フューチャリストとして、日本人に伝えたいこと

マイク・ウォルシュ氏:みなさま、ありがとうございます。今日こちらにお伺いできて本当にうれしく思います。私の仕事は、一言で説明するのが難しいのですが、「未来はどうなるのか」ということを人々に説明することです。

ディナーやパーティーの席で、人に職業を聞かれたときに、私は自分のことを「フューチャリスト」と言うのですが、そうするとみなさん違うことを考えてしまいがちで、私も困ってしまいます。

近年、フューチャリストとして、私たちにとっての未来がどのような意味合いになるのかを表していくことが難しくなってきています。

とくに日本では、みなさん未来を考える際、技術そのものに注力しすぎかと思います。私たちはテクノロジーが大好きです。もっと早く、小さく、明るく、ダイナミックにといった精神がますます好まれていますが、一番大事なところ、「人」の変化に対するフォーカスが弱いように思います。

なぜ人に光を当てるべきかというと、人がどのように行動を変えるかによって、未来は随分変わってくるからです。

例えば、私は1年の365日中300日は旅に出ています。これは実際、けっこう大変です(笑)。この写真をご覧ください。人生で最もがっかりするような写真だと思うのですが、仕事で訪問したインドネシアで撮った写真です。

これは50平方センチメールのインターネットの配線をしているところです。インドネシアでは、インターネットのオペレーションの方法を2つ知っておかなければいけません。

1つ目は、あらゆるコンテンツは、この小さな、整理されていないジャカルタのケーブルを通っているということ。2つ目は、この部屋の責任者はたった1人だということです。

この(写真の)方は、インドネシアのインターネットの父のJohar Alam(ジョハール・アラム)です。彼はインドネシアにブロードバンドを持ち込みました。後ろに見える白いラベルは、彼の手書きのもので、すべての線にラベルが貼ってあるわけです。

そして彼は「マイク、見てごらん! 今からインドネシアのFacebookを30秒止めてしまうよ」と言うのです。私が「そんなことはできないでしょう」と言うと、彼は「できるさ」と言うのです。

「インドネシアでは、みんな『インターネットはすごく信頼性が低い』と言いますが、本当は僕が退屈したときにケーブルを抜いているからなんだ」と言っていました(笑)。ということで、彼の言動を考えると、「未来、そしてテクノロジーとは一体なんだろう」ということを考えます。

今日は、AIの時代、アルゴリズムの時代、オートメーションの時代に、エネルギービジネスがどのように変化していくのかということを考えていきたいと思います。

そしてこの設問を考えていくにあたり、みなさまに覚えていてほしいことは、消費者のために、そして未来のためにどのように商品やサービスへ携わっていくか、そしてどのようにそれらを作り上げていくかということです。

従業員の権利を尊重した上で、どのようにビジネスモデルや組織を作っていくのか。そしてみなさんが意思決定をするときに、潜在的なリスクをすべて加味した上で、どのように仕事を進めていくべきなのでしょうか。

注目すべきは“ミレニアル世代の動向”ではない

将来の消費者は、どのようなことを期待するのでしょうか。この質問はみなさんが考えていることでしょう。どの国のどの企業のリーダーも、この問いの答えを寝る間も惜しんで考えています。

その問いの中心はほとんど「ミレニアル世代は何を欲しているか」ということですが、みなさんに残念なお知らせがあります。ミレニアル世代はもはや重要ではありません。この部屋にミレニアル世代の方はいらっしゃいますか?

(会場笑)

1人もいませんね(笑)。ありがとうございます。彼らはすでに、多くの国々で人口の中核をなしている世代です。

ソフトバンクの孫(正義)さんはとても成功されています。そして彼は今の時代の消費者を発見するのではなく、先を見て、2030、40年、50年のターゲットにむけて働きかけているから成功されていると思うのです。

2030年を考えたときに、どのような人たちが中核になっているかというと、それは今、この地球上でいちばん恐ろしい人たち……10歳以下の子どもたちです。ここで質問です。10歳以下のお子さん、あるいはお孫さんをお持ちの方は挙手をお願いします。

(会場挙手)

みなさんはラッキーです。というのも、みなさんの家にいるのが、本当に未来を担う人間たちだからです。この世代は2030年の主要な消費者です。彼らは私たちとは非常に違った人間となります。子ども時代に経験したことがまったく異なるからです。彼らの親御さんは、子どもが泣いたり、ぐずったりしたら、静かにさせるときに、何をしているでしょうか。

アメリカでおもしろい研究があります。10人中7人の親は、テクノロジーを使って子どもを泣き止ませるらしいのですが、その結果、今となっては2歳の子どもの90パーセントはタブレットを完璧に操作できるということがわかったそうです。

彼らはすでに2歳にしてテクノロジーを使いこなしています。そして、親が幼少期に端末を渡すことで、彼らの脳は我々とは全く異なるものになっていきます。この新しい世代はもう、世界に対する期待が私たちと大きく違ってくるのです。

本格的にハイパー・パーソナライズの時代が到来する

彼らはこの奇跡とも思われるような時代で、耳にする音楽も、目にするテレビ番組も、私たちが体験したこととはまったく違うものに囲まれて毎日成長していきます。「体験してきたこと」というのが、ハイパー・パーソナライズ(個人用にカスタマイズ)されてきているからです。

これは何百万もの人々の行動パターンやデータに基づいているもので、それは機械学習によって可能になった事象です。ここ2、3年でこのハイパー・パーソナライゼーションは、アプリケーションや体験に特化してきています。

これは娯楽やゲームへの応用が期待されていますが、すぐに金融サービス、保険業界、リテール業界でも適用されるでしょう。もちろんエネルギー業界にもです。

将来の消費者は、この「エネルギー企業から提供される体験」を求めるようになります。例えば、楽天やモバゲー、ニコニコ動画で体験できたような「ここでしか体験できないもの」をエネルギー企業にも求めているのです。

これが、近年におけるあらゆる体験のベースラインになり、将来のビジネスに影響してきます。2030年に日本のビジネスがどうなるかということを理解するためには、子どもたちが今体験していることは何かを考えるのがキーポイントなのです。

これには3つの要素があると考えています。

1つ目は、将来の消費者のニーズを、彼らが言う前に知っていなければならないということです。「消費者の声を聞く」ではもう遅いのです。このことはすでにリテール業界では実践されています。

Amazonがホールフーズ・マーケットを買収しましたが、ここに未来のスーパーマーケット像が見え始めています。プロトタイプのお店にはレジスターがありません。商品を棚から手に取り、ポケットに直接入れられます。コレクトマニアには堪らない設計ですね。

レジを通さずに支払が確実となるのは、カメラで商品と顧客を認識しているからです。顧客とIDが紐付けられているので、自動的に口座から代金が引き落とされるという仕組みです。

これらはシアトルやニューヨークですでに開設しています。これはリテール業界には革命的でした。取引が目に見えないかたちへと変わってきているのです。

「欲しい」と言う前に、商品が瞬時に届く未来

そうは言っても今はまだ、本当に黎明期です。Amazonが小売で勢力を得ているのは、新体験を消費者に提供できているからだけではありません。アルゴリズムを使って、オペレーティングモデルを変えているからです。今、Amazonの倉庫には計3万台のロボットが稼働しています。

そして、とてもおもしろいことに、Amazonはアルゴリズムを使って、顧客がどのような注文をするかを予測しているのです。したがって、何かAmazonで購入するときは、瞬時に在庫を見つけることができまるのです。

Amazonは顧客がそのアイテムを注文する3〜4日前に、「この商品を注文するだろう」と予測しているのではないか、と思うほどです。彼らのシアトルのロジスティックチームに話を聞くと、「近い将来、顧客の登録した『住所』にではなく、顧客『自身』、つまり顧客がそのとき居る場所にお届けすることになるだろう」とのことでした。

顧客が車を運転していようが、休暇中だろうが、オフィスにいようが、関係なくなるのです。みなさんが「欲しい」と言う前に、すでに「あなたが欲しがっている」ということを知っているのです。

Amazonがみなさんに届ける前に、商品を梱包し発送するのはいつ頃だと思いますか。ある日家に帰ったら、注文してもいないのに何か届いていて、開けてみたら自分が欲しいと思っていたものが入っているのです。恐怖さえ感じそうな驚きがあります。

しかし、子どもたちはそれを何とも思わないのです。 それはすでに「企業側が自分の欲しいものを知っている」のが当たり前だと考えるようになっているからです。

中国のキャッシュレス化について

今日では、Google homeやSiri、アレクサなどのAIのスピーカーといった、システムテクノロジー環境があります。

声だけではなく、顔認証もあります。こちらの認証も国際的に有効な手段となっていくでしょう。フィナンシャルサービスや施設、街づくりが大きく変わっていきます。そしてこれらは中国ではすでに起こっていることです。

中国はだいたい6~7億ぐらいの人々のデータベースを所有しています。それを利用して、「潜在的な犯罪者がいるのでは?」というスクリーニングをすることも可能です。

このように、技術というものは毎日の生活のなかに組み込まれています。中国では顔認証システムがトイレにまであるんです。妙な話ですが、トイレットペーパーが頻繁に盗まれるのか、そこでも顔認証が使われているそうなのです。ひょっとしたら使いすぎると追い出されるのかもしれません。

(会場笑)

こんなことは中国だけだと思いますが、それでも中国はとても重要な例なんです。人々に関するデータが非常に多く、それを利用しているためです。それから中国のキャッシュレス、クレジットカードレス化は著しく、何十億人ものwechatユーザーがいます。

上海では物乞いをする人も小銭ではなく、QRコードのみを受け付けているようです。また、wechatだけでクレジットカードが使えない店もたくさんあります。