テクノロジーで中長期の生産性を導く有用性

岩本隆氏:さらに重要なのは、生産性というと、よく「なんでもかんでも数値で表すのはよくない。そういうことをするからイノベーションが生まれないんだ」のような議論もたまにされることがあります。

テクノロジーを使うと、実は短期の生産性はわかりやすいんですけれども、中長期の生産性も実はうまくテクノロジーを活用すると導いていけるので、イノベーションを生み出すためのテクノロジー活用をするツールも、これからたくさん出てくるんじゃないかなと考えております。

マーケットの全体像です。企業の人事を含めてユーザーさんがいます。その間に、今日登壇されるPwCさんのようなコンサルティングファームが入って、ツールを提供する会社があります。今、世界的に見ると「HCM(クラウド)アプリケーションベンダー」って言っていまして、だいたい今はクラウドでアプリケーションを提供しています。

HCMは「Human Capital Management」の略です。capitalといいますと会計用語で、バランスシートなどをみなさん見られている方はよくわかると思いますけど、バランスシートの「資本の部」がcapitalになります。

有形化できる「Human Capital」

人材は、今まで数値化がなかなかできていないため、無形資産、無形のcapitalだと言われていました。今はさきほど申し上げたようなデータでいろいろな人材を表していけるとなりますと、有形化できるのもありまして、今は「Human Capital」と言っています。

市場規模はグローバルでいうと1兆8,000億円ぐらいあります。ソフトウェアで1兆8,000億円というと、かなり大きなマーケットになると思います。ビジネス向けのツールの中では4、5番目ぐらいにマーケットが大きいと言われています。

かつ、実は成長率で見るとこの領域が一番成長率が高いため、今、テクノロジーのICTのベンダーはこの領域にM&Aをしながら参入してきています。マーケットのトップ4、5社は、IBMやOracle、SAPなどになってきます。MicrosoftがLinkedInを3兆円弱で買収して参入してきました。

統合的にマネジメントをしている会社は、いろいろな採用や育成、給与システムなど、さまざな人事のデータを統合的にマネージをしています。また、いろいろな領域で、例えば採用領域や育成や給与システムなどに特化した企業もあります。

人事といいますと、実はこう見ると領域がものすごく広くて、さまざまなプレイヤーが今参入してきていまして、かなり活況を呈しているところですね。そんな領域の広いマーケットになるかなと思います。

「パフォーマンスマネジメント」が有効

これを私なりに整理したのがこのスライドです。HRテクノロジーのさきほどのツール、いろいろなものが出てきているんですけれども、基本的にはこういったことかなと思っています。

どういうことかというと、ピラミッドの1番上は個々の人材ですね。個々の人材のことを今は「タレント」と海外では言われることが多くて。要は芸能人とかプロスポーツ選手みたいなものですね。人材が、サラリーマンがタレント化していっているんですけれども、この個々の人材をマネージするのをタレントマネジメントと言います。

真ん中は、さきほどエンゲージメントという話しましたけれども、真ん中のほうも今グローバルに盛り上がり始めていまして、組織とかチームをマネジメントするツールですね。これは「パフォーマンスマネジメント」と言っていまして、組織のリーダーが社員の個々のパフォーマンスをいかに最大化して、チームとしてパフォーマンスを最大化するかを、タブレットやデータを使ってマネジメントします。

スポーツでよく監督がタブレットを持って指揮していますけれども、あれに少し近い感じです。チームメンバーのデータがその都度揃っていて、最近だと動的なデータを取るようになってきています。そのため、その都度の行動を見てラインのマネージャーがアドバイスをすることもテクノロジーでできるようになってきました。

今まで、テクノロジーがないと、アポを取ってface to faceで会って、話を1時間聞いてその話の中から判断してアドバイスをしていたわけなんですが、そういう時間が短縮できる、頻度を高められるます。

一番下はさきほどのエンゲージメントですね。エンゲージメントは企業文化と表裏一体だと言われていまして、社員がいきいきと働くための企業文化をどうやって作っていくのかを改善するためのツールがいっぱい出てきています。

「パルスサーベイ」というプラットフォーム

「パルスサーベイ」という言葉をお聞きになったことがあるかどうかわからないんですが、パルスというのは心臓の鼓動の意味ですね。心臓の鼓動と同じような頻度でサーベイができるのが、今、クラウドを使ってタブレットかスマホを使うとできるようになってきているので、そういったパルスサーベイをやる会社が今増えてきています。

要は、今まで従業員満足度調査などは年に1回くらいしかやっていなかったのが、月に1回、場合によって週に1回できてしまいます。最近はAIなどのテクノロジーが進化しているので、全従業員がアンケートに答えると、その場で分析結果が出てきます。

そういったテクノロジーの進化の背景もあって、パルスサーベイが今すごく出てきます。その人材や組織を支えるためのプラットフォームとして、健康経営のような考え方ですね。

「Robotic Process Automation(RPA)」はソフトウェアのロボットです。先ほどお示しした低付加価値の作業は今RPAにどんどん置き換わっていっています。Excelのマクロみたいなものなんですけれども、そういったホワイトカラーの事務作業もRPAに変わってきています。

私どもに来る相談としては、最近はいろいろな部品や家の設計などでも実はRPAは使われてきています。単純作業ではあるんですけれども、もう少しレベルの高い単純作業まで今はできるようになってきました。

人事データを分析をして経営に活かす

もう1つはピープル・アナリティクス。これは、あとで申し上げますけれども、人事データを分析する組織を立ち上げて、常にいろいろな上がってくる人事データを分析をして経営に活かしていくことをプラットフォームとして持って、人材マネジメントをします。

欧米の企業はこういったことを一気にやる企業さんが多いです。「transformation」と言いまして、「変革」というような言葉ですね。transformationということで、一気にテクノロジーを活用して会社を変革することもされています。

日本国内のマーケットですけれども、どのようになっているかということです。2017年前半に、産業政策としてHRテクノロジーを取り上げていただいたこともありまして、働き方改革第2章のところでHRテクノロジーの重要性が高まっていますということです。

それもあって今HRテクノロジーの市場がものすごい伸びています。サービス提供企業は、1年前で100社超えていましたので、今だと150ぐらいあるかもしれないんですけれども、大企業やベンチャー企業、両方にものすごい提供企業が増えています。

市場規模は年率40数パーセントで成長しています。みなさん、いろいろな業界にいらっしゃると思うんですけれども、みなさんの業界で40パーセント成長している業界がたぶんないと思うんですね。それぐらい成長しています。

株式市場も反応しています。株式市場ではHRテクノロジー銘柄って最も株価が高くて、私おつきあいしている会社、1年で株価10倍になりました。IPOするスタートアップが増えてきました。

ユーザー側も、さきほどのtransformationみたいな一気に進める企業、これは欧米では多いんですけれども、日本はなかなかここまでやる企業というのは数えるほどしかいないんですけれども、ただ、やれることからやっていこうということで進めている企業さんが多くてですね。

今どこの企業さん見ても、さきほどのピープル・アナリティクスの体制を立ち上げている会社が今ものすごく急増しています。人事の横にデータサイエンティストを置いて、社内の人事データを分析しています。