震災から2年、ようやく解体される老舗宿
堀潤氏(以下、堀):地域の僕らが見過ごしてきたいろんなところを、(川野氏が)聞きとってこられたんですよね。
川野まみ氏(以下、川野):はい。やはりこういう社団法人を立ち上げて、あっち行ったり、こっち行ったりってしてるんですが、南阿蘇村というところがあるんですね。ずっと山のほうなんですけど、すごく老舗の「清風荘」さんという宿があるんですけど、今、やっと解体。
生田よしかつ氏(以下、生田):今!?
川野:今、解体なんです。
生田:今、「再開」じゃねぇんだ!
平将明氏(以下、平):今年の4月で(震災から)丸2年?
堀:そうですね。
川野:はい。今やっと解体という状況なんですよ。だから、みなさんにお話をうかがったら、まずはやっぱり「えっ、まだその段階なの?」というのを知っていただきたい。あとはやはり実際に、「足を運んでいただきたい」「見ていただきたい」「知っていただきたい」というのはすごくおっしゃっていて。
一大観光地・阿蘇の現状
川野:それで、復興割というのがあって。
平:うん、観光客のね。
川野:はい。来てくださったりしたんですけど。
堀:(復興割スタート)直後は。
川野:直後は。でも、やはり今観光客が単発で以前に比べると7割減だったりとか……。
大澤咲希氏(以下、大澤):7割!
川野:だからまだぜんぜん、本当に。阿蘇とかの地域は、温泉もある、食べ物もおいしい、たくさん観光客が訪れてくださってた場所だったんです。
けれど、それがまだぜんぜん戻ってないので、観光客の方たちも「戻ってきてほしい」って。だから、「そういう後押しもお願いしたい」ということもおっしゃってましたね。
平:観光割は結局、補助金を出すことによって、3割引きとかでツアーのパッケージが買えるんですよ。だから、投入した税金の割に経済波及効果が高いんだよね。
生田:でもタイミング見てやんなきゃダメだよなぁ。
平:うん。それで被害を受けたところを見て、補助率を上げるんですよ。そうすると割引率が高まるんで。たぶん補正で続いてない、ですかね?
川野:ないです。だから、細く長く……。
平:そうですよね。阿蘇は国立公園で、「国立公園満喫プロジェクト」というのが今立ち上がるので……。
前もちょっとアドバイスしたんですけど、地方創生の地域計画に入れて、その国立公園をコアのバリューにして観光客を呼び込むと。だからそこに復興の、観光割なんかも合わせて入れたらいいですよね。
川野:そうですね。
復興割のタイミングが悪かった?
堀:取材してて「なるほどな」と思ったのは、阿蘇の地域って、阿蘇だけの旅行プランじゃない。宮崎から入って大分行って、熊本行って福岡のほうに抜けていく、というような、周遊プランみたいなものがけっこう人気のプランなんです。途中、阿蘇大橋が落ちたりとか、ちょっとその周遊プランができないとなったときに。
平:抜かれちゃうんだよね、そこだけ。
堀:そうなんです。だから直後は、復興割は福岡と熊本、ほかの県と、というように全域だったんだけども、その温度差が出てきたときに、ピンポイントでその観光地をどうするかというのは、これもまた課題なんだろうなというのは。
生田:阿蘇もデカいしね!
堀:そうですねぇ。
川野:復興割って(震災)直後だったじゃないですか。でも実際、あの直後、みんな再建できてなかったりとかするんですね。
平:そうなんだよね、バタバタしちゃうよね。
生田:だからタイミングなんだよ!
川野:そうなんですよ。
堀:行くところがなかなかね。
川野:逆に今からのこの時期、というのに対して、やっぱり長く細く。
生田:だから変な話、単なる野次馬に補助出しちゃってるようなもんになってきちゃうんだよね。
平:いや、あれはあれで効いてるといえば効いてるんですよ。
堀:ボランティアさんとかは、すごくよかったと思う。
平:効いてるんだけど、でもKPIで……やる理由はあると思うけどね。
震災などの非常時は政治家の提言が必要
平:だから大事なのは、今回のことも含め、全部そうなんだけど、1個の役所で片付かない話なんで。
やっぱり政治家が、「こんなプランがあるよね」って言って、各省庁横断で、あと自治体にも「こうやったらいいんじゃないの」って。政治家がそういう役割をしてもいいんですよ。僕なんかもしょちゅうやってるじゃない。それができるかどうかだな。
生田:だけど、発信の大切さというのは思うね。
堀:そうですねぇ。
生田:やっぱり、俺らからすると熊本って遠いじゃない。もうすっかり忘れてるもんね。
大澤:うん。
平:だってもうほとんどニュース出ないからね。
堀:もう大丈夫かな、って思いますよね。
生田:だから今、2年というのがビックリしたもん。「えっそんな経ってたっけ!?」みたいな感じで。
堀:早いですよねぇ。
大澤:でも私たちからしても、今「復興割」って言われても、もうそのイメージがないって言うか。
堀:「どの災害の復興割だっけ?」ぐらいの。
生田:そうそうそう。
風評被害に繋がりかねないジレンマ
堀:けっこうジレンマがあって。観光地は復興にも温度差が出てくると、「ここにはまだ問題があります」って言ったら、風評被害に繋がりかねない。
生田:なるほど!
大澤:あぁー……。
平:豊洲と一緒だよね。
堀:そう。「元気です」ってアピールすると、本当の痛んでるところが埋もれていく。
生田:なるほどねぇー……。
堀:そういうジレンマがね。まさにさっきの老舗旅館の経営者のみなさんは、地域の観光の長をやってたんですね。観光協会さんとかね。
川野:うん、うん。
堀:ほかにもいろいろありましたよね。
川野:はい。
「みなし仮設」の問題
川野:あとはやっぱりまだ、4万人以上の方たちが避難をしている状況です。
大澤:まだそんなしてるんだ……。
平:仮設住宅?
川野:仮設住宅であったりとか、あとは「みなし仮設」。
平:「みなし仮設」ね。民間を借上げて。
川野:借上げて、補助を出して。私は「みなし仮設」に住んでるんですけど。あれは期限があるじゃないですか。
平:2年、原則。だから、今年の4月から片づけられていく。
生田:もう出なきゃいけないの?
平:一応、延長しますけどね。
川野:はい、1年。その賃貸物件に住んでる、「みなし仮設」の方たちは、結局2年で1度契約更新というのをオーナーさんとしますよね。
平:そうだね。
川野:今問題になりつつある、というのが……高齢者の方で身寄りのない方とかが、更新したくてもその賃貸物件のオーナーさんからお断りされる、という。
大澤:えぇ……。
生田:なぜ?
平:ご高齢だから。
生田:ご高齢だから、という理由で?
川野:身寄りがなかったりとか。
堀:孤独死して事故物件になったら困るよね、とか。
大澤:あー、そっかぁ。
堀:途中でじゃあ生活能力失って、そのときどうなっていくの、とか。大家さんは大家さんで、いろんな悩みがあるんでしょうけど。
生田:まぁまぁ、それはねぇ。
みなし仮設の住民は仮設住宅にスライドできない?
川野:そこで何が問題かって言うと、契約更新してもらえない方は、「じゃあ仮設住宅に移ればいいじゃないか」って思ったりする方もいらっしゃるんですけど、そうではなくて。
「みなし仮設」のほうで補助金をお願いすると、ダブルではできないと言うか。もう一方に補助金・支援金をお願いできないので、「みなし仮設」にいた人が仮設住宅にスライドするということは、今……。
大澤:できないんですか!?
平:うーん、今初めて聞いた。
大澤:へぇー!
堀:僕も知らなかったです、聞くまで。
生田:なんか簡単にできそうだけどね。
川野:だから、そういう方たちがもしかしたら、今からもっと出るかもしれないから、それはどうしようという。
堀:お年寄りがねぇ。
平:それはね、僕はやり方あると思いますよ。というのも、今かなり不条理な話なので。
生田:手続きの話だもんね。
平:それでね、たぶん仮設も「みなし仮設」も原則2年なんですよ。2年の間に再建できない人は、これからまた1年なのか2年なのか、延長しますよ。
その中で2年が目安だから、実際仮設に入ったのが5月・6月だとしたらそれくらいに、仮設に住んでる人たちがどれだけ自立するかというのがまず第1弾なんですよね。そこから先は「復興」なのか「社会保障」なのか。
堀:そうか。なるほど。
被災者たちの「忘れないでください」
平:「復興」の名目で税金を使うのか、独居老人の社会保障の問題なのかを切り分けなきゃいけなくて。
堀:1つのバリエーションとしてですよね。
平:ずっと復興でいくと、さっきの予算の使い方が、ぐちゃぐちゃになるんですよ。だから、そのスライドはたぶん2年じゃ間に合わないから、例えば1年延長しましょうと。
そのときに、「みなし仮設」だった人はそこ借りられないんだったら、仮設にスライドさせましょう、というのは、ちょっと確定的には言えないけど、僕はできるような気がするんですよ。
ただ、それがずーっと延長していくかっていうと、そういうことじゃなくて、どこかで社会保障の政策に切り替えなきゃいけない。それをどうするか。
大澤:うーん……難しいとこだぁ。
平:ちょっとそれは確認しますね。あと、どうぞ。いっぱいあるでしょうから。
川野:はい。実際、それがけっこう大きかったですね。みなさんおっしゃってたのは、本当に最後の1人が自宅を再建して、安心して地震前と同じように生活できるまで、「息の長い支援をお願いしたいしたい」「とにかく来てください」「忘れないでください」って。
生田:わかった、行く!
大澤:行きます!
川野:あっ(笑)。
(一同笑)
生田:すぐ行く!
川野:本当ですか、ぜひ(笑)。
平:責任取って、村本さんに。あれだけずーっと言ってたんだから。
(一同笑)
堀:ツアーですね、一緒に回ろう(笑)。