2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
『脳神経外科医が教える 一生疲れない人の「脳」の休め方』(実務教育出版)刊行記念 「寝ても疲れの抜けないアナタへ。今年こそ「脳内休息革命」で人生を変えましょう!」(全6記事)
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小谷俊介氏(以下、小谷):ありがとうございます。次はなかなか長文で、ちょっと要約していくと。「職場で一緒に働いている20代前半の人がいます。ちょっとテンパリすぎています。」
菅原道仁氏(以下、菅原):なるほど、なるほど。いらっしゃいますよね。
小谷:「なかなか同じことを教えても覚えてくれないので、メモを取ったらいいんじゃない、というふうに伝えると、メモを取るんですけども、次に同じことをしても忘れてしまいます。」
菅原:いる、いる。います、います。
小松田久美氏(以下、小松田):うっかりさん。
小谷:「覚えてもらうにはどうしたらいいでしょう。」
菅原:そうですね。荒治療かもしれないですけど。僕は思うには、これ難しいんですけど。
小谷:絶対いますもんね。
菅原:大前提は、「人は変わらない」ということなんですね(笑)。
(会場笑)
菅原:やはり自分で気づかせないと。必要だから人間って変わるわけです。先ほどのダイエットの話もそうですけど、コレステロールが高いのも自分で気づいて、自分で「変わる」って思わないといけないわけです。医者がいっくら言ったって変わらない。
だけど、この人がこういうことを繰り返すのは、たぶん間違った成功体験がある方だと思います。例えばどういうことかというと、僕もそうだったんですけども、夏休みの宿題があるじゃないですか。早くやる人もいるし、ぎりぎりでやる人もいる。僕はずっとぎりぎりで出す。後半でやる人だったんですけど、間に合っちゃうんです。
小松田:はい。なんとかなっちゃう。
小谷:気合いで。
菅原:そう。なんとかなっちゃったんです。だから「それでいいや」っていうのが、誰でも続くわけです。間違った成功体験ですよね。
小松田:頭のいい方で、いっぱい、いらっしゃると思います。
菅原:なので、それで落第をするとか、「本気でまずい」ということがあったら、絶対翌年から変わるはずです。
小谷:ああ。
小松田:ああ。
菅原:その方が職場で変わらないのは、会社自体はうまくまわってしまっているからなんです。だけど、そうとも言っていられないので。意外といい方法は、心理学者の植木理恵さんの著作にあるんですが、「アメとムチ」じゃなくて「アメと無視」することなんです。
小松田:無視!
小谷:「アメと無視」(笑)。ほお。
菅原:どういうことかというと、「よくできたね」と言うことと「叱る」ことよりも、「よくできたね」はいいんだけども、できなかったら無視する。
小谷:無視。
小松田:失敗してもほっとく。
菅原:はい。例えば、われわれ男性が家族のところに帰る時に飲み過ぎて帰ってしまったら、小言を言われるわけです。
小松田:はい。
菅原:「なんで遅いの、あなた飲み過ぎじゃないの」って言われるじゃないですか。
小谷:めちゃめちゃ言われます。
菅原:それは、われわれ男性はすぐに忘れてしまうことが多い。
小松田:そうなんですか!
菅原:言われたら、「ごめんな」ってその時は思うわけです。だけど一番恐いのは何かというと、無視されることなんです。何にも言われないことなの。
小松田:今、すごく頷いていらっしゃる。
小谷:ああ! そういうことか。
菅原:うん。何にも言われないとなんか怒ってんじゃないかって思うので、次から気をつけよう、と思うわけです。
小谷:ああ。
小松田:いいことを聞きました。
菅原:はい。これはネズミの実験で(事例が)あるんです。ただのT字路と、電極があるT字路(の両方)にエサが置いてあるわけです。(ネズミに道を覚えさせて)エサのある方向に行かせたい時には、電極とエサ(ムチとアメを与える)よりも、エサしか置いていない方が、早く(正解の道に)たどり着くことができるのです。
小谷:ああ、なるほど。
菅原:(道を間違えたときのムチとして)電極がある方がいいと思われがちですが、(電極の)ストレスがあるので、行動を変えなくなるんです。その場で動かなくなるんです。ネズミたちがチャレンジしなくなってくるんです。
だから、小言をガンガン言うと、変わろうというチャレンジをしなくなってくるので、人間っていうのは良い方向に変わっていかない。
小谷:萎縮しちゃったり、とか。
菅原:そうです。だから「メモを取ったりしたらどう?」というのは、すごくいいアドバイスだと思いますし、できるかできないかという結果に対して小言は言わないようにすればいいんじゃないんですか。あとは長い目で見ていくしかないんです。
小谷:気づかせる。
小松田:自分で考えるまで待つ。
菅原:そうです。こういう、いわゆる「行動を変えたいんですけども」というのは、よくある質問なんです。例えば、男女の恋愛でもそうじゃないですか。「あの人に好きになってほしい」とか。相手の行動はもう変えることはできないので、変わるのを待つしかないです。もし変えてほしいんだったら、それは「洗脳」ですから。
小松田:はい。なるほど。
(会場笑)
菅原:相手を変えたいという(のは洗脳です)。その人(本人)にとっては成功していて、「これが仕事のスタイルで大丈夫だ」と思っているかもしれない。それを少し、リフレーミングと言う心理学のテクニックがあるんですけど、「それはまずいんだよ」と揺るがしてあげるといいんです。けど、時間はやっぱりかかります。
小松田:はい。
小谷:うーん。
菅原:ちょっと脱線しますが、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターの中竹竜二さんという(方がいらっしゃいます)。早稲田大学ラグビー部でキャプテンもやっていた中竹さんに教えてもらった話なんですけど、「期待をする」ってあるじゃないですか。部下に期待をする。パートナーに期待をする。「期待をするには、かけ方があるんです」という話をしてくださった。
どういうことかというと、「この資料を来週までにやってくれ、君には期待しているから」というのはよく使う(言い方)じゃないですか。それは、期待をするのはいいんですが、期限を決めたりするのはダメだっていう話なんです。なぜかというと、期待という字をよく分析すると、「時期が来るまで待つ」と書くんです。
小谷:ああ、そうですね。
小松田:ああ、確かに。
菅原:だから、待つ覚悟がないと、期待しちゃいけないんです。
小松田:ほぉ、いいことを聞きました。
小谷:ああ、なるほど。
菅原:だから、期待をかけるというかけ方があるんです。われわれは期待をするんだったら、その人が変わるまで待つ腹づもりじゃないといけない。だけど、(待たずに相手を)変えたかったら、それは期待じゃなくて命令なんです。
小谷:ああ。
小松田:確かに、仕事になっちゃいますもんね。
菅原:そうです。なので、「僕が期待しているのにあいつは何も動かねぇ」というのは期待のかけ方が違って、うまく命令をしてあげて仕事をする方向に導いてあげないといけない。だから、実は期待をする側というのは、相当覚悟がいる言葉なんじゃないかなと、教えていただきました。
小谷:ああ、深イイ話ですね。
菅原:こんな感じで大丈夫でしょうか? (質問が)たくさん来ているので、ちょっと読んでいかないと。はい。
小谷:眠りネタでいきますね。多いですね。
菅原:けっこう睡眠、多いですね。
小谷:「とにかく眠いです。気絶しそう。妊娠中のように眠くてしかたなさすぎて、なんかの病気じゃないか、となっちゃう。」というのが1個ですね。
菅原:そうですね。ですからこれも、昼間の眠気が強いという方の場合は、やはり睡眠障害という治療が必要なことがあって、お薬を適切に使った方がいいことがあるので、もしこういうのが続くようであれば、心療内科なり、精神科というようなところで、親身になって話を聞いてくれるところを受診してみるのが1つかもしれませんし。
小谷:ナルコレプシーといった病名がつくかもしれませんし。
菅原:そうなんですよね。そういった病気ではないことを一応、確認した方がいいかもしれない。だから昼間の眠気がある場合は、やはり一度は病院に行かれることをおすすめはします。
小松田:眠気が続くのって、どのくらい様子を見たらいいですか? 1ヶ月とか、1週間とか?
菅原:そうですね。やっぱり1ヶ月、2ヶ月まったく変わりない。昼間もよく運動するようにしたり、寝具をちょっと変えたり、あとは寝る前もいろいろテレビを見ないようにするとか。いろいろ生活を変えたのにもかかわらず、1ヶ月くらい同じような状態が続くようであれば、一度相談してもいいんじゃないかな、と思います。
小松田:わかりました。
小谷:致命的な病気というのは、ちゃんと服薬すれば回復する。
菅原:そうですね。ただ多くはやっぱり心理的ストレスであったり、やらなければいけないことを思い描いてしまって、「ああ明日あれやらなきゃいけない」という過度のストレスがかかっていることがあるので。
これがポキッと折れてしまうと、やはりいわゆる鬱状態という病気になってしまう場合もありますので。(必ず)なるわけじゃないですけど。一度ご相談に行った方がいいのかな、とは思います。
小谷:なるほど。
菅原:はい。口内炎もそうです。
小松田:口内炎。
小谷:「大きな環境の変化があった次の日から、口内炎ができちゃいました。」
菅原:はい。やはりこの文章から読み解くと、どなたかは存じ上げませんが、もしかしたら日中、大きなストレスを抱えていらっしゃるのかもしれません。なので、そのストレスが解決すればいいんですが、ストレスに対する向き合い方というのもすごく大事です。本の方にも1章かけて書かせてもらいましたが。
小谷:そうですね。
菅原:みなさんも、やっぱりどうしても「ストレスをゼロにしたい」と思っていると思うんですけど、それは大きな間違いで。ゼロには絶対なりませんし、ストレスがない世界というのは老けます。
小松田:老けちゃうんですね。
小谷:逆に。
菅原:どういうことかと言うと、宇宙飛行士さんを見ていただけるとわかるんですけど。(身体に)ストレスがない世界ってどういうところかというと、宇宙空間なんです。
小谷・小松田:ああ。
菅原:重力がないですから、楽ちんなわけです。ぴょーんと跳ねたら、ずーっと動いちゃいます。だから、歩いて筋肉を使うということは、ストレスがあるから筋肉がトレーニングされる。だけど、宇宙飛行士があんなにトレーニングをして、何年もトレーニングして(宇宙に)10日間とか行っても、帰ってきたらもう歩けなくなるくらいなんです。
小谷:そう言いますよね。
菅原:はい。ストレスがゼロな世界というのは、宇宙飛行士の人と同じなので、われわれの成長にはまったくならない、ということなんです。だから、ある程度ストレスというのがある方がいい。
ストレスというか、正確にはストレッサーと言うんですけど、ストレスの元ですね。ストレッサーに対する自分の反応をストレスと呼びますから。ストレッサーをゼロにすることはできない。だけど、ストレスを軽減させることはできる。
それにはストレッサーに対するイメージを変えればいいだけなので、「上司がストレッサーだな、ストレスだな」と思うんであれば、その上司のいいところを見つけてあげるとか。そういった捉え方を変える。だから、小言を言われたとしても、「ああ、自分の成長のためにやってくれるんだ」「ああ、厭味で言われてるんじゃない」って思い込めばいいので。
小谷:ポジティブに。
小松田:自分が変わるんですね。
菅原:はい。そうです。だから、そういうふうにしてストレスと向き合うのは非常に大事だし、ストレッサー、一般的にはストレスというものはゼロにする必要もない。
小松田:はい。
菅原:僕はそう思っていますし、(ストレスは)自分を成長させるものだというふうに認識を変えていただくといいかなと(思います)。
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