2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
リンクをコピー
記事をブックマーク
アマテラス藤岡清高氏(以下、藤岡):それでは、そろそろVR事業のお話を聞かせてください。
多田英起氏(以下、多田):先にお話ししたように、VRとの出会いは鮮烈でした。初めてVRを見たときの衝撃は、アメリカでネットスケープに出会った時のそれをはるかに超えていました。大きな可能性も感じましたし、何よりもとにかく面白かった。
その頃、今の事業の大きな転換点となる出会いがありました。先程も話しましたが、僕たちはクラウドを初めさまざまな分野への投資を行っていました。その中の一つにO2O(オーツーオー、Online to Offline)もあったのですが、そこでアイリッジという会社を紹介され、小田社長とお付き合いが始まりました。
藤岡:アイリッジは2015年に東証マザーズ上場しましたね。
多田:その通りです。うちには高い技術があり、実はO2Oにも早くから目を付けていました。しかし、僕らは上場にいたっていなかった。しかし、出会った時はまだ数人の会社だった彼らはその後急拡大し、上場したのです。
「この差は何か?」。どうしても答えが出ず、アイリッジの上場パーティにうかがった時に、小田社長に聞きに行きました。
「アイリッジの上場はとてもうれしいし、僕の人生で一番楽しい日だけれど、同時に一番悲しい日だ」と伝えました。そして、現在投資しているVR事業について、どうやってアイリッジのように育てていけば良いかわからないと、率直に相談してみたのです。
すると小田社長は、「資金調達をやったらどうだ。資本戦略を考え、資金調達をしよう」と言ったのです。
藤岡:小田社長がおっしゃったことは、独立のすすめだったのでしょうか?
多田:そうですね。それをきっかけに、VRに特化した事業をスピンアウトするかたちでの独立を模索することになりました。
事業を拡大するためには資金が必要です。1年では2億円、2~3年やるとなると多分5~6億円は必要だと試算していましたが、間違いなく会社からは引っ張れないし、引っ張るべきではないものだと思っていると話すと、「だったら、外部から資金調達すれば良い」と、資本戦略を立てて下さいました。
藤岡:驚きました。上場企業の社長自らがそこまでやってくれたのですね。
多田:初期の資本戦略は、9割9分9厘小田社長が立てたものです。僕はタイトルから「(仮)」を外しただけです。僕はそこしかやっていません(笑)。あまりにも完璧で、口を挟む余地はありませんでした。
現在、僕らの仕事は全てその資本政策通りに進んでいます。
藤岡:独立初期の資金調達はどのようにされたのでしょうか?
多田:最初は小田社長から何社か紹介を受けました。そして、ベンチャーキャピタル(VC)から億単位の調達をしました。
藤岡:最初から億単位ですか! 明確なプロダクトがまだあるわけではなく、出荷者としてはまだまだこれからという状態ですよね。
多田:はい。技術のベースとビジネスのアイデアはあって、そこの2つを繋げるノウハウがないという状態でした。
そのため初めに出資の相談に行ったときはさすがに断られたのですが、次に別件でお会いした際に弊社の変化の速さを評価していただき、一転お願いできることになりました。
その他、元の会社APCや電通からも出資して頂き、次の段階に進む足固めができました。
藤岡:とても順風満帆な船出に見えますが、苦労したことはありましたか?
多田:新しく採用したメンバーがなかなか機能せず、かなり苦しかったです。
営業にしても開発にしても優秀な人材ばかりだったのですが、新旧メンバーの融合が上手く行かず、社内環境がみるみる悪くなりました。
また、ハードウェアの開発失敗もありました。仕上がってきた製品を見たら品質がまったく要望に合っておらず、設計からやり直したためリリースが約半年遅れてしまいました。
藤岡:差し支えなければ、具体的にどんな問題があったか教えていただけますか?
多田:まず、営業トップにナーブのソリューション自体を理解してもらえませんでした。細かくて地味で、最先端の技術とは関係のないけれども利用者にとっては大事な側面を疎かにされたり、世の中の一般的なVRとうちのVRの違いを理解できないまま営業をかけたりといったことがありました。
また、新しい価値を創造してもらう必要があったのですが、そこができずにトップ営業だけで押すようなタイプは、うちには合わなかったと思います。
開発部門では、「技術で世界を変えたい」という思いが先走り、協力すべきSIやその他の関係部門とうまく役割分担ができていなかったように思います。そうすると、どんなに優秀でも思うような成果は上げられず、リリースの遅れという結果になったのだと思います。
藤岡:多田さんがその後、失敗をどう活かしたのかもお聞かせください。
多田:僕なりに失敗の原因について色々考えました。メンバー間の足並みが揃わなかった最大の要因は、全員で思いを一本化できていなかったことではと思いいたりました。
VR事業で数億円も調達した会社は僕らが初めてだったので、そこに惹かれてやって来たメンバーと元からいたメンバーとの間で、求めているものがまったく違ったのだと思います。
そこからは全員でビジョンや価値観を共有することを最優先にし、それに共感できる者のみで組織を作り直すことにしました。思い切って人員の入れ替えもしました。そこからの業績や技術の伸びは、自分の会社ながら凄かったです。
藤岡:現在は三菱地所等大企業とのお付き合いもあると思いますが、失礼ながら御社のような小さな会社と大企業がどのように関係を築いたかに大変興味があります。先方社内でも「こんな小さな会社で大丈夫か?」という話があったかと思います。 信用の壁をどのように乗り越えたのでしょうか?
多田:そこはやはり、「60回の失敗」がものを言いました。僕らは「運用フローに合わせる」と言っていますが、VRをソリューション化して、100%の機能を利用者のためだけに開発しました。
使ってみた人は誰もがわかるくらい、考え抜いた設計になっているはずです。利用者に「これだけ完璧なソリューションがあります」と胸を張って言えることが、信用に繋がったのだと思います。
もう1つは資金調達力でしょうか。現在弊社は大手都市銀行から、第三者による信用保証をつけずに直接融資いただいています。
藤岡:ベンチャーに融資すること自体が珍しいですからね。
多田:そこは確実に信用があるという証明にはなります。また、資金が潤沢であれば開発は進み、バージョンアップのペースも加速します。そうすると、「何かあってもナーブなら解決するだろう」と理解してもらえるようになります。「半年前に会った会社と別物だ」と言われることもあります(笑)。
藤岡:私もここ半年で随分変わったという印象を受けました。半年前にはなかった話がどんどん出てきているのではないですか?
多田:はい。さらに新しい話もいただいています。
藤岡:新しいアイデアの着想は、だいたい多田さんがなさるのですか?
多田:今は僕がやっています。ただ、僕が「こんなのをやりたい」と言うと、エンジニアからはまったく別の、さらに色々なことが盛り込まれたプランが出てくるのでワクワクします。
現在ナーブでは2週間ごとにデモンストレーションをやるのですが、それが楽しみで仕方ないですね。エンジニアにサービス部隊、開発の人たち、あと僕のビジョンみたいなものが色々とミックスしていて本当に面白いです。コンセプトを考えるのは僕なのですが、そんなわけで何が出てくるのかは僕にもわからず、いつも楽しみにしています。
藤岡:言われたことをやるだけではないのが、素晴らしいですね。
多田:3本の矢と言いますが、僕はやはりエンジニアや営業や、これから未来を変えていくビジョンに共感し、共に歩んでくれる仲間とクリエイティブにやっていきたいと思っています。
今までなかった価値観を上手く紡ぎだし、世の中を変えるサービスを出すことができれば、大手がこれだけ取り入れてくれることは証明済みです。今ではd-room(大和リビング)もいい部屋ネット(大東建託)も、三菱も住友も、誰もが利用するサービスになりました。
そうするうちに世の中も変わり、いつの間にルールも変わってくるのだと思っています。
藤岡:最後に、御社がこれから求める人材や、今後のビジョンについて教えて下さい。
多田:まず今後求める人材ですが、これからは代理店との付き合いも重要になってくるので、代理店マーケティングや営業が得意な人に是非入っていただきたいと考えています。
藤岡:と言うと、今後は御社が直接営業するのではなく、代理店を使った営業スタイルにシフトしていこうとお考えなのですね?
多田:そうですね。不動産業界だけでも全国5万店舗あります。僕らだけで営業はできません。アライアンス先はすでにあるので、彼らに対する販売促進などを請け負っていただけるとありがたいです。
また、エンジニアやサポートに関しては、言われたものだけを作るのではなく、ユーザからクレームを受けたらそれを基に「だったら、こんなシステムは行けそうだ」と発想の転換ができる人材を望んでいます。
弊社の組織体制は基本フラットです。管理者もいますが、仕事を活性化するにはフラット以外ないと思っています。
「多田さんが言ったから作りました。どうせ売れないと思っていました」という人は必要ありません。僕がどんなに面白いと思った話でも、面白くないときは止めてくれて、もっと面白いものを作って行ってくれる、これが本当の仲間だと思っています。
今、弊社は世の中に認められ、Jカーブで上昇している最中です。売り上げも毎月倍増もしています。この状況をまだまだこれからも継続し、未来を作っていくというビジョンに心から共感してくれるメンバーにどかどか入ってきて欲しいと考えています。
藤岡:ナーブで働く魅力はどのようなところにあるとお考えですか?
多田:5年後の未来を自分たちで作れるという実感が大きな魅力でしょうか。「VRという新しい技術が世の中で流行ってきている」なんて話でなく、弊社でやろうとしている世界観に世の中が反応し、浸透しつつあることを日々実感しています。次のデファクトを作っている。
弊社で働けば、世の中の潮流を変えた一員になれる。さまざまな新しい技術を使い、世の中が変わる瞬間に出会い、体感できる。それはきっと楽しいことだと確信しています。資金調達も安定していますので、安心して働いていただけます。上場も視野に入ってきました。
藤岡:今後のご活躍にますます期待しています。本日は素敵なお話を、どうもありがとうございました。
関連タグ:
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには