未来のリーダーの条件は「計算論的思考」と「人間性」マイク・ウォルシュ氏の提言

マイク・ウォルシュ氏基調講演 #2/2

2018年3月20日、KPMGジャパンがエネルギー業界の最新動向を共有する「ラウンドテーブル・セミナー」を開催しました。基調講演には、米国でフューチャリストとして活動するTomorrow のCEO、マイク・ウォルシュ氏が登壇。2030年の近未来に向けて、今、考えるべき仕事・組織・経営について語りました。(KPMGジャパンの取り組みの詳細はこちら

提供:KPMGジャパン

会計士と弁護士にならなかった理由

マイク・ウォルシュ氏:将来の消費者の行動の話をいたしました。組織のデザインの話もしました。AIの時代にリーダーの仕事がどう変わっていくかというお話もいたしました。

では、私たち個人はどのようになっていくべきでしょうか? 私ももちろん、初めからフューチャリストになりたいと思っていたわけではありません。

私はオーストラリアで生まれました。そして、フィジーという小さな島で育って、ロンドンの学校に行きました。

私の母は中国人です。

日本ではどうかわかりませんが、中国系の母親というのは、子どもの人生にひどく介入します(笑)。「Tiger Mother」と言われています。

しかし母は「Tiger Mother」になりたくなかったようで、息子である私には自分の将来を自分で選択させたと思っているようです。「医者でも、弁護士でも、会計士でも、なんでも好きなものになりなさい」と彼女は一応の選択肢をくれました(笑)。

私もいい息子でありたかったし、母を失望させたくもなかったので、会計と法律の両方の学位を取りました。そして、会計事務所で3ヶ月インターンもしましたが、そのときのことはあまり聞かないでください(笑)。

それから、弁護士事務所で1日だけ仕事をしました。初日に行って、それが最終日となりました。

ほかの弁護士さんたちは、とても高級なスーツを着て、木製の壁に囲まれたすばらしいオフィスにいました。そこで、「このメールのスペルチェックをしてほしい」と言われました。私は「でもスペルチェックのソフトがありますよね?」と聞くと、「君がそのソフトだよ」と言われたのです。そういうことで、私はすぐさま弁護士をあきらめたのです。

オートメーション化で人の仕事はどうなるか

結局、弁護士もそのうちソフトウェアに取って代わられる仕事だと思いました。これは20年前の話で、私もまだまだ世間知らずだったのですけれども、実際には、その後弁護士の数はどんどん増加しました。

私はオートメーション化と社員、それから企業の関係を間違えていたのだと思います。仕事の一部が自動化されると、仕事そのものがなくなるだろうと思っていたのです。しかし歴史を振り返ると、一部の自動化がされると、その周辺の仕事は増えていきます。

(産業革命によって)機械が出てきました。最初は仕事を奪われると危惧した人々が機械を壊したりしましたが、そのうち仕事自体が変わりました。仕事が「綿を織ること」ではなく、「織物を織る機械の面倒を看ること」に変わったのです。

業界自体の売上は50倍になりました。機械で作るので、より綿が安くなり、その結果売上量が伸びたということです。1830年からだいたい100年ぐらいの間に、この織物業界で働く人の数は4倍になりました。

銀行業界にATMが導入されたときも同じです。「窓口業務は不必要になるんじゃないか」と言った人がいました。「このATMが店舗の代替になってしまうのではないか」と。

しかし実際に、銀行の支店は増えましたし、ATMの数もより増えました。そして、仕事自体が変わりました。結局、トランザクションの手続きが仕事ではなく、顧客といろいろとやりとりすることが仕事になっていきました。

したがって、似たようなことがみなさんの業界やその他でも起こるのではないかと思っています。オートメーション化によって、仕事自体が変わることになります。

アルゴリズミック・リーダーの資質について

問題は「では、AI化で浮いた時間をどのように使うか?」ということです。必要なのは将来のための新しいタイプのリーダー、すなわち、アルゴリズミック・リーダーと私が呼んでいるものです。

アルゴリズミック・リーダーにはスキルが2つあります。

1つ目は、人間の複雑性を深く理解していること。つまり、人々のモチベーションを上げるには何をすればいいかがちゃんとわかっている人です。それから、インセンティブの与え方がわかっている。加えて、顧客への共感の仕方、分析の仕方、機械がわからないことまで理解できる人です。

2つ目は、計算論的な思考です。プログラミングを学ばなければといけないということではなく、計算論的な思考ができる人が必要です。

問題解決をして、意思決定をする。そして自分たちの能力を技術によってさらなる高みに上げていくことができる人ということです。

今、最も価値のある資産はデータです。このデータの価値を、みなさんの伝統的なビジネスの機能を損なわないかたちでどのように活かすのかということが大事です。

例えば、MassMutualという保険会社は新しい「Heaven Life」という部門をスピンアウトしました。100人のうち70人がデータサイエンティストです。

Heaven Lifeは、伝統的なビジネスを行う中で蓄積されてきた15年分のデータを使って、カスタマーエクスペリエンスをもう1回再構築しようとしています。何週間もかけて苦痛な営業電話をするのではなく、アルゴリズムを利用して15分で済ませてしまおうというわけです。

さらに、エクスペリエンスとしてこのデータの活用の仕方を新しく考えています。みなさんは、スタートアップ企業はクリエイティブで、迅速に動くと思われているでしょう。しかし、スタートアップには過去からのデータの蓄積という資産がありません。一方、伝統的な企業は蓄積されたデータを持っているという利点があります。

それからもう1つは、意思決定に関するアプローチの仕方をもう一度考え直すことです。例えば時間の使い方として、意思決定をするときにどの部分は自動化できるか、ということを考えてみてください。

意思決定の仕方を変えていかなければならない

先ほど母の話をしましたが、父はと言えば、小売を生業にしていて、デパートを経営していました。

1950年、片道チケットと10ポンドだけを持ち、父はイギリスを出てオーストラリアに向かいました。当時父は18歳でした。

父の仕事はスーツ販売だったのですけれども、なぜか後にイギリスへ戻って、数年間Harrodsの責任者となりました。みなさん、Harrodsに行ったことはありますか? とても有名なデパートで、世界中のおいしい食べ物が集まっているフードコートがあります。

1985年、父に連れられて泣いていた9歳の男の子がいました。それは私です(笑)毎週土曜日に店に連れて行かれて、「静かにしなさい。そして、そこに座ってよく観察しなさい。」と言われました。

おそらく父は、私にマネジメントスタイルを見せようと思っていたのだと思います。

毎週土曜日に顧客の様子を見なさい、と。何を着ているのか、何の話をしているのか、どのように商品の周りを歩いているのかよく見なさいと言ったのです。

結局、顧客を観察してマネジメントしていくのが経営の仕事だということです。もう父は亡くなりましたけれども。

今では、アメリカのMacy’sやJ. C. Penneyといったお店がなくなってしまっています。変化の時が来ていて、物理的な小売店が消滅していきます。すなわち、もう意思決定の仕方も変えていかないといけないということです。

Amazonのビジネスがおもしろいのは、2つのタイプの意思決定の仕方があるということです。

タイプ1は、とても戦略的に重要で、そう簡単に展開できないような、みなさんの時間の90パーセントを使うような意思決定です。

タイプ2は、簡単に変更してもいい、もっとオペレーション的なことです。こちらの意思決定に関しては、そんなに時間をかけなくてよく、集めたデータを見てすぐ決めてよいものです。

ということで、将来みなさんの仕事は「働く」ということにはなりません。みなさんの仕事の時間のほぼ大半は、「仕事を設計する」ことになると思います。そして、顧客体験にもっと注力をしていくのです。

したがって、将来の仕事がなくなる心配はありません。ただし、リーダーの方々は自分たちの企業の中で変革をする準備をするべきです。

まずはデータを大事にする。そして意思決定をするときに、どのような決定に時間をかけるべきか。そして自ら実行するよりかは、どちらかというとプロセス、どのように対峙するかということにもっと時間を割くべきです。

そして意思決定を見直し、機械のほうがうまく決定できる判断は何かを考えます。それと同時に、人間のほうがうまく決定できる判断は何かということも考えます。

そして一方で、成功してきたやり方に固執せず変革を受け入れないと、それがみなさんの足を引っ張ることになりかねません。

将来的にAI、アルゴリズム、オートメーション化に代替される仕事は何なのか。そしてまた、それを凌駕して人間の能力として求められることは何なのかということを考えていくべきです。

(会場拍手)

日本や日本企業の強みは何か

司会者:マイクさん、ありがとうございます。ここからは質疑応答を始めたいと思います。

質問者1:マイクさんから見て、日本企業にとって、今後2030年・2040年に向けた変革に向けて、重要なポイント、チャレンジだと思われる点はなんでしょうか?

マイク:日本の企業は非常にユニークな機会があると思います。理由は2つあります。

1点目は、日本は産業IoTに関して競争優位性があると思います。製造業の卓逸性があります。オートメーション化されたロボット、センサーがあり、みなさんはそれらを他のどこの国よりもうまく活用できる方々です。

一方で、消費者のIoTに関してはまだまだ機会を十分に取り込めていないと思います。ということで、そのデータを収集するようなデバイスを作って、両方を合致させるところにユニークな機会があると思います。

アメリカは消費者のIoTのデバイスに関して、強い競争優位性があります。しかしながら、日本と逆で、産業のネットワークとユーティリティ、そして道路をつなぐことがまだできていません。ですので、これらを合致させることが本当の大きな機会になると思います。

私は、過去20年間日本にたびたび訪れていますが、日本の消費者文化は世界でも冠たるものだと思っています。世界で成功している人たちというのは、日本の方々のデジタル化のアイディアを随分使っています。

例えば、モバイルペイメントはFeliCaチップから始まりました。モバイルコンテンツはiモードから始まりました。アプリケーションは日本のさまざまなものをたたき台にして作られているのです。

ここでの成功の秘訣は、日本のダイナミックな消費者カルチャーをいかに活用するかです。そしてアプリケーション化し、欲しい情報を収集し、コンシューマ体験を再構築する。また、マシンのアルゴリズムを成功に向けて、トレーニングするということも重要だと思います。

将来、リーダーとして成功する子どもたち

質問者2:10歳未満の人たちにとって、これからどのような世界が開けていくのか。その人たちにとってはどのような教育が必要なのか。アドバイスをいただけますでしょうか?

マイク:最も重要な質問をされていると思います。これに関して、明確な答えを持っている人は誰もいないでしょう。

例えば、将来世代は複数のタイプの人間から構成されるのではないかと思っています。

1つは、親がテクノロジーを怖がって使わせなかった子どもたち。

もう1つは、すでにある程度の年齢で、いつもテクノロジーを使っている子どもたち。

もう1つは、親がテクノロジーを使わせすぎたことによって、結果として人間のスキルが不足してしまう子どもたち。

それから、親の監督の下でテクノロジーを使わされた子どもたち。「テクノロジーは問題解決のためにある」ということが分かっている人たちです。このグループの人たちが将来のリーダーになってくると思います。

いわゆる人間の世界とテクノロジーの世界のどちらも理解していて、リーダーになっていける子どもたちのことです。

司会者:最後に私から質問したいと思います。世界中を旅されていて、エネルギー、電力、ガス、ガソリンあるいはEVの世界で、何かムーブメントや今後破壊的なイノベーションを起こせそうな企業があれば教えていただきたいと思います。

マイク:そうですね。世界で「エネルギー業界のGoogle」になるような企業の数があまりにも少ないという話をしていました。どこの世界でも、エネルギーに関しては苦労しています。

エネルギー業界で成功しているイノベーションとしては、スマートオートメーションデバイスやスマートエネルギーなどがあります。

配電技術に関しては、既存のところからそれほど離れていません。

ということで、おそらく駆動していくのはコンシューマの行動です。彼らがどのようにアプリケーションを使うか。エネルギーをどのように測っていくのか。そして、その消費をどのようにデジタル化していくか。彼らの行動や考え方が私たちを引っ張っていき、私たちも変わっていくのではないでしょうか。ありがとうございました。

(会場拍手)

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1 「未来の顧客を知りたければ10歳の子供に学べ」ビジネス界が注目すべき、AI時代の消費者行動
2 未来のリーダーの条件は「計算論的思考」と「人間性」マイク・ウォルシュ氏の提言

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