2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
『脳神経外科医が教える 一生疲れない人の「脳」の休め方』(実務教育出版)刊行記念 「寝ても疲れの抜けないアナタへ。今年こそ「脳内休息革命」で人生を変えましょう!」(全6記事)
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菅原道仁氏(以下、菅原):ただ、多くの方がだいたい、昼間眠くてしょうがない。まぁ食べた後の眠気はしょうがないですよ。しょうがないんですけど、眠気を訴える方が多いので。やはりそういう方は理由が2つありまして、1つは睡眠の質が悪いという。
小谷俊介氏(以下、小谷):睡眠の質、ですね。
菅原:質が悪いのは、1つは最近よく話題になる睡眠時無呼吸が隠れていたりとか。病気の話からいうと、途中でちょっといびきとか、歯ぎしりとか。あとは睡眠の時に本当に5秒とか10秒とか呼吸が止まって、睡眠の質を下げてしまうことがあります。
あともう1つは、寝具が合っていない、ということです。本にも書かせてもらったんですが、我々の寝る時間が仮に6時間と仮定した場合、人生において4分の1ですから、自分の年収の4分の1くらい寝具にかけたっていいわけですよ。
小松田久美氏(以下、小松田):ぜいたくです。
菅原:単純計算すると。
小谷:うーん。4分の1。
菅原:はい。ですから、電気メーカーの人がいたらごめんなさいですけど、55インチの大画面のテレビを買うんだったら、いいベッドを買ったり、いいマットレスを買うのが、1つのアイディアかな、と思います。
小谷:なるほど。
菅原:はい。我々、ベッドにいる時間って実際、長いので。
小谷:4Kテレビとかで40万円使うんだったら、そういう寝具に。
小松田:割と削ってしまいがちですよね。寝具って。
菅原:そうです。あと枕、布団。布団の重さも大事ですし、マットレスの硬さも大事です。一般的に標準体重よりちょっと自分は重いなという方は硬めの方がいいといわれています。標準体重より軽い人は柔らかめの方がいい。
我々の体はS字になっていて、肉体の重さを分散するようにできている。だからそれを寝たままの時もそういう姿勢になっていた方がいいので、あまり高い枕とかおすすめしないです。高い枕というのは猫背で寝ているようなものですから、こうやって寝てしまうんです。
小松田:そうですね。
小谷:ああ、確かに。
菅原:猫背でパソコンをしているのと同じ姿勢ですから、あんまり高い枕はおすすめはしていません。なので、オーダーメードでつくられる方もいますし、僕はそこまでする必要はないと思ってて、バスタオルを四つ折りとか、2つ重ねたりすると、高さ変わるじゃないですか。自分の体型に合わせていただければいいな、と。
でもどうしても高いのが好きな方は首のところだけに入れるんじゃなくて、どうせなら肩ごと入れた方がいいです。
小谷:肩ごと。
菅原:首だけこう上げるんじゃなくて、ちょっとここにこう、全体的に斜めにしてあげた方が、まだ疲れは少ないかもしれません。
菅原:睡眠のいわゆる質が悪いということと、あとはもう1つは最近、現代人で一番多いと思っているのは、やっぱり昼間の運動量が少ない方が多い。
小松田:運動しないです。
小谷:昼間の運動量。ほお。
菅原:やっぱり今は便利な世の中ですから。手を挙げればタクシーが停まったり、バスがあったり、エスカレーター、エレベーターいろいろあって、40年前の40パーセント程度しかわれわれ人間は体を動かしていないと言われています。運動量を増やすというのも1つ、睡眠の質を上げるコツです。
ですから、「いっぱい歩いています」という方であれば、歩く速度をちょっと上げてみてください。早歩きですね。
小松田:早めに。
菅原:はい。あの早歩きがおじいちゃんおばあちゃんになってもできる人たちは健康寿命が長いというデータもありますので、今のうちから早歩きの癖をつけることはいいと思います。
小谷:やっぱり体をちょっと疲れさせてあげる。
菅原:そうですね。
小松田:大事です。
菅原:なので、そこを見直して、それでもやはり睡眠時間がどうしても取れない、短い、昼間の眠気が取れないという時に初めてお薬とかを使ってあげたりする人がいるので。
お薬もみなさん、ちょっとえー? っていう時もあるかもしれませんが、短期間使う分であれば、まったく問題ありませんし、私も週1回とか使うこともあります。疲れのリセットの裏ワザとして使ったりする方もいます。
小谷:例えば、帰りも最寄りの駅まで行くんじゃなくて、ちょっと1つ手前の駅から歩いて。
菅原:はい。がんばっていただくのもいいんじゃないですか。「じゃあウォーキングするわ」「じゃあスポーツジム行くぞ」っていうと、みなさん忙しいですから、なかなか難しいので。日常生活に運動を入れ込むという発想が必要なのかな、とは思います。
小谷:なるほど。今質問された方、よろしいでしょうか?
菅原:大丈夫でしょうか? 寝れなかったら八王子のクリニックへ(笑)
(会場笑)
小松田:すごく親身になって相談にのってくれます。
小谷:歩いて来てもらうといいと思うんですけれども。では、お2人目の質問ですね。
菅原:はい。
小松田:いきましょう。
小谷:認知症にまたいきまして。
「認知症の患者さんに対して、『あなたは認知症です』と診断されるのでしょうか。もしくはご家族の方にのみ診断名を告げるのでしょうか。その場合、患者さんご本人にはなんと伝えるのですか。また認知症の方に『あなたは認知症です』と告げたとして、患者さんはそれを認識しておられるのでしょうか」
なるほど。
菅原:はい。なるほど、いい質問ですね。はい。なるほど。
これはまあ、いろいろな医師によって診療スタイルが違うとは思うんですが、僕は基本的には本人には伝えないことが多いです。
小松田:伝えないんですね。
菅原:はい。なぜかというと、認知症の最初期は、近時記憶低下といって、新しい記憶は覚えにくいわけです。例えば、自分が眼鏡を置いた場所を忘れてしまう、頼まれ事を忘れてしまう、あとは日付の感覚を忘れてしまうというのが初期症状です。なので、「あなたが認知症です」というようなことを伝えても、けっこう抜けてしまう方が多いので。
小松田:そうなんですね。
小谷:確かにね。
菅原:逆に、残ることは何かというと、感情は残るんです。言われた嫌な気持ちとか、感情は残るんです。それは認知症でなくても、みなさんあることだと思います。例えば、失恋をした時の状況はまったく覚えてないけど、なんか振られてムカついたな、とか。
小谷:(笑)
小松田:ありますね。
菅原:上司に小言を言われて、言われたことは忘れたけど、あの上司に言われてムカつく。感情だけ残るというのは、やっぱり脳の原始的なところの扁桃体というところが活動しますので、感情って残るんです。
小谷:ああ、そんな気がしますね。
菅原:だから、認知症の、いわゆる病気で治療の必要な方には、その感情を尊重しないといけないんです。なので「自分は社会的貢献ができる」とか「まだまだがんばれる」というふうに思もっていただいた方が、認知症の進みは圧倒的に遅くなります。
小谷:ああ、なるほど。プライドをちゃんと。
菅原:そうです。プライドを保たせてあげるというのはすごく大事なことです。一生懸命なご家族の方というのは、物忘れをしていることに、事細かに口出ししそうですよね。何々するな、って。その気持ちはわかる。だけど逆効果なことが多いです。
小松田:「がんばって」って言っちゃいそうですよね。
菅原:だけど「がんばって」と言われた本人は、日常生活で何をがんばっていいかわからない。よく言うんですけど、いわゆる認知症という病気をみなさんに正しく理解してほしいんですけれども、体の麻痺と一緒なんです。記憶の麻痺なんです。
小松田・小谷:記憶の麻痺。
菅原:だから、たとえば、体の麻痺の人。車椅子を使っている人たちがいるじゃないですか。その人たちに「歩け」って言います?
小谷:言えないです。
小松田:言わないですね。
菅原:病気で車椅子の方に言わないですよね。それと同じことが認知症の方にも言えるわけです。記憶の麻痺という病気なので、「覚えろ」ということができない病気なんです。だけど、古い記憶のことはできたり、お食事をつくったり、おトイレに行ったり、普通の日常生活ができる方が圧倒的に多い。
そこを注目してあげて、できないことをサポートする。車椅子を押してあげるように、記憶のできないところをサポートをしてあげるという対応が、本当は認知症の方には正しい対応なんです。
けれども、なかなか、感情というか、親にはちゃんとしっかり覚えてほしいという気持ちが、こう交錯するのはわかるんですけど。そこのところはちょっと切り離して、体が動かない人の車椅子を押してあげるように、認知症の記憶に対してだけサポートをしてあげれば、普通に生活できるわけですから。そういう対応がいいのかな、と私は思ってはいます。
小谷:ご家族にもそのように接していただくと。
菅原:おっしゃる通りです。
小谷:ご本人には婉曲的に伝えるんですか?
菅原:そうですね。認知症という言葉はかなりキラーワードですから、それよりも「ちょっと物覚えが苦手ですね」とか。特に苦手なのは新しいことを覚えるということですから、わからなかったらご家族に聞いたり、メモを残したりするのもいいんじゃないでしょうか。
だけどメモを書いたことも忘れるので、なかなかそれも難しいんですけども。先ほどの言い方の話じゃないですけど、伝え方を変えてあげるというのが、私が今、心がけていることです。
小谷:例えば、「じゃあ、私は認知症なんですか?」というふうに聞いてくる方もいらっしゃると思うんですね。
菅原:はい。
小谷:聞いてこれる人は認知症じゃないっていうことなんですか?
菅原:まあ、ほとんどはそうです。
小谷:ああ。
菅原:だから、最初の初期の初期の時にはそういった時に自分で気づく方もいるんですが。多くはうっかりの物忘れであったり、心配性なだけという方が多いので、そんなに心配されなくてもいいと思います。
小谷:気づかない人がちょっと危ないんじゃないかな。
菅原:そうですね。大丈夫でしょうか?
小谷:(手元を見て)……質問、たくさんいただきました。
菅原:たくさんいただきました。
小松田:いっぱいあります。
小谷:「すぐ眠れる=気絶することに近いと聞いたのですが、本当ですか? 健康な人は布団に入って10分か20分程度たってから眠るのが普通だそうです。」
菅原:はい。人それぞれじゃないですか。やっぱり本当にあまりにも疲れ過ぎてたら、バタンキューといわれているように寝てしまったりとか、後はお酒を飲んで泥酔している時とか、すぐ寝てしまったりするんですけど。
あ、お酒と睡眠の話をついでにお話しさせてもらうと、寝酒はあんまりおすすめはしないです。なぜかというと、お酒を飲む方は実感あると思いますが、やっぱり物音とかで起きてしまったりすることはよくあると思います。
小谷:眠りが浅くなるんですよね。
菅原:そうなんです。質が良くないので、寝つきは良くなるんですけど、途中で起きてしまったりすることはやはりあるので。それよりも、もし本当に寝酒を使うくらいだったら、少量のいわゆるお薬とか使って寝た方が、まだ僕は健康的じゃないかな、と思います。
小谷:じゃあ、ナイトキャップというのは良くない?
菅原:あまりおすすめはしないですね。
小谷:でも別に入眠時間の長い短いにそんな。
菅原:そうですね。その人が翌日、パフォーマンスを上げられるような、仕事ができさえすれば、10分、20分かけて寝てもいいとは思います。
小松田:はい。
小谷:僕は(入眠時間が)短いんで。すぐにけっこう、のび太くんばりに寝れちゃうので。
小松田:羨ましいです。
小谷:女性の方が長いみたいな。
小松田:かかります。
菅原:ああ、そうですか。
小松田:長いと1時間くらいとか、寝れないな、寝れないな、ってなったりします。
菅原:そういう時はやっぱり一度、外に出た方がいいですね。
小松田:ああ。なるほど。
小谷:へえ。
菅原:寝れないというイメージのある場所だと、ずっとそういうイメージが残ってなかなか寝れないという心理学的なこともあるので。1回リセットをして、本を読んだりする方がいいかな、と思います。
小谷:無理して寝ようとせずに、ちょっと1回スイッチを切り替えてみたいな。
小松田:わかりました。
菅原:またお風呂に入り直したっていいわけですよ。
小松田:ああ。いいですね。
菅原:体を温め直すというのもいいんです。温めてから冷える時にわれわれ眠気がきますので。
小谷:ああ、なるほど。
菅原:はい。
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