植物に話しかけると…?

オリビア・ゴードン氏:植物に話しかけるとよく育つのはよく耳にする話ですね。これは実は古い話で、1848年に刊行された書籍に、すでにそのような言及があります。しかも、もっともらしく聞こえないこともありません。人が言葉を発すると、音波と二酸化炭素が放出されますが、どちらも植物には影響を与える可能性があるからです。

しかし、それから一世紀以上も研究する余地があったにもかかわらず、植物に話しかければ育つ可能性を直接研究した人はまだいません。現在のデータからすれば、ありえないとは言い切れませんが、どうなのでしょう。家の鉢植えを元気にするには、もっと簡単な方法がありそうです。

一秒間あたりの振動を指すヘルツでいえば、だいたい50から500ヘルツ間の音波の人の発語に反応するという意味では、ヒトの言葉を「聞く」ことができる植物は、少なくとも存在します。

植物学者によると、人の話し声の録音やクラシック音楽を再生すると、植物の発育と発芽が早まることはわかっています。植物がこういった音に反応するのは、風の変化や動物の動きなど、音波と同様に、植物細胞に影響を与えるものに対応するようにできているためと考えられています。音楽や単音のメロディを流した植物には、成長ホルモンや遺伝子の発現に変化が見られます。

さて、こういった研究を、人の話し声と比較する場合に困るのは、音声は大音量で何時間も長く流すことが多いため、普通の会話の影響がわかりづらいことです。

また、録音を使用する場合、人の息の影響がわかりません。これはたいへんもったいないことです。たとえば、イチジクの前で吐き出した二酸化炭素が、空飛ぶ栄養素になるかもしれないのですから。

植物は、二酸化炭素と水を糖に変換することができます。植物は人間と同様に、糖を栄養源とするためです。二酸化炭素量が上昇すると、活用できる炭素が増え、より多くの栄養素を生成することができます。

人間が吐く息には、吸う息の100倍ほど多くの二酸化炭素が含まれていますが、あっという間に周囲の空気に混ざってしまいます。つまり、たとえすぐそばであっても、植物に話しかけても周りの二酸化炭素濃度には影響が見られるほどの変化は起きません。

実験の実績がないため、詳しいことはわかりません。大勢の人が証言しているにもかかわらず、データの絶対量が欠如しているので、植物に話しかけることにより影響があるかの確定が難しいのです。

鉢植えや庭の植物に話しかけたり歌いかけたりするとよく育つことについて、もっとシンプルに説明する専門家もいます。植物に話しかける人は、よく植物の面倒を見ているため、水が必要だとか、日光が足りない、虫に食われているなどといったことに気がつきやすいためだというのです。

サボテンに水をやり忘れ、火を付けたら燃えそうなほど干からびさせた経験のある人であれば、植物の世話を忘れないことが、一番難しいことだとわかっていただけるでしょう。