若者たちが一番信頼するのは「友人の情報」
SNSで影響を受けやすい発信者の変遷を追う

著者と語る朝渋『シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~』著者・天野彬さん #5/6

渋谷・道玄坂のBook Lab Tokyoで毎週開催されている、会員制朝活コミュニティ「朝渋」。2017年12月13日に開催された恒例企画の「著者と語る朝渋」では、『シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~』の著者として、電通メディアイノベーションラボの天野彬氏が登場。モデレーターの中村氏らと若者のSNS事情を読み解きます。(写真撮影:矢野拓実氏)

情報は信頼第一、信頼は友人第一

天野彬氏(以下、天野):最後に、本の中でけっこう熱く、キーワードでも挙げているのが「シミュラークル」です。

シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~

シミュラークルというのは、シミュレーションとかそういう言葉に近いんですけど、模倣されたものとかコピーされたものとか、そういう意味合いを持っている用語です。

ちょっと前段の話をすると、さっきと同じ調査の結果ですが、SNS上で影響を受けやすい発信者としてどういう人がいるかを聴取したときに、企業やブランドのアカウントとかネット上の有名人、いわゆるインフルエンサーみたいな人も高いんですけど、やっぱり一番高いのは友人なんです。

だから自分と同じような立場の友人がなにしてるのかとか、そういう人がなにをシェアしているのかによって態度変容が一番起こるというところが、SNSってやっぱりそういうものなんだなと改めて気づかされて、僕はおもしろいなと思いました。

さらにほかのユーザーが、例えば今は写真や動画をシェアすることが盛んですが、シェアされた写真と似たような場所に行く、旅行に行くとかイベントに遊びに行くみたいなのが30パーセントを超えていたり、似たようなものを買ったり試したりする人も3割以上だったり。

中村朝紗子氏(以下、中村):友達が行ってると安心して間違いなく、という信頼が発生するんでしょうね。

天野:そうなんですよね。おっしゃるとおり。それは自分にひきつけてもまさにそうだし、これは複数回答で重複しているので、それを除くと、77.6パーセントがほかのユーザーや写真や動画によってなんらかの消費につながる態度変容を起こしていることがわかりました。

ボトムアップでトレンドが生まれていく

天野:これが僕はポイントだと思っていて、上にも書きましたけれども、メディアからの情報でトップダウンというよりは、周りがなにをしているのかというボトムアップでトレンドが生まれていく。そういう世の中になってきているんだなと思ったりしたわけです。

中村:そうですね。例えばローラさんが化粧水で「うるおい!」とか言ってても、「うん、かわいい」ってなりますけど、それだけじゃない。肌質もいろいろありますし、女子がそれで正解、1つの正解だけじゃなくなったってのはありますよね。

天野:そうですね。

中村:使用感も見たいし、絶対ググり……タグりますね。

天野:まさにそういうことが起こってきていると感じています。

SNSの「あるある」=シミュラークル

天野:そんななかで、SNS上だとよくある写真、あるある写真というのを非常に見ると思うんですね。いろんな写真がありますが、これを僕はシミュラークルと言っています。つまり、みんなが真似したりなんとなく似たようなものを撮ってしまうような、パターン化したビジュアルのことですね。

中村:なるほど。

天野:そういうシミュラークルがSNS上ではたくさん生まれてきて、それを見た人がそれに触発されてまたそこに旅行に行ったり、お店に行ったり、イベントに行ったりすることが非常に増えている。

中村:確かに型がありますよね。スターバックスとかみんなこうやって撮るとか、誰が始めたんでしょうね。

天野:そうそう。ということが非常に増えていくと。

中村:なるほど。

天野:そういうユーザーの憧れだったり「こういうことをしたい」というのを反映した体験が拡散される。それがシミュラークルだと僕は言っています。

マスメディア、インフルエンサー、シミュラークル

天野:それでこのチャートをそういうものを含めて、今の時代の情報の広がり方みたいなことを整理したんですが、やっぱりマスというのは今の時代でも強いわけです。テレビのCMで一斉に同じことをみんなが知ったりとか。

そういうかたちで伝えるのが大事な情報もあります。今日の天気とか株価とか。トレンドの情報も含まれるかもしれません。テレビが強いとか新聞が強いとか。

その一方で、インターネットが出てきて、インフルエンサーと呼ばれる「旅ならこの人」とか「料理ならこの人」とか分野ごとに強い人が出てきた。その人から発せられた情報が人に伝わっていくこともあります。

その一方で、この2つは情報の発信元が明確なんですが、シミュラークルという、さっきも「誰が始めたのかわからない」みたいに言ってくれましたが、そういうものが非常に増えてくる。

情報の発端はよくわからないけど、多くの人がそういう体験をコピーしたり似たようなことをすることで、他の人もそういうことをしたいと思うようにしていく。そういうシミュラークル型というのが現代では出てきてるんじゃないかと。

(スライドを指して)矢印に書いているんですけど、移り変わるというよりは、いろんなパターンが出てきて、それを……。

中村:プラスですね。

天野:そうですね。並行して起こるようになってきている。

中村:また複雑化していくわけですね。

天野:そうですね。とくに若年層だとシミュラークル的なかたちで情報が広がったりトレンドが起こったりすることが増えてきているんじゃないかなと思います。

中村:なるほど。

現代は記号的価値の段階

天野:じゃあなんでこういうのが起こるかというと、理由が2つあって。1つは、今日お話ししてきたように、ビジュアルで体験を可視化して誰でも発信できるようになった。ここ数年の話ですけど、非常に大きな変化ですよね。

もう1つが、これはスマホうんぬんよりもっと長いスパンでの話ですが、消費社会というものは成熟化していくと体験の記号的価値が上がります。僕はそういう言い方をしています。

記号的価値とはなにかというと、機能的価値というものとの対比で使われる言葉です。例えば5万円のバッグと50万円のバッグがあったときに、機能は一緒ですよね。モノを運ぶことです。別に50万円のバッグがモノを10倍運びやすいわけじゃない。

でも、そこでなぜ値段に差があるかというと、50万円のものに記号的な価値があるからだと一般的には説明されます。平たく言うとブランド価値みたいなことですね。記号というのはまさにブランドのことで、みんながほしいと思うこと自体が価値になる。

ブランドに表れているように、80年代からモノが余ってくると、そういうものが消費のトリガーになってきて。だからこそモノの水準での記号的価値が大事になって、ラグジュアリー産業みたいなものも発展してきたという流れがあるんですけど。

今はモノだけじゃなくてコトのレベルでの体験的価値、体験の記号的価値が上がってきていて、それがSNS上での「いいね!」だったりで測られるようになってきているし、それをみんなが求めるようになってきた。

だからこそシミュラークルが起こりやすくなってきている。これはやっぱりSNSが起こってはじめてこういうものが生まれてきているんじゃないかなと思っています。

インフルエンサーマーケティングが盛り上がっている

中村:今って「インフルエンサーマーケティング」という言葉をよく聞きますよね。お金を払ってPRのハッシュタグを書いてもらっておすすめしてもらうと。

でも私の肌感覚では、わりと「本当に使ってるの?」みたいな。ここだけの話ですけど、愛用シャンプーが1週間後に変わるInstagrammerとかいて、「え、それはないだろう?」って思ったりするんですよ。

やっぱり嘘をつかないこととか、企業としても自然なかたちでやってほしいってオーダー増えてますよね。目指したいのはたぶんシミュラークルだと思うんですけど、どうやったら起こせるんですか? なにか成功してる事例とかってあるんですか?

天野:ありますね。こういうのを組み合わせてうまく、とくに若年層への情報の広がりとかエンゲージメントの高さを実現した例があって。今日は時間の関係でスライド入れていないと思うんですけど……。

中村:いやー、聞きたいですね(笑)。

天野:お話ししたかったのですが、まぁ本を買ってください。

中村:しっかりしてますね(笑)。

天野:第5章の……。

中村:絶対ここが大事になってきますよね。

天野:なってきますね。

中村:ブロガーのステルスマーケティングが大問題になった時も、インフルエンサービジネスがもう熟すだけ熟してバーンって爆発みたいな、その直前まで来てるんじゃないかという気もするんです。

もちろんいいプロモーションもあるんですけど、信頼のある情報を探してタグってたのに、そこに嘘というか、おすすめさえもわかりづらくなってきているところがあるので、本当にこういうことを理想的だと思う中で、第5章にそのヒントがあるということで。

天野:ありがとうございます。実はインフルエンサーマーケティングみたいな言葉もこの1年盛り上がっていますし。

中村:盛り上がりましたね。

天野:来年もすごく重要です。「インスタ映え」が新語・流行語大賞を獲りましたけど、もう1個、三省堂という辞書のメーカーも「今年の新語」を発表しているんです。それによると大賞は「忖度」で一緒なんですけど、2位は「インフルエンサー」なんです。

「インフルエンサー」という言葉はマーケティングとかコミュニケーションの領域でこれまでもずっと使われてきてましたけど、それが一般にも流布した、そういう年だったとそこでは結論づけていて。本当にそのとおりだなと思います。

一般人からもっとインフルエンサーっぽい人がこれからも出てくるはずだし、ちょうどそういう調査も今やっているので、すごい重要かなと。さっきおっしゃっていた懸念とか、じゃあ実際ユーザーはどう思っているんだろうとか、そのあたりも調査して来年ぐらいになにか出したいとは思っています。

『攻殻機動隊』に影響を受けた

天野:本を書いた流れでいくと、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』という2002年のアニメがあります。本にも書いてるんですけど、僕はこれにかなり影響を受けたんです。

SFのアニメで、情報社会が進むとどうなるかをけっこうリアリティをもって描いていて。そこで登場人物が「誰もが情報を発信していける時代になると模倣みたいなものがすごい起こるんだ」ということを言ってるんですね。模倣というのはコピーということですけど。

観たのは高校生ぐらいだったんですけど、それが情報社会の進展において大事なキーワードになるというのをその時から思っていて、本にもそういうエッセンスが入っているなと改めて思いました。

極端な話言っちゃうと、僕の本買わなくていいのでこっちを観てもらったほうがいいかもしれない。

中村:(笑)。でも、2002年の作品ですよね。

天野:そう。今だとDVDとか配信サイトとかで観られると思うので、2時間超ぐらいのアニメですけど、よろしければどうぞ。

中村:(笑)。

天野:まぁ、僕はこの作品のファンですね。

「盛る」機能もシミュラークル

天野:そういうシミュラークルみたいなものの広まりもすごいあって。(スライドを指して)これは海外の事例ですが、スーパーボウルというアメリカのイベントに合わせて、ビールかけみたいなもので、勝つとゲータレードをかける風習があるらしいんですね。こんな感じで。

それを模したSnapchatのフィルターですね。いわゆるマスク、動画フィルターと言われるもので。これをファンとかでスマホをかざすとみんなでバシャーってできる。それを撮ってStoriesにあげたり友達に送ったり、そういうシェアができるっていうものなんですけど、1.6億インプレッション。まぁ半端ない数字ですよね。

中村:そうですね。

天野:これはイベント自体が国民的なものだったり、ニュースで取り上げられたりとかいろいろあったとは思うんですが、やっぱりほかの人がやっているということがトリガーになってどんどん広まっていったという意味では、すごくシミュラークル的です。

こういうものが、写真もそうだし、今日はあんまりお話はしてないですけど、動画フィルターみたいなもの、リアルタイムで顔にいろいろ加工してくれたり、エフェクトでマスクをかけてくれる、そういうものも実は大事だと思っていて。盛るみたいな話で本の中では触れていますけど、そういう文化もこれからどんどん出てくると思っています。Instagramも実装していますしね。

中村:そうですね。

天野:みんな使ってるんですかね。

中村:フィルターですか?

天野:けっこう使っているかな。

中村:でも、盛りたかったらB612とかSnapchatにいっちゃいますね。

天野:やっぱりそっちですか。

中村:Instagram、ストーリーって色味が限定されていたり、ちょっと普通の画面より暗いですよね。どうして改善されないんだろうってすごい思う。

天野:なるほど。貴重な意見ですね。

中村:(笑)。

天野:そういうのも大事ですよね。

中村:やっぱり動画フィルターに関しては盛るのが大事ですね。オーガニックで自分の動画撮ってもどうしようもないので、ちょっと言い訳として、犬とかちょっと変な眼鏡がかかってないとあげづらい。かかってもあげづらいですけど。

天野:それはすごいわかります。日本的というか。

中村:言い訳がほしいんですよね。なにかしらの。

天野:わかります。そういう意味でも非常にこれからも可能性があるってことで、SNOWさんともお話ししたりしますが、今いっぱいコラボレーションしてますよって話もありますし。

シミュラークルを観光に応用

天野:(スライドを指して)これが最後のシートですが、同じ調査から、今後どういう動画フィルターを使ってみたいかという意向を聞いたものです。

利用意向が一番高いのは写真写りがよくなる、ちょっと盛れるフィルターで5割ぐらいなんですけど、これが高いのは普通というか当たり前なので、僕が注目したいのはこの赤で囲った3つ。

例えばフェスとかイベント限定で使えたり、観光地みたいな場所限定で使えたりという、スマートフォンの位置情報とリンクしたかたちでフィルターを提供するような、そういう機能への意向が高いというところが注目ポイントです。

実際にやられている施策も数多くありますが、その場所に行ってそこでしか使えないフィルターだったり、あとは盛るという体験だったりとか、そういうものへのニーズが高まっていくと思います。

それ自体がまたシミュラークル的に広がって、あるイベントだったり、ある観光地だったり、ある場所やお店だったりの認知を広げていく、人を呼んでいくということが起きていくと思っていて。こういう可能性にも今後注目したいです。

中村:なるほど。結局位置情報に先祖返りするわけですね。そこでマスクをしてるってことが物語るいろんなこと、その文脈になにか地方とか企業のメッセージが乗っかってくるんですね。

天野:そうですね。おっしゃるとおりですね。そういうところがポイントというか。

中村:ここにタグがついたりはしないんですね。

天野:あー……タグですか?

中村:でも、投稿はストックされない。SnapchatとかSNOWとかだと。

天野:そうですね。消えちゃいますが、でも今だとStoriesにも場所の情報を埋め込めますし、保存もできるようになったりしていきますしね。それを写真で撮ってシェアする人も出てくると思うし。こういうかたちでのシェアも今後可能性があると思っていたりします。

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