「モーレツ社員」への対応は?

(会場挙手)

小林史明氏(以下、小林):お二人ありがとうございます。一気に質問だけ聞いちゃってもいいですか? コバヤシさんとワタベさん。じゃあ、先に コバヤシさんお願いします。

質問者5:コバヤシと申します。働き方改革は社会全体としてはもちろん取り組むべき内容だと思うんですけど、例えば弊社は社員の平均年齢がけっこう若い、成長ベンチャーみたいなかたちなんですけど。

そうすると「将来、起業家側にまわりたい」ですとか、モーレツ社員側の「会社を背負って立ちたいんだ」みたいな出世欲の高いメンバーとか。リクルートさんには非常に多くいらっしゃると思いますし、各社でもそういったことがあったと思うんですが。

そういうモーレツ社員というか、そういうメンバーへの心苦しくない対応っていうのはどういうことをやったのかな? ってぜひお聞きしたいなと。えっと、山口さんにお聞きしたいです。

質問者6:ワタベウェディングのワタベと申します。小林さんに質問させていただいたんですが。先ほど「20:40:20」が「25」の4つ、4分割になるというお話だったんですけれども、我が産業なんかはまさに第1クォーター、第2クォーターの世代に支えられてまして。

その第3クォーター、第4クォーター、4分割したときの後半。ましてや第4クォーターの方に、そこにピークを持っていくというのは、なかなか今の状況ではそのイメージが付きづらいと思うんですがそのあたりはどんな議論が出て、アイデアが出たりしているのか。もしあれば教えていただきたいと思います。

小室淑恵氏(以下、小室):山口さんの方から、先ほどの質問を。ちょっと短めで。

山口文洋氏(以下、山口):はい。働き方改革をやるときに、当社はモーレツ社員がいっぱいいますので、「戦わせてくれ」というような議論がいっぱい出ました。とくに若手から。そこで僕はこう言いました。やっぱり「ながら」で10時間、15時間働いてるのは、ぜんぜん生産性がよくないよと。これはもう医学的にも1日で集中できるのは5〜6時間だったりするんだから。

どれだけ日々の仕事のなかに、5〜6時間、自分がゾーンに入れる集中した時間をつくるか。そういう癖付けをするほうが大事だよってところで、いろんなゲストも呼んで、啓蒙活動を勤しんでいます。

やってる「つもり」の残業

小室:ありがとうございます。ちなみに1個参考までに、東大の島津准教授。今は北里の教授ですが、島津さんによると、人間の脳は朝起きて、たった13時間しか集中できない。

それより先は酒酔い運転と一緒の集中力なんです。でもたぶん、このとき1番アドレナリンが出ちゃうんですね。なので本人はやっている「つもり」。でも会社にしてみたら割増残業代を払うにば値しない集中力っていう。

ここは本人の自覚がなくて、やればやるほど「やれてる」気になっている。ここはかなりギャップが大きいんだっていうのを、誰かが俯瞰して本人に気付かせてあげないといけない。

実は成果が出ているときは、さらにアドレナリンが出ていくんですが、何かうまくいかなかったときは、被害者意識になってメンタルになったり、会社を訴えてみたりと、いろんなことが起きるので。誰かがそこをトータルで見ておいてあげないといけないんじゃないかなと思います。

定年間近の社員のモチベーション

小室:じゃあ、小林さんお願いします。

小林:はい。コバヤシさんの問題提起もあったし、ワタベさんからも質問をいただいたんですけど。我々も今、最近意識しているのが、「エビデンスベースド」でポリシーメイキングをしようと。

EBPMって言っているんですけど。要は科学的なデータを示して議論しようと。そして説得をしていこうと言っていて。政治はだいたい「エモーションベース」か「ストーリーベース」なんですね。「うちの地元では……」みたいな話とか「俺たちはそんな人生じゃなかった」みたいな話じゃなくて。

科学的にこうだよ、ということをみんなで示していく必要があるのかなと。それで、ワタベさんのご質問はどちらかというと働き方というよりは、マーケットビジネスとしてってことですよね……ですか?

小室:定年間近になった社員のモチベーションダウンをどうするかっていう?

質問者6:そこそこの年齢になられた方も、ずっと現場仕事をするなかで働きがいを感じられるようにする。というのは、すごく我々の課題なので。その視点からという意味です。

小林:その視点ですね。すみません、わかりました。合うかどうかわからないんですけど、うちの地元に和菓子屋さんがあって。職人さんが高齢化するんですね。それで、餡子って30キロぐらいあるので、持ち上げられなくなったと。

じゃあ、リフトを買うからってことで、5年長く働けると。今度は手元が見えなくなって細かい仕事ができなくなったんだよねってことを、政府の補助金を使ってLEDに変えて、5年長く働けるようになった。みたいなことがあって。

これはすごくアナログなテクノロジーの実装ですけれども。ITやロボットを含めると、相当いろんなサポートが、人に対してできるんじゃないかなと思ってるんです。人が仕事を奪われるっていうのはアトム世代の感覚だと思うんですが。

ガンダムやエヴァンゲリオンの世代からすると、人の仕事が拡張されると。そう思ってやるときに、私は、1番最後に残る人の仕事は、まさにワタベさんのところみたいなホスピタリティだと。

ですから、新卒の22歳の女の子に結婚式の介添をやってほしいか? っていうと。いやいや、60歳、70歳の落ち着いた方にやってもらった方がホッとするってことがあると思うので。体力的な面をサポートしながら心理的な部分を価値として提供できるっていうことを、私たちも目指したいと思っています。

ちょっと理想論かもしれませんが、なにか一緒にできることがあったら、我々も実証実験みたいなこともやっていますので、サポートしていきたいと思っています。またアイデアをぜひお願いします。

モチベーションが下がらないポイント制

小林:ちなみに、75歳でもう1回結婚する時代が来てもいいかなと思っていて、100年の人生を1人のパートナーっていうのは本当に実現可能なんだろうか? ていうのは、あとで放送されると怒られるかもしれせんが(笑)。

でも、これからの生き方改革のなかで、パートナー制度っていうのも見直してもいいんじゃないかと。結婚と出産がリンクし過ぎているせいで、出産が難しくなってるんじゃないか? ってのを私たちの世代では問題意識を持っています。

ですから、事実婚もあるかもしれないし、LGBTだってあるし。もしかしたら複数のパートナーっていうことも人の感覚によってあるかもしれないと。そしたら、人生で2回結婚式があるとするならば、もしかしたら結婚式場は2回、3回のチャンスがやってくるかもしれない。こういう感覚も一緒に共有できたらいいなと思っています。

小室:ありがとうございます。大和証券さんの事例でいうと「この辺から仕事をもうぼちぼちでいいかなあ」って思いはじめてしまう世代の年齢を測定したそうで。その年齡より上で給料が上がるか下がるかを決めるポイント制というのを作られて。

スキルアップのさまざまなプログラムを受講すると、それがポイントになって貯まり、あるポイント以上を取得している人は、年齢がその時点に達しても給料が下がらない仕組みにしたそうです。

そうすると、常に学び続ける。というようなかたちでモチベーションが下がらなかったなんて事例もありました。ご参考までにというところです。

「生活費の一部」の残業代をどうするか

小室:今日、質問からは出てこなかったんですが、千葉さんに聞いてみたいなと思うのはですね。よく出てくるのが「働き方改革をやると実入りが減るよね」という、残業代減少によって社員の生活ができなくなっちゃうとか、モチベーションダウン問題がよくあるんです。千葉さんのところではどうだったでしょうか? と。

千葉太氏(以下、千葉):そうですね。当社の場合、働き方改革を阻害する要因が3つあるって言ってたんですけど。そのうちの1つが、今おっしゃった「残業代は生活費の一部だよね」っていう社員の本音の部分です。

自分の若い頃を考えても、ある程度の残業がある前提で、洋服を買ったり、飲んだり食べたりしていたので。それを「みんなでがんばって残業を減らしてゼロにしようよ!」と言ったところで、社員の本音は「そんなこと言っても生活が苦しくなるだけだよ」と。

これは絶対にあると思ったんで、まず残業代相当額。当社でいうとだいたい年間で6億3千万円なんですけど。これは社員に還元するものとして、もう毎年予算取りしようと。それで「これは必ずみんなに還元するから」ということを社員に繰り返し、繰り返し示してきました。

だから昨年でいうと、前年比で16パーセント減らせたので、8千万ちょっと還元したんですけど。今年度はそのところが倍ぐらい。たぶん30〜40パーセント減るんで、還元を増やして、倍ぐらい返していくことになる。

こういうことで社員の意識を変えていったと。ただこれは返し方が難しくて。もともと残業の少なかった人もいれば、ダラダラ残業してた人、密度の濃い残業をしてた人もいる。これをどうやって返すんだ? って。

これはずいぶん議論しましたけど、正解かどうかわかりませんが、現時点では、削減した割合と、働き方改革に取り組んだ、その取り組み方を評価してボーナスに上乗せして返す。という返し方をしています。この辺は、これからも考えていかなきゃならないと思いますけど。

加えて今「ワークスタイルチャレンジ」といって、残業時間とあるいは有休取得率、この一定の目標を各部門ごとに設けて。部門でそれを達成したら、部門メンバー全員に、報奨金として少し給付する。

これも「個人でやるんじゃないんだよ、みんなでやってそういう結果を出すんだよ」ってことを意識してもらいたいと思ってやって。これも今いい方向に来てるかなと思っています。

小室:あの還元の仕方って本当に難しいと思うんですが、チームで取り組まないと働き方って変えられないので、個々人に戻すっていう視点よりもチームに戻していくっていう視点にしていかないと、殺伐としますね。なので、そのあたりが非常にポイントかなと思いました。