マーケティングとテクノロジーが担当領域
井手桂司氏(以下、井手):ここからPart2ということで、西井さんも交えてトークライブに移っていきたいと思います。では、みなさん西井さんを拍手でお迎えください。
(会場拍手)
西井敏恭氏(以下、西井):はい。よろしくお願いします。
井手:西井さんの簡単な自己紹介だけお願いしてもよろしいですか?
西井:みなさん、おはようございます。オイシックスドット大地の西井と申します。よろしくお願いします。ちょっと僕のこと「誰やねん」という話なので、簡単に自己紹介をさせてもらうと、奥谷さんは「COCO谷」と社内で呼ばれています。COCOはチーフオムニチャネルオフィサーです。
僕はオイシックスの中だとマーケティングとテクノロジー(が担当)。CMTという役職で、チーフマーケティングテクノロジストということで、マーケティングとテクノロジスティックを融合させるような、そういうお仕事をしています。
実は書籍を去年の年末に出して、デジタルマーケティングの本を出しました。ありがとうございます。
さっき軽く紹介いただいたんですけども、僕はドクターシーラボという会社に前職でいまして、化粧品会社でもずっと通販をやってて、本当にEコマースの業界に15年ぐらい、ずっとゴリゴリやっています。
社内でも奥谷さんは、本当にオムニチャネルのプロで、僕はどちらかというとライフマーケティングをずっとやっています。ありがとうございます。
井手:西井さんの経歴がすごいおもしろくて。バックパッカーをされていたとか。
西井:軽くですね。僕はもともと建設関係の大学というか、大学を卒業した時の学科が建設関係で、普通だったらゼネコンに入るような人生でした。
何を間違ったのか、大学を卒業した後に、ちょっと働いて、その後2000~2003年ぐらいの2年半ぐらい世界一周してまして、当時ブログはなかったんですけども、自分で本当に下手くそにホームページビルダーとか使って、ずっと(情報発信を)やっていたら、それがけっこう人気になって、旅行の本を2冊出しているんですね。
よかったら、ちょっとAmazonで「西井敏恭」と検索してもらうと出てくるんですけど。インターネットがすごくおもしろいのは、旅行の本を2冊出して、ぜんぜん無名のただの旅好きな人ということで、Eコマースの業界に入った感じですね。その後、もう1回旅の本を出してますね。結局、旅行の本を3冊出して、やっとマーケティングの本を出したという。
井手:そうですよね。西井さんをAmazonで検索したら何の人なんだろうみたいな感じがする(笑)。
西井:本が下ネタに寄っている本なので、この本とあの本のギャップがすご過ぎて、たぶん同じ人が書いていると思われないですけど。名前が難しいので、かなりかけ離れた内容ですけど、同一人物は同一人物なんですよ。
奥谷氏と西井氏は旧知の仲
井手:ありがとうございます。そうしたら今日はお2人にこの本にまつわることを、いろいろ聞いていきたいなと思っているのですが。
最初にまず知りたいのが、実際この本を読んでみての西井さんの感想とか、これからこういう事例とかが増えてくるだろうみたいな、刺さった部分とかがあれば、おうかがいしたいなと思います。
西井:今日このイベントに出なければいけないということで、先週末に急いで本を読みました(笑)。奥谷さん、なかなか本をくれなくて、ずっと「ください、ください」と言ってたんですけど、なかなか(笑)。
献本が最後にされるということだったのにぜんぜんされなくて……。本当、やっと先週いただいたので、持って帰って家で読みました。僕、奥谷さんとは付き合いが長いんですよ。(奥谷氏が)MUJI時代、僕がシーラボ時代にお互いEコマースの責任者になっていて、いろんなECのお話とかをよくやっていて、本当に仲良くさせていただきました。むしろオイシックスに入ってからのほうが会ってないちゃうかって。
今はお互い、オムニチャネルと僕はECという感じで、ぜんぜん分かれているんで、社内に入ってからのほうがむしろしゃべってないんですよ。定期的には飲みに行っているんですけど。
今日出てたお話とかみなさん聞いていただいたと思いますけど、奥谷さんは本当に真面目。英語がかなり堪能ですし、海外のいろんなところに行って、普段は英語の論文など読んでますよね。
奥谷孝司氏(以下、奥谷):そう。趣味は論文を読むこと。
西井:気付くとバックパックの中にいつも論文が入っているんですよ。だからそれを読まれている感じでです。
奥谷:しゃべり過ぎてインドからオファーきちゃった(笑)。
西井:今度インドでしゃべるとか言って(笑)。「西井さんもおいでよ」って言われるけど、僕もバックパッカーで旅行しているので。
奥谷:旅行してもいいんですけどね。
マーケティングの知識が体系立てて入ってくる
西井:本当に今までもいっぱい話してきて、実は今日話してもらったエッセンスっていっぱい聞いてました。事例としておもしろいとか、奥谷さんは本当に詳しいと思いながら、ずっと聞いてたお話が、実は今回、本を読むことでちゃんとした知識になったなと僕の中で思っています。それは何かというと、さっき出ていたフレームワークみたいなお話がしっかりまとまっています。
すごく思ったのは、書籍は、長い付き合いで非常にいろんな話を教えていただいているにも関わらず、ちゃんと頭の中に体系立てて入るのに、ものすごく役に立ったことが、僕の本当に一番の印象です。
よかったら、今日の話聞いてちょっとおもしろそうなだなと思ったら絶対に買ってください。お世辞とかじゃなくて、僕は本当におもしろかったから。
奥谷:西井さんの本もね。
西井:僕の本?(笑)。僕も自分で本を出した時に言われたんですよ。自分の周辺にいる人が。
奥谷:普通大事だよ。
西井:やっとわかってくれました(笑)。時々僕の本からも、僕のことをよく知っている人たちが、「やっぱり体系立ててやることで、改めて点と点で話していたことがすべて繋がる」と。
Amazonの事例から最先端を学ぶ
西井:例えば、さっきのフレームワークもそうなんですけど、例えばAmazon GoやAmazon Dash、Books、Echoなどもそうだし、Amazonの事例がEコマースの業界では、何となくテクノロジーがすごいと聞いていると思うんですね。
でも真似しても仕方がないところもあって、どうしていいかわからない。いわゆる選択をどっちするか参考に読む。どっちもオフラインで、ここのところは行くなと(という場面)。「御社の11件はこことここの話で、こっち側に広げていく話だ」と、あえて整理していく。自分のビジネスをやる時などに、どう次に活かせばいいのか、オフラインの方でも僕もよく言われるんですね。
僕は自分の会社もやってまして、そこでいろんなコンサルをやるんですけども、やっぱり聞かれるんですね。
「うちの事業はオフライン事業だけど、どうやってデジタルをやっていいか、デジタルぜんぜん関係ないじゃん」という話をよく言われます。例えば、時計や車を買うにしてもそうだけど、絶対にオンラインで情報を手に入れないことはあり得ないという話をします。
でも、フレームワークをちゃんと置いた時にもっと違う手段があるだろうと思います。その中でどうやってデジタルを使うのかが話せるなと思いました。とにかく、いろいろ教えていただいたことの点と点が線になったなと感じました。
井手:そうですね。Amazonのレビューを見ても、事例の体系化、あとフレームがあるから、頭が整理できたという内容がけっこう多くて、そういう意味ですごく意義のある1冊だなと思います。
次に、お2人に聞きたいこととしてはオイシックスという会社で、これからどんなことをやろうとしているのかを、本当に言える範囲でOKなんですけど聞いてみたくて。
ちなみに今日いらっしゃっている方の中で、オイシックスさんのサービスを使っている方ってどれぐらいいらっしゃいますかね。
(会場挙手)
奥谷・西井:ありがとうございます。
オイシックスのビジネスモデル
井手:じゃあ、使ってない方が多いので、オイシックスはどういうものなのかを踏まえながら、ちょっと話してもらうといいかなと。
奥谷:オイシックス自体は簡単に言うと、ネットで八百屋をやっている会員になっていただいて、サブスクリプションみたいに定期的に買っていただくというビジネスです。基本的には契約農家さんからお野菜を仕入れて、逆に言うとネットでも繋がれる良さがあるので、さっきのチャネルシフトの話ではないですけど、会員が見えてますよね。
それに対してどれだけ仕入れるのかをやりながら、自分のことをするので、ロスなくというか、そういう意味では店舗で野菜を売るよりも非常にエコなビジネスだなと思ってます。
僕がオイシックスでやろうと思っていることを話します。いよいよ僕がやりたいことができるかなと思っているんですけど、2年半ぐらいは何をやってきたかというと、僕は通販企業とかネット企業に対する危機感としてあるのは、ブランディングの弱さでした。
いわゆる、デジタルマーケティングは強いけど一般的なマーケティングの弱さで、やっぱり毎日顧客が見えてしまうと、ついついお客さんを追いかけてしまう、追いかけ過ぎてしまう。
もちろん明日明後日でダメになる物を無理やり売っているので、売り切らなければいけない。そこへの執念と達成は高いと思うんですけど、それを単にやり続けるとブランドが毀損しちゃうと思っているんですよね。
やっぱり少しでも儲からないこともやる必要があると思ってます。通販の良さは家で止まっちゃうんですよ。私の家の食生活が満たされればそれでいいと思うんですけど、できたらもっとオイシックスを自信を持って推薦してもらう、街を歩いてたら突然オイシックスを見かける。「えっ、こんなことをやっているの?」みたいなことを仕掛けなればいけない。
どうやったらチャネルシフトを体現できるか
奥谷:とくに2016年後半ぐらいから2017年は、とにかく異業種とコラボやったり、「こんなコラボやるの?」みたいなことをやりました。マーケティング業界ですけども、絶えず外に出して、可視化していくことをやってました。
ここから僕は何をやるのか。ようやく僕は店舗にいることになります。前の会社でいうとEC化率があるわけですね。みなさんわかると思いますけど、ファッション業界でEC化率が10パーセントを超えたとか、いろいろ聞きますけど、僕は店舗化率を増やすわけですね。
でも、さっき話したようにチャネルシフトの本を書いているぐらいなので、別に真面目にお店やろうとはあまり思ってなくて、今まで作ってきたお店は正直苦戦していて、やはりそれはさっきの話でいうと、一番出てはいけない接点がオンラインに出ていったら苦戦しますよね。
だから僕らがやるべきことは、(オフラインで)オンラインへの入り口の体験をつくることだと思います。その形態はもしかしたら、店舗になるかもしれないし、もしかしたらレストランになるかもしれない。徳島のような移動販売店舗(「とくし丸」)のようになるかもしれません。
だからなるべく、デジタルでの繋がりを使った店舗体験がオフラインでできるようにしていきたいなと思っています。その準備を今年はやることになるかなと思っています。
僕がオイシックスに入った1つの理由は、もともとAmazonの戦略に興味があったからです。オンライン企業がオフラインに出ることなんですが、ただ単にオンラインで儲かったからオフラインに出ていくかというと、化粧品業界みたいにビジネスモデル的に原価率が低いビジネスはいいんですけど、そうじゃないところでは、あのやり方は上手くいかない。
だから、どうやったらチャネルシフトを自分で体現できるかを、今後1、2年でがんばってやってみたいなと思ってます。