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プロデュースおじさんの組織論。(全8記事)

世の中の役に立つことは“通過点”に過ぎない greenz代表の「いい仕事」の定義

2017年11月21日、Tokyo Work Design Week2017のトークイベントとして開催された「プロデュースおじさんの組織論」。NPO法人グリーンズ所属のプロデューサー小野氏、人気ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコム代表の青木氏、発酵デザイナーの小倉氏が、働き方と組織論について本音で語ります。最終回となる今回は、参加者からの「仕事や働くこととは?」という質問に答えて、いい仕事の仕方や魅力的な企業の在りかたについて話し合いました。

仕事という名の‟作品づくり”がモチベーション

小野裕之氏(以下、小野):ほか。

青木耕平氏(以下、青木):これ誰もいないと、コワーキングの話に戻っちゃうんだけど。

小野:まだ10分ある。あと5人ぐらいいけますね。

小倉ヒラク氏(以下、小倉):5人もいけないよ、ぜったい。

青木:じゃあ、出尽くしちゃったな。コワーキングの話するしかないかな。ああ、いた。

小野:ありがとうございます。

青木:やっぱりみんなで協力の精神がね、こういうときに手を挙げちゃう人がいるんだよね、絶対。

小野:3人がかわいそうだし。

青木:責任感でね。ありがとうございます。

小倉:ありがとうございます。

小野:がんばって答えます。

質問者7:いや、責任感じゃなくて(笑)。もう24時間聞いていたいぐらいのおもしろさなんですけど。

小倉:いいですよ、お世辞言わなくて。

(会場笑)

小野:24時間しゃべれますよ、言っときますけど(笑)。

小倉:おじさん、お世辞言われると調子に乗るからやめてください(笑)。

質問者7:いろいろおもしろすぎて。最終的にお聞きしたいのは、みなさんにとって仕事って何なのかな? って。働く、でもいいんですけど。

小倉:ああ、いい質問きたね。拍手してみようか、みんなで。

(会場拍手)

質問者7:もうこれは、粘着質ではなく、ひと言でバシッと聞きたいな、と。

青木:そういうお題設定いいね。

小倉:うわあ、難しいな、これ……。

青木:ひと言、僕じゃあ、最初に言っていいですか? わりと得意分野? なので、整ってるんで。

小野:早い(笑)。

青木:たぶん、今この時代に起業したりする人って、昔だったらバンドやってたやつとかなんですよ。僕は45歳なんですけど、昔、僕らが10代のころだったらバンドやってたようなやつが、今けっこう起業したりしてるんですよね。

僕も実は、若いころはバンドをやって、CD作って売るみたいなことをしてた時期もあるんですけど。会社をやってるのもそのときに音楽やってたのも、ぜんぜん一緒の感覚で。要はたまたま、例えばギターやドラムみたいな楽器というツールが、お金や組織というツールに変わって。

やっていることは、やっぱり作品づくりかなと思っています。だから、「仕事とは何ですか?」というと、自分が思い描いている、「こういうのが美しいよね」「こういうのがかっこいいよね」というものをかたちにして、ドヤるわけじゃないですけど、「どう?」っていう。

「ちょっとみんな見て、どう思う?」という感じで見せたい。そういうことは、たぶん作家とか絵を描く人とか、映画を撮る人みたいに、何らかの作家性のあることをやる人たちに共通しているんだと思うんですけど。僕の個人的な仕事に対するモチベーションは、やっぱりそれですね。

建前をクリアした上で趣味に走る

小倉:このあいだ、僕の母校の早稲田大学で、キャリア教育に関する講演をしたんだけど。そのときにお話したのが、「あなたにとって仕事って何ですか?」って。就活生や社会人3~4年目の20代の子が、絶対に言うのは「人の役に立つことです」とか、「社会の役に立つことです」。そういう答えが、模範として求められる。

しかしそれは通過点にすぎない、という話をしていて。僕が思うのは、人の役に立つ、社会の役に立つっていう建前をクリアしたうえで、自分の趣味に走るっていうのが、いい仕事の仕方だと思うんですよね。

青木:そうだよね。

小倉:建てつけ、役に立ってる体なの。でも本人は、本当に趣味。そういう状態の二枚舌を使えるというのが(いい仕事の仕方)。やっぱり二枚舌の使い方が粋なのが、おじさんの唯一の生存価値なので。

小野:はっはっは(笑)。二枚舌の使い方が粋。

小倉:うん。なんか、この二枚舌の使い方は品が良いなっていう。もう愚直にはいけないので、おじさんの品格ってそこしかないから。

(一同笑)

小倉:でもね、お姉さんも今はうら若い乙女ですけど、そのうちおばさんになっていくと思うので。なんかこう、いろいろ社会に、体のいい建てつけをつくりながらも、実際は自分の趣味を突き詰めてるとか。自分の個人的なライフワーク的なミッションを、実はコツコツ掘ってるみたいな状態の、二枚舌が美しい。そういう状態をつくっていくのが、いい仕事の花の咲かせ方かなって僕は思ってます。さあ、小野っち。

小野:いやあ、おもしろいですね。ははは(笑)。そういう言い方があるのか(笑)。3人とも似てるから、ほぼ同じことを言葉を変えて言うかたちになっちゃうんですけど。

僕がgreenzとか、その他の会社をやってるのって、基本はやっぱり経済的に成立させづらいっていうことが美しさを生むために必要っていう。きわどいところを攻めないと美しくないって思ってるので。ギリギリのラインを攻めるって、綺麗になるためのコツじゃないですけど。なんですかね、美容の講座ですか? 今日これ(笑)。

(会場笑)

でも本当にそうだと思ってて。盤石なところにコマを置いたりしても、あんまり美しさは感じないじゃないですか、人間って。僕は、経済的に成立させづらいっていうところをおもしろがれるので、1個強みだなと思ってて。

それが生存可能な状態にする。しかもそれが保存ではなくて、ちゃんと経済性を持っているっていう。僕がgreenz以外にやってるもう1社って、日本の伝統工芸と言われる職人さんに、ジュエリーをつくってもらうプロダクトの開発をやってるんですけど。

それも、日本の伝統工芸って守るべき存在でしょ? って言われるのが嫌なんですよね。必要だから工芸品でしょって。だって工芸品って日用品って意味があるんだよ、みたいなことを思うわけですよ。で、プロダクトのデザイン性からすると、ぜんぜん王道じゃないんですよね。

きわっきわを攻めてるわけですよ。こんなの買う人いるの? みたいな世界。その状態をつくり出すと、僕は綺麗だなって思うんですよね。その状態が成立してることって。

スタジオジブリとgreenzの共通項

小野:大きい話で言うと、僕はそれをけっこうジブリに感じるんですよ。なんであんなに宮崎駿とか高畑勲のように、10年に1本とかしかつくらない映画監督がですよ、乗りこなし不能じゃないですか。きわどいですよね? 常人かどうか。もしかしたら廃人の可能性もありますよね。にも拘わらず、興行成績……。

小倉:ログミー入ってるよ?

小野:おっ……。興行成績(笑)。

小倉:ログミー、今は残してくださいね。

小野:日本で、(興行成績が)何位とかに入ってるわけですよ。あのきわどさを生んでいるのはすごくおもしろいな、と思ってて。やっぱり、経済的に成立させづらいものを継続可能なかたちにし、しかも経済行為として成り立ってる状態を、どうやってつくるかっていうのは、僕にとってはすごく仕事の醍醐味で。

それしかやってないです、僕は。さっきのgreenzやってるよとか、ものづくりやってるよとか、飲食店やってるよっていうのもあるんですけど。きわっきわの状態を攻めきるっていうことにたいして、もうなんか、僕はおかしくなってるんでしょうね。

(一同笑)

やっぱり、僕はそこに美しさを感じるんですよ。美術作品を見るように、「この状態ってすごい美しいな」と思って。結果論としては、継続可能なかたちにすると言ってる限りは、PL(Profit and Loss statement)上とかBS(Balance sheet)上に向き合わなきゃいけないんですけど。

それはたぶんツールにすぎす、すごい莫大な金持ちになってみたいとは思わないし、お金があれば新しい事業をつくることに、すぐに貯金を切り崩すタイプなんですよね。もうその性に従うしかないので、きわきわを攻めてる。僕はだいたいビジネスパートナーとやるんですけど。

そのパートナーは、攻めている人たち。僕は守りの部分とか、その経済の部分をつくるのは得意なので、いっしょにやっていこうぜ、みたいな感じで。だから、作品性のある仕事を、いかに生み出していけるかっていうので。

成熟社会って、何回も言ってますけど。幸せの総量が増やせるかどうかは、決まってきちゃうんじゃないかとすら思ってて。みんななんか、奇をてらったかたちで、私のやりたいこととか僕のやりたいことって変わってるんですよ。そうじゃなくて。

それが本当に美しいと思ってるのかどうかみたいな観点でやってみると、次のステップが見出せそうだし。自分に美しさが見出せないというふうに割り切るんであれば。

小倉:小野っちさん、小野っちさん。あと5分。あと1人だよ?

小野:粘着でもいいって、ね(笑)。経済性の部分を成り立たせるほうに、自分のポジショニングをとってみると、曖昧なものを成り立たせるのは、やっぱり難しいですよね。

青木:じゃあ、ラス1。

小倉:ラスト1人。

青木:締めの。

小野:言いっぱなしですみませんね。

青木:責任感あるなあ。

小倉:じゃあ、いってみよう。

収益を出している企業は、すべて公益事業

質問者8:今すでに自分のなかでは、小野さんにはある程度の哲学とか、ある意味でアート性の、本当に切れ端みたいなものを聞けたと思うんですけど。

残りのお二人、青木さんとヒラクさんにそれぞれ、社会、ある意味ソーシャルデザインみたいなところで、ちょっと哲学とアート、そして今関わってる事業とか、目指すべき社会との関わり方をお2人がどういう立ち位置でこれからも関わっていきたい、とか。

今こういう事業を考えているとかでもいいんですけど。今までの関わり方、そして変わってない軸っていうのをお聞きしたいな、と思っています。お願いします。

青木:答えられる気がしないですね……。

小野:ははは(笑)。

(会場笑)

青木:ただ、1個だけ。すべての営利企業、すべての収益が出てる企業は、すべて公益事業です。例えばスーパーマーケットを経営してる人がいて、そこがなくなると困る人がいるなら、それはもう公益事業ですよね。

だから、ソーシャルな事業とかソーシャルじゃない事業っていうのはなくて。全部の収益事業が、そこに価値を感じてお金を投じている人がいる、という前提において言えば、僕は公益事業だと思っているので。自分ができることで、お客さまを喜ばせられることを、とにかく愚直にやっていきたい。以上。

小倉:おお。

(会場拍手)

小野:おお(笑)。こういうシンプルな言い切りをね、求めてるわけですね。

小倉:僕、最後に往生際が悪いこと言っていいですか?

小野:いいよ。

小倉:今、完ぺき迷子になってて。

小野:迷子って、ヒラクくんがね。今ね。

小倉:僕がね、そう、迷子になってて。事業とか経営するの好きだったんだけど、今はとにかく微生物が好きすぎて、ちょっと頭がおかしくなってんだよね。だから今までは、こういうことで社会の役に立ちたいとか、目立ち?たいとか思ってるけど、最近なんか、目の前の微生物に向き合うことで時間が過ぎてっちゃうから。何もメタ認知ができないんだよね。

だから結局、経営者って、ある種のメタ認知をする人じゃないかという。だから、人々がこういう活動をしていて、そのなかでどういう価値が生まれていて、それをどう流通させたらどういうマーケットができるのか、っていう話になるんだけど。

5年後わかるようなことはやっちゃいけない

小倉:この3人がはじめて会ったときってみんな経営者で、そういうメタ認知をしてるんだけど、僕はそのメタ認知ポジションから外れちゃって、自分がただの微生物おじさんになってるから。目指すべき社会が何なのか、とか考えてる暇がない。すみません、ぜんぜん答えになってないんですけど。

だから、ただただ毎日、微生物とは何なのかとか、その生態系の働きとは何なのか、みたいな。バイオテクノロジーとは何なのかって言ってるうちに、時間が1年、2年と過ぎていて、気がついたら80歳ぐらいになって。すごい、いいおじいちゃんになってたらいいなって思ってるので。よくわからないなって思います。

あとでみんなに、僕はどうしたらいいですか? って、ちょっと聞いてみたい気持ちもあるんですよね。よくわかんないですけど。まあ、なんかね……それでこの間、鶴岡の慶應義塾先端生命科学研究所っていうところに、ちょっと呼ばれていて。そこで富田勝さんっていう、シンセサイザー奏者の富田勲さんの息子さんが、今すごい有名な世界的な生物学者なの。

そこに行って、いろいろ話したときに、やっぱり研究計画(の話をしました)。例えば、3年後どうしますか、5年後どうしますっていう事業計画は、いっぱい助成金を取るから求められるんだけど。富田さんが言ってたのは、「5年後わかるようなことは、やっちゃいけない」と言っていて。

なんなら、今の状態だと3年後、何か計画を出せるようなことも、それをやってる時点で自分は負けてるなっていう感じがする、と。だから1年後、2年後もよくわからない、これやったらどうなるかわからないっていうことに張り続けることしか、本当に未来を開いていくことはできないんだ。っていうふうに力強く言ってたので、僕もその富田さんの言葉を丸パクして、今お返しして終わりにしたいと思います。

(会場拍手)

小野:はい。以上です。ということで、月曜日いやいや話からはじまり、大企業あるある話と、スピードってどうなんですか問題と、あとは仕事って何なんですか、みたいな話もしましたし。あと、ドヤッみたいな話もして、最後ソーシャルって何ですか? みたいな会話で、今日の2時間のトークを終わりたいと思います。

あとで、個別で聞いていただくことも可能なので、ご興味があれば声をかけてくださいませ。それでは、このあたり、最後のひと言とかいらないですよね? はい。プロデュースおじさんの組織論ということで、またどこかでお会いしましょう。ありがとうございました。

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