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最強の”チームの法則” ~ Yahoo!アカデミア学長と楽天大学学長によるBIG2対談~(全6記事)

狂ったように「足元の仕事」に没頭せよ ヤフー伊藤羊一氏が語った、人がついてくるリーダーシップ論

2017年11月19日、「Tokyo Work Design Week 2017」のなかで公式プログラム「最強の”チームの法則” ~ Yahoo!アカデミア学長と楽天大学学長によるBIG2対談~」が行われました。セッションには日本中で3000人以上のリーダーを指導してきた伊藤羊一氏と、約4万5,000社の経営をサポートしてきた仲山進也氏が登壇。「リーダーシップ開発」という領域を専門とする2人が、最強のチームづくりについて語ります。本パートでは、参加者がポストイットに書いた質問に両名が回答。強固な組織をつくるためのメソッドを明らかにしました。

「ビジネスは遊び」だと思っている

伊藤羊一氏(以下、伊藤):ほかの質問はどうですか。

仲山進也氏(以下、仲山):若干、チーム関連じゃない質問ですけど、僕も羊一さんも「楽しそうだね」って言われるじゃないですか。

伊藤:うん。

仲山:「遊ぶように働くという働き方をしたいけど、現状は難しいと感じてしまうのはなぜだと思いますか?」という質問があるんですが。

伊藤:なるほど。

仲山:僕、一つ思ってることがあって、仕事やビジネスって戦争に例えられるじゃないですか。「戦略・戦術」「ターゲット」「攻略」みたいな。例えって、似てるものを持ってきて、「ビジネスと戦争のこの部分は似てるよね」「なるほど。わかりやすい」みたいな、そういう役割じゃないですか。

でも、たぶんそうやって例えているうちに、いつの間にか「ビジネスとは戦争だ」という、「全部丸ごと同じもの」みたいな認識が広がってる気がして。本当は戦争とはまったく似ていない働き方もあるじゃないですか。なので、組織の偉い人がビジネスを戦争だと思っていると「遊ぶように働きたいんです」という人は、そこには存在できないですよね。

僕は「ビジネスは遊びだ」と思ってるんですけど、子どものときに公園で集まって「かくれんぼする者、この指とまれ」とやるように、みんなが参加したそうなおもしろい遊びを提案をして、集まってきた人で遊ぶような、そういう仕事の進め方もありますというか、最近SNSの時代になってからは多いですよね。僕の中ではそういうパターンの働き方がほとんどなので。

伊藤:そういうことなんですね。なるほど。

仲山:戦争用語使っている人とは、「ちょっと一緒にできなそう」って思います。

伊藤:「一点突破でやる!」「全面展開でやる!」みたいな、そういう感じ。

仲山:「絨毯爆撃的に営業すんだよ」みたいな。よくわかんないですけど(笑)。

伊藤:「囲い込み!」とか?

仲山:そう。

伊藤:そういうのとは合わない?

仲山:合わないですね。

子どもの頃の原体験が今の仕事に繋がっている

伊藤:今、ふと思ったんですけど、たぶん仲山さんは、「この指とまれ」みたいな感覚がすごくガキの頃からあって、そこが仕事の原点だったりします?

仲山:します。遊びでサッカーばかりやってたんですけど、戦争用語でいう「競合」としては、ファミコンという強敵が現れた時期だったんです。

なので、友達に「ファミコンするか、公園に行ってサッカーするか」という中でサッカーを選んでもらえないと、人数不足でサッカーのゲームが成り立たなくなる。だから、「みんながサッカーを楽しめるためにはどうしたらいいか」ということを考えて。

片方が勝ちすぎると負けてるほうのやる気がなくなって、帰っちゃったりするから、その辺のチューニングとしてチーム替えのタイミングを見たり。

伊藤:なるほど。

仲山:そんな感じで、みんなが18時の時点で「ああ、楽しかった。明日もサッカー来よう」って思える状態を作り続けたという体験が、けっこう仕事のやり方の原点な気がしています。

原体験にもとづいた心地よさを追求して働く

伊藤:いや、僕はさっき仲山さんに「遊ぶように仕事するの好きですよね?」って言われて、話の流れ的に一応「ええ」って頷いたんですけど。

(会場笑)

でも、別に仕事は楽しくないんですよ。いや、仕事が楽しくないというと嘘で、楽しいんだけど、遊ぶようには仕事してなくて、日々めっちゃつらいんです。めっちゃつらいし、なんかもう準備とか色々あって、睡眠不足なんですよ。なんでかって、3つ仕事をやってるので大変なんですよ。日々はぜんぜん楽しくないんです。

なんだけど、今この瞬間は楽しいんですよ。これはなんでかというと、今、僕は頭の中、脳内で変換していて、僕は今この瞬間、ミュージシャンなんですよ。だからこのステージに立って、後ろにドラムがいて、ベースがいて、キーボードがいて、Shinya Nakayamaというミュージシャンとジャズセッションをやってるというね。

それでそのShinya Nakayamaがステージから出ていってギターを弾いてるなかで、「俺はここに留まってギターを弾いてる」ような感じがあって楽しいと。だから終わると全部消耗しきります。やっぱりミュージシャンって、こういうことをくりかえしているんだなと。感。

(会場笑)

「出し切った。つらいわー」とか言って、またでも「しょうがないや、あのトリップする空間に行くか」って言って、明日も僕はステージに立つという、こういう感覚なんです、仕事は。だから今この瞬間もうエクスタシーですよ。だけど、日々は嫌なんですね。

それはなんでかと思ったら、やっぱり自分の原体験で、僕はバンドをやってたんですね。ミュージシャンになりたかったんですよ。僕、FMのテーマソングを演奏して歌ったりするんですよ。そういう原体験があって、そこをちょっと違う姿に変えてやってるんですよね。

たぶん仲山さんも、そんなかたちで姿を変えてガキの頃に経験した原体験を今、仕事でやっているという。だから、そこでブチッと切るとちょっと幸せじゃないんだけど、その延長線上で自分なりに、ミュージシャンなのか、この指とまれなのか、それ以外のかたちもあると思うんですけど、原体験にもとづいた心地よさを追求するといいかなと思います。

絶対に譲れない価値観をすり合わせる

仲山:そうですね。さらに、やりたくないとか、嫌なものも原体験としてあるなって最近気づいて。小学生のときにグラウンドで遊んでたときに、その頃はサッカー少年団はないけど、野球少年団があって放課後に練習してるんですよ。ボランティアのお父さんコーチがノックしてたりするんですけど。

あるとき、そのコーチの人が、僕らがサッカーをやってるところに来て「どけろ!」って怒りはじめたんですよ。でも、無視してそのまま遊び続けていたら、激昂して僕の胸ぐら、首根っこを掴んで「お前んちどこだ!?」って言って、数百メートル離れた僕のうちまで引きづられて大泣きするというトラウマを体験したんです。

野球少年団は学校からのグラウンド使用許可はもらったとは思うんですけど、でもそれはほかに楽しく遊んでいる子どもを排除してもいいOKなのか、仲良くやってねというOKなのか、わからないじゃないですか。だからこっちとしてはまだ、そんなふうに言われてどく筋合いはない、学校から「どけ」とは言われてないしと思って。でも問答無用で遊びを強制終了させられた。そういう体験をしました。

伊藤:原体験でね。

仲山:そうそう。

伊藤:そういうのはもう嫌だと。

仲山:そう。そうやって理不尽な感じで、そっち側の都合だけでこっち側が楽しく遊んでるのを邪魔してくる人とは……。

伊藤:やりたくないと。

仲山:そうですね。なので、そういう「やりたいこと」と「やりたくないこと」を原体験ベースで自分の中で理解しておくと、ストーミングになったときに「私はこういうのはやりたくて、こういうのはやりたくないです」と言えるわけじゃないですか。

それを全員がテーブルの上に出すと、絶対にやりたくないことがバッティングしてると一緒にやっていくことはできないけど、絶対に譲れない価値観がバッティングさえしていなければ、どこかに必ず落としどころがあるはずなので、それをチューニングするためにみんなで話をワイワイしていくというのが、いいチームができる条件として必要なのかなと。

伊藤:絶対譲れない価値観、これをすり合わせる。そのために原体験を探ると。

仲山:そうですね。

来年も参加して続きを話す

伊藤:このなんか……時間ないっすね。もうね(笑)。

仲山:(笑)。

伊藤:一応今、教訓めいたことを申し上げたんですけど、まだ話がはじまったばっかりなんですが、時間がないので。

仲山:あと2分ぐらいですよ。

伊藤:僕らはあともう3時間でも4時間でもしゃべれるんですが、この会の進行の都合上、終了せざるをえなくなりましたので、これはぜひ来年も呼んでいただいてですね。来年、この続きからスタートするみたいな。

(会場笑)

こんないっぱい質問をいただいているので。

仲山:本当に申し訳ないです。

伊藤:これちょっと写真を撮っておいて、必ず来年出てきます。必ず。

仲山:この答えを考えてくる。

伊藤:はい。考えてくるということで、横石(崇)さん(注:TOKYO WORK DESIGN WEEK オーガナイザー)いるかな、来年も出場が決定しましたということで(笑)。

仲山:(笑)。

伊藤:今日のところは、チームビルディングで必要なのはストーミング。そのためには絶対譲れない価値観をすり合わせる。その絶対譲れない価値観のベースとしてあるのは個々の原体験にヒントがあるということですね。その個々の原体験から自分を熱狂させて、その一人ひとりが「for all」、1つの目的「for one」のためにやるというところまでお話をしたということで、続編に行きたいと思います。

しがらみを断ち切って「浮いた」存在になる

仲山:うまくまとめてくださってありがとうございます、と言ったところで、ちょっとアディショナルタイムで。

伊藤:アディショナルタイム?

仲山:お互い1個ずつなにか答えて終わりましょう。

伊藤:そうですよね。じゃあ1個ずつ。なにかあります?

仲山:僕は「楽天で唯一の存在、仲山さんのような社員が社内で増えないのはなぜですか?」。

伊藤: 無理ですよね?

(会場笑)

仲山:この質問とはちょっとチューニングが違うかもしれないですけど、「どうやったらそういうふうになれますか?」という質問をされることがちょくちょくあるんです。だいたい僕の周りでもそういう感じで自由に働けている人たちを見ていて、1個、共通点がわかったことがあって、「浮いていること」なんですね。

その「浮いている」というのは、変人扱いされているという意味合いと、物理的に川に物が浮いているようなイメージです。というのも、時代の流れとして川みたいな流れがあったとしたときに、「うまく流れに乗りたいな」と思うわけです。

流れに逆らうとつらいので、流れに乗ったほうがゆったりと楽しく動けるわけです。でも、いろんなものがしがらんでいると流れには乗れないわけですね。なので、しがらみが断ち切れていて「浮いた」状態じゃないと、流れには乗れないんだと思っています。

ちなみに「しがらみって漢字でどうやって書くのかな」って調べたんですけど、「柵(さく)」という字なんですよね。

意味には「川の流れをせき止めるための木の柵のこと」と書いてあって「そういうことだったのか!」と思って。そしたらもう、「しがらみにとらわれてたら流れるものも流れないな」というか、「むしろ自分で流れに乗るのを止めてるようなものだな」と思うようになりました。

なので、まずは浮く。そうやってしがらみから逃れて浮くと、最初のイメージどおり、「あの人ちょっと浮いてるよね」って周りから見られるようになるわけです。

でも、その「周りから変人と思われる精神的コスト」に耐えられないから、みんなすぐ元通りに戻っていこうとしてるのであって、その変人と呼ばれる精神的コストを乗り越えることができれば、けっこう流れに乗った働き方がしやすいかなと思っています。

伊藤:わかりました。

足元の仕事をやりまくること、内省をすること

伊藤:じゃあ僕から最後に「人は変わる」とか、リーダーシップについて簡単に申し上げます。人が変わるきっかけって、僕の経験で言えば、結論だけ申し上げると3つあります。

1つは、やっぱり足元の仕事を狂ったようにやりまくることに尽きると思うんです。「当たり前だろ」って思われるかもしれないですが、足元の仕事を狂ったようにやらないやつは、感度が高まらないですよね。だから狂ったようにやりまくる。

それから2番目に内省するということですね。内省というのは、自分で考えるということと、それから人と対話するということです。

3番目には、運が必要です。運というのは、やっぱり自分がぴゅっと変わるきっかけのときには、なにか大きな事件が起きてるんですよね。大きな事件と出会うというのは、これは運命であるということです。

なので、「足元の仕事やりまくり」と「内省する」、それから「運」ですね。何かと出会う運。でも、運は自分たちで作れるわけですよ。それはいろんな人と出会っていれば人と出会う運というのも作れるし、いろんなことに感度を持っていれば、いろんなことがたまたま来たときにパって食いつけるってこともあります。要はそうするともう運は除外されて、足元の仕事やりまくるということと、内省するということですね。

1つだけ。内省をするにはどうしたらいいかというと、自分の中に問いを立て続けるということですね。要は「俺はうまく歌えているか」とか「俺の笑顔は卑屈じゃないかい?」とかって尾崎豊は言ってるんですけど、あれですよ。

(会場笑)

だから「俺はリーダーとして正しく生きれるか」「今日この場で今言ってることは意味があるだろうか」「俺は、今日、生まれてきて楽しいだろうか」「俺はつらいだろうか」ということを自問自答するということですね。自問自答という言葉はすごく当たり前のようにあるかもしれないけど、「問いを立て、答える」ということを毎日やることが自分を燃え上がらせる原動力になるのかなと。

リーダーシップは、いろいろコメントがありますけど、リーダーシップは人を導く前に、まず自分を燃え上がらせるということがなにより大事です。「Lead the Self」って言ったりするんですけど、自分が盛り上がれば勝手に人がついてくるんですね。

それは仲山さんも僕もそうなんですけど、自分が好きなことを勝手にぐわーっとやっていったら人が結果としてついてくるということかなと思います。

まだまだ話し足りないところではあるんですけれども、最後、早口で教訓めいたことをびゃーっと話して、次回、よろしくお願いします! 

(会場笑)

横石崇氏:はい。来年の決定いただいてありがとうございます(笑)

伊藤:ということで、今日はこれで終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

仲山:ありがとうございました。

(会場拍手)

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