海外で成功するための「Can」とは

九法崇雄氏(以下、九法):続いて、(5つの条件のうちの)「Can」をお願いします。

田所雅之氏(以下、田所):「Can」。これは言わずもがな的なところがあるんですけど。そもそも、国内でも当然それはそうなんですけど、海外でやる時には圧倒的な優位性があるかどうか、が重要なポイントになります

例えば、ドリームチームや技術的な優位性ですよね。ファーストムーバーとして、真っ先に参入して、Product-Market-Fit を達成できたかどうか、ピーター・ティールの言葉を借りて言うと、「あるほかの人が誰も気付いていない秘密に気付くことができたか」が大事かなと思っています。

例えば、これはベンチャーといっても上場企業の事例で恐縮なんですけれども、ユーグレナさんがなぜ時価総額3000億の企業になれたかというと、「世界初」ができたからだと思うんですよね。世界初のミドリムシ、ユーグレナの大量培養ができました。

テラモーターズさんの事例なんですけれども、先ほど最終価格21万で市場投入できたときにバッテリーを車載されたんですけど、こういうのを安い価格で、ハイクオリティーなバッテリーを提供でできたのは「我々しかいない」というのをおっしゃっていたのが印象的です。

先ほどソニーの創業者である盛田昭夫さんの話があったんですけど。なぜそもそもソニーがアメリカ市場に行ったか。当然オーディオの市場が大きいというニーズがあったと思うんですよね。ただそれだけじゃない、技術的なアンフェアアドバンテージがあったと思います。

というのは、ソニーが作ったトランジスタラジオものすごいコンパクトなんですよ。だいたい15センチくらいで、このサイズでこの音質で作れるのはソニーしかいなかったということです。盛田さんは「我が社の誇りだった」言っています。何度かOEMとか依頼されるんですけど、やはりソニーブランドを打ち出したいということでやった。

技術に基づくアンフェアアドバンテージなのか、チームに基づくアンフェアアドバンテージなのか、もしくは市場のインサイトに基づくアンフェアアドバンテージなのかを、いずれか、もしくは全てを持つことが海外でやる際に有利になります

九法:ありがとうございます。アンフェアアドバンテージが大事だ、というお話でした。

テラの海外進出の根拠は?

九法:徳重さん、テラモーターズが進出するにあたって、どこにアンフェアアドバンテージがあると考えられて、進出されたんでしょうか。テラドローンの話も聞かせていただけますか。

徳重徹氏(以下、徳重):そうですね、テラモーターズはさきほど申し上げたように、日本の会社・日本のブランドで、僕たちインド・バングラで唯一戦っている外資系企業です。日本の会社もいませんけど、アメリカ・ヨーロッパの会社もいない。唯一、現地でドブ板でやっているだけでビッグなアドバンテージだったりもする。

あと、アジアだとローカルの人が、インプリメンテーション(現場の実行)を基本的にしっかりできないので、インプリをしっかりやるだけでアドバンテージになる、というのもあります。

九法:なるほど。

徳重:ドローンは、もう少しテクノロジーオリエンテッドみたいな感じです。あとは、日本人がダメなところですが、今できることはやるんだけど、先の先を見越して、テクノロジーやトレンドや法規など、「先の世の中はこうなるだろうから、今これをやっとく」みたいなことが足りないですね。

僕たちで言うと、ドローンの管制システムがあるんですけど、今ドローンって目で見て操作しているんですけど、将来、目視外飛行ということで、飛行機の航空管制みたいになるんですよ。「でもそれってまだ先じゃん」と思うでしょう。でも、それは今やらないといけない、プラットフォームになるわけですから。

僕たちは1年半前にヨーロッパで世界で圧倒的トップの会社を見つけて、思い切って5億円も出資し、筆頭株主になっています。うち資本金16億しかないのに。

九法:すごいですね(笑)。

徳重:大事だと思ったわけです。投資家は、良いプランだが出資金額が一桁大きいと反対されました。つまり、5,000万円にしておけと。私はここが勝負所だと思い、決断しました。

僕たちは今、日本でもドローン管制システムをやっています。KDDIさんや大手電力会社さんと世界初のプロジェクトを推進しています。あとはまだ発表されていませんが、日本を代表する大手メーカーとパートナーシップを組みます。

それができたら、あとは、もう一気にドバーッと進める。成功事例ができたんだったら、今度はそれがバリューになるわけですよね。

そういうことが一気に描けるので、やはりプロダクトの優位性は非常に大事です。プラットフォーム事業は早く獲ったもん勝ちなので良いですよね。

九法:ありがとうございます。

日本だからこそ優位になる国は

九法:さきほど日本プレミアムというか、「日本だからこそ優位になる」というお話がありましたが、いろいろな国に進出される中でとくに日本ブランドが効く国、あるいはそんなに効かない国っていうのはあるんでしょうか?

徳重:それはもちろんあります。ただ、総じて評価は高いです。ビジネスは基本、海外でも信頼関係じゃないですか。信頼できる日本人・日本の会社、というのはもう、圧倒的に根付いているので。すごくやりやすい。先人の方々のおかげです。

さきほどの答えとしてダイレクトに答えると、一番強いのは東南アジアです。バングラやネパールもすごくあります。それが80パーセントの強度だとすると、インドだと60パーセントくらい。オーストラリアに行くと40パーセントくらいになる。

1年前くらいにオランダのアムステルダムに行きました。タクシーでいつも聞かれるわけですよね。「お前どこから来たんだ」「チャイニーズか」と。僕は服装が適当なんで。

九法:(笑)。

徳重:だいたい「チャイニーズか」と聞かれる。「いや、ジャパニーズだ」と。そうしたら「イェーイ!」と手を上げて言ってくれますからね(笑)。

(会場笑)

いや本当に。

九法:オランダ人が(笑)。

徳重:はい、オランダ人が(笑)。いや、でもみんなそう。フィリピンでも、スリランカでも。どこでもそうなんですよ。僕が不満として強調したいのは、先人の方々が蓄積してきた「無形資産」が、ほぼ使われていないわけですよ。

九法:「日本企業は素晴らしい技術を持っているんだ」ということですね。

徳重:人格もです。信頼感や信用度、「無形資産」はものすごいものがありますよ。

海外の見込み客へも僕らはLinkedInで営業しまくるんですけど、すごいやりやすいです。レスポンス率、めちゃ高いですから。

九法:LinkedInで営業されるんですか?

徳重:向こうが大企業で偉かろうがなんだろうがLinkedInです。もちろんメッセージの内容も大事ですけれど、レスポンス率がすごく高いです。

冷静な戦略が必要「Growth Story」

九法:ありがとうございます。今「Can」の話を、徳重さんの事例を交えてうかがってきました。最後の5つ目が「Growth Story」ですね。

田所:4つの条件を述べさせてもらいました。そこに加える条件になります。国内で調達したらマザーズIPOをする成長ストーリーを描くと思います。

徳重さんがおっしゃったみたいに、ドローンやEVなどはパラダイムシフトが起きています。つまり、圧倒的に強いプレーヤーがいない未成熟な市場です。「ここでプラットフォーム取りに行く」という戦略を立てて、それを実際に取れてしまったら、プラットフォーマーとして課金する関所商売ができますね。そういう成長戦略を描けるかどうかですよね。

「Want」は熱いハートやパッションを意味します。一方で「Growth Story」は、クールヘッドを持つこと、つまり冷静に戦略を立てることが必要かなと思っています。エグジットストーリーやエクイティストーリーなどと言うんですけど。「しっかりそれを描けますか」ということかなと思っています。

クックパッドの例をご紹介します。2015年頃のIR資料です。世界中でスマホが伸びているる時に、レシピはWeb上で見るんじゃなくてスマホで見る方に移りつつあるトレンドをおさえています。レシピサイトももともと、Webで圧倒的に強かったんですけども、この後クックパッドは(世界の)5ヵ所で、企業を買ったんですね。それぞれの市場で、スマホの浸透率が圧倒的に伸びてきています。

PCからスマホへのパラダイムシフトが起きている時に、市場を先に取りに行ったんですね。メタップスもそうです。上場前から世界中の8ヵ所でやっています。海外比率がすでに6割くらい立っていて、データエコノミクスという、今後は、データを握るものが市場を握るというパラダイムを提唱してスケールしています。

シリコンバレーでは一時期、「Data is New Oil」という言葉が流行ったように、データを抑えることが今後の一番の成長ポイントになることを見越した上で数年前から、グローバル市場でやっています。

パラダイムシフトが起きるところ、今後起きつつあるところにリソースを張って、そこを伸ばしていくという成長ストーリーが描けるのがポイントかなと思っています。

ディシジョンメイキングツリー

田所:これが実際に海外進出の仕方のようなところで「Growth Story」なんですけども。先ほどのYOYO Holdingsや徳重さんのテラモーターズもそうなんですけど、海外の市場が大きい、最初から海外からやるのがポイントですね。

海外から展開する時に、実は僕、(スライドを指して)こういうフレームワークを作ったんですけど(笑)。「エクイティストーリーディシジョンメイキングツリー」と勝手に呼んでいます。

要は最終的にIPOするまでに、どういうふうなエクイティストーリーを描くかという時に、どこの国でプロダクトマーケットフィットするか、その順番を考えることが大事だと思うんですね。

それが海外だったら、「海外でやる」という意思決定になります。ただ、一般には、クックパッドなどもそうなんですけれども、実際IPO一歩手前になって、今後さらに成長する蓋然性を高めつためにいわゆる浸み出し・ハミ出し型と言って、新市場に行くと思うんですよね。

みなさんは海外に行かれている方も多いと思うんですけど、そもそも自分たちが海外ファーストでやるべきかを考えるべきです。最初は日本国内で、そこでドミナントで勝つ。そこからハミ出し型・浸み出し型で海外に行くのか、戦略を立てる必要があります。その戦略は前に提唱した4つの条件に依存するんじゃないかなと。

つまり「Growth Story」というのは、「Can」「Want」「Needed」「Get Paid」に依存するんじゃないかな、と思っています。

九法:はい。ありがとうございます。5つの成功の条件の最後、「Growth Story」の話をうかがいました。