2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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田島麻衣子氏(以下、田島):コツの2つめ。「フィードバックの上手な出し方、受け止め方」とあります。さて、フィードバックというと、身近に感じられるものですか? 感じられるものか、感じられないものか、どっちでしょう。感じられない、首を振っている方が多いですね。では、フィードバックとはどんなものなのか。私たちの仕事場ではフィードバックはかなり重要なものなのです。
なにかというと、例えば私が今講演をしたとします。「田島さん、こういう点が良かったよ、こういう点は直そうね」、これがフィードバックです。
『世界で働く人になる!実践編』には「人間性が試される」と書いてありますが(笑)。どんなことに気をつけているとフィードバックがうまくできるのかということはありますが、これは難しいのです、本当に。私は自分でやっていて、上司も部下もいますが、出すたびに、「あぁ、自分の成長度を試されているな」と思いながら、冷や汗をかいてやっています。
まず、自分が出す側ですね。そのときには、相手のためを思ってひたすら出します。これは、私が変なプレゼンをして、みなさんがとっても頭に来ていたとします。「田島、こら!」と思って変なフィードバックをすると、それは私のためを思ってはいないんですね。
(会場笑)
本当に私が心に残っているフィードバックというのは、どれも相手が私のためを思って出してくれたものなのだろうなと思うものばかりです。「こいつめ」と思って言われていることは、やっぱり私は聞きませんし。さっきのストレスの話ではありませんが、取捨選択して「まぁこれは流しておこう」と思ってしまうので、まずこれは相手のためを思ってやること。
これは仕事をしていて、いろいろなことが起こると、やっぱり難しい部分はとてもあるのですよね。なので、かなり胆力、グッとおなかに力を入れながら、私も向かっています。
フィードバックする時のもう1つのコツは、時間を置かないこと。「去年はあなた、ああだったじゃないの」と言われても、言われているほうはわかりません。そうではなくて、何かが起こったときに「ここが良かったよ」「ここをもっとこうすればいいよね」ということを、その場で言う。
また、具体的というのはかなり重要なのです。「お前はダメだ」と言われていると、言われたほうは何がダメなのかよくわからない。けれども「この日にこんな遅刻をして、これだけのレポートができなかったよね、改善しよう」というように言われると、「あぁ、あそこがいけなかったのだな」とわかりますよね、言われているほうもね。ですから、時間を置かずに、具体的に相手に対するアドバイスを出そうということを、私も常に念頭に置いています。
私はチームではフィードバック人間になっていて、部下からのフィードバックも出してねといつも言っています。部下も来て、「ちょっとマイコ、話があるんだけどさ」などとやってきて、いろんなことを言いますよね。それも1年後ではなくて、起こったときに言おうねと、お互いに確認し合いながら仕事をしています。
3番目は「誰が聞いているのか注意」。日本は「恥の文化」と言われますが、批判をされていることを聞かれて恥に思う人は、世界中に例外なく、たくさんいます。自分が注意をされていることを他の人に見られたくない気持ちは、誰もが持っているものですね。
ですから、もしみなさんが世界でいろんな国の人たちと仕事をしていて、つらいフィードバックを出さなければいけなくなった場合には、場所を考えたほうがいいと思います。私がよくやるのは、個室に入ってドアを閉めて、誰にも聞かれない状態にして、お互いに話をするようにしています。
ポジティブなものは、みなさん聞いてほしいじゃないですか。「よくやったな」と言われるとうれしいですよね。ですから、それはみなさんの目の前で、ワーッと大声で言ったり、メールでみなさんにコピーして「よくやったね」ということを出したりしますね。
4番目はですね。「感情は部屋の外に」です。これはやっぱり、感情を持ち込んでフィードバックしようとすると、やっぱり失敗しますね。「こいつ!」と思いながら何か言うと、相手のためにはならないので。
ですから、何があっても、私がやるときには、自分がもし感情的になっていた場合はやりません。一晩寝て、二晩寝て、気持ちが落ち着いたときに、「あのときはああすればよかったのではないだろうか、私にもこういった改善点があるよね」という話をするようにしています。感情を部屋の外においていく。
あと、繰り返し繰り返し終わったことを言う人は「重い」ですよね。やっぱり言われたくないのです。私も実際、昔話し合ったことで、もしそれが直っていた場合には、一切蒸し返しません。知らないフリをしている。よくなったらもう、その後はなかったことにして、過去は蒸し返さない。サバサバ行きます。
最後は、自分が出されたときにはどうするかということがありますが、これは出しているほうもそうですが、受けているほうもつらいのですね。とくにネガティブフィードバックなどを出されると「えっ?」と思ってしまいますが、でも、それを素直に受ける。
もし相手が自分のためを思って出してくれているフィードバックであるのならば、それを成長の機会として捉えるというように、私は一生懸命、自分自身を律しています。あと、自分を律するべきは、ポジティブなフィードバック。「田島さん、すごいね」と言われて、「いやぁ〜」と舞い上がってしまうのはダメなんですね、きっと。褒められたら謙虚に受ける。そして、あまり舞い上がらない。“自分を失わない”ということを重要視しています。
以上6点ですね。フィードバックの上手な仕方、受け止め方でした。
ワークライフバランスの上手な取り方です。ワークライフバランス、今、日本でも「人生100年計画」などと言って、ワークライフバランスという言葉がたくさん新聞や雑誌に出てきますが、やはり同じ企業に勤めて、それ以外には人生がなくて、定年をしてやることがなくなって、そのまま老いていく人生というのは、100年間も私たちは生きるのだという仮定に基づいたときに、やっぱりうまくいかないだろうということはすごくあると思います。
私がどうしてこのような本を書いたりしているのかというのも、やっぱりみなさんと同じように国連職員も定年があるので、本を書くということを自分自身のワークライフだと思ってやっているんです。ワークライフバランス、どんなことが重要なのかというと、大事なのは「自分」。
自分にカギカッコがついていますが、「自分」が納得するバランス。他の人が「あれがいいよね」と言っていたり、広告が「旅に出よう」と言っているから旅に出なくちゃ、というものではなくて、やっぱり自分の人生なので、自分自身が納得したバランスを取らなければいけないのだろうなと思いました、本当に。
過去3年間のうちに、私はテレワークとサバティカル休暇を経験していますが、そのときに悩んで、特別に大事にしたものは、自分が納得するかどうかだったんですね。結局は自分の人生なのだということをすごく考えています。
あと、私はかなりの完璧主義者で、常に完璧じゃないとダメなのではないかというプレッシャーにさいなまれたりすることがあるのですが、そうではなくて、長い人生、やっぱり自分自身でプランできないこともありますし、思いがけないことにめぐり合うこともある。
ですから、その場その場でバランスが取れていなくてもいいから、人生全体で見て思ったときにバランスが取れていればいいのではないかという境地にだんだんなってきました。
今、自分で考えているバランスというのは、10年間隔で見ています。このときには仕事よりも人生を重視した、このときには仕事に邁進した、というように、10年間ずつの単位で、私自身は人生全体のバランスを見ています。
さらに、これは常に思い出すことなのですが、迷う。本当にすごくあります。迷います。迷ったときに、本当に考えても考えても答えが出せなかったら、時間の期限がついているものを先に選ぶというのも1つの手なのではないかと思いました。
時間の期限がついていないものは、自分が60代、70代になってからでもできるのではないかと考え方を変えたときに、とても楽になれたのですね。今、みなさんにとってもシェアしたいと思っていることの1つでもあります。
最後に。この3年間のうちにテレワークをしたと言いました。アルメニアという小さな国へ夫の赴任に伴い、私は仕事から少し離れて前作を書いていたのですが。
そのときに先輩から、「テレワークでもいいから、国連の仕事に戻ってこない?」と言われて、パソコンとSkype、あと電話を通じた仕事というのをしました。また日本でも、イタリアに向けて日本に拠点を置きながら、テレワークを少しの期間やったのですね。
どんなメリットがあったのだろうということなのですが、本当に通勤が困難で仕事を続けることができない場合でも、仕事を続けることができるということは、やっぱりすごく重要なメリットだと思います。
これは女性だけの専売特許ではないのです。今、私の南アフリカの事務所でテレワークをやっている人は男性でして、彼はとっても頑丈な体をしているのですが、ある時アクシデントで足を怪我してしまった。それで彼がやったことというのが、やっぱりテレワークなのです。「会社は行けないけれども、頭は使えるからテレワークさせて」と言って。
テレワークは、決して女性だけのものではなくて、男性・女性ともに使えるものなのだと思います。これは会社側からすると、やっぱり適材適所を確保できる良いメリットなのではないかとすごく思いました。
デメリットをあえて挙げるとすると、やっぱりこの阿吽の呼吸で仕事ができないというのはデメリットですね。どんなにIT機器を駆使しても、たくさんの人がワーッと集まって「僕はこう思う」「私はこう思う」という会議に、Skypeでは入りにくいですね。これは、やっぱり大変だなと思いました。
阿吽の呼吸で会話ができない。でもこれだけです。生産性が落ちるということは一切ありませんでした。逆にやっている側は「批判されるのではないか」というプレッシャーがどこかにあってやっていますので、絶対に怠けられないのです。生産性が落ちるということは一切なかったです。
最後はテレワークについてお話ししました。どうでしょうか? だいたい時間は今、いい感じですか? ありがとうございました。
司会者:今日は本当に寒い中、みなさんお集まりいただきましてありがとうございました。田島さんに大きな拍手をお贈りください。
(会場拍手)
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