Carの発音で出身地がわかる!?

西澤ロイ氏(以下、ロイ):では、イギリス英語プチレッスンということで、お届けしたいと思います。1つ目のポイントですね、車を発音すると、出身地がわかってしまうというお話なんですけども。僕だったらCar=カー(r音の部分で舌を動かす)って発音するんですよ。これを(イギリス英語で)発音するとどうなりますか?

小川直樹氏(以下、小川):それアメリカ英語の発音ですよね。舌が動いている感じでCar=カー。これはアメリカ英語とくにr=アールというのはアメリカ英語の特徴。だから、Car=カーって舌が動いている状態の発音というのはアメリカ人っぽいなという感じがするわけ。それに対してイギリス人だったら、Car=カー。(口を大きく開け気味に)最後にr=アールという音がないんですよ。すごいすっきりしているの。

ロイ:発音しやすいですよね。(イギリス英語の発音で)Car=カー。

小川:そう。(イギリス英語の発音で)Car=カー。ただ、口をすごく大きく開けないといけないんです。

ロイ:うん。

小川:だから、アナウンサーさんとか、発音の得意な人はけっこう口は開くので、(イギリス英語の発音で)Car=カーという感じがすっきり出るわけです。ところが、日本人ってあまり口が開かないので、口の開きが小さくなっちゃう。だから、(口をあまり開かないで)Car=カー、Car=カー、Car=カー。このぐらいの感じになっちゃったりする。

ロイ:うん。

小川:このぐらいの感じだと今度、「あっ、イギリスの標準発音じゃないな」という感じになっちゃう。

ロイ:うーん。

上村潤氏(以下、上村):そこで変わってくるんですね。

小川:変わってくるんですよ。だから例えば、こっちが(口をあまり開かないで)Car=カー、こっちが(口を大きく開いて)Car=カーというと、これでネイティブの人たちは、これはイギリスの人だな。ちゃんとした人だなという感じがする。でも、(口をあまり開かないで)Car=カーって言っちゃうと、「あっ、田舎の人かな?」あるいは、オーストラリアは(口をあまり開かないで)Car=カー。

地方で言えば北イングランド。そっちは(口をあまり開かないで)Car=カーという発音になっちゃうの。それで(口をあまり開かないで)Car=カーなの? (口を大きく開いて)Car=カーなの? あるいは(アメリカ英語の発音で、最後に舌を動かして)Car=カーなのということで、それだけで出身地がけっこうわかっちゃうわけですよ。

上村:はあ。

ロイ:けっこう、発音で教養って見られますよね。

小川:そうですね。とくに、イギリスに行くと、この人の発音が良いか悪いかってことで扱いが変わってくるので。

ロイ:下町発音とかよくありますね。日本的に言うとタクシーの運転手が「しだり(左)」って言うみたいな(笑)。

小川:そうですね。そういう感じですね。

上村:ハヒフヘホの発音が(笑)。

ロイ:そうそう。

疑問形で語尾を上げない

ロイ:じゃあ、2つ目のポイントにいってみましょう。次はイントネーション。これがアメリカとイギリスでぜんぜん違うというお話なんですけども、ちょっとこれを僕がアメリカ発音で言ってみると。Would you like some? みたいに疑問文ってYes or Noの場合、最後は上げるって習いますよね。これをイギリス発音でお願いします。

小川:Would you like some?(最後を下げる)

ロイ:ぜんぜん違うでしょ。

小川:アメリカ英語だったら最後は上げるのが普通なんですよね。Would you like some?(最後は上げる)っていう感じになる。ところが、イギリスの人っていうのは最後は必ずしも上げないので、Would you like some?(最後は下げる)という発音になっちゃうんですよ。だから、例えば他の。

ロイ:もう1個いきましょうか。

小川:こっちいきましょうか。これけっこうわかりやすいんですよね。

ロイ:じゃあ、僕から言っていいですか? Excuse me. Is this seat taken? (最後は上げる)

小川:最後は上がるわけですよね。アメリカ英語は今、ロイさんが言ったようにExcuse me. Is this seat taken? って、最後が上がるというのがけっこうわかりやすい特徴。それに対してイギリス英語だと。例えば、こういうのを言われると。席が空いてますかって言われた時に、Excuse me.(最後は下げる)Is this seat taken.(最後は下げる)だから、何か上がらないの。そうすると何か聞かれている感じがしないじゃないですか。

上村:ええ。

小川:むしろ、怒られてるの? みたいな。イギリス英語ってけっこう冷たい感じがするという人が多いんですけど、それは今みたいな上昇のイントネーションがあまり使われてないみたいなところ。これが大きな特徴なんですよ。

ロイ:うん。まあちょっと、ぶっきらぼうというか。

小川:だから下がっちゃうとけっこう冷たい響きになるんですね。上がるっていうのは優しい響きになる。アメリカ英語は上がることが非常に多いので、わりと優しく響くという感じがあるんですね。

イギリス英語を感じるためにおすすめな映画

ロイ:いや、でも本当今の小川さんの発音を聞いて「うわっ、ネイティブだな」って思うんですけど、身につけるのって本当にものすごい努力がいると思うんですよね。何かすごい勝手に感心してました(笑)。

(一同笑)

ロイ:感動というか「うわっすげー」みたいな(笑)。

(一同笑)

小川:僕はもうマニアだから、音声学の道に入ったということは、そのマニアの道を極めたいということなんですよね。

上村:素晴らしい。何か好きなことを1つ突き詰めるって何かすごくロマンというか、本当それ以外脇目も振らず突き詰めたいという気持ちは。

ロイ:ちなみに、今みたいなイントネーションとかを味わうために、いいイギリス系の映画とかっていうと、『ハリー・ポッター』とか?

小川:そうですね。例えば『ハリー・ポッター』とか、あと上品な英語だったら「王様のスピーチ」でしたっけ?

上村:ああ『英国王のスピーチ』ですね。

英国王のスピーチ (字幕版)

小川:ああ『英国王のスピーチ』ね。それそれ。コリン・ファースはすごく発音がきれいですよ。

上村:素敵な俳優さんなんですよね。僕も大好きです。

ロイ:あとイギリスの映画というと『Trainspotting』とか思いつくんですけど、あれどうなんですか?

トレインスポッティング(字幕版)

小川:あれはけっこう、訛がきついですよ。だから日本人にとって、イギリス人以外にとって、訛がきついがきつい英語は、まず聞けないですね。アメリカ人でもけっこうわからないと思いますね。

ロイ:なるほど、なるほど。

上村:となると、一番のおすすめは『英国王のスピーチ』ということで。

小川:あと、あまり英語が得意じゃない人はたぶん、Mr.ビーンがいいんじゃないですかね。

ロイ:なるほど、なるほど。

小川:ずっと黙ってますからね(笑)。

(一同笑)

ロイ:発音が聞けないじゃないですか(笑)。

小川:いやいやいや。イギリスの雰囲気わかりますよ(笑)。

ロイ:なるほど、なるほど。イギリスのユーモアとか。なるほど。

イギリス英語では「t」はどう発音する?

ロイ:では、プチレッスン3つ目いきましょうか。今度はtの発音ですね。

上村:tの発音?

ロイ:さっきも水=water.アメリカだとwater=ウァーラーみたいな感じでtがラなのかダなのかわからないように変化するんですよね。でも、イギリスだとwater=ウォーターみたいな感じで、ちゃんとtを発音するんです。まずは、この英文をいってみましょうか。アメリカ英語だとThat's better.(ベターの発音はベラー)みたいな感じでベラーみたいな感じで発音します。

小川:イギリス英語の発音ではThat's better.(ベッターのようにtをハッキリ発音する)「スカッ」という感じですね。ところで『Trainspotting』で思い出したんですけど、『Trainspotting』に限らず、イギリスの多くの大衆的な発音は、逆に「t」を発音しなくなるということがありまして、どういうことかというと。That's better. (ベッアー)って言うんですよ。

ロイ:あるある。

上村:あるあるなんですか?(笑)

小川:そんな感じに変わっちゃうんですよ。だからアメリカの人もけっこう苦労しちゃうんです。聞けないっていうことでね。

ロイ:もう1つですね。これnot at all. これアメリカ発音をちゃんと身につけたい人は勉強するんですよ。not, at all.(ナアラロー)、not at all.(ナアラロー)って、上手く舌が回るように。No, not at all.って練習するんですけども。これはどうなりますでしょうか?

小川:これはね、No, not at all.(ノウ、ノットトール)

上村:not at all.(ノットトール)

小川:ああ、いい感じですね。

上村:ああ。

小川:けっこう、短い感じというか、テキパキした感じで発音するんですよ。tを強く発音するので、口をかなり丸めるんですよ。not at all.(ノットトール)

ロイ:not at all.(ノットトール)

小川:そうそう。そういう感じですね。後は、Noも発音で上品かどうかわかるの。Noというのは上品な人はNo(ネウ)に近いで発音するんですよ。No(ネウ)not at all.(ノットトール)

ロイ:No(ネウ)、No(ネウ)

小川:そう。そうするとかなり上品な感じになるんですよ。

上村:はあ。

小川:ノーって伸ばしちゃうと、イギリスだとかなり田舎っぽい感じになって、ちょっとアメリカ人の発音はノーに近いから、イギリス人から見ると、ちょっと田舎っぽいかなっていう感じになっちゃうっていうのはありますよね。

ロイ:なるほど。

上村:今のお話を聞いてたら、1つ思い浮かんだ映画があったんですけど、『007』のM役の女性の方がいらっしゃるんですけど、その方の発音とすごく似てたかなって、今聞いてたらそんな感じを思ったんですけど。

小川:そういえば、僕も言われたことがありますね。ヒュー・グラントに似ているとか(笑)。

(一同笑)

上村:ほう(笑)。いいですね。ヒュー・グラント。日本で言えば福山雅治ですね(笑)。

(一同笑)

上村:海外に出ればヒュー・グラントだわ。

ロイ:なるほど。

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