2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
NPO法人 ママワーク研究所(全1記事)
提供:サイボウズ株式会社
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田中彩氏(以下、田中):よろしくお願いします。みなさんこんにちは。NPO法人ママワーク研究所の田中彩です。よろしくお願いいたします。
私どもNPO法人ママワーク研究所は、その名前の通り、ママが子育てしながらも自分らしく働きたい。そう願うママたちのサポーター活動をやっている団体になります。
私自身、二児のママです。もう大きくなりましたが、中学2年生の女の子一人。小学校4年生の男の子を育てている、出産で一度リタイアをした女性の一人です。
先ほど「僕の趣味は~」みたいなことがあったので、私も付け加えると、実は船乗りです。こう見えてなんですが、2年前に船舶免許を取りまして。真冬はやっぱり冬の海に行けないんですけど、春になったらだいたい秋口まで週末は海に出る生活をしている人間になります。
私、先ほどご紹介しました通り、ママ人材の復職支援の中で、いかにして「kintone」を(役立てられるか)、取り組んでいる最中です。こういう目的を持って取り組んでいる試行錯誤の事例をみなさまに共有させていただければなと思います。
あらためまして、私どもが取り組むママの就労支援ですが、その取り組む意義がこちらになります。みなさまご承知おきのところだと思いますすが、総人口はすでに減り始めております。その中で、働ける人=生産年齢人口も減ってきております。
このまま行くと2015年で7,500万人いた生産年齢人口がマイナス3,000万人になるということで、このままでは深刻な働き手不足になるというのが一般的に言われているところです。
ここで「ママ」がキーワードになってくるわけです。眠っている女性たち。とくにママが多いので、ママたちがもう1回働ける社会になったら……。
この問題が解決できるのではないかというところが、今社会的に注目を浴びているところです。でも、社会的事情だけではなくて、実はママたちの中にも、そんな思いがあるんです。
今、女性活躍と言われて久しいですが、まだまだ出産を機に退職するママたちの割合が54パーセント。二人に一人という状況が続いています。ずっと子育て・家事だけに専念していたいかというと、そうではなくて、約9割の86パーセントがもう一度働きたいと思っています。
「今子育て中だから働いていないよ」という非就労者の数なんですが、なんと全国で315万人います。社会からも注目をされている。そしてママたち自身も働くことに向けて踏み出したい。この想いをつなげたいとの思いで、NPO法人活動をやっております。
田中:この315万人が眠っていると申し上げましたが、多分みなさまの周りにもいらっしゃると思います。平均出産年齢は今、30歳を超えています。
そうすると、短大・大学を出て20歳位から仕事をしていたが、出産やパートナーの転勤が多いんですが、そういった理由で「一度リタイアをしました」と言う女性たちが多くいらっしゃいますです。ということは、社会人経験が5年以上、そして10年以上も含めて経験ある女性たちが、まだ家庭と地域に眠っているというのが現状なんです。
かつ私、(NPO法人の)スタートのときに201名のこういった女性たちにアンケートをいただいたんですが、その中の回答に「社会人時代、どんな実績がありますか。あったらなんでもいいから書いてください」と聞きましたら、こんなふうに出てくるんです。
いちばん多いのは「新入社員の育成担当をしてきました」。分野によりますが「特許を取得しました」だったり、「プロジェクトリーダーとしてコスト削減、3,500万円規模をやってました」とか、実は「コンテストで優勝してました」とか、だいたいママ友たちとの話のなかでは、絶対こういった話はしないんです。
どうしてかと言うと……嬉しいです、女性の方々に頷いていただいておりますが、単なる自慢話になるんです。普段出しませんが、あえて「どんな実績がありますか」と言ったら、こういったことが話せる方、経験がある方々がたくさん眠っているんです。
これを見ると、おそらくみなさんが思ったと思うんです。こういった人たちが働けないのはもったいないんじゃないか。私もその思いです。同じ思いを抱えている女性たちから、201名の気持ちを預けていただきましたので、それをもとに「じゃあ、どうできるか」という行動をしてまいりました。
NPO法人ママワーク研究所は、2012年の7月に設立いたしました。理念として行っているのが、子育て期のママたちがもう一度仕事を通じて能力を発揮すること。
より豊かな人生を楽しむ。そういったことを応援したいという思いでサポートしています。あわせて、この「もったいない力」を活かせた企業が事業を成長させていけるという考えで、こういった企業のサポートも行っています。
一歩踏み出した企業とママたちが出会ってつながっていく。そういったステージを用意している。それが私どもの役割だと思って、約6年間取り組んでまいりました。
田中:実際にやっていることを図示したものなんですが、女性たちはいずれ働きたいと思っていても、実はもう「明日から働きます」という方はほとんどいないんです。
ちょっと働きたいという方に対して、どうしたら両立に向けて家庭の時短家事ができるようになるかとか、パートナーとの良い関係とか、スキルをどうやって高めておけばいいかとか。そういった情報発信から私どもの活動がスタートします。
例えば、お子さんが幼稚園に入るタイミング。あるいは転勤族だった夫が、もう福岡に戻ってきたよというタイミングで「もうちょっと私できるかも」と、次の一歩が始まるんです。
そういったときに、身近なところで学べる「ママワークスクール」を提供しております。こちらは公民館との連携をしたタイアップ企画になるんですが、ベビーカーで行ける場所にある働くための学び場を行っています。
内容としてはWordで履歴書を作ってみようだったり、あるいはチラシ作りだったり、スマホで写真をキレイに撮ろうだったり。公民館ベースで、家庭のなかでも役に立つけど、あわせていずれ働くときにも役に立つスキルを学ぶ場をご提供しております。
その次の一歩が私どもの特徴的な活動になるんですが、ママドラフト会議という内容です。私、今日ステージに立たせていただいておりますが、ここに強みと働きたいという想いを持ったママたちに登壇してもらい、一緒に働きたい企業の方いませんかという、ある意味スピーチコンテストみたいなものをやっています。
あわせて「ママボランチ養成講座」という、成長企業の中で、できるオフィスワーカーを育てる事業をやっています。これは最終回にスタートアップ企業の経営者のみなさまと交流をしていただき、その中から実際に就労につながっていくというスタイルです。
ここで出会いの場まで作っていくんですが、最終段階としては、再就職のマッチングをやっています。マッチング事業自体は、昨年からようやくスタートしました。実はNPO法人ママワーク研究所は、昨年からグループ企業を作りました。マッチングをやるとなると、職業紹介免許を持たなければならないんですが、それには資本要件があったんです。
NPO法人って、0円で始められるんです。私が専業主婦から0円で立ち上げたのは、NPO法人だったからなんです。でも、本当にママたちの一歩ずつを積み重ねて、最終の再就労につなぐためには、免許を持ちたいということで、一念発起して新たに、株式会社スタイルで「ワークステップ」というマッチング事業所を立ち上げました。
ママワーク研究所では、身近な公民館ベースで学び場を作り、一歩ずつ踏み出す女性たちを応援する。ワークステップでは、企業の方と手をつないで、「もう仕事がしたい、できます」という状態に高まった女性たちに実際の仕事を紹介しています。昨年からそういったトータルサポート事業ができるようになっております。
田中:事業の様子がわかるスライドもご用意しました。「働きたいんだけど、まだ動けないよね」という方に、まずは情報発信ということで、メールマガジンとイベント情報、あるいは「こういうお仕事をやってみませんか」という情報をお届けしています。今、福岡市内中心に2,000名の方にご登録いただいています。
あと「ママ・ボランチ育成講座」です。こちらもママたちの託児付きの講座で、これはもともとバックオフィスをやっていた方々向けに、経理をクラウド会計でやるとどうなるのか。あるいは、サイトの更新をどうやるのか。
そういった以前の仕事をしていたときにはなかった業務を、もう一度学び直すという内容が含まれています。この先の仕事にチャレンジしていく女性のための講座です。
最終回は修了式で、そこで撮った写真なんですが、この中から続々と「私はこういう働き方を手に入れました」という方々が生まれてきています。
下が、2番目の階段でご紹介した公民館でのママ向けスクールです。自分磨きを今のうちにしてみませんかということで、今も福岡市内の5区で、区ごとに1つの公民館と提携をして、「自分磨き講座」を開催しています。
このママドラフト会議。こちらは私どもで商標登録をしている事業になりますが、先ほどのスピーチコンテストでの風景がこちらの写真になります。
ここでスピーチをして、そのあとのアフターフォローを入れると約2ヶ月ぐらいはかかるんですが、昨年12月に開催した会を経て、「上場企業の広報スタッフとして在宅勤務ができるようになりました」という方が、先月実際に登場しました。
あるいは、自分のスケジュールで動きたいという女性が登壇をしてくれたんですけども、その女性は専門学校の講師として月に2回担当講座を持たないかということで、就労につながりました。かれこれ2014年からスタートをした事業で、今述べ200社のみなさまに、このイベントに参画していただき、本当に素敵だなという登壇者がいたら、実際に仕事にという話が進んでいます。
田中:私たち、こんなふうに本当に現場ありきなんです。私自身もママとして必要だから動いてきたという人間なので、汗に関してはすごく自信があるんです。
ただやはり2,000名のみなさまを一歩ずつ応援するとなりますと、いかに効率的に必要な方に必要なものを(ご提供するか)ということが、必要になってまいりまして、2017年の1月から「kintone」の活用に取り組み始めます。
そして、汗が得意なので、とにかくやろうということで「kintone」を導入しました。フォームクリエイターも入れました。すべての事業イベントについては、フォームクリエイターで募集をしていき、参加者のデータを、ご登録をすべて蓄積していくということが続くと、なんとこんなことに、アプリばかりになってきました。
これ1年も経ってないと思うんですけど、アプリの数だけが50個あります。みなさんご想像の通り、このデータはすべて個別なんです。なんらリンクをしていない。
私どもが作っている階段は、本当は情報を受けている人たちが一歩進んで公民館に行って、どういうことを学んで、そして次のステップとして、どういう仕事だとか、どういうスキルを選ぶのだとか、本当はそういったことにつなげていきたかったんですが。
「あぁ、これではちょっと……」ということに、なってしまいました。
これが約1年かけてのところだったんですが、実はこの前座にちょっとありまして。小さくて見にくいかもしれませんが、実は2011の7月にサイボウズの山田副社長が福岡にいらして、ワークライフバランスの企業事例として登壇をいただいたときに、私、話を聞きに行っているんです。
やっぱりママたちは、生活も大切にしながら働きたいので、ワークライフバランスに非常に興味があります。「サイボウズ社はどう取り組んでいるの」ということで、お話を聞きに行きましたら、ちょうどこの2ヶ月後ぐらいに「kintone」がリリースされたんです。
ちょうど山田副社長が「今度こういうの出るんです」。私がママたちの支援をやっていたので「こんな感じでシステムって使えるんですか」と。「多分『kintone』でできると思いますよ」と言われて、私がその夢の世界をやってみたいと思ったのが、かれこれ7年前。実は7年前から取り組んだときは、こんな状況だったというところです。
(トライアルの1年は)残念な感じだったんですが、やっぱり私たちは、女性たちが今本当に必要とされていて、スポットライトを浴びているなかで、必要なサポートをして必要なステージに進んでもらいたい。
そういった想いで、もう1回、次の一歩を踏み出すことにいたしました。本当に先々月の話です。今年の1月に再稼働をしました。
田中:50個ぐらいあったアプリの中から、本当にママの支援に必要な情報はなんだろう、コアなものはなんだろう。そして例えば、ボランチ講座にいらっしゃる女性たちから聞いておくべき情報はなんだろう。ベースとして、共通になるデータはなんだろう。
応募フォームのときからだいたいわかっていることですよね。今のお子さんのことだったり、ご本人の年齢だったり、あるいはお住まいだったり。そういったことは省略化して応募できると、もっと気軽に参加をしてもらえる。
まだまだこれはExcelベースのときなんですが、いただいたデータをすべて一覧化して、必要な情報は何か、どの段階でいただくのか。そして、どう活用していくのかということを、あらためて整理できました。
その段階で、私たちはなぜ「kintone」に取り組むんだろう。それが目指すところの目的も整理をすることにいたしました。その中で出てきたのは3つあるんですが、1つ目はこちらです。
目的の1つは、登録をしているママたちに、サポートをしているママたちに、細やかで効率的に対応をしたいということがあります。
女性たちは、子育て中という共通項はあるんですが、出身地、家族構成、もともとやっていた仕事だったり、やりたいことも全部違うんです。なので、個別の家庭環境もしっかり把握をしながら、必要なサポートをやりたいということです。
復職の方針だって違います。これは今、少しずつ稼働させている内容なんですが、例えば、お子さんが幼稚園のまだ年少さんのときには、まだまだ1時間4時間ぐらいしか(働けません)。
そういったスタートから仕事がしたい方だったり、あるいはお子さんが中学生になったという方だったら、もうそろそろフルタイムでやりたいとか、お一人ずつやりたいかたちも異なります。
その方の今の状況を個別のキャリア面談などでお聞きしながら、システムとして把握し、そういった条件で企業さまからの依頼があったら、しっかり「こういった方がいらっしゃいますよ」とご紹介し、つなげる。
それができるようになりたいということで、今開発を進めているところです。それは主にサポート対象のママたちに対して使いたいということです。
そして2つ目は、運営メンバーたちに本領発揮をしてもらいたいと思っています。
みんな在宅勤務者のメンバーなので、在宅で離れていても、急なお休みでも、短時間でも家族を大切にしながらしっかりママワーク研究所で力を発揮してもらえるように、活用していくところです。
あわせて、応援してくださるサポーター、ボランティアのみなさん。実は参画してくださる企業のみなさまに、「こういったふうに支援が進んでますよ」とお伝えすることが必要になってきますので、瞬時に必要とされるデータを出せる。もっと応援していただくための活用を考えています。
この3つを通して、私どものモットーである、家族からも組織からも必要とされるママをもっと増やしていきたい。そのための「kintone」活用に取り組んでいます。
田中:私の今年のテーマは、スマートに新世界へ行くということで、新世界としては、事業型NPO法人としてやっていく。そしてママ・ドラフト会議です。今度初めて東京の八重洲で開催をします。
今10名のメンバーでやっておりますが、ITを活用して、限られた時間で考えてアクションできるチームになりたいということで活用を進めていきます。ぜひ「kintone」の力で新世界へ連れていって欲しいなという期待を込めて、もう1回開発に向けて汗をかきたいなと思っています。
そんなかたちで、ママ・ドラフト会議は、東京は6月、福岡は7月と11月に2回開催します。そして、ママ・ボランチも5月に福岡。隣の那珂川町でも開催していきます。
眠れるママたちに興味があり、うちの力として欲しいなという方が、今日たくさんいらしているかと思うので、ぜひこの日に私どもにアクセスしにきていただければと思っています。
今日は「kintone」って、どう活用するのと登壇者のみなさまからも学ぶ気持ちでまいりましたし、プロの方々もたくさんいらしてると思いますので、ぜひお知恵を拝借しながら、この新世界に向かっていきたいと思っています。
ご静聴ありがとうございました。
(会場拍手)
伊佐政隆氏(以下、伊佐):ありがとうございました。
非常に丁寧でわかりやすかったです。まさに「kintone」は何のために使っていくのかというのをお話されていたのですが、何かきっかけはあったんですか。
アプリがたくさんできてしまって、普通だったらシステムを使うのをやめようかなみたいなかたちになると思うんですけど、そこであえて「『kintone』を何のために使うんだっけ」という話に戻るって、なかなかのきっかけかなと思ったんですが、人とかですか。
田中彩氏:今2,000名のご登録者がいるんですけど、これからほかのエリアでもという声があるのと、登録者はどんどん増えていくのに、やはりシステムを活用できないと、その方々のサポートをできないだろうと考えて、今の段階で整えたいと思います。
伊佐:なるほど。わかりました。ありがとうございます。あらためまして、拍手でお送りください。ありがとうございました。
(会場拍手)
サイボウズ株式会社
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