めんどくさい人を納得させるテクニック

質問者1:健康経営をしていくときに、生産性の向上や優秀な人材を獲得するためといった、なにかコンセプトを決めてやっていらっしゃるんですか? これのために健康経営をやっていく、というような、なにか目的じゃないですけど……。

村上儀明氏(以下、村上):あまりそんなに大義名分をつくって始めるというよりも、単純にやったほうがみんな嬉しいんじゃないの、というくらいの動機です。コンビニのごはんよりは無添加のものを食べたほうがみんないいよね、という。じゃあ入れようか、というそのくらいの感じですね。

管理部というのは、いったん型にはめようとするというか、きちっとしたものじゃないと受け入れられない、というような思い込みがあると思います。

司会者:理解力のある上司の方だとそれでいいかもしれませんが、なかなか担当者レベルだと何が目的でとかKPIなどと言われたりする……。

村上:あー、めんどくさい人ね。

司会者:そのめんどくさいことを(笑)、言ってくる場合はどうしたら良いんですか?

村上:めんどくさい人とね。

司会者:村上さんのような方が上司であればいいんですが、けっこう数字出せというような感じで「ナニコレしてどうなのだ」というようなことは、かなりよくある話なんですよね。そこについてのアドバイスなどがあれば聞きたいとのことで、お願いします。

村上:そこはやっぱり2つ(の方法)を持っていなければいけないと思うんです。1つは「いやいや、身体にいいのだから、やったほうがいいに決まっているだろう」というそもそもの話と、でもそこになかなか納得しないめんどくさい人は必ずいるので、そこは人事総務のスキルとして、それっぽくなんらかのかたちで「何か(おかんの)データをください」「適当でいいので数字ください」とか、そういうもので見せる資料を作って「コレコレこうですよ」と。

上も納得したいだけじゃないですか。結局それを見て分析して、「おかん」を導入することによって生産性がこれだけ上がる、ということがわかるわけなので。

だからなんとなく、それらしいものをきっちりと作って、「コレコレこうでこういう結果が出ております」ということを説明すれば、彼らはそれで理由付けになるんですから。そこは、やっぱり1つずつクリアしていくしかないと思いますが。

そこはあまり堅苦しく考えずに、ちょっと言葉が悪いですが、うまく騙すじゃありませんが、そこはやっぱり入れることでみんながハッピーになるのであれば、上司だろうがなんだろうが黙らせてそれをやるという、目的に向かってやる感じですね。

「おかん」導入企業は意識が高い会社が多い

司会者:「おかん」を導入している企業さんしか私は知りませんが、意識が高い企業さんが確実に多いんです。「これをやってなんになるの」というような感じではなくて、上層部の方が理解があるという前提はありますが、必ず業績が伸びていたり、従業員の満足度が良くなるのは私自身も本当によく聞く話なんですね。

この間も自動車業界のアワードの会に行ったときに、そのアワードで1位になった企業の社長さんが「おかん」を導入したいとすぐに声をかけてくれたんです。営業成績1番、というような感じで、自分(社長さん)はアワードをとるなんて思っていないんですよ。

500人くらいのホテルで表彰されていたんですが、表彰されるために「おかん」を導入したのではなく、結果的にそうなった。というような感じなので、従業員に感謝を示すなど、根底のところを間違えなければ、何かしらの効果は出ると思いますが。

ただいきなり上司を説得させるというのは難しかったりするので、私も村上さんのように、未来のことはわからないと思いますからデータをこじつけて、「半年後くらいにこのような結果になりました」「こんなに社員が喜んでいます」というような、いくらでもできるかなというテクは時々使ったりしています(笑)。

経営者が健康経営のマインドを持っているか

司会者:忽那さんはいかがですか?

忽那幸希氏(以下、忽那):そうですね。ラクスルの中で健康経営のようなキーワードが出始めたのは、たぶん2016年末頃、ちょうど1年くらい前だったと思いますが、そのときに同じくらい社内でホットワードだったのが「ダイバーシティ経営」。あとは「働き方改革」は政府が言いましたが、そうしたところで従業員を大事にしよう、いろんな人がいるよね、というようなところに会社としても意識がちょうど向いていて。

その中の1つとしてやっぱり従業員を大事にすることは、やっぱり社員がいきいき働いて、楽しく、ライフワークバランスのようなところも含めて、生活できる。そういったところが大事なのが、資本は健康といったところに結びついたのだと思います。

健康経営単体で立っていたというよりも、そういった世の中の動きであったり、会社としての制度でそうしたことが気になり始めたことがあるんです。

健康というのはおそらく、人が資本ということを会社は変わらずどこも大事だと思っていて、人に大事なことはやっぱり健康で、そこはすごく密接に関わっていると思うので、どんな経営者のみなさんも社員を大事にしていなかったら、健康経営なんて言葉も出てこないと思いますから。大事に思っていれば、言葉にはならなくてもそういったマインドはどこかにあると思います。

司会者:ありがとうございます。大丈夫ですかね、ありがとうございます。

健康経営導入に際しての失敗談

質問者2:失敗談をたくさん聞きたいというのと、失敗したときはお金もかかっているので会社として健康経営、方針自体が違うのではないかとというようになりかねないという恐れがありますが、失敗が重なっちゃったりしたときに、健康経営ということがぶれないためになにか心がけていること、もしくは何かを持っているのでしょうか?

村上:失敗か……難しいと思うんです、(2人とも)失敗だと思っていないから(笑)。

忽那:そうですね(笑)。思っていないかもしれませんね。ただ、例えば、うちではヨガを導入してヨガ部もできましたが、そもそものきっかけは、カスタマーサポートのメンバーでずっと電話に出たりパソコンでデータチェックをしたりしているので、うちの代表の松本(恭攝)が「きっとみんなストレスも溜まるだろうし体も動かしたいだろう」と。

ちらほら肩が凝るなどいろんな話も出ているので、そういった中で、「会社としてヨガという機会を提供してあげたらいいのではないか」「だからやってみようよ」と言って始めたんですが。

やっぱりカスタマーサポートだけはシフト制で動いていたり、朝来るメンバーもいれば午後から来るメンバーもいて、仕事終わりが夕方のメンバーもいれば、夜遅く終わるメンバーもいたりして、実際にはみんなが集まって一緒にヨガをする時間が作れなかった、ということがあります。

本当はみんなで一緒にやれればよかったんですが、なかなかそれが難しいというのが、やってみると大きくて。例えばこちらで毎週何曜日と決めてしてしまうとシフトの関係で絶対に来られないメンバーがいたり。

そうしたところで実態とやりたかったことがちょっと離れてしまった、ということはあります。とはいえ、今も細々と有志のメンバーが集まってやってはいるので、当初思い描いていた規模ではないにせよ、そういうことをやりたいと言っているメンバーは今もやっていると思うので。

そこがたぶん失敗というか、上が思い描いていたことと現場の意識のようなものが少し乖離していたかなということはあるかもしれません。

とにかく続けることが大事

村上:失敗? 失敗と思っていませんからね。

司会者:思い入れのようなこともおっしゃっていましたよね? どういった思いでやっているのか……失敗談だけでしたか。

質問者2:そうですね、失敗談をいくつかいただきたいというか、やっぱり健康経営というのは本当に施策に結びついているのかなど、ふと自信がなくなるようなときに、失敗などが重なると経営者さんとの方針の違いのようなものが露呈されたりなど、そうした悪い方向を考えてしまったりなどする。

もしかすると性格的な問題なのかもしれませんが、やっぱり健康経営を、私自身はすごく良い取り組み・方針だと思っているんですが広がらない。

村上:そこが「ずれちゃうかもな」というところですか?

質問者2:私はやっぱり、自分自身が今会社の中で苦労しているのは参加率であるというのは、どうしても強制できない分、やっぱり当初の思いとはだいぶ離れてしまっている結果になることが多いもんですから。

忽那:それでやめちゃったら失敗だと思われるんですが、なんにせよ、1人でも2人でも続けていれば「やってます」と言えるので、誰か来たときに「やってます。やりましょうよ!」というような、ちょっとやってる感をアピールしてみるとか。

やめないということが大事なのかもしれない。けっこう結果がすぐにはでにくいものだと思うので、それが習慣になったり文化になるためにはやっぱり時間がかかりますし、受け入れ側としても、ふだんと違うことをやるのもかなりパワーがかかったりしますから。

なかなか始めて、1週間、2週間、1ヶ月で結果が出るかというと、たぶんそういうものではない性質だと思っているので、とにかく続けることが大事だと思います。

村上:私も同意しますね。

司会者:けっこうお2人とも粘るタイプ? 1年などは当たり前なんですかね。

「どうせすぐやめるんだろう?」と思わせないために

村上:そうですね。うちの会社は、ミッションステートメントじゃありませんが、うちは5バリュー、会社が大事にしている5つの行動規範のようなものがあるなかで、やっぱりそれを社員は常にやりなさいというような、グローバルな目標があります。

去年1年間はお店でその5つのバリューの取り組み事例を集めて、それをニュースレターにして、毎月配信しました。

それも編集長は僕です。だからみんなから、お店からネタを集めて、その中からよさそうなものを全部校正して作って、ITに依頼して配信してという。編集後記も僕が自分で書いているから。

そうしたことを、やっぱりずっとそれは1人でやるわけですよね。でも、最終的にそれが去年の10月に、店長会のような場でその表彰をして、一番いい取り組みをしたお店を表彰して、来年は1番のチームにはイタリア旅行をあげたりなどの取り組みなどをしています。

あとはグラッチェカード・サンクスカードですよね。なにかをしてもらったら、「どうもありがとう」とカードを渡すようなもの。それはけっこうやっているところはありますが、途中でやっぱりダメになっちゃったりしますよね。それでも、それをひたすら自分だけが書き続けて、自分だけが渡し続けるなど。

だからね、自分が諦めちゃうともうほかにやる人いないから、だからどう思われているかは関係なく、とりあえず自分だけ、1人でもいいからやり続けていると、必ず誰かが見ているんですよね。そうすると、誰かが「じゃあちょっと私も書いてみようかな」というような感じで思わぬところから、ふと出てきたり。だから、やっぱり諦めないで継続していく、折れない強さがないと、なかなか難しいと思います。

忽那:(笑)。

村上:でも、結局そこが肝だと思います。向こうもたぶん「ああ、また人事でなにか始めたけど、どうせすぐやめるんだろう?」という感覚もあるじゃないですか。

実際にそういう会社も多いじゃないですか。「なにかやり始めたけど、結局、まぁ途中で尻切れトンボで終わるんでしょ?」という。でも、それは覚悟の問題だと思うので、そこは愚直に自身でやり続ける。

そうすると、たぶんそれに共感してくれる人が1人、2人、3人と出てきて、結果的にはうまくいったでしょという。そうすると、そのときには、社長にしろ経営陣にしろ、「いやいや、でもこうやって今人数増えています」と言えば、説得力がありますよね。それにはやっぱり自分がとりあえず盾になってやり続けるというしかないのではないかと思います。

質問者2:ありがとうございます。

司会者:大丈夫ですか? ありがとうございます。