若き2人の経歴

ー最初に自己紹介をお願いします。

龍崎翔子氏(以下、龍崎):小学校2年生ぐらいから、ホテル経営が大きな夢だったんですね。

⼤学に⼊った年の冬に実家でAirbnbをやることから始めました。その翌年に北海道の富良野と京都でホテルを始めて、今は5店舗ほど経営しています。

ホテルプロデューサーと名乗っているのは、私が創業したL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.がただのホテル運営会社ではなく、ホテルシーンに新しい⾵を吹かせるクリエイティブチームだから。ホテルの⽴つ街の空気感を織り込みながら、世の中に新しい可能性を提⽰するホテルを作っています。

寺下昇希氏(以下、寺下):リクルートライフスタイルに内定している寺下です。今はエンジニアでご飯を食べています。

具体的には、HTMLやCSS、JavaScriptといったWebのフロント。そして、サーバサイドで、Rubyを使ったり、Pythonを使ったりしていますね。

そのほかにはAndroidとiOSのアプリ開発と、水中ドローンというハードウェアを動かす組み込み開発のソフトウェア責任者です。以上、4つの職種・分野で開発をしています。

また、浅草と⼤阪にホテルを建設中の企業に、僕がITの顧問として入っています。オンラインとオフラインを混ぜた、「新しい出会いってなんだっけ︖」を再定義するソフトウェア開発者として参画しています。あとは友人と始めた喫茶店もやっていますね。

自分の価値観としては、人が求めるものを作り出すことが好きで、大学生と兼任しながらこの6つの事業を続けています。

起業を決意したきっかけ

ーお二人は19歳で起業しましたが、そのきっかけについてお聞きしたいです。最初は周りに起業家もいないタイミングでなぜ起業しようとしたのか。

寺下:僕は、大学1年生の夏にヒッチハイクで日本一周しようと思って、貯金残高を見たら1万円しかなかった。出発してちょうど4日目あたりで0円になってしまったんですね。お金稼がなきゃいけないというときに感じて生み出したアイデアが、「ケツバットをしてもらって100円もらう」。この事業アイデアで1ヶ月で約50万稼いだんですね。

-すごいですね(笑)。

寺下:僕にとってはとてつもない成功体験でした。まず、ヒッチハイクで日本一周することができた。人が求める体験を作ってお金を稼げるという成功体験ができた。この2つがあって「これはひょっとしたらイケるな」と思いました。自分でなにか考えて物事を生み出せばお金を稼げると確信しました。

そのあと、アルバイト先のオーナーさんから「ホームページを作ってくれたらお金あげるよ」と言われて、僕はその当時ホームページを作るスキルがあったので、それがきっかけになりました。「もっともっといろんな人に作ったらお金稼げるんじゃないか?」と思って、フリーランスでホームページ制作会社を起業しました。

龍崎:あくまでも起業はツールでしかないと思っていて、例えば、就職して自分のやりたいことを実現できるんだったら就職したらいいし、フリーでやってそれが実現できるんだったらフリーでやってもいいと思います。

私の場合は、自分の作りたいようなホテルを作っているところがなかったんですね。それに銀行などから融資を受けなければいけなかったので、結果的に起業という選択肢を取りました。起業が夢を叶えるための手段でしかなかったと思います。

ただ、今になって思うのは、同じような夢をもつ⽅たちを仲間にする上で、起業というのはとてもいい選択肢だったと思います。⾃分の夢を個⼈で追うのではなく法人という人格に託し、みんなで同じ大きな船に乗ることができるのは素晴らしいことだと思います。

「偶発的な出会い」を盛り込んだホテル

-龍崎さんの「ソーシャルホテル」というコンセプトは、どこから着想を得たものなんですか?

龍崎:はじめにやっていた富良野のお店ってもともとペンションをリノベーションしたものだったんです。ペンションブームの頃に作られたものだったので築30年も⽴っていて、かなり傷んでいました。壁が薄かったり、お風呂が狭かったり、設備上のビハインドがある中でどうやってお客さんの満足度を上げようかというのをすごい悩んでいた時期がありました。

私と母の2人だけでやっていましたので、食事の内容をとびっきりがんばれるわけでもないですし、送迎などをかなりの頻度でやってあげることもできなかった。富良野はリゾート価格なので、高いお金を頂戴してるのにもかかわらずどうしようって悩んだ挙句、試しにレストランに無料のバーを作ったんですね。

初めのうちは一生懸命お客さんの相⼿をしたりして、無料のお酒を楽しんでいただいたのですがある時、フロントが忙しくバーで接客が⼗分できなかったのにお客様がとっても喜んでいらっしゃったことがありました。

初めは不思議に思ったのですが、お客様はお酒を無料で飲めるから喜んだのではなくて、バーの空間内でお客さん同士がいつのまにか仲良くなってそこでの偶発的な出会いや情報交換など、お客さんにとってのポジティブな予定の不調和がものすごい満足度を高めているんだということに気づきましたね。

ペンションやゲストハウスだからこそ実現できるような空気感だということは理解しつつも、その空気感をホテルでどうやって再現していくかが自分たちの課題かなと思っています。

そういう出会いを実際に生み出せるような場としてのホテルという考えで、「HOTEL SHE,KYOTO」はソーシャルホテルというコンセプトで作られましたね。

副業6つを抱えながら、なぜリクルートに?

ーここまでお互いの起業についてのエピソードをお聞きしましたが「企業に入って働くことのメリット」を、お話しいただければなと思います。

寺下さんは副業を6つやっていて、なぜリクルートに入ろうと思ったんですか?

寺下:企業に入るメリットとして、3つ学べることがあると思います。人の育て方と、組織の育て方、事業の育て方です。

まず人の育て方。リクルートに関してはすごく顕著なんですけど、みなさん仕事をすごい楽しんでる。そして自ら課題を探す。どう解決するかも考える。

「なぜ楽しくやってるんだろう?」と思いましたね。というのは、自分で起業して人を採用する立場になってから、そういうことができる人が少ないと感じたからです。

起業家特有の性質だと思うんですけど、自分がなんでもやってしまうため、人に任せることが苦手な人が多いと僕は考えていました。そのような人材の育て方をまず知りたい。

龍崎:うん、そうですね。わかります。

寺下:人に仕事を任せるのって本当に難しいんですよね。

起業すると「視座」が落ちる?

-そういった課題感は、龍崎さんもありますか?

龍崎:そうですね。私たちの場合は、転職組の方たちが入ってくださいました。私も会社で働いた経験が少しあったので、そこはカバーできた。

逆を⾔えば、その経験がなかったらやはりやりにくいです。⾃分が企業に⼊って、専⾨的なマーケティングなどの業務内容を軽く知っておいて、組織運営のあり⽅を知った上でのほうが事業もやりやすいかなというのは思いますね。

私たちの場合はその上でさらにほかの企業さんでの経験がある⽅が⼊ってくれたので、そういう意味ですごいより多⾓的に⼈・事業・組織の育て⽅などをパワーアップできたと思いますね。

私が思う企業に⼊るメリットが、起業すると組織内での⾃分個⼈の影響⼒を強めることができるのに対し、企業に⼊ったほうがより影響⼒の⼤きい仕事ができることですね。

起業してしまうと「視座」が落ちるんですよ。起業してる⼈のほうが意識が⾼く、より遠くのものが⾒えてるように外から⾒えると思います。だけど、とくに中⼩の起業、⼩さいところからスタートアップすると、⽬先のことしか⾒えなくなってしまう。現場の仕事と、⾃分の半径数メートルのものしか本当に⾒えない。

そこを回すのにまず精⼀杯になってしまう。「その先、この仕事がどこにつながるか」「本当はもっとこうしないといけないんじゃないか」など、そのへんの視座がかなり落ちてしまいます。

そういう意味で、企業に⼊って、企業のベースに乗ることは、その⼈の能⼒やビジョンをより遠くまで⾒えるようにするために、すごく⼤事だと思いますね。