーズに対してこういう職業訓練をしたら、そのスタートアップで働けるだろうというのをやっている。

山本:こういうふうに総合戦略のあるインキュベーションセンターって日本にないから。

長尾:そうですね。

山本:これはちょっと長尾さんにしっかりがんばってもらって、政治としても後押ししていきたいと思います。

長尾:はい、よろしくお願い致します。

山本:というわけで長尾さんでした。ありがとうございました。

長尾:どうもありがとうございました。失礼します。

(一同拍手)