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インフルエンサーマーケティング2.0(全3記事)

ユニクロのUT、ピジョンのベビーカーはなぜ売れたのか? 本田哲也氏が明かす、PR戦略の舞台裏

2018年2月13日(火)~14 日(水)の 2 日間、「マーケティング・テクノロジーフェア 2018/コンテンツマーケティングジャパン 2018」が、東京ビッグサイトで開催されました。日本有数の一大マーケティングイベントとして、マーケティング活動を推進する最新の製品・サービスが集められ、有識者らが業界の最新トレンドやさまざまな事例を紹介します。本パートでは、ブルーカレント・ジャパンの本田氏が、インフルエンサーマーケティングやインフルエンサーの定義について語りました。

戦略PRとインフルエンサーマーケティング

本田哲也氏(以下、本田):みなさんこんにちは。ほぼ満席ということでありがたいお話です。今日は、私ブルーカレントの本田と日本マクドナルドの足立さんとで、インフルエンサーマーケティングについてお話ししたいと思っています。

このインフルエンサーマーケティングは、今ちょっとバズワードみたいになっていますけど、今日は表面的にインフルエンサーをどう使うかという話よりは、みなさんが考えているインフルエンサーマーケティングに「NO」を突き付けるような話も出てくるかもしれません。

前半は私と足立さんから(それぞれの)事例のお話をさせていただいて、後半は時間が許す限り2人でトークしていきたいと思います。よろしくお願いします。

まず最初は私からお話しします。みなさんの中には私や我々の会社をご存知の方もいらっしゃるかもしれません。ブルーカレントは業界では戦略PRの会社として認識されていますが、実は今日のテーマである「インフルエンサーマーケティング」は切ってもきれないサービスです。

もともと今から12年前の2006年に私がブルーカレント・ジャパンを立ち上げたんですけれども、最初は戦略PRというよりかは「インフルエンサーマーケティングの会社です」という言い方をしていました。

私も『戦略PR』の本はいろいろと書いているのですが、ちょうど10年前の2007年に『インフルエンサーマーケティング』という本を書き下ろしたりしていますので、このような領域を長年見てきている立場です。

今日は「インフルエンサーとはなんぞや」という定義の話が重要になってきます。みなさんの中でこの講演にくるまで「インフルエンサー」という言葉を知らなかったという方は挙手していただけますか?

さすがにいらっしゃらないですね(笑)。でも、10年前くらいには、こういう題目のお話をすると「インフルエンサーってなんですか?」という方が半分くらいはいらっしゃいました。

インフルエンサーには2つの集団がいる

本田:『日本レコード大賞』自体が少し古い存在になっているかもしれませんけど、昨年(2017年に)『レコ大』を獲ったのは、その名も(乃木坂48の)『インフルエンサー』という曲でしたね。もう一般用語になっているんじゃないかなというくらいです。

では「インフルエンサーとはなんぞや」ですが、みなさんどうですかね? インフルエンサーは今だいぶ盛り上がっている、インスタグラマーあるいはヒカキンさんみたいなYouTuberである。YES or NO、どうですかね?

「インフルエンサー=インスタグラマー or YouTuber」というのは少し違うかもしれません。あるいは「FacebookなりTwitterなりInstagramなりのSNSのフォロワー数が多い人をインフルエンサーという」。これもYES or NOかもしれません。

みなさんがなんとなく「インフルエンサーってこういう人じゃない?」と思われるようなことを並べているんですけど、当たっているようで外れています。

じゃあ、インフルエンサーとはなんぞやというと、言葉どおり「影響を与える人」というのが一義的な定義です。ここをまず抑えてください。インフルエンサーが「影響を与える人」ということであれば、影響の与え方という話になります。これは目的しだいです。

今日いらっしゃるみなさんは事業会社の方が多いと思いますが、とにかく事業をやっていたりマーケティングをやっていると絶対に目的があるはずです。目的なしにインフルエンサーの選定というのはありえません。

「目的が影響の与え方を決める」ということがポイントです。目的に合わせたインフルエンサーを選定するときに、これは私自身が書籍などで主張していることなんですけど、インフルエンサーには少なくとも2つの集団がいます。

1つ目は事実系のインフルエンサー。それから2つ目は共感系のインフルエンサーです。事実系のインフルエンサーを起用する目的は、専門分野の実証や実行。よって、インフルエンサーは特定の領域の専門家やエキスパートになります。

共感系のインフルエンサーを起用する目的は心理的なフォロー効果ということになり、主に著名人やYouTuber、インスタグラマーになります。一度このフレームを頭に入れていただければと思います。

「事実系インフルエンサー」とピジョンの事例

本田:今日は時間も限られているんですけど、事実系インフルエンサーと共感系インフルエンサーの事例を1つずつ紹介したいと思います。

まず事実系インフルエンサーの事例です。ピジョンという企業は、ベビー用品の大手です。ところがベビーカーの領域で少し苦戦されていて、市場のシェアが10パーセントもいかない状態でした。なぜかというと、2強がいたということです。

みなさんもよくご存知のアップリカとコンビという2つのブランドで8割くらいのシェアを握るという状況だったのですが、追いつかなければということで「Runfee」というベビーカーを新しい戦略商品として、市場に投入しました。この「Runfee」のどこが良かったか、他のブランドに勝っていたかというと、タイヤが大きいということだったんですね。

通常の直径が13.5センチくらいのところを、16.5センチのものを出しました。なぜタイヤが大きいほうがいいかというと、工事車両などを思い浮かべていただければわかると思うんですけど、安定して走れるということで、乗っている赤ちゃんがグラグラしないというですね。

ユーザー目線で発売されて、この「タイヤが大きい」というのがウリだったんですけど、ただ「タイヤが大きい」ということを普通にPRしても意味がわからないですし、これだけ情報が多い中で忘れ去られてしまって、シェアを上げるどころじゃない。ここで工夫が必要だということで、事実系インフルエンサーの助けを借りるわけです。

なぜ事実系インフルエンサーの助けが必要だったかというと、アンケートを取ると8割くらいのお母さん方が段差やデコボコしたところにベビーカーでつまずいた経験があって「めちゃめちゃストレスフルよね」と言っていたんです。

この新しいベビーカーはそこ(つまずかないこと)がウリですから、何をPRするかというと、「大きなタイヤだ」ということを言ってもスルーされるので、8割くらいのお母さんが経験している(ベビーカーで段差につまづく)「ガツン!」のときに、どれくらいの衝撃がかかっているかを算出しようということになりました。

ここでインフルエンサーとして、人間工学のエキスパートを招聘して実験しました。実際にどれくらいの衝撃がかかっているのか。これはインフルエンサーにしか出せない計算なんですけど、ベビーカーが「ガツン!」となったときは、G(重力)の計算なんですけど、「自動車の急ブレーキの5倍」の衝撃がかかっていることが算出されました。

これが突破口となってPRをして、「それだけの衝撃がかかるんですよ、お母さん」「新しい商品は大きなタイヤで段差を乗り越えます」という打ち出し方をして、非常にうまくいったという話です。

これは完全に事実系インフルエンサーの事例で、自社ではできない実証あるいは実験を外部の影響者によって実現してPR・マーケティングをしたというお話です。

「共感系インフルエンサー」とユニクロの事例

もう1つは共感系のインフルエンサーの事例です。これはユニクロの最近のキャンペーンです。UTというもうかなり認知されているTシャツがあるんですけど、ユニクロさんとしての問題は、「大量生産しているから、形や丈など、絵柄以外のデザインが全部画一的だろう」という誤認があったと。

(実際は)そんなことはなく、多様なデザインを作っているんですけど、そこが伝わっていないので、インフルエンサーの力を借りてそれをクチコミベースで広げようというキャンペーンを設計しました。

そこでやったことは、20人くらいの共感系インフルエンサー、YouTuberやDJ、スタイリスト、セレブなどに実際にUTを選んでもらって、「なぜ選んだか」ということも含めて動画コンテンツにしていき発表していくと。

この共感系インフルエンサーには数10万人レベルでフォロワーがついている方もいますので、まずフォロワーに拡散していく。

実際にサブスクリプション方式にして、インフルエンサーが選んだものを月額千円以下で買えるようにしたとうことがミソなんですけど、そうするとまずフォロワーが飛びつきます。なぜなら、自分が共感しているインフルエンサーが選んだUTだからです。

また、それが届くとインスタなどに(写真を)あげていくということが連動して起こって、最終的には一般のSNSを見ているだけの方にも広がっていって、3層構造くらいで広げていったというお話です。

少し簡単にお話ししてしまいましたが、なんとなく「マーケティングで乗り越えないといけない目的は何なのか」ということでインフルエンサーの種類を選定していくというイメージはわかったかと思います。

このインフルエンサーは2つのグループが別々に機能するというよりも、ケースバイケースではありますが、事実系インフルエンサーから共感系インフルエンサーへの影響力の波及ということも順番としてあります。

1つおもしろいデータがあるんですけど、ニュースや商品などのコンテンツの知名度とクチコミには相関関係があります。

誰も知らないようなものはクチコミする気が起きない、聞きいれる気が起きないということが示されています。逆に100パーセント知られ過ぎていると、これもまたクチコミする気が起きないと。では、どれくらいが効くのかという話になると、知覚認知率が70パーセントくらいの、「まあまあ知られるている」ものがクチコミされやすいというデータがあります。

つまり、先に事実として世の中に広まっている、ニュースになっているという状態をつくって、そのあとにクチコミインフルエンサーから広げていくというやり方のほうが効果が上がるというデータがあります。

ではこのような考え方に基づいて、足立さんからマクドナルドの実例などを含めてお話ししてもらおうと思います。

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